日本共産党の田村智子議員は28日の参院内閣委員会で、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)の発効によって日本が米国との2国間協議でさらなる譲歩を迫られる危険性を指摘しました。
TPP12では、ミニマムアクセス(最低輸入機会)米の外枠で米国に年間5万トン(発効時)の輸入枠が追加されました。田村氏は、米国はTPP12から離脱しており追加輸入枠は無効、対米交渉でも米国に特別な輸出枠を認めない立場で臨むのかとただしました。茂木敏充TPP担当相は「今後、米国との間で行われる新たな通商協議の協議事項は議題も決まっていない。予断をもって答えるのは控えたい」としか答えませんでした。田村氏は「それでは(米国に)譲りっぱなしになる」と指摘。主食用のコメでも米国にさらに譲歩を迫られる危険が浮き彫りになりました。
さらに、田村氏は、TPP交渉の過程で米国と交わしたサイドレター(付属書)を日本が事実上、実行していることを指摘。日米の経済対話でも日本の医療政策に重大な影響を与える薬価制度について協議されたことなどをあげ、「政府は、TPP条約が発効もしてないのに、サイドレターに記された米国の要求にこたえている」とただしました。
内閣府の渋谷和久統括官は「(サイドレターは)国際約束を構成しない文書。あくまでも我が国の自主的判断としてやっている」などと答えました。田村氏は「これでは(米国に)足元を見られた交渉になるだけだ」と厳しく批判しました。
2018年6月29日(金)しんぶん赤旗より
【6月28日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
私は、前回の続きからやらなければならないんですね。TPP協定第六条の協定見直しについてと。
第六条は、アメリカのTPP離脱が決定的になった場合に見直しができるとしています。アメリカ抜きのTPP11でありながら、これまでもありましたとおり、日本政府は、牛肉や豚肉の輸入量が急増した際に発動するセーフガードの基準さえも、アメリカからの輸入を見込んだTPP協定の基準のままに合意をいたしました。
このことを何度もいろんな委員会で問われて、茂木大臣は、アメリカの離脱が決定的になればセーフガード発動の基準も見直しの対象となるんだと、なぜなら私が繰り返し発言したからだと、日本側が繰り返し発言し、私も閣僚会議で発言したからだというふうに答弁を繰り返されました。
じゃ、どういう発言したんですか、他国代表の発言はどうだったんですか、そう聞くと、今度は正式な議事録はないと。でも、大臣の発言原稿や日本側のメモはあるでしょうというふうにお聞きをすると、繰り返しお聞きしても、大臣はメモの存否さえも明らかにはされませんでした。
そもそも、日本側も他国政府も、交渉当事者がずっと同じポジションで仕事をするということはあり得ないわけですよ。ですから、それぞれの国の発言の記録がないという状態では、これ日本政府の中でも一体どうやって引継ぎをされるおつもりなのかなというふうに思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(茂木敏充君) まず、TPP11協定の第六条でありますが、アメリカが云々というよりも、このTPP12が発効することが見込まれる若しくは発効する見込みがなくなった場合にどうするか、このことを規定した形になっております。それで……(発言する者あり)そうおっしゃったので、そのように確認をさせていただいているところであります。
その上で、昨年十一月八日からのベトナムのダナン会合の件について御質問ありましたので、これ、大筋合意に向けて、長時間にわたります緊迫して複雑な調整が予想されて、各国の主張も状況を見つつ変わってくる性格のものでありました。また、会議も、閣僚会合をずっと開いているというよりも、閣僚会合の途中にショートブレークを入れる、そして、バイの会談で利害関係国と調整してまた全体会合を再開すると、様々なプロセスを経る、そういった閣僚会合でありました。
実際、二日目の夕方から夜半までに及びました閣僚会合で、一旦大筋合意したものが御案内のとおりカナダによって翻って、その次の日、十日の夕方から五時間以上掛けて一項目ずつ確認をして改めて大筋合意に至ると、こういう、言ってみますとシナリオのないドラマと、こういった閣僚会合であったわけであります、実際に。
その際に、議事録を作成すると各国間の事前合意も成りませんでしたし、実際にも相当長時間にわたります調整、協議の内容を各国の確認を得て作成したものはございません。三日間十六時間に及びます会合の最終的な成果でオープンにしているものは合意文書の形で反映をされているところでありまして、ダナンにおける合意文書は閣僚声明の附属書のⅠとⅡとして公表いたしております。これが実態でありまして、通商協定、これは最終的には合意されたものが全てであると考えております。
○田村智子君 だから、その中で、セーフガード発動基準の見直しがこういう場合に行われますなんという約束事の文書はないじゃないですか。しかも、それだけ今大臣が言われたような難しくて複雑で何度にもわたる協議だったら、なおのことメモが残されて日本政府の中で引き継がれなかったら主張することができないじゃないですか。そういうことを聞いているんですよ。複雑な交渉をまとめられたという御努力は、大臣なりの御努力を別に否定しません。それだけ複雑だったら記録が必要でしょうと聞いているんですよ。
仮に、セーフガードの基準についてTPP11の交渉の過程で日本側の方が見直しをそもそも求めていたんだと、ところが他国から異論が相次いだのでまとまらないと、それじゃ分かったと、セーフガードの基準はそのままにするけれども、アメリカが決定的にもう入ってこないと分かったらもう一度協議をお願いねと、仮にこういう交渉過程があったのならまだしも、日本側が見直しを元々主張していたと、違うじゃないですか。報道を見る限り、日本側はそもそも見直しとかほとんど何も求めずに、できるだけ早くTPP12の形のままでの発効というのを求めていたという報道ばかり私たちは接しているわけですよ。
じゃ、セーフガード発動の基準について見直しが必要だということを主張されたということですか、TPP11の交渉の過程で。
○国務大臣(茂木敏充君) 午前中から答弁をさせていただいておりますが、TPP11、どういった形で協議をして合意に至ったかということでありますけれど、昨年の一月二十三日にアメリカがTPPから離脱をすると、(発言する者あり)聞いてください。そこの中で、十一か国はどうするかということについて三月に協議をいたしまして、米国が離脱をしてもなおこのTPPを実現する意義そして効果は大きいということで、TPPのハイスタンダード、これを維持しながら早期に合意をしたいということでありまして、基本的にはマーケットアクセスの部分は触らないと、その部分についてはTPP12を組み込むという形にして、最小限の凍結項目、知財を含めた二十二項目について最終的には凍結ということになったわけでありますけど、そういう合意をしたわけであります。
日本だけではなくて、TPPワイド枠、これについて要望を持っている国はあるわけでありまして、それにつきましては六条を規定しましょうということを言いました。そして、箱根会合以降、数次にわたります首席会合、交渉官会合のたびに、また各国のNC、首席交渉官が日本を訪日したり首席交渉官が会うたびに、日本の立場も、また相手国の立場もあります、そういった主張をさせていただいて、日本がこの六条についてどのような要請を持っているかということについてはしっかり各国の理解が得られていると。
そういった理解を踏まえて、ダナンの会合におきましては、私から、確認の意味も含めて、累次御報告申し上げてきたような内容につきまして閣僚会合で説明をさせていただいた。そのときは共同議長をやっておりましたけれど、共同議長の立場からこの場は離れて、日本の閣僚として発言をさせてもらいますということでその趣旨の発言をして、各国からも異論がなかったということでありまして、この六条につきましては、各国がそれぞれの要望を持っている、そして日本の要望につきましても十分な理解が得られていると、そして、このTPP11協定合意に至ります過程で各国の間では強力な信頼関係ができておりますので、その信頼関係に基づいて、見直しが必要な場合はしっかり見直しが行われるものと考えております。
○田村智子君 かなり我慢強く聞いたんですけれども、セーフガード発動基準の見直しが必要だということを日本側が主張したのかと聞いたんですよ。
○国務大臣(茂木敏充君) 先日発言させていただいたとおり、きちんと発言をいたしております。
○田村智子君 いや、先日の発言の中でそういう発言はなかったと思うので改めて聞いているんです。
セーフガード発動の基準の見直しが必要だという主張はされたんですね。
○委員長(柘植芳文君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(柘植芳文君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(茂木敏充君) 二十六日の委員会で私が答弁した内容を改めて確認をさせていただきますと、新協定六条を発効する必要が生じた場合、我が国としては、TPP全ての締約国を対象とした関税割当て数量及びセーフガード措置の発動基準を見直す、このように答弁をさせていただいております。
○田村智子君 微妙に擦れ違っているような気がするんですけど、その交渉のときに、そもそもTPP11の協定の合意事項でセーフガード発動の基準の見直しをして協定を結ぶべきだという主張を交渉過程の中でされたのかというふうに聞いているんです。
○国務大臣(茂木敏充君) 先ほど申し上げたように、TPP11協定をどう進めるかということにつきましては、昨年一月の二十三日に米国がTPPから離脱を宣言をする、そういった中で、残り十一か国は今後どうしていくかということにつきまして協議を行いまして、米国抜きでも、TPP、これを進める意義、これは非常に大きいということで、TPPのハイスタンダードを維持しつつこれを早期に実現することが重要だということで、TPPのマーケットアクセス部分については基本的には触らずに、ハイスタンダードを維持しつつ早期に合意をするという形の中で協議を進め、合意に至ったものであります。
○田村智子君 触らないという協議をもう最初からやっていたということじゃないですか。
じゃ、もう次、聞きたいことがまだありますので、それじゃ、アメリカがTPPから完全に離脱でTPPそのものの発効が見込みがないと、こういう判断基準についても確認したいんです。
具体的に、どういう場合に第六条で言うもうTPPが発効しないという判断になるんですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 済みません、おとといも御答弁させていただきましたけれども、元々こういう懸念があるのは、アメリカの通商政策の新しい動向によって、TPPワイドの今の枠、これが現在の割当て枠を超えるようなことになると、そういう懸念。つまり、TPPの別枠でまた新しい枠が、また新しい数量分が出てしまうということになるとそれは非常に困るというのが元々の関係者の懸念であったわけでございまして、そのような懸念が現実のものとなる可能性が非常に高いと判断される場合、これは日本が判断すれば締約国の一人として第六条発動するということでございますので、そういうことでございます。
○田村智子君 具体的にと聞いているじゃないですか、具体的に。
どこかの答弁で、TPP参加国とアメリカとの二国間交渉、これがもう合意なのか始まったときなのか分かりませんけど、こうなるとTPPとは別の交渉で別のことが決められていくから、これはもう完全にアメリカは戻らないと、TPPは発効しないという判断になり得るというような答弁を読んだ覚えがあるんですけれども、この理解でよろしいですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 確かに別な場所の答弁で、例えば米国がTPP諸国と個別に貿易協定交渉を始めるなど、通商政策の動向を踏まえ、米国を含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合等と、これを一つの例示として答弁しているところでございます。
ただ、例えば、これ全くの例えでありますけれども、新しい貿易協定といっても、投資に関するものだけであれば例えば乳製品の枠はおよそ関係ないわけでございますので、先ほど申しましたとおり、それに加えて、実際にTPPの枠数量に影響を与えるという、そういう懸念が現実のものとなりつつある、こういう場合に判断するということでございます。
○田村智子君 そうすると、これ、どこかって非常に難しいと思うんですよ。交渉が長期化、例えばTPPの参加国と、日米でもいいですよ、交渉すると。だけど、たとえ交渉で、具体的にその交渉が始まっていったとしても、いやいやまだ例えば牛肉とか豚肉とかそういうことが合意になっていないんだからこれは違うというふうになっちゃったりとか、ほかの国だっていろんな考え方を持ち出す場合がありますよね。
一体どこでこの見直しということができるという判断になるのか。これ、どんな合意になっているんですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 合意といいますか、第六条は、元々締約国が第六条の発動、一つの締約国ができると。恐らく通商協定の中ではかなり異例な規定だと思いますけれども、一義的にそれを要求する締約国がまず判断するということでございます。そこは各国にも説明をして、第六条の規定ぶりから見ても、そこは十分理解されたというふうに考えております。
○田村智子君 いや、理解されていないんじゃないかと本当に思うわけですね。
大臣がずっと繰り返し御答弁になっているように、相当難しい協議であった。しかも、この見直しができるぞというその判断基準も極めて曖昧と言わざるを得ません。それなのに、何の議事録もないと、日本側でいえば、メモも私たちに存否も明らかにしないと。これ、非常に私、無責任だと、こう言わざるを得ないです。
例えば牛肉ですよ。輸入量の推移を見てみれば、BSE問題でアメリカ産の牛肉の輸入が規制をされたら、途端にオーストラリア産の牛肉が大きく伸びて置き換わったわけですよね。TPP11で低税率の牛肉、豚肉の輸入が米国抜きで始まれば、当然米国産からの置き換えをカナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどが狙うのはこれ明らかです。一方で、BSE問題とは異なるわけですから、アメリカ側からの輸入を規制するわけでもないわけですよ。当然、トランプ大統領は自国の貿易赤字を重大問題としているわけですから、牛肉などについても対日輸出をより増やそうというふうにしていくことはこれまた目に見えているわけですよ。
TPP11を急ぐ余りに、セーフガード発動の、さっきのマーケットのこの枠と茂木大臣おっしゃっていましたけれども、そこに手を付けない、これは余りにもひどい、余りにも農業について置き去りにした合意だとこれ言わざるを得ません。ここの点は引き続き追及しなければならないと思います。
その上で、対米交渉について確認いたします。
TPP協定では、アメリカに対して、例えばミニマムアクセス米の外枠で、お米の五万トン、これ発効時、そして十三年目で七万トンという国別輸入枠をTPPで決めました。ミニマムアクセス米のうち主食用米の輸入量というのは、昨年見てみると全体で十万トン、そのうち六万トンがアメリカですから、このTPPで決めたアメリカ枠というのは大きいんですよ。決して小さくありません。
このミニマムアクセス米の外枠の輸入、国別枠、またアメリカがTPPに加わらない限り、そうですね、これはアメリカがTPPに加わらない限りは認めないということでよろしいのか。同じく、牛肉、豚肉のTPP協定での低関税、これもTPPにアメリカが戻らない限り、二国間交渉の中でもこんなことは議論できないと言って、はねつけるということでよろしいですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 分かっている事実を申し上げれば、TPP協定にあるアメリカを対象とした国別枠、これは、現在アメリカはTPPに参加しておりません、発効するTPPに恐らく最初からアメリカがいないという形になりますので、アメリカがいない場合は、つまり締約国になっていない場合はアメリカ向けの国別枠は全く適用されないと、これは明らかであります。
FFRで今後どういう議論がされるかということにつきましては、先ほど大臣が申したとおりでございまして、農業について決して国益を損ねることのないようしっかりとやっていくということに尽きると思います。
○田村智子君 農水省に先日レクで聞きましたら、それはあり得ないと、農水省はそういう立場で私に説明しましたよ。TPPに戻らない限り、ミニマムアクセス米の外枠で五万トン、こんなことはあり得ませんと。二国間交渉でこんなことが話し合われて合意されることはあり得ませんと、農水省はそう私に説明しましたよ。違うんですか。
○国務大臣(茂木敏充君) TPP11につきましては、今、澁谷統括官の方から話があったところであります。さらに、何度も申し上げておりますが、今後、アメリカとの間で行われます新たな通商協議、FFR、私とライトハイザー通商代表との間で行われるわけでありますが、今、いわゆる協議事項をどうするかと、TORと呼ばれるものでありますが、これも事務方で調整中という段階でありまして、議題も決まっていないと。これから協議をする段階で予断を持ってどういうことはします、どういうことはしませんと申し上げるのは差し控えたいと思っております。
○田村智子君 上月政務官、それでいいんでしょうか。TPPの枠だから五万トンと決めたんだと、TPPに入らなかったらこんなのもう無効だと、二国間交渉でこんなこと決められていったら、TPPにはしがみつく、その上、アメリカとの二国間協定でも五万トンの枠はあり得るかもしれない、こんなことでいいんですか。農水省は違うと言いましたよ、私に。どうですか。
○大臣政務官(上月良祐君) FFRの交渉については今、茂木大臣からお答えしたとおりであります。日本国としては是非TPP、11じゃなくて12に戻ってきてほしいというふうに思っているわけですから、そのことも含めてこれからしっかり交渉していただくことに尽きると思っております。
○田村智子君 これじゃ、譲りっ放しになり得ますよ。とんでもない答弁ですよ。驚きましたね、農水省の説明と全然違うので、ちょっとびっくりしましたけれども。
トランプ大統領、批准しないというふうに明言をして、でも、TPP前提としない二国間協議にかじを切る。なのに、TPPで約束したものもこれ話合いの対象になり得るということになっちゃいますよね。五万トン拒否する立場は取らないということなんでしょう、茂木大臣。あらかじめ言えない立場だと言うのかもしれないですけれども、これもう本当に譲りっ放しになる危険性が相当にあるというふうに言わざるを得ません。
加えて言いますと、そもそも戻ってくる可能性があるという立場を日本政府取っているものだから、TPP協定でアメリカと結んだサイドレター、これ、事実上実行しているんじゃないだろうかと思えるような動きを私は感じます。例えば、保険等の非関税障壁に関するサイドレター、対日投資を行うに当たって外国投資家や利害関係者から意見、提言を求め、その意見を検討、実行するために規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って措置をとるなどの約束が含まれています。
日本再興戦略二〇一六では、事業者目線で規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進める新たな規制・制度改革手法の導入というのが掲げられているんですね。その中では、外国企業の日本への投資活動に関する分野以外についても、先行的な取組が開始できるものについては年内に具体策を決定し、速やかに着手するなどなど盛り込まれて、実際に、規制改革推進会議、未来投資会議、対日直接投資推進会議などでは外国企業のトップなどを構成員に加えての検討というのが進められています。
麻生副総理とペンス副大統領による経済対話でも、日本の医療政策に重大な影響を与える薬価制度について協議が現に行われています。ライフサイエンス・イノベーションに関する償還政策について意義ある透明性を引き続き確保するという約束、これが麻生副総理とペンス副大統領の経済対話の中での約束なんですけれども、ここで言う償還政策というのは日本の公的医療保険制度のことを指します。そして、透明性というのは、新薬の価格決定であるとかその価格が日本の制度に基づいて下げられていくときに、アメリカ側は常に透明性が欠如しているということを日本の側に何度も何度も要求を伝えてきているという問題なんですよね。これ、日本の公的医療制度さえも日米間で引き続き協議の対象と現になっているわけですよ。
実際、規制改革推進会議でどんな方が、TPP協定が合意になってから行われているのかなというのを見ても、ATカーニーの方とかゴードン・ブラザーズ・ジャパンの方とか、あるいは在日米国商工会議所、米国研究製薬工業協会、こういうところが次々に参加して現に議論に参加している、意見を述べている、こういうことになっているわけですね。
これ、政府は、TPP条約が発効していないけれども、アメリカとのサイドレターに記されたアメリカ側の要求に既に応えるということをやっているんじゃないですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 御指摘いただいたサイドレター、二年前の特別委員会でも随分御議論の対象になったところでございますけれども、そもそも国際約束を構成しない文書でございます。日米双方の理解を確認したという性格のものでございまして、国際約束を構成いたしませんので、そもそも今効力があるとかないとかという議論の対象にならないというふうに理解しているところでございます。
このサイドレターの内容は、委員もお話ございましたが、外国人投資家を含め、国の内外を問わず、広く規制改革に関する提案を受け付ける、これは元々規制改革会議の従来の役割を確認したものにすぎないものでございます。したがいまして、そのサイドレターが発効しているのかどうかとか、あるいは自主的にやっているのかと、そういうことじゃなくて、外国人投資家を含めて広く規制改革に関する意見を受け付け、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに検討し、必要に応じ規制改革会議において議論される、このように承知しているところでございます。
○田村智子君 実態として進んでいるんですよ。
もう一点、TPP協議と並行して日米間で交わされた四本のサイドレター。このうち、自動車の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡、また保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡。これも法的拘束力のない約束とされていますけれども、TPP協定が両国について効力を生ずる日までにこれらの成果が実施されるという約束になっているんですよ。
それで、今、日本の側は、アメリカは戻ってくるかもしれないと、こう言い続けているわけですね。これ、発効するまでにやることという約束なんですよ。ということは、これ、引き続きこの二つのサイドレター、措置を実施していくという立場なんですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 先生御指摘のとおり、国際約束を構成しない文書でございますので、あくまでも我が国としては我が国としての自主的な判断でやっていくと。ちなみに、自動車の並行交渉に関するものはTPP協定の中に日米自動車付録として組み込まれておりますので、これはTPPが発効しないと発効しないということになると思います。
○田村智子君 これ、戻ってきてください、戻ってきてくださいといって、アメリカ側の要求で現にいろんなことが進んでいると。そういう立場の下で二国間協議やられたらどうなるかですね。これ、戻ってこなくても五万トンの輸入枠はもしかしたら生じてしまうかもしれないという、そういう危険性さえ指摘をしなければなりません。本当にこれでは足下を見られた交渉にならざるを得ないんじゃないかという危惧をしなければなりません。
前回質問できなかった農林水産物の各品目についての影響、その試算について私も質問いたします。
これまでずっと議論にありました。例えば牛肉の生産減少額は約二百から三百九十九億円、豚肉は約百二十四から二百四十八億円などなど、こういう品目について生産減少額というのを確かに農水省出しています。これは、関税引下げによって輸入品の価格が、国内での販売価格が下がる、この影響で国産の農産物の値段が下がる、その影響額を示したものだという理解でよろしいですか。
○大臣政務官(上月良祐君) そういう御指摘のとおりでございます。
○田村智子君 価格が下がるんですよ。だけど、コスト削減や農業支援策によって国内農家は値段引下げに耐えることができる、あるいは、高品質で勝負できるので輸入品に置き換わらない。言ってみれば、耐えて耐えて、価格競争に耐えて耐えて耐えることができる、だから国産品の生産量は減らない、だから生産減少率はゼロ%、こういう理解でよろしいですか。
○大臣政務官(上月良祐君) 基本的には御指摘があったような形でございまして、そのために必要な対策をしっかりやっていって、もちろん頑張っていただくところは頑張っていただいて、それを耐えると言うのかというのはありますけれども、基本的な枠組みとしては今おっしゃったような形でございます。
○田村智子君 やっと理解ができました。私も、ずっとこれどういう意味なんだろう、その影響ゼロってどういう意味なんだろうというふうに思っていたんですけれども。
そうすると、元々価格の安い輸入品が更に低関税になって価格が低下しても、国産品は勝負できるんだと。そこまでの支援策が行き渡ってからTPP11が発効するということになるんでしょうか。
○大臣政務官(上月良祐君) 今日、私、何度か御答弁しましたように、それぞれの品目ごとにかなりの長期間の、しかも段階的な関税削減期間を勝ち得ておりまして、しかも国家貿易をきちっと残しているものもあります。そして、ゆっくり段階的に下がっていく中で更にセーフガードも張っているわけであります。そういったことをやっていくという、一年でその影響額が出るわけではないという前提の中で、我々、必要な対策を今もう二十七年の補正から毎年打っているわけであります。
それは、それぞれの、何というんでしょうか、作目、品目ごとに影響の出方も違うので、現時点で考えられる対策を打っておりますけれども、先ほども申し上げましたけど、大綱の中で、今後しっかり実績の検証等を踏まえた上で所要の見直しを行った上で必要な対策を講ずるということになっておりますので、もちろん、できる限り必要なものは前倒ししてというんでしょうか、早めにやっていく必要があると思えばそういうふうになっていくと思いますけれども、そういう対策をしっかり取っていくことで、今おっしゃったような効果を我々としては出していきたいと思っております。
○田村智子君 今の言い方は、言い換えれば、一気に下がるわけじゃないと、じわじわじわじわ十年以上にわたって、ずうっとずうっと価格競争を、これでもか、これでもか、これでもかとやられ続けるという意味にもなるわけですよ。そこに耐えて耐えて耐え抜いた農家だけが生き残っていくと、こういう支援策で日本の農業が果たしてどうなるのかと。
今日、まだ質問したいことがいっぱいあったんですけど、その支援策の一つがやっぱり大規模化あるいは機械化ということなんですよね。
それで、その大規模化、機械化、機械を入れて過重な負担を、今も家族経営の方だって過重な負担になっていますから、二十四時間生き物を扱っているわけですから、畜産農家の方なんかでいうと、そこに対して機械を入れて過重な負担を減らす、こういう判断あるのは、私、あり得ると思いますよ。あるいは、参考人質疑でお越しいただいた北海道の山川参考人は、自分は分家だったので、元々土地が分割されたものを集約したいので借金背負ってでも農地を増やすということをやりましたというふうにお話をされて、そういう規模の拡大というのはあるだろうなというふうに思いますよ。それは農業の力付けていく、農家の支援になると思いますよ。
だけど、今度やろうとしているのは違うと思うんですよ。安いものが入ってくるぞと、それに対して耐えて耐えて耐えるために、コスト削減するために借金抱えてでも機械入れろと、借金抱えてでも規模、大規模化しろと、こういう支援策になっていっちゃうんじゃないんですか。相原議員もおっしゃったように、そうではなくて、やっぱり適正な規模での農業をやっていきたいと、生活するために農業をしていきたいと、機械の買ったがための負債を返済するためだけの農業になんかしたくないと、こう思っている方々が本当に潰されていく、その危険性を、私、どうしても指摘せざるを得ません。
茂木大臣、大変御丁寧に御答弁いただいたために、また質問を積み残しました。次回につなげたいと思います。