国会会議録

国会会議録
学問研究への圧力指摘 田村智子氏 国は毅然とした態度を


(写真)質問する田村智子議員=22日、参院内閣文教連合審査会

 日本共産党の田村智子議員は22日の参院内閣・文教連合審査会で、科学研究費助成事業(科研費)をめぐって特定の研究や研究者を攻撃する与党議員の質問がインターネット上で拡散している問題を取り上げ、学問研究の自由への介入につながりかねないと指摘しました。

 

自民党の杉田水脈議員は2月26日の衆院予算委員会分科会で、個別の研究者の名前をあげ、その研究や講演活動に「反日」と非難し、科研費が支払われることを問題視する質問を行いました。

 田村氏は、特定の思想信条を物差しに、学問研究への介入を求める杉田氏の質問の問題点を指摘。「天皇機関説事件」など戦前の学問研究への弾圧の教訓から、日本国憲法には学問の自由や基本的人権が明記されていることをあげ、政府の見解をただしました。

 林芳正文科相は「科研費の審査は、専門分野の近い十分な評価能力を有する複数名の研究者で構成される審査組織が、個々の研究の学術的価値を厳正に評価し、選定している」と政府の立場を説明。田村氏は「学問研究への圧力・介入には毅然(きぜん)とした態度を文科省にとってもらいたい」と強調しました。

2018年5月28日(月)しんぶん赤旗より

【5月22日 参議院内閣委員会・文教科学委員会連合審査会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 私も、まず、昨日愛媛県が本院予算委員会に提出をしてくださった新たな文書、このことについてお聞きいたします。
 その中の一つ、平成二十七年、二〇一五年三月三日、愛媛県と加計学園の打合せを報告する文書、この中に、読み上げますね。加計学園からの報告等は、次のとおり。二月二十五日に理事長が首相と面談(十五分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学部教育を目指すことなどを説明。首相からはそういう新しい獣医大学の考えはいいねとのコメントありと。
 また、二〇一五年四月二日の官邸訪問の出張報告書には、官邸を訪ねる前に、県、市、加計学園が打合せをやった、そのことも書かれていて、その中で渡邉事務局長、これは加計学園の事務局長のことですね、その主な発言として、柳瀬秘書官に対しては、内閣府藤原次長を紹介いただいたことに対してお礼を述べたいと記されているわけです。
 この文書の中には当時官房副長官だった加藤勝信現厚労大臣の名前も出てきまして、加計理事長との面会、この記録が出てくる、あっ、加計学園との面会の。今朝、報道によりますと、加藤大臣は加計学園と会ったことあるというふうにお認めにもなっていますので、本当に信憑性の高い文書だと私は受け止めています。
 梶山大臣、これだけの資料が愛媛県から示されてもなお、加計学園の獣医学部新設の経緯に総理も官邸も関わっていないと、こう言うことができるんでしょうか。柳瀬氏や藤原氏からの間接話法で梶山大臣がうその答弁をさせられている可能性が高いんですよ。これ、何とも思わないのか、御答弁ください。

○国務大臣(梶山弘志君) まず、今委員から御指摘がありました加藤大臣は、以前に会ったことがあると。ただ、事務局長という、加計さんの事務局長が、岡山県ということで地元の事務所に会いに来たということを言っているかと思います。そのほかにつきましては、総理は、今朝の記者会見のとおりでありまして、お会いしていないということであります。そして、藤原さん、また柳瀬さんにつきましても先ほど述べたとおりであります。

○田村智子君 これ、明確に会っていないというふうに否定されているのは、政府関係者の中では恐らく安倍総理だけじゃないですか。藤原さんは、書いてあるならそうかもしれないとおっしゃっている。柳瀬さんも加計学園と会ったことを認めている。安倍総理だけなんですよ。どっちが信憑性あるかって、これもう明らかじゃないですか。もう最初から総理と官邸が主導した加計ありきだったんだと、こういうことが示されている。
 先ほど蓮舫議員の質問にも一生懸命梶山大臣お答えいただいたんですけれども、これ、与党の皆さんは、当時のことを直接知りようもない梶山大臣にいつまで答弁の責任を押し付けるつもりですか。おかしいですよ。藤原氏が柳瀬氏とどういう話をしたのか、加計学園との協議、岡山理科大を訪問し、加計学園の車で今治市の獣医学部建設予定地を訪問した経緯、これら全て明らかにすることはこれ喫緊の課題だと言わざるを得ないんです。
 これ、改めて委員長にも求めたいと思います。予算委員会で徹底審議することは当然ですけれども、内閣委員会及び文科委員会でも集中審議が必要だと思いますし、その場に藤原豊氏の出席は何が何でもこれ求めなければなりません。このことの御協議をお願いいたします。

○委員長(柘植芳文君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。

○田村智子君 それでは、是非集中審議で続きはやりたいと思いますので、まず、法案に関連してということで質問したいと思います。
 地域の大学振興と言いながら、この法案ではごく一部の大学への支援を行うというもので、しかも、内閣総理大臣が認定した地方公共団体の計画、そこに協力する大学、こういう構図になるわけですね。
 このように国策に言わば沿うかどうかで運営費交付金や私学助成の配分をその一部であっても決めると、これは私は本来あってはならないことだというふうに考えます。こうしたやり方で、言わばお金で勧誘して、誘導して政府が大学自治や学問研究の自由に介入することがないのかどうか、本当に国会のチェック機能が求められていると思うんです。
 ところが、今、与党の議員が学問研究への介入を文科省に求めるという事態が起きていて、これは看過できませんので、まず質問いたします。
 二月二十六日、衆議院予算委員会分科会で、自民党杉田水脈議員が科研費の問題、科学研究費助成事業について取り上げています。主に日本のアジア諸国への植民地支配に関わる研究活動に対して、個別の研究者の名前を挙げて、その研究や講演活動を反日だと非難し、科研費が支払われていることを問題視する、こういう質問を繰り広げているわけです。
 発言の中では、こういったことを世界中に日本の大学教授という肩書を使って発言するような人のところに二千万円以上のお金が研究費として入っているという、これは私は非常にゆゆしき問題だと思うとなど、自らの思想、信条を物差しとして、正しくない結果を導くような研究は問題だ、こういう質問になっているわけですね。
 林文科大臣に伺います。
 科研費というのは、言うまでもなく研究者の自由な発想に基づく研究に対する助成であって、人文学、社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる独創的、先駆的な学術研究を対象とする競争的研究費です。科研費は、研究課題、目的の学術的価値の観点、研究計画が研究課題や目的から適切かどうかによって採択されており、杉田議員の言う反日的であろうがなかろうが、この基準で適切なら採択されるし、適切でなければ採択されない、そういう仕組みだと理解しますが、いかがですか。

○国務大臣(林芳正君) 科研費でございますが、これは、我が国の学術研究の振興そのものを目的として、研究者の自由な発想に基づく幅広い分野にわたる学術研究を支援するものでございます。
 科研費の審査は、専門分野の近い十分な評価能力を有する複数名の研究者によって構成される審査組織が個々の研究の学術的価値を厳正に評価し、採択課題を選定しておるところでございます。

○田村智子君 これも念のためにお聞きいたしますが、杉田議員は、研究費を使って韓国の団体と一緒になって反日プロパガンダをやっているというふうに述べているのですが、研究費の執行は研究者が所属する大学などの研究機関が行うものであって、研究目的以外の支出はできない、そして、抽出ではあるけれども実地検査も行われていて、正当な支出を担保する仕組みがあるのではありませんか、文科大臣。
○国務大臣(林芳正君) 科研費は研究者個人に交付をされるものでございますが、交付をされた科研費の執行管理につきましては、研究者に代わって、今お話がありましたように所属研究機関が責任を持って行うこととしております。また、研究機関における科研費の執行に当たっては、関係法令や各研究機関の会計ルートに基づいて適切に管理するとともに、研究機関には領収書等の会計書類の保管や内部監査の実施も義務付けております。さらに、研究機関に対しては、毎年文科省及び日本学術振興会が数十機関を対象に実地検査を行うことで科研費の執行管理の状況を確認しておるところでございます。
 以上のような取組を通じて科研費の執行は適正に行われております。今後とも、研究機関における適切な管理の徹底とともに、実地検査による指導、助言等を通じて科研費の一層の適切な執行に努めてまいりたいと思っております。

○田村智子君 今の答弁に明らかなんですよ。採択も適切であり、その支出というのも適切であると。
 この二月二十六日の国会質問はインターネット上で拡散をされておりまして、個別の研究者への反日というレッテル貼りや、科研費の不正使用があるかのような無責任な情報拡散をあおる結果となっています。これらは、学問研究への弾圧として歴史に記録されている天皇機関説事件を想起させるような動きなんですよ。
 一九三五年、貴族院本会議で、元軍人の菊池武夫議員が、明治憲法の通説的解釈であった天皇機関説を国体を破壊するというふうに攻撃を行う質問を行いました。これに二人の議員が同調いたしました。当時、松田文部大臣は、私は天皇機関説というものには無論反対だとしながら、そうした点は学者の議論に任せておくことが相当ではないかという、こういう答弁を行っています。しかし、攻撃は、議会も使い新聞も使い執拗に行われ続け、最終的に美濃部達吉氏の著書三冊が発行禁止の処分となりました。また、美濃部氏は、不起訴処分となりましたが、不敬罪で取調べを受け、ついには右翼の銃弾を受けるに至ってしまったわけです。
 このような思想弾圧がやがて政党政治を破壊し、軍部独裁への道を開いた、このことをやっぱりいま一度私たちは直視すべきだというふうに思いますよ。日本国憲法に学問の自由や基本的人権が明記されたのはなぜなのか、政府も私たち国会議員も憲法を尊重し擁護する義務を負っているのはなぜなのか、今こそこれは問われなければならないと思います。
 国会議員が、国会において特定の研究や研究者を攻撃し、科研費の対象であることを問題視するということは絶対に許してはなりません。過去に適切に選定が行われていると、林文科大臣、そう御答弁いただきましたが、ここにとどめずに、やっぱり学問の自由や研究の多様性を保障するという立場から、こうした質問に対しては良識を持っていさめると、こういう姿勢も必要だと思いますが、文科大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 私、そのときも今お触れいただいたような答弁はいたしたつもりでございますが、通常、国会の審議で質問の内容について答弁側が何か申し上げるということはなかなか難しいんではないかと。国会議員としての責任を持った発言、それぞれがそれぞれの考え方に基づいておやりになっているということであろうかと、こういうふうに思いますので、私どもとしては、政府としてしっかりと、我々としてやっておること、我々の立場を御答弁申し上げるということではないかと思っております。

○田村智子君 こうした圧力、介入に対しては、やっぱり毅然とした態度を文科省、文科大臣には取っていただきたい、改めてこのことを申し上げます。
 法案の中身についてお聞きします。
 一つは、地域の大学の疲弊の要因についてです。これは本会議でも質問したんですけど、林文科大臣、正面からお答えいただけなかったんですね。
 五月十七日、毎日新聞、全八十六国立大学へのアンケート結果を特集記事で報道しています。その中で宮崎大学副学長の言葉を紹介しているんですけれども、不渡りを出す寸前の企業のようだと、それぐらい大変な状況だという声を紹介されているんです。これは、二〇〇三年度に国立大学の法人化が行われましたが、これと同時に一%ずつ運営費交付金が削減をされ続け、これ二〇〇三年度の一兆二千四百五十億円から、これ今の予算見ると一千四百億円、一割以上の削減になっているんですね。これ、もう人件費さえまともに出せないという状況が大学全体に広がっていて、ある大学の教員は、法人化前、週四こまだった講義が今では週七こまと二倍ぐらいになってしまって、教育の準備が大変で研究に充てる時間がないと、こういう悲鳴の声を上げている。これ、ほかの大学でもいっぱいこの声聞きます。
 文科省は競争的資金の獲得というのを促すんですけれども、この競争的資金というのは、申請書を書く、報告書も作成する、こういう事務作業ばかりが増えて、むしろ研究に専念する時間が削られていると、こういう指摘もやられているわけです。また、競争的資金は期限付ですから、これは非正規の研究者ばかりが増えてしまって、今や若手研究者の育成は危機的状況だといろんな方々が指摘をされています。
 基盤的経費への予算を長期にわたって減らし競争的資金を増額してきた、それこそが地域の大学の疲弊をもたらしたと、この認識は林大臣にはありませんか。

○国務大臣(林芳正君) 国立大学法人への国費による支援でございますが、教育研究の基盤的な経費である運営交付金、それから教育研究活動の革新や高度化、拠点化などを図る競争的資金等によって行ってきたところでございます。
 委員御指摘のとおり、国立大学法人運営費交付金等については、法人化時の平成十六年度と平成二十八年度の予算額を比較すると千四百七十億円減少しております。平成二十九年度に、法人化以降初となる前年度比増、二十五億円増の一兆九百七十一億円になっておりまして、平成三十年度予算では、この増えました前年度同額を何とか確保しておる状況でございます。
 また、競争的資金等については、文部科学省としては、科研費助成事業、いわゆる科研費として二千二百八十六億円、これは前年度二億円増でございますが、それから地(知)の拠点大学による地方創生推進事業として二十一億円、こういうものを確保することによって各大学の教育研究活動の革新や高度化、拠点化などを図ってきております。
 厳しい情勢、財政状況の中でございますが、今委員から御指摘があったような国立大学の教育研究環境について様々な御意見があることは認識をしております。文部科学省としては、やはり頑張る地方国立大学の活性化が図られるよう、今後とも、各大学の強み、特色を生かしながら、多様な財務基盤を確保しつつ、基盤的経費と競争的資金とのバランスの良い確保に努めてまいりたいと思っております。

○田村智子君 基盤的経費は、削った状態で維持しても駄目なんですよ。抜本的な増額が必要です。
 この法案によって、内閣総理大臣に認定された地方公共団体の計画に協力する大学には国立大学運営費交付金若しくは私学助成金の中でその計画に対する補助が出される、こういう仕組みになるわけですけれども、では、この法案に伴って二十五億円分、これを割り当てるというんですけれども、この二十五億円分は別枠として運営費交付金や私学助成金の増額、これ要求するということになるんでしょうか、文科大臣。

○国務大臣(林芳正君) これは、総枠の中で二十五億円ということでございます。

○田村智子君 総枠で。じゃ、来年度、これが上乗せになるような総枠の増額分は要求されるんですか。

○国務大臣(林芳正君) まず、三十年度はもう既に進行中でございますので、今からこの法案を通していただけますとこの対象になる大学が決まってまいりますので、この文科省計上分二十五億円は、内閣府交付金の対象となる大学数や設置主体によって各大学への配分額、それから国立大学の運営費交付金や私立大学等改革総合支援事業の対象額が決まるということで、現時点でまだ決まっているものではないということでございます。
 文科省として、地域の中核的産業の振興や専門人材育成などを行う優れた取組へ発展させるために、多くの大学がそれぞれの強みや特色を生かして参加をし、各地域の取組の推進に貢献したいと思っておりますので、今年の予算要求に当たっても、そういうことも加味しながらしっかりと要求をしてまいりたいと思っております。

○田村智子君 これ、もう予算増なしの振興策になりかねないんですよ。これ、補助を受けた大学も大学振興につながるのか疑問です。
 十七日の内閣委員会では、この法案の事例になるということで、自民党議員から高知大学で新設された地域協働学部が紹介されていました。私も高知大学の教員にお話をお聞きしましたが、新学部の設置に伴う教員の増員がなく、他学部からの配置となり、教員を減らされた人文学部では、基本的な講義であるマクロ経済学をミクロ経済学専門の教員が代替せざるを得ないという事態になっているわけです。
 これ、五年から十年という期限付の補助金ですから、定員増をやるかどうか、非常にこれ懐疑的なんです。しかも、新しい事業となれば事務的な仕事も求められます。こういう懸念を本当にどうするのか、大学の振興にふさわしい施策を何か検討しているのか、最後、林文科大臣にお聞きして、終わりたいと思います。

○委員長(柘植芳文君) 時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

○国務大臣(林芳正君) 首長のリーダーシップの下で、それぞれの大学が特色を出しつつ、産官学連携によって地域の中核的産業の振興や専門人材を行う優れた取組について五年間、原則ですね、重点的に支援をするということでございまして、この各地域が作る計画の審査に際して、支援期間終了後における産官学の費用分担が明確で現実的か否か等を確認をしようと、こういうふうに考えておりまして、参画する大学における教員の雇用環境の整備も見据えた計画が認定されると、こういうふうに考えておるところでございます。

○田村智子君 終わります。

 


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