文教科学委員会 学校教育法改正法案について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
学校教育法の改定九十三条二項では、学生の入学、卒業について学長は決定を行うに当たり教授会に意見を求めることを義務付けています。
例えば入試についてですが、実際には学長から教授会に権限が移譲され、あるいは教授会の下に置かれた合否判定委員会にまで権限が移譲されて合否判断が行われ、大学名や学長名で合格者に通知するというのが実態だと思います。
受験者数というのは一大学数千人あるいは万単位にもなりまして、現実問題として学長がその一人一人について判断をするということはこれは不可能です。卒業についても同じで、大学によっては万に近い数の卒業者がいるわけで、教授会の意見を聴いて学長が一人一人について卒業は可か否かと判断すると、これはあり得ないことだと思うんです。
こういう学生の入学、卒業、修了、つまりは九十三条二項の一号、二号については、教授会が決定し、その判断を学長が執行するということが可能でなければ円滑で公正な大学の運営はできないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(吉田大輔君) これはもう何度もこの委員会でも出ましたけれども、学校教育法九十二条第三項では、学長は校務をつかさどるということで、大学の最終的な意思決定権者として位置付けられているわけでございます。大学として意思決定を行うに際して、学長が教授会等の学内組織に実質的な検討を行わせることは可能であるとは考えられますけれども、あくまでもその際に学長が最終的な決定を行うことが担保されているということが必要でございます。
ただいま御質問では、教授会で決定し、学長は執行するという、こういう過程ではどうかということでございますが、これはやはり学長が最終決定を行うと、そういった観点からいたしますと問題があろうかと思います。
○田村智子君 これ、教授会などが決定した合格者をそのまま認めるのも駄目だと、こうなりますと、じゃ、法案にそのまま忠実に沿えば、学長が受験生を一人一人チェックして判断するということになるんですよ。例えば、早稲田大学では二〇一三年度の一般入試は、受験者数だけで八万人を大きく超えています。東京大学は、記述式の試験で受験者数は九千人を超えています。これ、どうやって学長が判断するんですか。あるいは、教授会の判断、それは違うよと、じゃ、この人を入学者の中に入れなさいという判断を行うということなんですか。
○政府参考人(吉田大輔君) 先ほども申し上げましたように、教授会等の学内組織に実質的な検討を行わせるということは、それは可能でございます。
多くの大学では、その合否判定委員会などの専門的な委員会を通じて、その学生の入学等についての判断といいましょうか、その可否を検討してきているかと思いますが、ただ、最終的にその入学の許可などを行うということ、これはもうやはり学長の名前で行っていくわけでございますから、最終的にその学長の責任といったものが全うできるような体制にしておくことが肝要かと思います。
○田村智子君 形式的に学長の名前で行うというのは分かりますよ、それは。だけど、この合否判定についてまで教授会の決定権限を認めない、決定権限は学長だというふうに強調される。だから、この法案審議が進めば進むほどに、全国の大学の教員の方、教職員の方からは、この法案が大学の自治を壊すんだという声がどんどん寄せられてくるわけです。この学生の合否判定や卒業について、学長一人で判断などとてもできないと。
それだけじゃありません。カリキュラムの編成、それに基づく教員の採用なども、全ての専門分野にわたって学長一人が情報を解析し、決定するというのも、これも現実的ではないわけです。だからこそ教授会が、教育課程の編成、採用、昇任の教員人事などを実質的に審議、決定してきた。それを学長が尊重して執行するという運営が幾つもの大学の中で行われてきたわけです。
そうすると、この法案を根拠に、教授会は審議機関だからと、教授会の審議の結果を学長が覆す、こういうことが起きてくると、それは逆に、学長の恣意的な判断が行われたのではないかという疑念や混乱が生じかねないわけです。
教授会が審議した結果を学長は尊重する、審議の結果と異なる判断をする場合にはその理由を説明するなどは、この法案の運用としては当然のことだと考えますが、いかがですか。