国会会議録

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政府は日航解雇解決を 田村氏 ILO勧告順守求める 参院内閣委

 


(写真)質問する田村智子議員=17日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は17日の参院内閣委員会で、日本航空が2020年東京五輪・パラリンピックのオフィシャルパートナー(スポンサー)になっていることを指摘し、五輪関連企業に順守が求められる国際労働機関(ILO)条約に基づいて、パイロットと客室乗務員165人の解雇問題を解決するよう政府の役割発揮を求めました。

 田村氏は、政府出資の企業再生支援機構が、日航管財人として人員削減計画を打ち出し、解雇回避の話し合いを求める労働組合のストライキ権投票をうそとどう喝で妨害した事件が、最高裁で不当労働行為として断罪されたと指摘しました。

 茂木敏充経済再生担当相は、「適切な業務運営が大切だと考える」と答えました。

 支援機構は日航経営再建で1800億円もの利益剰余金を得ました。田村氏は、「解雇した労働者も職場に戻していくのが、事業再生の当然の姿だ」と提起。茂木経済再生担当相は、「個別企業の雇用関係だ。日航が適正に対処すべきだ」と答弁しました。

 田村氏は、「人員削減計画をつくらせた(政府出資の)機構が重大だ」と述べ、ILOが支援機構の不当労働行為に重大な関心を示して対話による解決を勧告し、東京五輪大会がILOとパートナーシップを結び、「ILO条約順守が国際的に注目されている」と指摘しました。

 田村氏は、日航で人員不足による深刻な過密労働で、客室乗務員が救急搬送される事態も起きているとして、「今こそ解決させるときだ」と強調しました。

 同委員会で、支援機構が名称変更した地域経済活性化支援機構の事業延長を審議していますが、田村氏は「道理のない解雇問題を終わったことにした事業延長など認められない」と批判しました。

2018年4月18日(水)しんぶん赤旗より

 

【4月17日 内閣委員会議事録より】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 地域経済活性化支援機構が改組される前、企業再生支援機構が最初に支援をした日本航空の問題を私も取り上げます。
 日本航空の経営破綻は、採算を度外視したリゾート開発や空港建設、政治的な圧力も絡んだ不採算ラインの増便によるものです。ところが、経営陣と政府の責任は追及されないままに、機構が三千五百億円を出資して救済しました。しかも、機構は出資の条件として人員削減計画を打ち出し、日本航空は僅か四か月で早期退職、希望退職、さらには年齢や病歴を理由とした整理解雇まで強行して、パイロット八十一名、客室乗務員八十四名が二〇一〇年十二月三十一日をもって整理解雇されました。この大みそかの夜、私も整理解雇に反対する労働組合の緊急集会に駆け付けましたが、新年のカウントダウンが解雇のカウントダウンだと、この言葉は今も忘れることができません。血も涙もない、道理のかけらもない、この整理解雇を終わったことにして機構の事業延長など認めるわけにはいきません。
 JALの解雇については、東京地裁、東京高裁、最高裁のいずれにおいても、機構の管財人による不当労働行為が断罪されています。乗員組合とキャビンクルーユニオンが二〇一〇年十一月、労使交渉のテーブルに機構の管財人を着かせるためにストライキ権確立の投票を行っていた。これに対して機構の管財人は、スト権を確立したら三千五百億円の出資はしないと労働組合の行動に不当に介入をしたわけです。機構はこのような決定を行っておらず、三千五百億円出資しないなんという決定は行っていなかった。うそで恫喝して投票を妨害したということです。これが不当労働行為として明確に断罪をされました。
 茂木大臣はこの判決をどう受け止めておられますか。

○国務大臣(茂木敏充君) 前身の企業再生支援機構の職員等によります発言、これが不当労働行為と認定されたことは承知をいたしておりまして、適切な業務運営が大切だと考えております。

○田村智子君 これ、整理解雇を含む人員削減というのは、機構が日本航空に作らせて、厳格な執行を求めたわけです。だから、労働組合は会社のみならず、管財人である機構との交渉を求めたわけです。自分たちの給料は四〇%カットしてもいいから、首切りではなくワークシェアリングで経営見直しをしてほしい、我が身を削るような提案を持って話合いも求めていた。それを、出資しないぞ、潰れてもいいのかと、うそと恫喝で妨害した、この責任は極めて重いと、この認識、改めてお持ちいただいて、以下の質問に答えていただきたいんですね。
 まず、JALの経営、人員削減の直後からV字回復をして、株が再上場されました。このことによって機構はどれだけの利益を得たことになりますか。

○政府参考人(三井秀範君) 平成二十四年九月の日本航空の再上場によって、機構の前身であります企業再生支援機構において約三千億円の売却益が生じました。そのうち法人税等として約千二百億円を納め、最終的に千八百億円が機構の利益剰余金として計上されました。その後、そのうち、この利益剰余金の中から、平成二十四年度末の利益剰余金から約八百九十億円の国庫納付を行ってございます。
 以上です。

○田村智子君 大もうけをして、国にもお金が入ってきた、それでJALも史上最高益を上げるまでになったと、これでJALの案件はおしまい、それでいいんでしょうか。
 JALは二〇一二年には客室乗務員九百四十名の新規採用も決定をした。しかし、復職を求める日本人の労働者を一人も雇用していません。外国人の客室乗務員は複数名再雇用して職場に戻しているけれども、日本人はなぜか一人も戻さないんですよ。
 茂木大臣、一般論でもいいです。事業再生というのは、会社が利益を上げられるようになった、そこに出資した人が大変な大もうけをしたと、それでいいということなんでしょうか。労働組合の協議等もまともに行わず、一方的に労働者に犠牲を押し付け、その後利益を上げながら、犠牲にした労働者の救済は一切行わない、それは違うと思います。会社を支えて誇りを持って働いてきた労働者も職場に戻していく、労働者も再生していく、私はそれは事業再生として当然のあるべき姿だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 機構の支援スキーム全体の流れでいいますと、機構が再生支援を行った事業者については、機構の関与なく事業継続が可能になった段階で、機構はスポンサー企業への株式、債権の売却などにより支援を終了すると。もちろん、未来永劫その企業に何とかするというよりも、その企業がきちんと再生された段階でバトンタッチをしていく、そして、その後は主に主要株主であったりとか金融機関が事業者に対してアドバイスを行っていくと、これが普通の姿なんだと思います。
 一般的には、ですから機構は、再生支援完了後においては、当該事業者に対して何らかの支援であったりとか関与をする立場にないというわけでありますから、御指摘された解雇された従業員を再雇用するといったことに関与するものではないと考えております。
 他方、機構が事業再生支援を行うに当たっては、機構法の第一条において雇用機会の確保に配慮すること、また第二十五条の第五項において、申込みをした事業者における事業再生計画についての労働者との協議の状況等に配慮しなければならないと規定されていることを踏まえまして、労働組合等と事業者の間の適切な協議が行われるか確認するなど、可能な限り雇用の継続が図られるよう努めているものと承知をいたしております。

○田村智子君 もうちょっとお聞きした上で大臣にお聞きしていきたいと思うんですけれども、先ほどからも中小企業の話いっぱい出ているわけですよ。中小企業が本当に苦しいときに、労働者にごめんなさいと言って一旦解雇したとき、やっぱり戻ってくるように頑張るからというのっていっぱいありますよ。JALがそれやっていないということをどう思うかということをお聞きしたんですが、後の答弁で是非今の私の提起を受け止めておいていただきたいと思うんです。
 JALの乗員組合とキャビンクルーユニオンはILOにも提訴をして、八十七号条約、結社の自由及び団結権保護条約、九十八号条約、団結権及び団体交渉権条約違反で提訴をして、ILOは日本政府への三度にわたる勧告の中で、機構の不当労働行為についての情報提供を求め、最高裁判決に留意する、つまり重大な関心を示している、今も示しているわけですよ。この問題では、日本政府は今もILOの監視下に置かれているということになります。乗員組合とキャビンクルーユニオンは、希望者の職場復帰などこの問題に特化した労使交渉を要求しています。日本航空の赤坂社長も四月十一日の経営協議会で、この二つの労働組合それぞれに、できるだけ早期に解決する必要があると思っていますと発言をしているわけですよね。
 機構はJALの人員削減に直接関わったという立場です。ILO勧告を踏まえて労使の話合いに向けて、やっぱり茂木大臣、何というんでしょうね、機構がこうだからというんじゃなくて、企業の再生とかを担当してくる、仕事してきた大臣ですよね。やっぱりこういう話合いが行われるようにとJALの背中を押すような、これお願いしたいと思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 御理解の上でお聞きいただいていると思うんですけれども、お尋ねの日本航空の問題については、個別企業における雇用関係にある問題であるので、日本企業において適正に対処すべきものであると思っておりますし、適正な対処が行われているかどうかと、これは所管しております国土交通省なり厚生労働省にお聞きいただければと思います。

○田村智子君 これは、国土交通省や国土交通大臣にはいっぱい聞いているんですよ。それで、日本航空がお決めになることだと、こう言ってやっているんですよ。私は、より機構の方が重大なんですよ、人員削減計画作らせたということから。だから、何とか背中を押してくれないかとお願いしているんですね。
 日本航空は、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーになっています。そして、この東京オリンピック・パラリンピックで初めてILOと大会組織委員会がパートナーシップ合意を間もなく結ぼうとしているわけですよ。私もILO議員連盟の一員ですけれども、自民党の議員も含めて、このILO条約の基本的な条約、これを遵守しているかどうかということがこのオリンピックに関わって非常に今注目されているんです。与野党とも、何度も勉強会を開いて、この立場を政府に確認していこうということをやっているときなんですよ。
 JALの整理解雇では、客室乗務員は五十三歳以上という年齢を基準に解雇されました。まるで客室乗務という仕事は若い女性がやればよいと言わんばかりのやり方でした。パイロットもベテランパイロットが解雇されました。ILO条約は当然のごとく年齢の差別を禁止しています。JALがオフィシャルパートナーにふさわしいのかどうかが問われることになるわけです。
 茂木大臣、人生百年担当の大臣でもあられるので、二〇一〇年十二月三十一日に解雇されて裁判闘った皆さん、復帰求めている皆さん、まさに六十歳迎えているんですよ。このベテランの客室乗務員、パイロットの皆さんに私は今年中に職場復帰の道を開くために、政府として、ILO条約の遵守という立場からも、やっぱりJALがどうなのか、ここ関心を持っていただきたい。いかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 人生百年時代、人づくり革命におきましては、誰もが幾つになっても活躍できるような社会をつくっていきたい、そのための様々なスキルアップの機会等々を持っていきたいと思っております。今後、リカレント教育を充実をしていくと。リカレントですから日本語で言いますと循環すると、こういうことになるんですけれど、これまでの日本の社会というのは、若いうちに学んで、そして一旦社会に出るとそのままというのを、これからは、一旦社会に出た人がまた学び直しをすることによって新たなスキルも身に付け、更に活躍できる場所をつくっていく、こういった環境整備をするというのが基本的な役割であると、こんなふうに考えておりまして、個々の企業の雇用関係について人生百年時代構想会議で扱っているものではございません。

○田村智子君 もう一度強調しますが、五月でしたでしょうか、ILOの方がお見えになるわけですよね、責任者の方がお見えになるわけですよね。そこで、私たちILOの議員連盟もお会いすることになるでしょう。ILOからは三度にわたってこのJALの案件で、機構が不当労働行為を行ったことに重大の関心を払いながら、その話合いが進むように、解決に進むように、日本政府に対しての勧告が行われ続けていると。当然、ILOの方お見えになったら、与野党問わず、私たち、そういうことを問題にしていきます。JALを含めILO条約がちゃんと履行されているのかどうか、そういう立場を取っているのかどうか。
 先ほど山本議員からお話あったとおり、今、日本航空は大変な人手不足になっているわけですよ。国際線も国内線も前年を上回る乗客はいると。しかも、ますます観光立国で航空便増やしていこうとしているわけですね。そして、それを新人採用とシフト体制の変更で乗り切ろうとしているけれども、大変な過密労働も起きてきて、ロッカーで倒れて救急搬送されたとか、フライト中、体調不良で乗務員ベッドで寝たまま酸素吸入を受けていたとか、外国の宿泊先で体調不良になり欠員のまま運航したなどの事例が頻発して、部長名での注意喚起文が出されたほどなんですね。
 だから、こうした深刻な事態も受けて、今年七月にはシニア客室乗務員制度、これを新たに検討されようとしているんです。六十歳からの方を雇うという方向にJALは向き始めているんですよ。本当に組合の皆さんも頑張った、JALの社長も解決したいと言っている。ILO条約の勧告を受けている日本政府が人ごとにするのかどうかということが問われています。
 もう御答弁は同じになると思いますから、引き続きこのことは、ILOの方もお見えになったら私たちも政府に要請をしていきたいと思いますので、是非胸に留めておいていただきたい。お願いをいたします。
 ありがとうございました。


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