国会会議録

国会会議録
「加計」疑惑 焦点は? 国会論戦を振り返る 日本共産党 田村智子副委員長に聞く

 

 安倍晋三首相の友人が理事長の学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐる疑惑発覚から半年以上たちますが、疑問は深まるばかりです。いま加計疑惑で何が焦点になっているのか―参院で追及してきた日本共産党の田村智子副委員長に聞きました。

 (原千拓、三浦誠)


(写真)加計疑惑についてのインタビューに答える日本共産党の田村智子副委員長・参院議員

 

「4条件」を審査対象外に

巧妙“加計隠し”

  ―11月14日には林芳正文部科学相が、加計学園の獣医学部新設申請を認可しました。

 獣医学部新設の規制緩和にあたり安倍内閣は、既存の大学・学部では対応できない獣医師養成やライフサイエンス(生命科学)の需要など「4条件」(別項参照)を閣議決定しました。しかし文科省は、大学設置・学校法人審議会で加計学園の申請を審査するに際して、委員に4条件は審査の対象ではないとくぎを刺しました。設置審の審査というのは、大学設置の基準を最低限クリアすればいいものです。つまり最低ラインだけで審査しろと求めたわけですよね。

 それでも設置審の第1次意見では「警告」が出されました。3次審査にまでもつれ込み、最後まで委員から不認可にすべきだという意見が出ました。4条件をクリアするような最高レベルの獣医学部ではないことが明らかになりました。


(写真)建設がすすんでいる加計学園獣医学部校舎=10月9日、愛媛県今治市

 ところが安倍政権は、4条件についてはすでにクリアしていると言い続けるわけです。ここが“加計隠し”の本当のポイントです。

 加計学園が事業者として隠されていた昨年11月9日に国家戦略特区諮問会議は、4条件をクリアしたとしました。

 加計学園が事業者として応募したのは今年1月です。事業者が決まっていないのに4条件をクリアしたとされたことで、加計学園の獣医学部構想が4条件に合致しているかどうかの審査は必要ないとされたのです。

 4条件は関係なく、大学設置基準の最低ラインさえ超えていれば新設できるという本当に巧妙な加計隠しでした。

 

「加計」幹部と首相秘書官

官邸で面会か

  ―首相秘書官が事業者決定のはるか前に加計学園幹部と首相官邸で面会していた疑いも出ています。文科省幹部は「首相秘書官というのは首相の代理だ」と指摘しています。

 2015年4月に今治市の企画課長が首相官邸で柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)と会っていたことが報道されています。その際、加計学園の幹部も同行していたとされています。

 自治体の課長クラスが首相官邸を訪れるのも異例です。私たち国会議員でも、官邸にはなかなか入ることができません。

 今治市の課長が誰にあったのか質問しても「記録がない」という答弁が返ってきます。柳瀬氏は「記憶にない」と答弁しただけであって、“会ってない”とは言っていません。

 今治市にはその記録が残っており、情報公開には面会相手を黒塗りにして出しています。安倍首相が、疑念を晴らすというなら、今治市に黒塗り部分を明らかにするよう求めればいいだけです。それすら拒否しているというのも異常です。

 

事業者決定前の15年8月

内閣府、加計訪問

  ―12月9日に閉会した特別国会では、新たに内閣府が事業者決定前に加計学園を訪問していたことが田村さんの追及で明らかになりました。

 これまで加計学園幹部が、15年6月に開かれた国家戦略特区ワーキンググループに出席して発言していたのに、議事要旨から隠されていたことが明らかになっています。今回はそれに加えて、新たに内閣府幹部と加計学園の接触が明らかになりました。

 特別国会で自民党の菅原一秀議員が「内閣府の幹部職員が加計学園側と会った事実はあるか」(衆院予算委員会、11月27日)と質問した際に、政府側は15年8月6日に愛媛県今治市の紹介で会ったと答弁していました。

 おかしいと思い私が調べたところ、会ったのは国家戦略特区を担当していた内閣府の藤原豊審議官(当時)だったことが分かりました。藤原審議官といえば文科省の内部文書に「官邸の最高レベルが言っている」と言って文科省側に獣医学部開学を迫ったとされる官僚です。

 15年8月6日は、獣医学部新設の事業者として加計学園の名前は表に一切出ていない段階です。そんな時期に、内閣府の幹部がわざわざ加計学園まで行って話を聞いていたのです。当時から内閣府は事業予定者が加計学園だと分かっているということです。6月に閉会した通常国会ではこの事実をすべて隠していました。

 

行政ゆがめる「戦略特区」

“私物化”の仕組み

  ―国家戦略特区による規制緩和という仕組みの問題点も浮き彫りになりました。

 国家戦略特区ワーキンググループでは、加計学園は正式な提案者ではないので発言権はありません。ではなぜ発言できたのか。それは議事録を非公開と決めたので発言ができるのです。

 加計学園側がどんな発言をしたのか速記録を出しなさいと言うと政府側は「廃棄した」と言う。これでは国政調査権がまったくおよばず、行政の意思決定がどのように行われたのかを誰もチェックができません。

 国家戦略特区は安倍首相が議長です。ブラックボックスだと忖度(そんたく)でいくらでも行政がゆがみます。私物化を最大にできる仕組みをつくった安倍首相の責任はほんとうに重大です。

 

反響呼んだ共産党の質問

野党連携強めて

  ―加計疑惑では日本共産党国会議員団の追及も大きな話題になってきました。

 通常国会では、小池晃書記局長が文科省の内部文書に「今治市の構想が適切」と書かれていたことを示し、加計学園の選定を前提に進めたのではないか(参院決算委員会、5月22日)と追及しました。小池さんは繰り返し新たな内部文書を示して追及し、メディアでも大きな反響がありました。

 衆院では京都産業大学の獣医学部提案を調べ、なぜ今治市だけに絞ったのか追及しました。これにより、今治市に決定したことの異常さが際立ちました。

 参院では市民と野党の共闘で当選した議員との連携ができました。桜井充議員(民進党)の質問を受けてさらに私が追及したり、私の質問に対する政府答弁のウソを森ゆうこ議員(自由党)が追及したりしました。

 国会での閣僚や官僚のいいかげんな答弁が続くようだと、政府はまともな機能が果たせなくなります。アベ独裁を許すな、と引き続き野党連携を強めて、加計疑惑を追及していきます。

 「4条件」 (1)既存の獣医師養成でない構想が具体化する(2)ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的需要が明らかになる(3)既存の大学・学部では対応が困難な場合(4)近年の獣医師の需要動向も考慮しつつ、全国的見地から検討する

2017年12月29日(金)しんぶん赤旗より


 |