特別国会が9日、閉会しました。与党側は当初、会期を8日間とし、野党が求める実質的な審議の実施を拒否する姿勢を示しましたが、世論の批判と野党の一致した要求のもとで39日間の会期となりました。この特別国会で日本共産党は論戦をリードし、存在感を際立たせました。
疑惑の幕引き許さず
(写真)代表質問する志位和夫委員長。奥は安倍晋三首相=11月21日、衆院本会議
「公明正大な取引だったということは、なかなか言えないのではないか」(自民党の柴山昌彦総裁特別補佐・筆頭副幹事長、11月28日のテレビ番組で)―。国会終盤で与党側からこんな追い込まれ感が出されたのが、「森友・加計疑惑」の追及です。
安倍政権の“疑惑逃れ”は露骨で、安倍晋三首相は15分間となった所信表明演説で「森友・加計疑惑」には一切触れずじまい。自民党は安倍首相の指示を受け、野党の質問時間の削減まで画策しようとしました。
しかし、衆参の代表質問や予算委員会などで絶えず具体的事実を示し疑惑解明を求めた日本共産党の論戦によって、幕引きができない状況にまで追い込まれたのです。
森友疑惑では会期中に、会計検査院がゴミの値引きについて「十分な根拠が確認できない」と指摘。宮本岳志、宮本徹の両衆院議員、辰巳孝太郎参院議員らは、国と森友学園が国有地値引きの口裏あわせをしていた音声データを突き付け、国側が値引きの筋書きを学園側に示していた事実も明らかにしました。学園の小学校の名誉校長をつとめていた首相夫人の安倍昭恵氏の関与が浮き彫りになっています。
一方の加計疑惑。畑野君枝衆院議員、小池晃、田村智子両参院議員らの連続追及で、獣医学部新設にかかわり加計関係者が出席・発言していた会議の内容が隠され、その速記録まで破棄されていたことなどが判明。“加計隠し”で学園側を特別扱いした疑いも濃厚になりました。
日本共産党の追及などもあり、世論調査(JNN調査2、3両日実施)では、森友学園への国有地売却をめぐる政府の説明に「納得できない」とする人が8割超。森友・加計疑惑のキーパーソンである安倍昭恵氏、加計学園理事長の加計孝太郎氏の証人喚問が避けて通れない局面となっています。
米国いいなりを批判
特別国会は、緊迫する北朝鮮問題、後を絶たない米軍の事故、核兵器禁止条約をめぐり世界が動く真っただ中で開かれました。その中で、日米同盟を絶対視する安倍首相の異常な米国いいなり政治を正面からただしたのが日本共産党です。
北朝鮮問題では、軍事力行使を示唆する米国に追従し、圧力一辺倒で臨む政府に「偶発的な軍事衝突を招く」と警告。「経済制裁の強化と一体に『対話による平和的解決』を図ることこそ唯一の解決策だ」(志位和夫委員長・11月21日の代表質問)と対案を示しました。
北朝鮮との緊張を一層高める日米共同訓練が秘密裏に行われていたことも明らかにし中止を迫りました(穀田恵二議員・6日の衆院外務委員会)。防衛省は核兵器の搭載が可能な米空軍のB52戦略爆撃機が、航空自衛隊の戦闘機と日本周辺の空域で今年8月までに複数回の共同訓練を行っていたと認め、「東京」も8日付で報じるなど反響を呼びました。
相次ぐ米軍機の事故や、政府が強引に進める沖縄県名護市辺野古の新基地建設には正面から抗議し、米軍に特権を与えている日米地位協定の抜本的見直しを求めました(赤嶺政賢議員・5日の衆院安全保障委員会)。
また、同県東村高江で10月に発生した米海兵隊の大型輸送ヘリCH53の炎上事故で、政府が「十分行った」とする原因究明のための調査が「米軍の規制の下で、米軍が認める範囲でしか行われていない」(宮本岳志議員・11月28日の衆院予算委員会)ことを告発。日本政府が県民よりも米軍の意向を優先する異常ぶりを浮き彫りにしました。
核保有国の意向に従い核兵器禁止条約を無視する安倍政権に対し、国連で7月に採択された核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約に署名し「核保有国の参加を呼び掛けるべきだ」(井上哲士議員・5日の参院外交防衛委員会)と主張しました。
財界中心政治ただす
(写真)質問する小池晃書記局長=11月30日、参院予算委
「人づくり革命」「全世代型社会保障」…。安倍首相は国会答弁で繰り返しましたが、実態は2019年10月の消費税10%への増税押し付け、財界の求めに応じた雇用改悪、医療・介護・生活保護など社会保障の給付減です。日本共産党の論戦は、財界中心の政治をただすものでした。
自動車会社や大学で有期雇用労働者が無期雇用に転換できる改正労働契約法の「5年ルール」を脱法的に回避する動きが進んでいます。日本共産党は本会議や予算委員会で「抜け穴」をふさぐ法改正を繰り返し要求。安倍首相も「法の趣旨に照らして望ましくない」「雇用の安定に向け対応していく」と答えざるを得ませんでした。
75歳以上の医療費の窓口負担の2割への引き上げについて、安倍首相は「後期高齢者の所得や受診率の状況も踏まえつつ検討する」(11月30日、参院予算委員会で小池晃書記局長への答弁)と答弁。大企業減税が労働者の給与に回らず、内部留保となっているとの指摘には「基本的には賃上げとかに配当すべきだ。内部留保に偏りすぎている」(同、麻生太郎財務相の答弁)と認めました。
現場の実態や声を背景にした質問が、政府の暴走に歯止めをかける力になっています。
原発ゼロ、診療・介護報酬改定、介護保険改悪などでも国民の思いを代弁。小池氏の質問を見た女性は「この間入院したので身につまされました。自己負担もそうですが、診療報酬引き下げはひどいと思う」と感想を寄せました。
安倍改憲の本質告発
市民と野党の共闘に逆流と分断が持ち込まれた総選挙の後、初となった今国会では、野党共闘が再構築の新たな一歩を踏み出しました。
国政私物化疑惑などで追い詰められた安倍政権は、審議拒否の「会期8日間」提案や、野党の質問時間の削減を画策しました。これに対し、日本共産党は、国会の最も重要な政府監視機能を弱体化させ、「議会制民主主義を壊す重大な事態だ」と反対の声をあげ、他の野党と連携して策動を押し返し、少数会派への一定の質問時間の確保を実現しました。
共謀罪法とカジノ解禁推進法をめぐり各地で市民の反対集会が開かれるなか、国会も動きます。共産、立憲民主、自由、社民をはじめ野党は両法の廃止法案を共同提出(6日)。さらに野党6党が共同して、社会保障の現場の実態の聞き取りを行い、診療・介護報酬の引き上げなどを求めて加藤勝信厚労相に申し入れ(同)ました。
今後、市民と野党の共闘の中心課題となるのが、安倍9条改憲を許さないたたかいです。
国会審議で日本共産党は、9条に自衛隊を明記する改憲の真相を語らない安倍晋三首相に対し、海外での無制限の武力行使に道を開く本質を告発。立民や社民なども違憲の安保法制=戦争法の憲法上の追認になると追及しました。
国会最終盤の7日、市民連合と共産、立民、自由、社民、民進の5野党は総選挙後初の意見交換会を開き、安倍9条改憲阻止を中心課題としてたたかいを国会内外で広げ、共闘の発展をめざすことで一致しました。安倍政権の下での改憲について、共同通信世論調査(2、3両日実施)では、反対48・6%が賛成36%を上回っています。
■特別国会での主な動き
11月1日■特別国会開会。第4次安倍政権が発足
3日■9条改憲反対の国会前行動。4野党があいさつ
8日■野党6党・会派が国対委員長会談。野党の質問時間削減への反対などで一致
14日■林文科相が加計学園の獣医学部新設を認可
15日■衆院文科委で加計疑惑を審議
17日■安倍首相が所信表明演説。森友・加計疑惑に一切言及なし
20~22日■代表質問(日本共産党は衆院で志位和夫委員長、参院で山下芳生副委員長)
22日■森友学園の国有地値引き問題で、会計検査院が「根拠不十分」との結果公表
27日■安倍首相が改憲右翼団体「日本会議」の設立20周年大会で改憲へ「歴史的使命を果たす」とメッセージ
27~28日■衆院予算委員会。宮本岳志議員が森友疑惑を追及。値引きの「口裏合わせ」を示す音声データの存在を政府が認める
29~30日■参院予算委。辰巳孝太郎議員が森友疑惑、小池晃書記局長が加計疑惑と社会保障切り捨てを追及
12月6日■野党が共謀罪廃止法案、カジノ推進法廃止法案を共同提出
7日■市民連合と5野党が意見交換会。9条改憲阻止、共闘発展へ一致
2017年12月10日(日)しんぶん赤旗より