○田村智子君 地方税、国保税などの滞納処分についてお聞きをいたします。
昨年十一月二十七日、鳥取県による児童手当差押訴訟の判決が広島高裁松江支部から言い渡されました。これは県の控訴を退けるもので、この判決が確定をしています。概要を簡潔に御説明ください。
○政府参考人(米田耕一郎君) 御指摘の判決について概要を御報告いたします。
これは、鳥取市に在住する自動車税を滞納しておりました男性が、鳥取県がその県税の滞納処分として執行いたしました預金債権の差押え及び取立て、換価処分、滞納県税への充当処分の無効確認又は取消しを求めた事案でございます。平成二十五年三月二十九日に鳥取地裁が判決を下しておりまして、これに対しまして鳥取県が控訴したものに対する判決でございます。
中身でございます。これは、自動車税の滞納に対しまして鳥取県がその滞納処分を行ったわけでございますが、その処分の行い先が銀行の口座に対して差押えを行ったわけでございます。一方で、この口座に入りましたお金が言わば児童手当の支払の口座になっておりまして、これを差し押さえた点が問題になっておりました。児童手当法では、第十五条で「児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。」と規定がございまして、これに違反をするのではないかということでございます。
一方で、平成十年の最高裁の判例によりますと、これは国民年金等のことでございますが、児童手当と同様、差押禁止債権の件でございますけれども、その給付は、銀行口座に振り込まれた時点で金融機関に対する預金債権に転化して受給者の一般財産となり、差押禁止債権としての属性は承継しないという判決がございました。これに基づきまして、県は口座を差し押さえたということになっておりました。
平成二十五年十一月二十七日の広島高裁の判決はこのように申しております。鳥取県が差し押さえた預金債権のうち十三万円、これは児童手当の額でございますが、につきましては、児童手当が口座に振り込まれることを認識した上で、入金の直後に児童手当によって大部分が形成されている預金債権を差し押さえた鳥取県の処分が、実質的には児童手当の受給権自体を差し押さえたのと変わりがないため、児童手当法第十五条の趣旨に反するものとして違法と認定をしたわけでございます。鳥取県に十三万円の返還等を命じたものと承知をしております。
なお、同時に、この差押えにつきましては、鳥取県の不法行為であるとして慰謝料の請求がございましたけれども、この件につきましては、先ほど申しました最高裁判例にのっとり鳥取県が行ったものであり、鳥取県側に不法行為を構成する故意又は過失はないと認定をされまして、慰謝料等の請求については棄却されたものというふうに承知をしております。
以上です。
○田村智子君 この確定判決は、どういうときが預金債権であっても差押えが禁止されるのかと、三つの点を述べているんです。一つは、児童手当が振り込まれる口座であると認識できたという認定。そして、二つは、児童手当振り込み時間と処分執行時間との近接性、振り込まれてすぐに差し押さえたと。そして、三つ目、預金残高に占める児童手当の構成比、ほとんどもうこれ児童手当しかないよというぐらいのものだったと。この三点から、差押え禁止される債権だというふうに判断がされたということです。
この裁判については、昨年四月十五日、我が党佐々木憲昭議員が衆議院予算委員会第二分科会で取り上げて、新藤大臣は、司法の場で判断されるというふうに答弁をされました。司法の判断は確定をいたしましたが、大臣はこれを是認されますか。
〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕
○国務大臣(新藤義孝君) 私どもといたしましても、この判決を踏まえまして、残高のない預金口座への児童手当の振り込みを待って、これを狙い撃ち的に差し押さえて、支給されたものが実際に使用できなくなるような状況にすることは差し控えるべきであると考えております。
なお、本判決後、本事例の概要等については、地方団体における事務の参考となるよう直ちに情報提供をいたしまして、高裁判決の内容についての周知を図っております。
○田村智子君 今答弁されたように、判決から二日後に総務省は周知する事務連絡を出しておられます。
広島高裁の概要だけでなく、この事務連絡の中には、四月十五日の先ほど私が言った議事録の抜粋も添付をされています。この議事録では、新藤大臣は、法律上、差押えが禁じられていないとか、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合は滞納処分の執行を停止できるという答弁が載っているわけですね。これでは、預金債権であっても児童手当と同一視できる場合は差押えが禁止されるということが明確にならない。逆に言うと、ちょっと誤解を招くんじゃないかと、生活状況が窮迫しているかどうかなんだというような誤解も招くんじゃないかというように思うわけです。
これは地方税法第十五条の七に定められているんですね、生活を著しく窮迫させるおそれがあるときと。これは滞納処分の停止の要件の一つです。しかし、先ほど紹介している高裁判決は、この十五条の七は問題にしていないんです。児童手当であるから差押えが禁止であると。差し押さえた預金が、この差押えは不当であるとして返還請求を命じた。
そうすると、大臣、このことがよく分かるように、生活が窮迫しているかどうかとかではなくて、もう児童手当と同一視できるというものは差し押さえたら駄目だよということをちゃんと周知することが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。時間の関係で、済みません、大臣にお願いします。
○国務大臣(新藤義孝君) これは今回判決が出たわけでありますから、これは重く受け止めなければならないと、このように思っております。そして、直ちに判決内容を地方団体に情報提供したわけであります。そして、今後とも、地方団体の担当者の参加するような様々な会議の機会を捉えて必要に応じて説明をしてまいりたいと、このように考えます。
○田村智子君 こういう差押えが禁止される手当はほかにもあるんですね。児童扶養手当とか、それから年金も先ほどお話あったようにそうです。それだけに丁寧な周知に努めていただきたいと思います。
この地方税法十五条の七に関する問題についてもお聞きをいたします。
今年一月、総務省は初めて、「地方税法では、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができることとされていることを踏まえ、各地方団体においては、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適正な執行に努めていただきたいこと。」と文書で地方自治体に通知をいたしました。
この通知の趣旨に照らしますと、本人の財産状況だけでなく、生活状況の調査というのは滞納処分の前に行われるべきものだと思いますが、いかがでしょうか。簡潔にお願いします。
○政府参考人(米田耕一郎君) 国税も地方税も併せまして、税の滞納処分を行うに当たりましては、今委員の御指摘のありましたような条項もございます。滞納者の個別具体の事情を踏まえることが必要でございますので、各地方団体の税務当局において適切な対応が行われるべきものとの趣旨でこの通知を発出したものでございます。
○田村智子君 私たちのところにも、滞納処分を行った後、債権者が抗議をして、そしてやっと本人の生活状況の調査を行うと、実情を聞くというような事例というのは度々に寄せられてくるわけですね。
預金債権に転化をしてしまえば差押えが可能だということで、振り込まれてしまえばもう差押え可能だということで、給与も全額差し押さえるなんということが起きているわけです。しかし、もし給与を支払う側に差押えをあらかじめやるということにすれば、これは生活費丸ごとの差押えなんてできなくて、上限というのが定められているはずなんですよ。そういうことが徹底されていない。差し押さえたがために生活保護に頼らざるを得ないなんという状況になれば、これは本末転倒の事態だと思います。
是非、これ自治体、よく見ていただきたいんです。差押えがどういうふうにやられているかというふうに見ますと、実は自治体によって滞納世帯に対する差押えの割合、百倍近い差が生まれていて、滞納世帯の大半に差押えを行っているという自治体もあるわけです。
大臣、是非、事前に差し押さえたがために困窮に陥ることがないように、調査をする、あるいは納税相談もきちんと行うということを徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(新藤義孝君) まさに法律において、地方税で滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされているわけでありますから、地方税務行政の執行に当たっては、この規定を踏まえて、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただきたいと、この旨、文書でも申し上げておりますし、その趣旨については、適正な税務行政の遂行について担当者の会議であるとかいろいろな機会できちんと説明をしていきたいと、このように考えております。
○田村智子君 最後に、生活保護世帯への保険料の請求、滞納処分についてお聞きをいたします。
生活保護費に対して公租公課は禁止をされています。しかし、実際には滞納分について国保税や地方税が請求をされて、支払うのが義務だなどという説得もされています。そのために滞納分を分割で支払わせているという例が見られます。これは公租公課が禁止されているという趣旨から考えると不当な行為ではないかと思うんですが、総務省、いかがですか。
○政府参考人(米田耕一郎君) 先ほどから何度も問題になっております規定で、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、滞納処分の執行を停止することができるとされているところでございます。ただ、この判断は、先ほどから何度も申し上げておりますが、個別具体の滞納者の状況を判断をした上で行うというのが原則でございます。
私ども、生活保護であるから、当然大きな判断要素ではございますけれども、これのみをもって直ちに執行の停止を行うというようなことは適当ではないと考えております。
〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕
○田村智子君 これ、大阪府は、生活保護受給が決定したら速やかに滞納処分の停止を行うべきという内容の通知を出しています。これも資料でお配りをいたしました。厚労省のQアンドAという形で出しています。もちろん財産を隠し持っているなどの不正受給を排した上でのことですが、厚生労働省、この通知を是といたしますか。
○政府参考人(木倉敬之君) お答えをいたします。
今ありましたように、滞納処分執行停止の要件というのは、生活を著しく窮迫させるおそれがあるかどうかということであります。
それで、現に生活保護を既に受給されている方の場合には、一般的には更に滞納処分を行うことになりますとこの要件に該当することになりますので、大阪府からこの照会がありましたときには、基本的には速やかに執行停止を行う必要性が高いのではないかということをお答えをしております。
大阪においては、これを府内の市町村に周知をされていますけれども、今先生お話ありましたように、資産の状況というのは変わり得ることもございますから、これを一律に、機械的にということでなくて、速やかに執行停止した上であっても財産の状況は必要に応じて確認をすることも必要かというふうに考えております。
○田村智子君 一方で、五月十五日の東京新聞で報じられましたけど、生活保護受給者に対して脅しに近いように支払えということをやっていると。
これ、不適切なやり方を未然に防ぐためにも、総務省として、生活保護になった場合には地方税法十五条の七を適用して速やかに滞納処分の停止を行うよう自治体に求めるべきだと思いますが、最後、一言、大臣にお願いします。
○国務大臣(新藤義孝君) これは、先ほどから総務省においても、また厚労省からも答弁がありましたように、滞納者の個別具体的な実情を十分に調査した結果を踏まえて行うべきであると、これが原則です。
その上で、そもそも生活保護、また生活困窮者に対してはそれを支援する、こういったものも、これ国の精神でありますから、そういったものの精神を踏まえて適切な対応がなされること、またそれは自治体の皆様にもきちんとその説明をしていかなければいけないと、このように考えております。
○田村智子君 終わります。