国会会議録

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避難者の損害賠償を 田村氏 福島原発事故で要求

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 福島県では避難指示区域の解除に伴い様々な問題が生じていますので、この問題をお聞きします。
 まず、緊急時避難準備区域とされていた地域での帰還状況についてお聞きします。
 二〇一二年三月三十一日に避難指示が解除された広野町、私も厚生労働委員会の視察で昨年三月訪問いたしましたが、住民が戻ってくることには様々な課題があり、町長さん始め町役場の皆さんも本当に苦しい思いをされている、そのことはよく伝わってきました。
 広野町のホームページによれば、住民約五千二百人のうち、町に戻っている、現在住んでいる方、これは約千五百人となっていて、七割の住民が町に戻れていないということになります。
 お聞きしますが、南相馬市、川内村、田村市についてはどうなっているでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 住民の方々の帰還の状況については、各自治体において把握されております。
 例えば、広野町、先生がおっしゃったような状況になっておりますし、田村市は旧緊急時避難準備区域の人口が四千百十七人、そして帰還者数、これは二千七十八人になっております。そして南相馬市、これは四万六千七百三十四人、事前時点の数字でありますが、それが今、三万二千五百三十二人、全体で旧緊急時避難準備区域の人口が約五万八千五百、そして帰還者数は約三万七千五百、約六割の方が帰還しているという状況になっております。

○田村智子君 こういうのなかなか答弁嫌がっていたんですよ。どうして答弁してくれないのかなと、私、質問通告したときに思ったんですけれども。本当に帰れていないという実態だと思うんですが、すっと答弁出てこないというところに、私、やっぱりどれだけの世帯や住民が戻ったのか戻れないのか、これはつかんでいても出したくないのかなと、こう思っちゃうんですよね。そういう復興庁の姿勢については、私は疑問を抱かざるを得ないということを一言言っておきます。
 今年四月に解除された田村市の都路地区東部、報道によれば、避難した世帯の三割弱しか戻っていないと。避難指示を解除すれば、あとは住民の判断ということでは復興支援にならないということを私強く感じるわけです。広野町ですね、避難指示の解除から二年がたっても七割が帰還できていない。
 それでは、数字は今お答えいただいたんですけれども、この実態をどう見るか、根本大臣、見解をお聞かせください。

○国務大臣(根本匠君) 震災から四年目を迎えました。新たな場所での定住を決めた方もおられますが、環境が整えばふるさとに戻りたいと考えている住民も多くおられます。このような住民の皆さんが一日でも早く帰還できるようにすることが必要だと私は考えます。
 帰還を妨げている要因、これは様々なアンケート調査などもありますが、放射線に対する不安、生活関連サービス、インフラの未復旧、まだ復旧が不十分だと、そして雇用機会の不足などが挙げられると思います。この点でいえば、例えばお話しの広野町、この広野町については常磐自動車道及びJR常磐線といった交通インフラが既に復旧、再開しているほか、町の復興に向けて広野駅東側の再開発が進められるなど帰還に向けた前向きな取組が進められているところです。
 復興庁としては、新たに創設した福島再生加速化交付金などを活用して、地元自治体とよく相談して、これらの問題一つ一つに取り組んでいくことが重要だと思っております。

○田村智子君 今大臣が答弁された放射線の問題、これは、避難指示の解除については、確かに三つの要件、年間積算線量が二十ミリシーベルト以下になること、二つ目がインフラや医療、介護等の生活サービスが復旧すること、三つ目が県、市町村、地域住民との十分な協議を行うことと。
 この放射線二十ミリシーベルト以下という基準が、やっぱり安全なんだろうかと。広野町でも、これでは若い方や子供さんは戻ってこれないよという声を私もお聞きをいたしました。
 実効線量が三か月当たり一・三ミリシーベルトを超えるおそれがある区域というのは、法律上、放射線管理区域とされています。原発作業員やレントゲン技師など放射線作業を行う労働者は、年間積算線量の上限が五十ミリシーベルト、女性の場合は二十ミリシーベルトを超えてはならないということが電離則で定められています。これは放射線業務であって、その場合でもできるだけ被曝を避けることは大前提というのが、これも日本の中の法律なんですね。電離則の一番の原則なんです。子供は当然、放射線業務に当たるということは、これは前提にされていません。
 労働安全衛生上の基準から考えても、二十ミリシーベルト以下という基準に不安があって、帰還したくてもできないという方が大勢おられる、これは事実だと思うんですけれども、そのことについてはどう考えられますか。

○大臣政務官(磯崎仁彦君) お答えをさせていただきたいと思います。
 住民の皆様方にとっては、やはり放射線が健康にどのような影響を与えるのかというのは非常に不安なんだろうというふうに思っております。そういった意味では、国際的、科学的な知見というのがまず前提になるのではないかなというふうに思っておりまして、それによりますと、百ミリシーベルト以下の低線量被曝におきましては、放射線による発がん性の増加というものにつきましては、喫煙など他の要因による発がん性の影響によって隠れてしまうほど小さいということで、発がんリスクの明らかな増加を証明することができないというのが知見ということでございます。
 これを踏まえて、先ほど委員から御指摘ありましたように、避難指示解除の際の線量の要件につきましては三つの要件、その中の一つとして年間二十ミリシーベルトというものが定められているわけでございますが、これにつきましては、他の発がんの要因につきましてもリスクは十分低い水準であるということがございますし、また、放射線をどう防御していくのかという観点からしましても、例えば生活圏を中心とします除染、あるいは食品の安全管理、こういったような放射線の防御措置を通じて十分リスクを回避できる水準ということで、今後一層、低線量の減量を目指していくという中では、この基準というものは適切であるというふうに考えております。
 ただ、他方で、昨年の十一月に原子力規制委員会の方で、この二十ミリシーベルトの基準を必須の条件としつつ、一つ目としましては、長期的な目標としまして、帰還後に個人が受ける追加被曝線量が年間一ミリシーベルト以下になるように目指すということが言われておりますし、もう一つ、避難指示の解除後、住民の被曝線量を低減し、住民の健康を確保し、放射線に対する不安に対して可能な限り応える対策をきめ細かく示すべきだという提案がなされておりますので、政府としましても、この原子力規制委員会の提言に基づきまして、昨年十二月、原子力災害対策本部決定におきまして、個人の線量を把握し管理をしていくこと、そして二点目は、被曝の低減対策をきちんと実施をしていくこと、そして三点目、健康不安対策の推進等を柱とする対策、防御措置を講じることとしましたので、これからもこういった管理をきちんと進めてまいりたいというふうに思っております。