国会会議録

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公定価格引き上げを 保育所増へ田村副委員長 参院内閣委

 日本共産党の田村智子副委員長は5日、参院内閣委員会で、自治体が保育所や幼稚園などの施設に支払う公定価格の引き下げを求める財務省の財政制度等審議会の建議は、保育所などの増設や保育士の処遇改善に逆行すると批判しました。

 建議は、同審議会が2018年度予算編成に向けてまとめ、11月29日に出したもの。保育所などの増設による運営費の増加に伴い財源確保が大きな課題となっているとして、子育て分野でも「重点化」「適正化」を図る必要があるとしています。

 このため、建議は保育所の収支差と全産業や中小企業の利益を比較し、「一般の中小企業の利益水準の平均3%を大幅に上回る」「公定価格全体を適正化する必要がある」として、公定価格の引き下げを提案しています。長峯誠財務政務官は同日の委員会で、建議を踏まえ、予算の編成過程で各府省と協議していると述べました。

 田村氏は、保育所と一般企業は会計基準の違いもあり、単純な比較は乱暴な議論だと批判し、内閣府も意見を言うべきだと主張。内閣府の松山政司少子化担当相は、保育施設の運営には安定性と質の確保が必要であり、民間企業との「単純な比較は適当ではない」と認めました。

 田村氏は、保育士の処遇の悪さが保育所増設の足を引っ張っているとして、処遇改善のためには公定価格の引き上げこそ必要だと強調しました。

2017年12月7日(木)しんぶん赤旗より

 

【12月5日 内閣委員会議事録】

○田村智子君 今日残りの時間で、ちょっと大切な問題なので、財政審の建議のことで、保育所の運営に直結する公定価格の問題に絞って取り上げたいと思います。
 平成三十年度予算の編成等に関する建議、十一月二十九日に出されました。この中で、保育事業の収支状況について、保育所などの経営実態調査の結果と中小企業全産業を比較して、一般の中小企業の利益水準の平均約三%を大幅に上回る状況になっていると。それで、結論として、公定価格全体を適正化する必要があると、こういうふうに述べているんですね。
 この適正化というのは公定価格の引下げを示唆しているというふうに読めますが、財務副大臣、今後引下げの方向で検討するということなんですか。

○大臣政務官(長峯誠君) 財政制度審議会の建議におきまして、子供、子育て分野についても不断の見直しに取り組み、効率的、効果的な支援とするための重点化、適正化を図っていかなければならないとの取りまとめがされたものと承知をいたしております。
 保育所等の事業者全体の平均収支差率につきましては、平成二十八年度調査によればプラス九%程度となっております。ほかの業種とのアンバランスが生じていないか、あるいは公費で負担している範囲は適切かなどの点から検証を行い、公定価格全体を適正化する必要があるとされております。
 こうした指摘も踏まえつつ、予算編成過程において関係省庁と議論をしているところでございます。

○田村智子君 これ、もう引上げなんという方向は出てくるはずないんですから、これ引下げの検討を始めるということなんですよね。
 これ、保育所と中小企業では会計基準の違いもあって、こんな単純比較できないはずです。例えば、保育所の大部分を占めるのは社会福祉法人ですが、施設整備補助金を受けているので、会計上は建物の減価償却費からその補助金分というのが引かれてしまいます。将来の建て替えに備えた積立てであっても、これは利益とみなされてしまうわけですね。こういう分が一体どれぐらいあるのかと厚生労働省に尋ねたところ、実態は半分程度しか費用として計上されていないというふうに説明もされているんですよ。
 それで、内閣府は調査もしているから、じゃ、一体どれぐらい、おおむね、本当は施設建て替えのための積立てなのに、それがそうとみなされずに減らされちゃっているのかというふうにお聞きしましたら、これ調査やっているのに答えられないと言うんですね、ここでも。公表をするまで待ってくれと。
 ですから、こちらで保育所にいろいろ問い合わせましたら、年間二百万円程度だというふうに聞いています。これは保育所の収支差率の約二%にも当たるわけなんですよ。つまり、建て替えなどに備えた積立金をちゃんと勘案すれば、これは全事業所や中小企業などとほぼ同水準になると思われるわけです。
 また、保育所というのは赤字にするわけにいかないんですよ、安定した運営しなければ、保育所潰れちゃったら被害を受けるのは子供たちですからね。
 大臣、これ、財政審の建議、これは会計基準の違いを脇に置いたものですから、こんな比べ方はやるべきじゃないと、これ言うべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(松山政司君) 財政審の建議ですが、その基となっている調査ですが、昨年度、二十八年度に厚労省が試行的に実施したものであります。これと別に、先般、十一月十四日に、子ども・子育て支援新制度施行後初めて本格的に内閣府の方で実施をした経営実態調査がございます。
 この調査結果におきましても、保育所等の収支差率は全産業平均や中小企業の平均と単純に比較すると高くはなっていますけれども、公定価格の在り方につきましては、幼児教育、保育は経営の安定、継続性がほかの産業より強く求められる分野であるということ、また子供たちの健やかな育ちのために質の確保の必要性が高いということ、これらを勘案しながら検討していく必要がありまして、田村委員おっしゃるように単純に比較することは必ずしも適当でないと考えております。

○田村智子君 これ、財政審のこのお配りした資料というのは一昨年度の経営実態調査で、昨年度は、保育所、幼稚園、認定こども園とも収支差率というのは下がっているんですよ。これは、やっぱり保育士不足がこれだけ問題になっているので、各施設で恐らく公定価格の引上げ以上に保育士の処遇改善が行われたんだということは容易に推測が付くわけです。保育所というのは、公定価格が、充てられるべき支出のうち、人件費比率は実に七六・七%に上ります。支出全体でも七割超えている。これは特別養護老人ホームよりも高い割合になるわけです。中小企業の利益水準との比較で公定価格が引き下げられる、こういうことになれば当然これは人件費そのものに影響が出るということも十分考えられるわけで、これは政府の方針とも相入れないというふうにも思います。
 要望なんですけど、これ引下げの議論どころじゃないんですよ、必要なのは。やっぱり、保育士の処遇というのは全産業平均と比べていまだに月十万円低いと。その上、多忙であり、長時間勤務であり、責任も重くて、なり手が不足する、結婚や出産を機に退職してしまう方が後を絶たないと、これが実態です。
 財政審の建議では、保育の受皿拡大の財源確保を理由にして公定価格の引下げの検討をやろうとしているんですよ。こんなの、タコが自分の足食べるようなものですよ。やっちゃ駄目です。むしろ必要なのは、この保育士の処遇や働き方を改善する公定価格の引上げだと、このぐらいの立場で私は臨むべきだと思いますが、もう一度大臣、お願いします。

○国務大臣(松山政司君) おっしゃるように、保育所等において支出する費用の中でこの人件費が占める割合、これは今回の調査でも約七七%というふうになっております。保育士などの処遇改善の取組は、この公定価格における処遇改善の加算、これも、賃金の改善計画あるいは実績報告を求めて現場の保育士などの給与にしっかり反映されるようにもなっております。
 保育所などのこの公定価格の在り方につきましては、幼児教育、保育は経営の安定、継続性がほかの産業より強く求められる分野であること、先ほども申し上げましたが、子供たちのためにも非常に質を確保する必要が高いということなどを勘案しながら、子ども・子育て会議、この会議における議論、委員の御指摘も踏まえながら慎重に検討すべきと考えております。(発言する者あり)

○田村智子君 与党席からもそうだというお声をいただきましたので、これはしっかり監視して、絶対に引下げの検討をさせないということで頑張りたいと思います。


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