日本共産党の田村智子議員が29日の参院本会議で行った米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)の関連法への反対討論(要旨)は次の通りです。
本法案の成立は、TPP11を批准する条件となります。「うそつかない ぶれない TPP断固反対」と自民党もポスターに掲げたTPP協定の関税撤廃、非関税障壁の緩和水準がTPP11に受け継がれています。凍結事項は極めて限定的であり、食の安全など2016年の国会審議で焦点となった問題点は何ら解決されていません。
国会決議で関税撤廃の交渉から除外することを求めた、米・麦などの重要5品目のうち無傷のものは一つもなく、批准は明白な国会決議違反です。多国籍企業の利益のために、経済主権や食料主権を侵害するTPPの本質と何ら変わらず、批准には断固反対です。
TPP11はTPPよりも深刻なダメージを日本の農業にもたらす危険があります。米国が抜けたにもかかわらず、乳製品等の低関税輸入枠も、牛肉・豚肉等の輸入急増への対策であるセーフガード発動の基準もTPPで合意されたままになっています。TPP11で、カナダ、ニュージーランドなどがすでに対日輸出の大幅増を見込んでいます。
茂木敏充TPP担当相は“米国の動向によりセーフガード基準の見直しを要求する。各国の理解を得ている”と繰り返しました。しかし、発言内容や各国の反応などが確認できる文書の提出を求めると、議事録は作成していないと述べ、日本側のメモの存否すら明らかにしませんでした。
米国のトランプ大統領は貿易赤字を重大視しており、TPP枠の外でも日本への輸出増を要求することは明らかです。TPPの枠組みにしがみついて日米交渉を進めれば、TPP合意は最低ラインとなり、さらに対日要求に応えることになりかねません。
本法案による国内農業支援策は、長年にわたる厳しい価格競争の押し付けを前提としています。支援策は「意欲ある生産者」との前提つきで、その多くは新たな、大規模な設備投資が条件です。参考人質疑で北海道の小麦農家の山川秀正・北海道農民連委員長は、さまざまな形態の農業が生き残ってこその地域社会、地域経済の発展だと陳述しました。それぞれの事情、経営スタイル、規模があって良いはずです。国策で価格の安い輸入品とのさらなる価格競争を農家に強い、競争に耐え続ける農家を支援する政策はまともな農業支援ではありません。
日本の農林水産業を第1次産業にふさわしく位置づけ、農家の方々が望んできた価格保障・所得補償を進めて自給率を大幅に引き上げることこそ急務です。食料自給率が4割を切る国で輸出を進めて「稼ぐ農業」を推進するなど本末転倒です。
TPP11交渉では多くの国が凍結事項を主張し、マレーシアのマハティール首相はTPP11の再協議に言及しました。多国籍企業の利益追求から国内産業や自国民を守るためです。経済・食料主権を尊重しながら国際的な経済関係を築く新たなルールの構築にかじを切るべきです。
2018年6月30日(土)しんぶん赤旗より