国会会議録

国会会議録
首相認定 公平さ疑念 田村智氏 修学就業促進法案 参院本会議

 


(写真)田村智子議員

 

 

 

日本共産党の田村智子議員は16日の参院本会議で、自治体の「大学振興・若者雇用創出」事業に巨額の交付金を出す「地域若者修学就業促進法案」について、公平性に疑念があると指摘しました。

 田村氏は、首相が認定する地方自治体の計画にのみ、1事業あたり年間10億円規模で5~10年間支援する仕組みに言及。「とりわけ安倍首相のもとで、公正な交付決定が担保されるのか」として、疑念払拭(ふっしょく)には加計学園疑惑の真相究明が不可欠だと主張しました。

 また、内閣府が法案説明で富山、山口両県の産官学連携の事例を示すなど、「公募といいながら、すでに特定の地方公共団体に内定を出していることはないか」と追及。同府が「戦略的イノベーション創造プログラム」全12プロジェクトの責任者を内定しながら公募を行ったとの報道も示し、「中立性や公平性は絶対条件だ」と指摘しました。梶山弘志地方創生担当相は公平性担保の保証は示せませんでした。

2018年5月18日(金)しんぶん赤旗より

 

【5月16日 本会議議事録】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律案について質問いたします。
 本法案は、地方から東京圏への転入超過への対策だとして、地方公共団体が計画する地域における大学振興・若者雇用創出の事業に交付金を交付する仕組みをつくるものです。
 地方の大学や、経済、産業の振興を国が支援することは大切です。しかし、本法案は、全ての地方公共団体を対象とするのではなく、内閣総理大臣が認定した事業計画にのみ多額の交付金を交付するものです。既に本年度予算には七十億円が算定され、おおむね十件程度、交付期間は五年との制度設計が示されており、認定されれば巨額の交付金を得られることになります。
 この仕組みそのものが問題であり、とりわけ安倍内閣の下で公正な交付決定が担保されるのか、政治家や大臣と親しい関係にある者が優遇されることはないのか、大きな疑念を持たざるを得ません。こうした疑念を払拭するためには、まず加計学園獣医学部新設問題の真相究明が不可欠だと考えますが、梶山大臣の認識をお聞きします。
 十日の柳瀬元総理秘書官への参考人質疑で、二〇一五年、官邸で三回にわたって加計学園と面会したことが明らかになりました。なぜ総理秘書官が加計学園の獣医学部新設を特出しにして動いたのか、もはや総理の意向があったからとしか説明の付かない事態になっています。
 事実、総理に報告していない、指示も受けていないという柳瀬氏の国会答弁を信用できないという国民は、世論調査で八割近くに上っています。官房長官、この世論をどう受け止めますか。柳瀬元秘書官を始め官邸がどう動いたのか、総理の関わりも含め、全て明らかにすることが急務だと考えますが、官房長官の答弁を求めます。
 法案について、梶山大臣にお聞きします。
 法案によれば、まず内閣総理大臣が地域における大学振興・若者雇用創出の基本指針を作成し、地方公共団体は、この基本指針を踏まえ、その地域の大学や事業者と協力して事業計画を策定し国に提出する、その中から内閣総理大臣が認定した事業計画に交付金を交付することになります。冒頭で述べたとおり、認定されれば巨額の交付金が五年から十年間にわたって特定の地方公共団体に交付されることになります。
 国の基本指針を受けて、大学などとの協議、推進体制の構築など、地方公共団体の計画策定には一定の時間を要すると思われますが、既に本年度予算での執行が見込まれています。内閣府は、法案説明の際に、富山県と富山大学、山口県と山口大学の産官学連携の事例を資料として示しましたが、よもや、公募と言いながら既に内閣府が特定の地方公共団体に内定を出しているということはありませんか。
 内閣府では、戦略的イノベーション創造プログラムにおいて、全十二課題のプロジェクトの責任者を事前に内定しておきながら公募を行っていたことが五月八日の毎日新聞の報道で明らかになりました。内閣府は、補正予算のため短期間での対応となったことを理由にしていますが、中立性や公平性は絶対条件です。
 本法案で示されている認定基準は、国の基本指針に適合しているか、区域の若者の修学及び就業の促進に相当程度寄与すると認められるか、円滑かつ確実に実施される見込みかという三項目しかありません。中立性、公平性をどう担保するのでしょうか。
 また、政府は、地方公共団体が計画を策定する際に首長のリーダーシップを強調していますが、地域住民の合意形成もないままに、大学のキャンパス機能の一部を誘致することをてこにして中心市街地再開発計画などを推し進める動きもあります。こうした住民が望まない大規模開発に大学が巻き込まれることにはならないでしょうか。そうならない保証はどこにありますか。
 以上、梶山大臣の答弁を求めます。
 本法案は、地域における大学の振興を目的の一つとしていますが、そもそも地方大学の疲弊の要因をどう認識しているのでしょうか。
 ノーベル賞を受賞した研究者を始め、多くの大学人が、国立大学運営費交付金を削減し、競争的研究費を拡充するという選択と集中を政府が進めてきたことこそ、地域の大学、特に地方の国立大学や公立大学の研究教育環境の荒廃、疲弊をもたらしたと繰り返し指摘しています。梶山大臣及び林文科大臣は、この指摘をどう認識していますか。
 本法案によって、地方公共団体の計画に協力する大学に対して財政支援を行うことになりますが、その財源として本年度予算で組まれた二十五億円は、国立大学運営費交付金や私学助成の一部を活用するとしています。対象外となった大学への経常経費補助はその分減らされることになるのではありませんか。そうなれば、認定された地域以外の大学の疲弊を一層深刻にするのではありませんか。林文科大臣、お答えください。
 認定された大学と地方公共団体にとっても、長期的な振興につながるか疑問を持たざるを得ません。予算上の単純計算では、一件当たり年間約十億円規模の財政支援となりますが、その期間は五年から十年とされており、その後は地方公共団体や大学は自らの財源で事業を継続しなければなりません。特に大学は、確保した教員や研究者の人件費の保障さえありません。これでは、振興どころか、その先に更に深刻な疲弊や荒廃が起こり得るのではありませんか。梶山大臣の答弁を求めます。
 法案では、若年者の東京への一極集中を是正するため東京二十三区での大学の定員増を認めないこととしていますが、梶山大臣、これで東京一極集中の解消になるのでしょうか。
 安倍政権は、東京を世界で一番ビジネスのしやすい都市として環境を整備するという方針を掲げ、東京都心部での容積率等の規制緩和を進めてきました。都市再生法による特定都市再生緊急整備地域は、全国十三地区のうち五地区、面積では全国四千十一ヘクタールのうち二千七百二十六ヘクタールが東京二十三区内に集中しています。大規模なオフィスビルやマンションの建設が現在進行形で進められているのです。これでは、若年層を中心とした人口流入は更に加速していくでしょう。
 東京一極集中の是正には、政府自らが進めている容積率や高さの制限の緩和の見直しこそ行うべきではありませんか。梶山大臣にお聞きします。
 安倍総理がアベノミクスの効果をいかに喧伝しようとも、人、物、金は大企業と東京に集中し、地方の振興にはつながっていない、このことはもはや明らかです。小手先の施策でアベノミクスの失敗をごまかすことはやめ、真っ当な地域振興策に転換することを求め、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣梶山弘志君登壇、拍手〕
○国務大臣(梶山弘志君) 田村議員にお答えをいたします。
 初めに、獣医学部新設についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区のプロセスは、ワーキンググループや特区諮問会議といった民間有識者が主導する会議を経て決定されるものであります。そのため、仮に個別の案件について誰かが何らかの関与をしようとしても、民間有識者がそのことを知らずしてプロセスは前には進まない仕組みとなっております。
 今回、規制改革プロセスを主導してこられた八田座長からは、さきの参考人質疑においても、柳瀬元秘書官から何の働きかけもない、柳瀬元秘書官の面会が民間有識者の議論に影響を与えたことは一切ないとの答弁がありました。
 このように、さきの参考人質疑も含め、これまでの国会審議のプロセスにおいても、関係大臣を始め民間有識者も、誰一人として国家戦略特区における獣医学部新設につき総理から何らの指示も受けていないことが明らかとなりました。そのことが、今回の行政プロセスを評価するに当たり最も重要なポイントであります。
 しかしながら、国民の皆さんから厳しい目線が向けられていることももっともなことだと思っております。こうした国民の厳しい目線をしっかりと踏まえた上で、お尋ねに対し、事実に基づき丁寧にお話をしてまいります。
 次に、公募前の内定の有無と計画の認定に当たっての中立性、公平性の確保の仕組みについてのお尋ねがありました。
 今回の新たな交付金は、地域における事業実施に十分な期間を確保するため、法案成立後、速やかに基本指針を策定した上で公募を開始したいと考えておりますが、既に内閣府が内定を出しているということはございません。
 また、交付金の交付に先立つ計画の認定に当たっては、自立性、地域の優位性、KPIの妥当性及び実現可能性等の認定基準を設定するとともに、専門性を有する外部の有識者で構成する委員会を開催することとしており、当該委員会において書面評価、現地評価、面接評価といった複層的な評価を行うことにより、中立性、公平性を確保してまいります。
 次に、住民や大学の望まない計画にならないかとの懸念についてお尋ねがありました。
 地域における計画の作成に当たっては、地域を代表する知事等がリーダーシップを発揮するとともに、産官学の各主体が参画する推進会議を設置し、各主体が連携、調整した上で計画の案を作成するほか、事業の実施等に当たり、住民の代表である議会が適切に関与することとしていることから、地域の計画が住民の望まないものになるという御指摘は当たらないものと考えております。
 また、個々の大学が推進会議に参画するかどうかは当該大学が自ら主体的に判断することを前提とした制度となっていることから、地域の計画に大学が巻き込まれるとの御指摘も当たらないと考えております。
 次に、国立大学法人運営費交付金の削減と競争的研究費の拡充による研究教育環境の影響についてお尋ねがありました。
 運営費交付金は、基盤的経費として教育研究を推進する上で必要である一方、競争的に研究を支援する仕組みも重要であると考えており、その両者のバランスよく機能し、地域の大学において質の高い教育研究が推進されることが重要であると認識をしております。
 次に、国の支援終了後における事業継続の困難さ等についてお尋ねがありました。
 地域における若者の修学及び就業を持続可能な形で促進していくためには、将来的には、国の支援に依存することなく地域における取組が自走していくことが必要であり、その趣旨を踏まえて、各地域において計画を策定していただくことが重要であると考えております。
 このため、新たな交付金については、計画期間についておおむね十年程度を目安とし、計画期間の前半は、計画の立ち上げに際して事業の推進を集中的に支援する観点から、国が支援することとし、計画期間の後半は、産業の発展や専門人材の活躍が一定程度見込まれることから、参画主体や地域の金融機関が資金や人材等の資源を拠出し合う仕組みとしております。
 このような新たな交付金による取組と併せて、本法案に盛り込まれた特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制や地域における若者の雇用機会の創出等の施策を進め、東京一極集中の是正に取り組んでまいります。
 最後に、東京一極集中の是正に向けた容積率の緩和等の見直しについてのお尋ねがありました。
 東京一極集中の是正を進めるに当たっては、地方対東京圏という対立の構図ではなく、地方と東京圏がそれぞれの強みを生かし、日本全体が成長していく必要があります。
 東京圏においては、引き続き我が国の成長エンジンとしての役割を果たすとともに、世界をリードする国際都市として発展していくことが重要と考えており、そのための施策として容積率の緩和が有効であるケースもあります。
 このため、委員の東京の容積率等の緩和を見直すべきとの御提案そのものについては困難であると申し上げざるを得ませんが、国としても、今国会に提出している二法案に基づき、きらりと光る地方大学づくりや企業の地方拠点税制の拡充に取り組むなど、様々な施策を総動員して東京一極集中の是正に取り組んでまいります。(拍手)
   〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○国務大臣(菅義偉君) 国家戦略特区における獣医学部の新設についてお尋ねがありました。
 今回のプロセスは、特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定、いずれについても関係大臣間で異論がないことを確認をし、合意の上で関係法令に基づき適正に行われました。
 事業者の選定等のプロセスを主導した民間有識者を代表する八田座長は、今回のプロセスは一点の曇りもない、繰り返し明確に述べております。
 柳瀬元秘書官は先般の参考人質疑において、国会の様々な御質問に対し、知っていることを記憶の限り明らかにしようと、一つ一つ丁寧に誠実に答弁を行ったものと承知をいたしております。
 いずれにしても、政府としては、国民の厳しい目線が向けられていることをしっかりと受け止めながら、今後とも、事実に基づき丁寧な上にも丁寧な説明を心掛け、説明責任を果たしてまいります。(拍手)
   〔国務大臣林芳正君登壇、拍手〕
○国務大臣(林芳正君) 田村議員から二問御質問を頂戴いたしました。
 国立大学運営費交付金の削減と競争的研究費の拡充による研究教育環境の影響についてお尋ねがございました。
 国立大学法人への国費による支援は、教育研究の基盤的経費である運営費交付金と教育研究活動の革新や高度化、拠点化などを図る競争的資金等により行ってきたところでございます。
 平成三十年度予算では、国立大学法人運営費交付金等について対前年度同額の一兆九百七十一億円を計上するとともに、科研費助成事業、科研費について対前年度二億円増の二千二百八十六億円を計上しております。
 文科省としては、今後とも、地方の国公立大学も含め、各大学の強み、特色を生かしながら、頑張る地方大学の活性化が図られるよう、多様な財務基盤を確保しつつ、基盤的経費と競争的資金等のバランスよい確保に努めてまいります。
 次に、交付金の対象となった大学以外への経常経費の補助のお尋ねでありますが、地方創生の実現には地方大学の役割は重要であり、文部科学省としても、地域で活躍する人材の育成など、地方大学の活性化に向けた支援を行うことは重要であると考えております。
 地方大学・地域産業創生事業については、内閣府交付金分の七十億円のほか、当該交付金の対象となる大学においては、文部科学省計上分として、国立大学法人運営費交付金及び私立大学等改革総合支援事業のうち二十五億円分を内閣府交付金と連動して執行することとしており、地域の中核的産業の振興や専門人材育成などの優れた取組を行う大学に対して必要な支援を行うものでございます。
 文科省としては、国立大学法人運営費交付金及び私学助成等を通じて、国立大学及び私立大学が教育研究を展開するために必要な経費を確保しておりまして、今後とも各大学の強みと特色を生かしながら地方大学の活性化が図られるよう努めてまいります。(拍手)
    


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