政府が所管する独立行政法人(独法)で、非正規職員の無期雇用への転換を避けるための6カ月以上のクーリング(雇用の空白)期間を4法人が設けているなど、政府の姿勢が問われる実態が7日、明らかになりました。日本共産党の田村智子参議院議員が、7日の参院内閣委員会で独自の調査に基づいて追及したものです。
(写真)質問する田村智子参院議員=7日、参院内閣委
改正労働契約法では5年継続雇用の有期労働者が無期雇用に転換できるルールが来年4月から適用されます。
田村氏は、非公務員型独法の80法人と日本年金機構、健康保険協会を対象に調査。非正規職員に対して契約更新期間に5年以内の上限を設けているのは70法人。次の更新で上限を超える職員は4772人にのぼります。
クーリング期間を設けているのは、国際交流基金、日本スポーツ振興センター、産業技術総合研究所、国立環境研究所の4法人。厚生労働省所管の高齢・障害・求職者雇用支援機構は、改正労働契約法の国会提出後の2012年4月にクーリング制度を設けましたが、田村氏の調査を受けて12月1日に廃止したことが判明しました。
田村氏は、独法が無期転換を避けるクーリング期間を設けるなど許されないと指摘。「独法は政府が関与できる法人であり、監督官庁が協力してしっかり無期転換をやらせるべきだ」と求めました。
厚労省が、恒常的な仕事は基幹的、補助的は問わず無期雇用の職員とすべきとしていることを示し、「仕事もあるのに一律に雇い止めすることは許されない」と強調しました。
独法は中期目標の達成状況を評価されており、無期転換の結果、人員・人件費の目標値が未達と評価されれば、「非正規職員の無期転換を妨げることになる」とただしました。
総務省・堀江宏之審議官は、「独法の評価は中期目標の項目を基本にさまざまな状況を総合的に行うものであり、無期転換によって人件費が増加しても、それに至る事情を考慮すべき」と答弁しました。
2017年12月8日(金)しんぶん赤旗より
【12月7日内閣委員会 議事録】
○田村智子君 今日、そのハンドブックの抜粋を資料でもお配りいたしました。
これは、私たちも、こういう無期転換のルールについてのハンドブックというのは何度か厚生労働省出していて、最初の頃は補助的業務の方は選抜して無期転換が許されるかのような記述にもなっていて、これ何度も私も、事務所の方に来ていただいて、おかしいんじゃないのかと、一時的であるのかそれとも恒常的な業務なのか、これを判断しなければおかしいということも労働組合の皆さんと一緒にずっと言い続けてきて、で、お配りしたように、業務の必要性だと。つまり、一時的なのか恒常的なのかと、恒常的な業務であれば期間の定めのない無期転換社員など無期労働契約の社員が担うことが求められると、非常にすっきりしたハンドブックが今作られて、これで改正労働法にどう対応するかという指導、啓発を今、厚生労働省やっているところだというふうに思うんですね。
じゃ、足下はどうなんだと、中央省庁はどうなんだということも問われなければならないと思うんです。非常勤職員である期間業務職員、一番多いのは中央省庁の中で厚生労働省です。ハローワークでは、職務内容に応じて、専門的な職業紹介、求人開拓、それから一般的な職業相談と職業紹介、こういう三つの枠組みで大変多くの期間業務職員が業務に従事しています。
これらの仕事は、私はハローワークがある限りなくなるとはとても思えないんですけれども、例えば来年度、こういう業務自体がなくなる、こんなことがあり得るんでしょうか。
○政府参考人(小林洋司君) お尋ねのございました職業紹介あるいは職業相談の仕事、それから求人開拓の仕事などは、いずれもハローワークの重要な役割だというふうに考えております。
ただ、同時に、業務量の方は、雇用情勢といったその行政ニーズによって大きく変動する性格を持っておるわけであります。そういった中で、そういった変動に機動的、的確に対応していこうということで、常勤職員、それから期間業務職員が役割分担をしながら必要な業務を遂行できる体制を整えているところでございます。
御指摘の期間業務職員の具体的な職務内容ですとかあるいは人数といったものは、年度によって、したがって変動し得るものでございますけれども、引き続き、両者相まって必要な執行体制の確保に努めることとしておるところでございます。
○田村智子君 これは、職業紹介の仕事が来年度がたっと減るとかって、まずあり得ないわけですよ。そんな十年、二十年先にどうなるかという話しているんじゃないんですよね。
現状の状況をお聞きしますと、窓口業務など求職者とかあるいは事業者と直接接する業務は期間業務職員が担い、管理的業務が常勤職員が担っていると、これがハローワークの現場の状況だというふうにお聞きしています。これ、ハローワークが存在する限りなくなるはずがない恒常的な仕事に期間業務職員が就いているということになるわけです。
ところが、この期間業務職員、一年契約です。最長三年続けると機械的にその業務が公募に掛けられる、つまり一旦雇い止めが行われるということなんですね。会計検査院はもっとすごくて、一年で機械的公募、一年で雇い止めということをやられているんですよ、いまだに。民間企業には恒常的な業務は無期雇用の職員が担う、こういうふうに求めながら、なぜ公務の職場では有期雇用でよいというふうにしてしまうのか、ここは梶山大臣にもちょっと見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(梶山弘志君) お答えいたします。
非常勤職員として雇用される者について無期転換をするということは、実質的に見れば、今後、その者を常勤職員として採用するのと同じことになります。国家公務員の場合常勤職員として採用するには、国家公務員法に基づき採用試験などによって常勤職員としての能力の実証を行う必要があることを、これは法律に書いてありますけれども、御理解をいただきたいと思います。
○田村智子君 それが余りに形式的で見直しが必要じゃないかということを私は延々質問してきているんですね、これまでも。
経験のない人とこれまでその業務に就いていた人、これ比べれば、経験ある人の方が公募に掛けられても合格するというケースが多いでしょうから、これ、平等性ということをよく答弁されるんですけど、その平等性さえも形式的だというふうに思います。
また、業務の効率ということを考えてみても、適正な公務執行という観点からも、やっぱり機械的な公募というのは私はとても合理的だとは考えられません。自分が働くハローワークで自分の職を公募に出すというのはどういうことかと。自分の職を自分が働いているハローワークで求人に掛けるわけですよ。自分が採用されないという不安にさらされるだけじゃなくて、採用されても、自分が採用されたことで求職に来ていたあの人が落ちちゃったんじゃないだろうかというような思いにも、そういう気持ちにも陥っていくと。だから、これ、現場からは制度的なパワハラだという声さえ上がるほどなんです。
人事院の二〇一五年度年次報告でも、恒常的な仕事は常勤職員で充てるべきという指摘がされています。現に仕事が存在し、本人が続けたいと希望するなら、この機械的な公募というやり方はやめるべきだと、これ是非検討をこの場ではお願いしておきたいと思います。
あわせて、今日は、同じ公務職場と言っていいでしょう、独立行政法人の問題、これも是非取り上げたいんです。
非公務員型ではありますが、八十法人、それに年金機構と健康保険協会、これを合わせて八十二法人に対して私の事務所の方で調査を行いました。来年四月一日に施行される改正労働契約法、つまり無期転換、これは雇用期間が通算五年を超えた場合、本人の申出によって無期雇用にしなければならないという改正法ですが、これへの対応状況をお聞きしたんです。
実は、厚生労働省所管の病院関係に厚労省の側の集計ミスがあって、その部分はまだ報告を待っている状態ではありますが、その状態で集計を行いました。八十二法人中、資料でお配りしましたので見ていただければと思います、七十法人で雇用期間を五年以内とする雇用期間の上限が設けられていました。職員数にしてみると、四万二千四十二人のうち三万五百八十九人が無期転換の権利を奪われていることになります。このうち、次の更新で上限を超えてしまう人が四千七百七十二人。そうすると、年度内で相当部分の方が雇い止めになる可能性があるわけですね。また、四つの独立行政法人で六か月以上のクーリング期間を設けているというふうに回答がありました。これも、次の雇用契約まで六か月の空白、いわゆるクーリング期間があればそれまでの通算雇用期間がリセットされると、この法改正を踏まえて行われたものだと思われるわけです。
実は、最初の調査では、厚労省傘下の高齢・障害・求職者雇用支援機構、ここが、私が資料の提出を求めた十一月二十二日の時点では、六か月のクーリング制度を設けたという報告が上がってきて驚いたんですね。ところが、恐らく私が質問にするということにも気付いたのかもしれません、つい先日、十二月一日にこのクーリング制度を廃止したというふうにお聞きをいたしました。
雇用促進、雇用の安定を業務として担う独立行政法人でなぜクーリング制度を設けるなんてことが行われたのか、これも御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(坂根工博君) 今委員からのお話もございましたけれども、これまで独立行政法人の高齢・障害・求職者雇用支援機構におきましては、契約を終了した有期雇用職員を再度採用する際に六か月以上の期間を空けるルールを内規により定めていたところでございます。
一方で、機構におきましては、雇用契約の期間が通算して三年になる有期雇用職員を対象といたしまして個別面接による選考を行います。それによって、勤務態度が不良でないなどといった一定の要件を満たす方を無期雇用職員として採用する制度を設けており、実際に希望する方のほぼ全てを無期雇用職員として採用してきたというふうに聞いております。
こうした人事管理の実態を踏まえまして、今般、機構で検討した結果、このようなルールは不要だと判断し、廃止したものと承知しております。
○田村智子君 これね、廃止されたからよかったんですけど、お聞きしたら、二〇一二年四月にクーリング設けた。これ改正労働法が出てくるぞと、審議される、成立するぞというのを見越してクーリング六か月というのを置いたに等しいんですよ。本当にこれ重大なことだと思います。
今回の集計には入れていませんけれど、この間、私も、国立大学での五年上限とする雇い止め、またクーリング制度六か月設けている、こういうもの取り上げてきました。衆参の文科委員会、厚労委員会で何人もの議員の方が今取り上げています。
これ、労働組合が大学当局と交渉いたしますと、運営費交付金の削減を雇い止めの理由に挙げるということがほとんどなんですね。私たちは、もう運営費交付金減らすこと自体、これ方向転換すべきだというふうに思いますが、来年度いきなり交付金が大幅削減されるわけでもない、仕事はあるのに一律雇い止め、これは本当に許されないと思います。
非正規職員は、独法の人員とは別枠で、人件費ではなくてほかの事業費から給与も支払われる場合が多いとお聞きします。一方、独立行政法人は人員や人件費も盛り込んだ中期目標の達成状況を常に評価されることになっています。無期転換した職員が中期目標で言う人員とみなされると、例えば人員の目標値が達成できない、個別目標が達成できなければ評価が悪くなってしまう、これが無期転換を避ける要因になっているんじゃないだろうかと、こう思われるわけですね。
独立行政法人の評価の枠組みを作成している総務省にお聞きします。非正規職員の無期転換を妨げるような評価の運用、これ求めているんでしょうか。
○政府参考人(堀江宏之君) お答えいたします。
独立行政法人の業績評価につきましては、中期目標に定められた項目を基本といたしまして、目標の達成状況について、単に定量的な結果だけではなく、そこに至る様々な事情を総合的に考慮して行うものでございます。
例えば、法令に基づいて無期転換を行ったことによって一般管理費や事業費などの予算費目上の変動などがあった場合においても、評価はそのような事情を十分考慮した上でなされるべきものでありまして、法令を適切に運用して無期転換を行うこと自体が独立行政法人の評価上マイナスの評価に直結するというものではないと考えております。
○田村智子君 是非そのことを各独立行政法人に徹底してほしいですよ。運営費交付金の毎年の削減、これが独法の非正規職員を増やす要因になっていることは明らかで、これは、不本意非正規をなくすという、安倍政権がこれを本当に貫くならば、この方針自体を見直すべきだと思います。
その上で、中期目標の評価でも、無期転換のためと評価できるのであれば中期目標の目標値からの逸脱などとは問題にならないわけですから、改正労働契約法の趣旨である雇用の安定を独法において進めると、これ制度上何の問題もないと思います。これ是非やっていただきたい。
厚生労働省、傘下の独法で無期転換逃れをしてきたということは本当に許されません。独立行政法人は政府が関与できる法人なんですから、無期転換ルールの周知という生ぬるいやり方ではなくて、これ直接の監督官庁とも協力してしっかりと無期転換が行われるよう指導すべきだというふうに思いますが、いかがですか。
○大臣政務官(田畑裕明君) お答え申し上げます。
無期転換ルールが規定されている労働契約法は民事法規であり、雇い止め等について紛争が生じた場合には、個々の事案に応じて最終的には司法においてその有効性が判断されるものでございます。
一方で、労働者保護を使命といたします厚生労働省としては、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持って雇い止めを行うことは望ましくないと考えております。このため、企業や独立行政法人等に対して無期転換ルールへの対応が円滑に行われるよう、各省庁とも必要に応じて連携をしながら引き続き周知啓発に努めてまいります。あわせて、都道府県労働局においてしっかりと必要な啓発指導を行ってまいりたいと思います。
○田村智子君 これ、お配りした資料を見ていただきますと、例えば理化学研究所は非常勤職員が四千二百九人もいて、そのうち五年上限で、つまりどんなに契約更新しても五年で切られちゃうという方が丸々四千二百九人なんですよ。無期転換できないんですよ、誰も、このままだったら。無期転換権が発生しないんですよ。
経産省所管の産業技術総合研究所、ここも非常勤三千七十二人。で、期間上限五年の方が三千七十二人。これも無期転換ルール誰一人として発生しないような、こんなことになっているんですね。これ異常ですよ。こんなことやっていたら日本の研究機関の存続にも関わるような問題ですし、徹底的に指導していただきたいということを重ねて要望いたしまして、質問を終わります。