国会会議録

国会会議録
公共事業 民間への切り売り 改定PFI法 田村氏が批判

(写真)質問する田村智子議員=12日、参院内閣委

 改定PFI法(民間資金等活用による社会資本整備法)が13日、参院本会議で与党と維新の賛成多数で可決・成立しました。日本共産党などは反対しました。

 日本共産党の田村智子議員は12日の参院内閣委員会での同改定案の質疑で、水道などの公共事業の運営権を民間に委ねる「コンセッション事業」の問題点をただしました。

 「コンセッション事業」に関する政府の「ガイドライン」が3月に改定され、PFIのための特別目的会社(SPC)への株式譲渡制限は必要最小限とする規定が設けられたほか、自治体の関与を最小限とするため、SPCへの自治体の出資も原則行わないとの規定も盛り込まれました。

 イギリスではSPCの株式が事業途中で売却され、ばく大な値上がり益をもたらし問題となっています。

 田村氏は、政府の産業競争力会議で、コンセッション事業を投資家のビジネスチャンスと位置づけて提案したのは、規制改革の旗振り役の竹中平蔵氏であり、同氏が未来投資会議でも自治体の出資を最小限とするよう要求し、政府が全面的に取り入れた経過を明らかにしました。

 その上で、投資家の利益のために人権に直結する水道事業などを切り売りするのがコンセッション事業だと批判。梶山弘志地方創生担当相は「個人の意見であり、それらも含め議論して政府の方針は決めた」と合理化しました。

2018年6月17日(日)しんぶん赤旗より

 

【6月12日 内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 政府は、二〇一三年度から二〇二二年度の十年間で、PPP/PFI推進アクションプランによってPFIの事業規模を二十一兆円とする、これを目標としています。この間、事業対象の拡大、建設から運営まで一体の民間活用、利用料金の徴収も民間に委ねるコンセッション方式の導入などを進め、さらに本法案では、その料金設定も民間事業者が行えるようにするという新たなコンセッション事業が盛り込まれています。
 二〇一六年度までの事業規模の累計、これは十一・五兆円で、午前の議論にもありました、そのうちの五・一兆円は関空のコンセッション事業だと。これを二十一兆円規模にするということは、大規模事業を促進をし、事業件数の拡大も急ピッチで進めるということになると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(梶山弘志君) PPP、PFIの推進アクションプランで定めた平成二十五年から三十四年度までの十年間の事業規模目標二十一兆円に対して、平成二十五年から二十八年までの四年間、委員御指摘のとおり、実績は十一・五兆円で進捗をしております。
 実績十一・五兆円には、関空、大阪空港の五兆円、愛知県有料道路の五千億円等の大規模事業を含み、それらの大規模事業を除くと、平成三十四年度までに二十一兆円の目標を達成するためには、現行の進捗ペースを今後一割程度早めていく必要が出てくるわけであります。
 コンセッション等のモデルとなる事業を確実に実施するとともに、更に幅広い取組を進めていくことが必要であり、今般の法律改正や支援措置の実施などを通じて、今後一層の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 問題は、それが本当に国民の利益になるのかということです。
 これまでのPFIの検証、これが事実上余りないんじゃないかという議論が午前にもありました。
 PFI先進国のイギリスについても七日と今日の委員会でも取り上げられましたけれども、私、答弁をお聞きしていて、イギリスで起きている事態を直視しているとはとても思えませんでした。
 イギリスでは、PFI受注の大手企業カリリオンが、今年一月十五日、経営破綻をしました。鉄道、医療施設、発電所などの大型建設事業、また、約四百五十件の公共運用サービスを受注し、英国建設企業の第二位に上り詰めた企業です。英国内で二万人、全世界で四万人の労働者を抱えていて、大変な影響が今出ているわけです。
 このカリリオンの破綻は、安値入札を繰り返して自転車操業になっていた、受注額に応じて経営陣にインセンティブボーナスが支払われていたなど、大変その実態が問題視をされています。また、官側も、こうした経営実態を知っていながら見逃していたのではないかという疑惑、あるいは、PFI事業、その事業の中身を中断させるわけにいきませんから政府が巨額の資金提供をしなければならないなど、国民の批判が強まっています。
 梶山大臣、PFI先進国でPFI先進企業が破綻をした、国民には財政的負担がのしかかり、公的事業の継続に多大な悪影響がもたらされている、このことをどう評価されていますか。

○国務大臣(梶山弘志君) 今議員御指摘の英国のカリリオン社が破産をしたということ、承知をしております。同グループがPFI事業を含む公共事業を多く受注していたことも承知をしております。
 これに関して、英下院が今年三月に報告書を公表しておりますけれども、当該報告書によりますと、大手建設会社カリリオンに対する強制清算命令が二〇一八年一月十五日に発令をされ、裁判所は清算人として破産管財人を指名をしました。カリリオンは、英公共事業の主要受託者であり、様々な分野で約四百五十件の政府事業を受託をしていたという事実もございます。PFI事業については、二〇一六年三月時点で十二件に出資をしていたとこの報告書には書いてあります。
 また、公共事業契約について、英政府は破産管財人に対し支援を行い、適切な解決策、代替事業者が見付かるまでの公共サービスを維持をしているところであります。
 英国の内閣府大臣が下院で述べたところによりますと、カリリオンが財政難に陥った理由は、大部分が政府の契約によるものではなくて、同社の事業のその他の部分に係るものである、しかしながらPFI事業にも当然影響が出てきているということであります。
 内閣府としましては、引き続き英国の対応とPFI事業の運営状況等について注視をしてまいりますが、モニタリングの在り方であるとか、またそのリスクを評価しての契約の条項であるとか、そういったところも含めて今後の課題であると考えております。

○田村智子君 元々、イギリスのPFIはサッチャー政権の行き過ぎた民営化の揺り戻しだという指摘があります。一九九二年に始まりましたが、これ、官から民ではなくて、民から官という施策の流れなんです。議会や英国会計検査院からは、リスク分担が不適切である、透明性が欠如している、事業者の利益が大き過ぎる、コスト高だなど何度も指摘をされて、そして二〇一二年から、より公的関与を強め透明性を向上させたPF2という制度を導入するに至っているわけです。
 それからまた五年が経過して、イギリスの会計検査院は、今年一月十八日、PFIアンドPF2というレポートを公表しました。これはカリリオン破綻の結果を受けずに行われた検討ですけれども、その中でも、午前中にもありました、PFIが財政コスト削減に役立ったというには証拠が不足しているという結論付けなんですね。
 二十五年間を経て、イギリスの会計検査院は財政コスト削減の証拠がないと、こういう結論を出された。このことについてはどう受け止められますか。

○国務大臣(梶山弘志君) 今御指摘の英国会計検査院の報告書については承知をしているところであります。従来型の公共事業に比べたPFI、PF2の利点、疑念点、コスト削減可能性について包括的に情報を提供をしているわけであります。
 これらにつきましても、先ほど来お答えしていますように、やはりしっかりとした検証がその事業終了の時点ではなくて途中においても必要だと思っておりますし、そういったモニタリングの仕方、リスク分担の在り方というものも含めてしっかりとした制度にしてまいりたい、運用面でもしっかりした制度にしてまいりたいと考えております。

○田村智子君 そういう検証がないままに促進に走るわけですよね。
 PFIで事業を行うことが適切かどうか、バリュー・フォー・マネー、支払に対して最も価値の高いサービスが得られるかどうかで判断をされるわけです。しかし、建設事業が含まれる場合は、公共事業の競争の激化による市況悪化に引っ張られてバリュー・フォー・マネーが大きくなる傾向があって、これは競争による価格低下と区別が付かないんじゃないのか、あるいは、運営フェーズに移ったときの経費の削減、これは主に人件費分を切り下げることでバリュー・フォー・マネーが出ているのではないかと、こういう御指摘、どうお答えになるでしょうか。

○政府参考人(石崎和志君) PFI手法、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することによって効果的、かつ効果的な事業の実施を期待するものでございます。
 このため、民間における広い裁量の下で事業を行わせることにより、単なる価格競争ではなく、例えば公共で限界がある業務ごとの分割発注ですとか、単年度予算主義等により効率化に限界がある行政と比較してより効率的な事業運営を行うことができることですとか、民間の持つ最新の技術、管理のノウハウ等について迅速かつ柔軟に採用することが可能であること。また、コスト面のみならず、サービス水準の向上につきましても考慮して採用するということも可能であること、こういうことなど、単なるコスト削減以上の多面的な効果を期待してPFIが推進できるものと考えてございます。

○田村智子君 問題は、実態が単なる価格競争になっていないかどうかですよね。国のあるPFI事業で、受付業務の人件費単価を知ることができました。一時間当たりの人件費単価から単純計算をいたしますと一人当たり年間約三百五十万円、これは委託契約の人件費単価なので委託会社の経費や利益分も含まれています。そうすると、労働者に支払われるのどれぐらいかと、よく五から六割ぐらいだという説明もあるわけですけれども、これで計算すると年収百七十五万から二百十万程度になっちゃうんですよ。ワーキングプア、まさに官製ワーキングプアというお話ありましたが、国のあるPFI事業です。
 しかも、PFI事業を実施する特定目的会社、SPCは、人件費を引き下げたことによる報酬として利益が更に上乗せされることになるわけです。もちろん、バリュー・フォー・マネーの原資の中に業務の合理化による部分がある、これ否定しません。だけれども、結局、主には低賃金などの労働条件の切下げ、あるいは人の配置の数を減らすことによって、何というんですか、人件費を削減すると、圧縮すると。こういう労働条件の切下げによるもの、これは避けられないんじゃないのかと、主にはそうだというふうに言わざるを得ないと思うんですけれども、これ大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(梶山弘志君) その数値についてはちょっと承知をしていないところでありますけれども、PFI事業においては、価格だけで競争を競うわけではなくて、サービスの質を含めた総合評価、一般競争入札により事業者選定を行うものであります。
 これまでの入札においても、価格が高い方、例えばコンセッションの場合、価格が高い方が選ばれたということではなくて、サービスの内容も含めたそれぞれの評価の割合がやっぱり問われるわけでありまして、その中でのサービスの割合というものも非常に高いものがあると思っております。ただ、人件費で、あくまでもその人件費を削ったということは余りよろしくない例ではあるとは思いますけれども、そういったこともできるだけ、契約に際して必要以上の人件費を削減するということに関しましては、注目をしていかなければならない点であると思っております。

○田村智子君 例えば、受付業務ってサービスの内容にそんなに差が出るとは思えないわけですよ。そうすると、人件費分がどれだけ安くなるかでバリュー・フォー・マネー出るしかないというふうに思うんですよね。
 そもそも民間企業は利益を追求するのが当たり前で、株式会社であれば株主に利益を配分することも求められます。これを前提にバリュー・フォー・マネー出そうとすると、人件費や管理の必要経費など圧縮せざるを得ませんし、それをやらないんだと、このことを否定すれば、それはSPCの利益分が逆にコスト高の要因になってしまうと思うんですよ。問題は、人件費の圧縮、低賃金の労働にならないという保障がPFI事業にあるのかということです。その保障、ありますか。

○政府参考人(石崎和志君) まず、PPP、PFIに限らず、品質、サービス水準を維持、継続する、基本的には、我々は事業を行う際には、当然その品質を担保するという、そういう観点から人件費に間接的に着目するものだと思ってございます。そういうふうに人件費を適切に確保することは重要なものだというふうに考えてございます。一方、今御指摘のように、人件費を適正に確保したことによって民間企業が期待する利益を得ることができないような事業については、そもそも民間事業者からの参加者が得られずにPFI事業として成立ができない、そういうものであろうというふうに考えてございます。
 このため、公共施設の管理者等においては、単に決まった仕様書を淡々と発注するというものではなくて、PFI事業としての実施を検討するに当たりまして、導入の可能性調査ですとか、民間事業者の意見を聞くマーケットサウンディング、こういうものを実際によく行われてございますが、こういうものを通じて民間事業者の創意工夫を発揮しやすいような契約内容とするような工夫をするなど、管理者、事業者双方にとって効果の高い事業設定を図るように努力しておりますし、そういうことが重要であるというふうに考えてございます。

○田村智子君 これ、今のでは保障にはならないし、そもそも検証のしようがないんですよ。
 衆議院では、西尾市のPFI、これ議会承認の資料が施工体制も含めて黒塗りだったということを我が党塩川議員は指摘しましたが、これ何も西尾市だけの例じゃないと思うんですね。参議院会館も、これ今運営もPFI事業になっているわけですけれども、SPCの平均利益率二・四%と計算されていて、これは過剰ではないんだという説明を受けました。
 しかし、SPC構成する企業グループは業務委託先でもあるんですよ。委託業務での利益というのは当然二・四%には含まれていません。しかも、委託契約の人件費単価はどうなっているんですかと、これ参議院会館のことですから、私、議院運営委員会やっていますので、議院運営委員会の承認なんですよ。では、その単価どうなっているんですかとお聞きをしたんですが、経営上のノウハウに関わるのでお答えできないということなんですよ。SPCの先の契約が適正かどうか、これは検証することができないですね。国会議員も検証できないんですよ、自分たちがいる議員会館について。これはもうどうしようもないということですか。

○政府参考人(石崎和志君) PFI事業に関しましては、当然ながら、PFI法上、公共施設等の管理者である国ですとか発注者としての公共団体が、公共サービスを提供する最終的な責任者としての責務を負った上で民間事業者に事業の運営を行わせるものです。このため、当然ながら、管理者が最終的な責任を行うという観点から、選定事業者ではない下請企業等による維持管理、運営に関して、各種契約書の写しを提出させることを契約に基づき請求することは通常可能だというふうに考えてございます。また、事業開始後におきましても、管理者により適切なモニタリングを実施することや改正PFI法に基づく報告の徴収、助言等の活用などにより、PFI事業の適正な実施を確保することも考えられます。
 しかしながら、その契約の中身をその管理者以外のどこまでの間に開示するかということについては、各契約による契約内容の秘密保持義務規定、その他一定のルール等によって制限は一定掛かるものと考えてございます。そのため、そのような品質の確保については、事業者によるサービスの質から人件費も含め、適正な契約になっているかについては管理者が自らの責任で担保していくという性質のものであるというふうに考えてございます。

○田村智子君 これは、契約上、そういう経営上の言わば企業秘密に関わる部分だと言われちゃうんですね、経営のノウハウに関わる部分だから。これ、明かせないというような契約になっていれば、これ情報開示請求掛けてもなかなか開示していただけない、これはもう私たちが何度も経験していることなんですよね。
 やはり、これはチェックできる保障をつくっていくことが必要だと思うんですよ。例えば、帳簿類の開示の義務などをSPCに義務付けるとか、そういう透明性確保を求めていくような施策、これ何か検討しているんでしょうか。

○政府参考人(石崎和志君) あくまで、基本的には、やっぱりその企業のノウハウをどこまで出すのか、それは結局それをどうやって活用するのかともバランスを取らざるを得ない部分だと思ってございます。
 そのために、当然ながら、事業の透明性、これを確保することは、例えばそれを実際に使われる住民の方々ですとか、そういう方の理解を得る上でも非常に重要なポイントだと考えてございますが、このPFIに限って特段のその透明性の確保、そこについては現在規定している規定以上のものはございません。

○田村智子君 いや、PFI事業だって公と民でしょう。だから、それは透明性の確保のための手だてやらなかったら、大規模に促進する上で、そのことによってワーキングプアが増えちゃいましたということになりかねないんですよ。安倍政権が賃上げ賃上げってどれだけ言ったって、このPFI促進したことで足下で低賃金労働が生まれる、こうならない保証がないということなんですよね。
 更に進みます。
 イギリスは、PF2を二〇一二年に導入をして、透明性の向上、これを図るわけですね。政府による監督の強化、また、低賃金になりやすかったり、あるいは逆にコスト高になりやすいような清掃業務とかケータリングなどは、そのPFIを受注したSPC、特定目的会社の業務の外に置くと、様々な工夫をやっているわけですよ。また、PFIに事業を誘導するようなPFIクレジット、つまり、PFIでやったら補助金出しますよというどこかで聞いたようなことですけれども、これも廃止したんですよ。これがイギリスなんですよ。こうすると、結局、特定目的会社の利益幅が縮減することにもなって、これがPFI件数、イギリスで減少につながっていったんじゃないかという指摘もあるわけです。日本は促進する、だから、逆の方向に進むわけです。
 法案では、上下水道事業をコンセッション事業に移行した場合、その自治体に限って財政的支援をする仕組みが盛り込まれています。
 上下水道の施設のために、全国の自治体は財政投融資で資金調達をしています。コンセッション事業に移行する際には、資金運用部にこれまで借りていた分を一旦全部償還する必要があるわけですね。そうすると、長期にわたって償還したときに生じる利息分、国に入る分の利息分が減っちゃう、この分を補償金として国が全額免除あるいは半額、半分を免除するという仕組みだというんですけれども、これ、来年度までにコンセッション事業に移行する条例作った自治体だけ全額免除と、こういう仕組みですよ。
 上下水道は確かに、自治体の財政負担は大きな問題になっています。私もかつて、ある自治体の議員団と一緒に下水道施設の工事の際の資金調達、これ、高利息のときに資金調達したと、だから今の利息での借換えを認めてほしいというささやかな要請行動に参加をしました。でも、これもゼロ回答なんですよ。先ほど被災地でもゼロ回答という話がありましたけれども、多くの自治体が、せめて高利になっている利息分だけでも何とかならないのか、共通する要望を持っているんです。
 そのときに、ごく一部の、コンセッションで上下水道をやったらというこの条件付でお金出すと、支援すると。政府は官と民のイコールフッティングというふうに言いますけれども、これはPFIによって民間に上下水道を委ねれば財政支援するというやり方ですから、これは民への優遇ということになるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(梶山弘志君) 今般のPFI法改正において、今後の横展開の呼び水となる上下水道事業のコンセッション事業に先駆的に取り組む地方公共団体を後押しするために、上下水道事業に関し、地方公共団体に対して貸し付けられた地方債の繰上償還に係る補償金を免除する措置を盛り込んでいるところでありますが、これらによりまして先行案件の事業化を進め、それらを周知することを通じてコンセッションを現実的な選択肢の一つとして認識していただくことで数多くの地方公共団体の水道事業等の基盤強化に資するものとして適切な措置であると考えておりますが、これはあくまでも先行事例をつくるためにということで、限られた数の中で限られた金額の中で了承を得たものであるということであります。

○田村智子君 それは自治体の後押しと言えるのかなと非常に疑問なんですね。やっぱり、来年度までと期限決めて、財政支援のあめ玉ぶら下げて、優先実施の検討を自治体にこれお願い、お願いといいましょうか、つまり、ちゃんと市民への理解を得られるのかどうかも分からないですよ、来年度までなっちゃえば。とにかく検討して早く条例作れと。これは私、後押しと言えないと思いますよ。大規模PFI事業に誘導し、そのことによって利益を得る企業に対するまさに後押しではないのかと指摘せざるを得ません。
 浜松市、四月十日に浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書、これ公表しています。内閣府の補助金を受けての調査なんですけれども、既に今年度から実施している下水道コンセッション事業に多くの批判や懸念が示されたことから、この下水道の事業とはかなり異なる内容が盛り込まれています。市が水道事業会計の管理やモニタリングを行うためにモニタリングのノウハウを取得できるようにする、そのためにSPCに二十五年間、つまり全事業期間にわたって恒常的に五人の職員を派遣すると、こうなっているんですね。
 これ私、大変疑問に思いました。二十五年間同じ人が行っているわけではなくて、二十五年間にわたって職員を派遣し、派遣された人が何年間かのそのノウハウを学んで、モニタリングのノウハウを学んで市に戻ると。そうすると、モニタリングのノウハウを学んだ企業を監督する、監視するという仕事なんですよ。これって癒着は生まれないんだろうかと。場合によっては自分の上司に対して物を言わなきゃいけない、その企業の中では上司だった人に対して監督、監視をしなきゃいけなくなるという場合だって生まれてくるわけですよね。
 癒着、モニタリングが甘くなる、こういう懸念については大臣はどう思われますか。

○国務大臣(梶山弘志君) モニタリングに関しましては、次回の例えば事業の終了時に更に契約をどうするかということのときに、しっかりとそのノウハウを把握した者がいなければ次に続かないということもありましてこういう取組をされているんだと思いますけれども、しっかりと自分の使命をわきまえた上で。ただ、二十五年間一緒ということではありませんから、この市の職員がこのコンセッションをやっている間にも、その養成、この水道事業に関わるノウハウというものをしっかり身に付けるための派遣ということですので、そうならないような手だても含めてしっかりと対応してまいりたいと思っております。

○田村智子君 これ、市は、そのモニタリングの言わば何か講習というか、モニタリングやるために五人派遣ですけど、それ以外にも、事業を継承するために三人派遣するとか、何というか、何でそんなことまでしなくちゃいけないのかと。そもそも上下水道事業は自治体にこそノウハウがあるわけで、それを民間に業務を委ねることがバリュー・フォー・マネーにつながるのかは本当に疑問ですよ。公的関与を残すために複雑な仕組みを様々に残すということにもなるわけです。
 浜松市の第一期二十五年間の上水道コンセッション事業によって見込まれるバリュー・フォー・マネー、これ、管路、水道の管路ですね、これなしの場合で一%から二%、管路ありのコンセッションでも三%から四%程度だというのが導入可能性調査の報告なんです。コンセッションが有利という結論を得たという記載はありますけれども、同時に様々な課題も明らかになったとしていて、最終的な結論を出していないという報告書になっています。
 アドバイザー会議の中では、この程度のバリュー・フォー・マネーならコンセッションにする意味はないという発言も出たとお聞きをしています。確かにこの程度だったら、場合によってはマイナス、逆にコスト高になりかねないというふうに私も思います。大臣、いかが思われますか。

○国務大臣(梶山弘志君) 先ほど来、質問の中にもあるんですけれども、資産の適正評価の管理、そして手続というものをしっかりやるということが、これらの数値も精緻なものになるということでありますけれども、なかなかそこができていないということもございます。
 バリュー・フォー・マネーに関しましては、選択するときに、このシステムを選択するかどうかのときの判断の指数ということでありまして、これもやはりその契約の途中とか契約終了後にしっかり検証をして次回の契約に生かせるような数値にしていかなければなりませんし、さらにまた精緻なバリュー・フォー・マネーの出し方というものも考えていかなければならないと思っております。
 現時点では少し課題はありますけれども、こういった中でしっかりその判断を自治体がしていくということだと思っております。

○田村智子君 何か、もう何のためにこの水道のコンセッション事業を進めるのか、本当分からないですよ。検証といいますけれども、一旦これで二十五年間というふうに民間に委ねたらどうなるのかということなんですよね。
 これ、最後で質問しようと思ったのを先に質問しますけれども、これは例えば浜松市の報告書ですけれども、第一期の二十五年間が終了した後、再公営化についても検討をするんだと。この結論として、経営計画や修繕計画は市に戻るというふうにするけれども、現在市が行っている運営方法での直営への移行は不可能であるため、直営後においてもいかに民間事業者との連携を図っていくかが重要なポイントとなると、こういうふうに書かざるを得ないんですよ。それはそうですね、二十五年間も民間に業務を委ねて、自治体はモニタリングしかやらなくなっちゃうんですもん。これは、現在ある水道事業の自治体のノウハウが大きく損なわれてしまう。結局、再公営化となったときにもう民間に頼らざるを得ない。そうしたら、民間の側の発言権強くなりますよ。民間の側の交渉力強くなりますよ。言いなりになってしまう危険性だってありますよ。これ、何のために水道のコンセッションをやらなきゃいけないのかと。それが本当に国民の利益になるのかということが改めて問われるような報告書になっていると思いますが、いかがですか。

○国務大臣(梶山弘志君) 将来の財政リスクも含めて、これから管路の更新の需要がたくさん出てくるわけであります。これは想定されていることでありまして、一般のインフラにつきましても、五十年を超えた橋梁であるとかトンネルであるとか、そういったもののメンテナンス費用をどうするかという課題が出てくるわけでありますけれども、さらにその資産の評価もしっかりできているものとできていないものがある、この管路も、ということに対してまずは資産の適正評価をしていく、そしてその上で将来の財政負担、財政リスクについてどうしていくかということをしっかりと考えていかなければならない、その中での選択、自治体の選択になると思っております。

○田村智子君 もう命に関わる事業だって、もう与野党を問わずそういう質問だと思うんですけれども、そういうところにこそ、その管路のメンテナンスにお金が必要だったらこれは公的なお金使う。あるいは、建設事業だけは民間資金の活用があったとしても、その運用までも民間に委ねるなんというのは、これ本当に大きな誤りだと言わざるを得ません。
 また次に進みますけれども、これ、浜松市の上水道コンセッション、市がSPC、特定目的会社に一定額の出資を検討している、ここも下水道コンセッションとの違いなんです。報告書の中では、なぜ出資するのかと。会社の解散などの重要事項については本市の意向を反映でき、本市水道事業の継続性、持続性の担保の強固になると説明をされています。運営権者が勝手に事業撤退とか重要財産の売却とかができないように、会社法で定める特別決議を拒否できる程度の出資を浜松市は検討しているようなんですね。これは大切なことだと思います。
 一方で、政府の側は、コンセッションに向けてのガイドラインを今年三月二十八日に公表していますけれども、このガイドラインの中でSPCへの自治体の出資、これについてはどう書いてありますか。

○政府参考人(石崎和志君) 運営権のガイドラインにおきましては、運営権者への地方公共団体による出資は、必要性が明確であり、かつ出資以外の方法ではその必要性に明確に応えることができない場合を除いて行わないこととされており、出資を認める場合では、過大な株主権限を要求するような条件を付さないものとされてございます。これは、明確な必要性がないにもかかわらず出資を行い責任関係を不明確にしたり、一部の出資により不公正な要求をすることを防ぐ趣旨でございます。

○田村智子君 これ、だから原則行わないなんですよ。自治体の側は出資を原則行わない、行う場合にも、極めて発言権といいますか議決権がないような、そういう状態ですよというようなことをガイドラインに書いているわけですよね。
 これ、お手元資料にもお配りしたので是非皆さんも御覧いただきたいというふうに思うんですけれども、浜松市が検討している条件というのは、市議会での議論や市民からの意見を踏まえたものだというふうに思われるんです。これらはフランスなどの国際的な動向とも合致しています。歴史的に水ビジネスによって上水道を整備してきたフランスについては浜松市も独自に調査を行っているようですけれども、内閣府も「フランス・英国の水道分野における官民連携制度と事例の最新動向について」という委託調査を行っていて、二〇一六年八月に報告書が公表されています。
 これもお手元資料の四ページ目、五ページ目がその資料に当たるんですけれども、この表書きの次のページの上のところに書いてあるんですけれども、近年、地方公共団体と民間事業者が折半出資して設立する組織を用いた手法が第三の手法として注目されていると。この目的は、自治体によるより良いコントロール、事業の利益を配当として公共と民間が享受可能、共同株主の民間企業からの運営ノウハウの吸収と。こういう、なぜ地方公共団体が折半出資するのかという目的も明確に述べられています。
 さきに挙げたイギリスのPF2も、やはり同様に、SPCに公共が出資するということになっているんですよ。これは、主に配当利益や値上がりの利益、これが民間に独占されてはならないと、こういう目的からの出資、公の側が出資を行うというふうになっているんです。
 政府のガイドラインというのは、内閣府自身がフランスのことをこうやって調べているんですから、イギリスの動向やフランスの動向、これを反映することができたはずなのに、なぜこんなふうに公的な出資について行わない、国際的な動向と逆の方のガイドラインを出したんですか。

○政府参考人(石崎和志君) これ、先ほど申しましたように、あくまで必要性が、明確な必要性がないにもかかわらず出資を行って責任関係を不明確にしたり、一部の出資による不公正な要求を防ぐ趣旨でございまして、必要性が明確な出資を否定するものでは全くございません。

○田村智子君 いや、公共事業ですから必要性はあると思いますよ、様々な公共事業をコンセッションにするんだから。そのときに原則行わないなんてガイドライン出したら、実際は逆の方に取りますよ。極めて明確にその目的が示されなければならないというふうに取られるんじゃないですか。
 それだけじゃないです。ガイドラインは、留意事項の概要の中でSPCの株主の譲渡制限について触れています。これ具体的には、「多様な主体による民間資金の調達を可能とする必要性が高い事業が多いものと考えられ、履行能力の確保を前提として、株式譲渡の制限については、適切な事業実施を図る上で必要最小限とすることが必要」、ちょっと分かりにくく書いてあるんですけれども、つまりは、SPCの株主を、売却して投資の回収を図っていいよと、排除しないよという考え方を示しているわけですよ。
 これ、例えば事業終了後、株式を持っているよりも売却した方が利益が高いと、そう見込まれれば売却する。こういう利益は本来自治体の下に置かれ、それが新たな水道事業だったら水道料金の値下げとかそういうのに反映されなければならないはずなんです。イギリスでは、SPCの株式を資本市場で売却して巨大な売却益が民間に渡ってしまった、これが強い批判を浴びているんです。日本でも同じことは起こり得るんじゃないでしょうか。

○国務大臣(梶山弘志君) 内閣府が定めた運営権のガイドラインにおいては、公共施設等の管理者等が株式の譲渡を承認する条件を契約に明記することが必要であることを示しております。具体的には、第三者への譲渡につきましては、譲渡先が公募時に設定された参加資格を満たす者であること、株式譲渡が事業実施の継続を阻害しないことのいずれの条件も満たす場合に、管理者の承認の下で株式譲渡を行うこととしております。
 このガイドラインの規定の趣旨も踏まえて、実際のコンセッション事業の契約においては、発注者側の承認を得ることなく株式を処分することが禁じられている趣旨の規定が定められているところであります。このため、御懸念のコンセッション事業の継続を阻害するような第三者への株式の譲渡がなされないような配慮がなされているものと認識をしております。

○田村智子君 そもそも、世界の動向が、公の側の出資はこれあっせんすると、それで譲渡益で民間が利益を得るということは規制をするという方向なのに、なぜ日本のガイドラインがそういうものとして出てこないのか非常に不思議だったんですけれども、このコンセッション事業、やっぱりこれ、国民の利益とかPFI事業が世界でどうなっているかと、こういう検証もないままに出された、別の目的で出されたんじゃないかということをますます私は今疑っているんですね。
 実は、二〇一四年五月十九日、第五回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議に竹中平蔵氏が提案を行っています。「コンセッション制度の利活用を通じた成長戦略の加速」という資料を配付しているんですね。
 この中で何て書かれているか。建設業等インフラ関連企業、地域の企業を含む、や投資家にとって大きな新規のビジネスチャンスとなる成長戦略の柱の一つであり、インフラ輸出にもつなげることができるので、このコンセッション制度を進めましょうよという提案なんです。
 更に見てみますと、それを大規模に前倒しで進めることが必要だ、アクションプランの前倒しが必要だと。そのためには、具体的な目標を持つことが必要だと。数値目標の内容は、少なくとも、国土交通省、空港六件、国土交通省、下水道六件、国土交通省、有料道路一件、厚生労働省、水道六件とし、これら四分野の目標のうち地方公共団体に相当する十五件について、地方制度を所管する総務省もその目標の達成に協力すると。
 こんな具体的な提案で、実はこれ、そのまま政府の目標じゃないですか。空港六件、下水道六件、有料道路一件、水道六件。そうですよね、竹中さんが提案して、これ翌年ですか、これ政府の目標になっているんですよ。
 で、竹中さんの中には、PFI事業がどうかということなんか、提案の中ではほとんど語られていないですよ。こう言ってますよね。私、香港から帰ってきた、で、仙台空港のコンセッションに関する説明会に五月に行った、百四十社集まった、今、海外の投資家はこのコンセッションに大変な関心があるんだ、こういう話から始まっているんですよ。何のことはない、国民の利益のためじゃなくて投資家の利益のために、新たなビジネスチャンスとして竹中さんが提案したとおりのことを盛り込んだPFIの促進の計画、これが出てきた。そうじゃないんですか、大臣、いかがですか。

○国務大臣(梶山弘志君) あくまでも個人の、個人というか委員としての意見ということであります。それに基づいて、いろんな意見がほかにもございます、その中で政府の方針を決めていくということであります。

○田村智子君 いや、その提案がそのまま数値目標になっているの、異常だと思いませんか。竹中さんの提案で、数値目標さえ政府の目標になったんですよ。こんな、投資家のために、まさに公的な命の事業である水道事業を切り売りするような、こんなことは絶対認められない、このことを指摘して、質問を終わります。


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