国会会議録

国会会議録
格差を認める政府案 田村智氏 「働き方改革」不十分
写真

(写真)質問する田村智子副委員長=11日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は11日の参院内閣委員会で、政府が示した「同一労働同一賃金」ガイドライン案について「同じ仕事でも、残業・転勤の有無などを理由に基本給の格差を認めるものだ」と指摘しました。

 同案は、均等・均衡待遇の確保を掲げる一方で、残業の有無、異動やキャリアコースの違いで基本給が違っても問題がないと例示しています。

 田村氏は、「正規・非正規雇用の格差や男女の賃金格差について、残業・転勤などを履行できるかどうかを理由にすれば格差があってもいいというようなことをいつまで続けるのか」と批判。「働き方改革というなら、こういう慣行の打破こそ必要だ」と求めました。

 田村氏は、初めて社会に出たときの仕事が非正規雇用という人が全体で39・8%、女性では49・8%を占めている実態を示し、非正規の入り口規制が「働き方改革」には織り込まれていないことを批判。本人の申し出があれば有期雇用から無期雇用への転換をしなければいけない「5年無期転換ルール」についても、5年になる前に雇い止めが発生することを防げていないとして、「あまりにも不十分な中身だ」として見直しを求めました。

2017年5月14日 しんぶん赤旗

 

【5月11日 内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 今日は、働き方改革で示された同一労働同一賃金の考え方についてお聞きします。

 正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差を解消するというのが働き方改革実行計画の柱の一つです。これに基づいて同一労働同一賃金のガイドライン案というのが示されましたが、ここでは基本給、手当などについて均等・均衡待遇を確保するとしていて、基本給は職業経験・能力、業務評価、勤続年数の三要素が同じならば正社員と同一水準にすることと、こういうふうにしていますね。

 この三要素の一つ、職業経験・能力部分については、原則として職業経験・能力に応じた部分につき同一の支給をしなければならない、また、蓄積している職業経験・能力に一定の違いがある場合においてはその相違に応じた支給をしなければならないとしながら、同じ職務であっても、キャリアコースの違い、職務内容の将来の変更とか転勤の有無、これを理由に基本給は違っても問題がないんだという例示をしています。

 これ、つまりは同じ仕事に従事していても、その仕事の内容とは直接関係のないキャリアコースの違い、あるいは将来職務内容の変更があり得るそういうポジションなのか、将来転勤があるのかどうか、これを理由に基本給の格差を認めてしまうというものなんですね。これでは同一労働同一賃金は達成できないというふうに思いますが、厚労省にまずお聞きいたします。

○政府参考人(鈴木英二郎君) お答え申し上げます。

 今回のガイドライン案におきましては、基本給から教育訓練に至るまで、待遇改善に向けまして幅広い待遇についての判断例を示したところでございます。

 その中で、不合理な待遇差の是正をするに当たりましては、我が国では長期雇用の中で配置転換をしながら幅広い職務遂行能力の向上を促していき、それと対応しました賃金決定を行っている企業も多いという実態を踏まえる必要があると考えたところでございます。

 他方、同じガイドライン案の中でございますけれども、職務内容、配置の変更範囲等につきまして、将来の役割期待が異なるといった主観的、抽象的な説明では足りず、客観的、具体的な実態に照らして不合理性が判断される旨を明記したところでございまして、この内容は適切なものではないかと考えておるところでございます。

○田村智子君 これ、歴史的な男女賃金差別、パート賃金差別の判例である丸子警報器、あの判例さえも後退させるような中身なんですよ。認められないですよね。

 一億総活躍国民会議で、安倍総理は次のように指示をしました。どのような賃金差が正当でないと認められるかについては、早期にガイドラインを制定し、事例を示してまいります、このため、法律家などから成る専門的検討の場を立ち上げ、欧州での法律の運用実態の把握等を進めてまいります、できない理由は幾らでも挙げることはできます、大切なことは、どうやったら実現できるかであり、ここに意識を集中いただきたいと思いますと。

 これを受けて、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会では、ヨーロッパの判例や制度を調べましてガイドラインの研究が進められたというふうに理解をしております。では、ヨーロッパにおいては、職務の変更の有無、残業の有無、異動の有無、キャリアコースの違い、これで賃金格差を容認するような法制度あるいは判例はあったんでしょうか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) お答え申し上げます。

 職務が同一である労働者につきまして、労働契約により職業能力向上のために設定されましたキャリアコースに進んだか否かで賃金差が生じている事例について同一労働同一賃金原則に違反しないと判断いたしました裁判例がフランスにあると承知してございます。

○田村智子君 裁判例が一つフランスにあったと。でも、法制度ないわけですよ。基本的にヨーロッパは職務が同じだったら同一労働同一賃金なんですよね。

 だから、これはあくまでも日本的雇用慣行の温存だと私は思いますよ。日本では、正社員というのは職務の変更や転勤を企業から命じられればそれに従うんだと、長時間残業も受け入れるんだと、こういう働き方が前提になっていて、これができないんだったら処遇の格差は、基本給であっても格差があっても当然だと、これは私、日本的慣行だと言わざるを得ないんですよ。

 私、例えば非正規雇用で、例えば雇用契約が一年の契約社員とかこういう方に転勤があるなんという前提はまず考えられなくて、そうなったら、これもう基本給で差別があっていいということになっちゃうんですね。同じ正規雇用の中でも、例えば転勤などができないなら一般職ですよと、転勤にも応じます、残業もばりばりこなしますと、それなら総合職ですよといって、例えば女性なんかはもう入社の時点でこうやってコース別にさせられてしまうんですよね。政府は今、多様な働き方の一つとして多様な正社員、つまり転勤などがない地域限定型の正社員、こういうことも進めようとしていますが、これだって転勤がないんだから基本給の格差を認めてしまうということになってしまうと思います。

 先月、ILOの議員連盟の学習会に私参加をいたしまして、そこで女性と仕事に関する国際意識調査に関わったILO本部の方々からお話をお聞きすることができたんですね。日本に対する勧告というのもお話をされました。

 そこで私質問したんです。日本では就職するときに、あなたは残業ができますか、転勤が可能ですかと、これで言わばコースが決められて基本給も含めた賃金の格差というのが生じているんだと、これ、男女賃金格差の一つの理由になっているんだと。こういうことをどう思いますかというふうにお聞きをしました。そうしたら、こういう答えだったんですね。多くの国が、採用時に残業や転勤に応じることができるか、こんなことを前提とする、あるいは質問する、そのこと自体が禁じられていますよと、これもう日本固有の問題ですよというふうに指摘をされました。

 同じ仕事をしていても正規、非正規の格差がある、男女の賃金格差がある、それは、残業、転勤など企業に対する義務を履行できるかどうかなんだと、これを理由にすれば格差があってもいいんだと。いつまでこれを私は続けるんだというふうに思います。

 加藤大臣にお聞きします。働き方改革と言うのであれば、せっかくヨーロッパ調べたんですから、法制度、こういう同一労働同一賃金に追い付くように日本的慣行の打破こそ必要だというふうに思いますが、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) これまで日本ではいわゆる能力給を踏襲していると、それに対してヨーロッパ等では職務給であると、そういったことを踏まえて、なかなか同一労働同一賃金というのは難しいんじゃないかと、こういう立場に我々も正直言ってあったわけでありますけれども、そういう中で、やはり非正規における処遇の格差是正を図っていく、そのためにはそういった同一労働同一賃金ということにも踏み込んでいく必要がある。そして、その実例としてヨーロッパ等をいろいろ勉強させていただく中で、今こちらからお話がありましたように、例えばキャリアパスが違えば、同一労働、同じような仕事をしていたからといって必ずしも賃金が一緒になっているわけではない。そこに一種の不合理さがあるかないかということが問われている。

 そういったことを踏まえて、昨年末お示ししたいわゆるガイドライン案では、我が国の雇用実態にも配慮しながら、基本給の趣旨、性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨、性格に照らし、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求めるということにしたところであります。

 転勤有無等による話がございましたけれども、長期雇用の中で配置転換しながら幅広い職務遂行能力の向上を促す人事管理が現行で見られることを踏まえ、職務内容や配置の変更範囲を待遇差の判断に当たっての考慮要素の一つにするということは適当だというふうに考えて、ああしたガイドラインをお示しをさせていただいたところであります。

○田村智子君 これ、転勤すれば転勤手当が付くとか、残業すれば残業手当が付く、それで月収が違うというのは分かりますよ。だけど、基本給の格差を認めちゃったら、これ同一労働同一賃金じゃないですよね。

 ちょっと角度を変えて聞きます。

 私は、そもそもガイドライン案を読んだときに根本的な疑問として感じたのは、同じ職務でありながら、一方は正規雇用、一方は非正規雇用、この格差自体がおかしいんじゃないのかなと、同じ職務で同じ仕事なんですから。

 今日資料をお配りしました。就業構造基本調査から厚生労働省が作成した資料なんですけれども、これは若い人対象でありますね。初めて社会に出たときにその仕事が非正規だったという方々がどれだけの割合でいるかという調査なんです。

 五年ごとで、その五年間のうちでどれだけの方が非正規の職業に就いたのかという調査で、今年が調査年なので、一番新しい数字というのが二〇〇七年十月から二〇一二年九月の五年間ということになります。これ見ますと、三九・八%の方が学卒で最初に就いたのが非正規なんですよ。女性でいえば四九・三%。しかも、年々上がり続けてきているわけです。

 大臣、まずこれ見てどう思われますか。

○国務大臣(加藤勝信君) 直近の姿がいま一つ見えないというところはありますけれども、確かに、男性も女性も含めて、非正規で働いている方の割合が増えてきているという実態はここに示されているというふうに思います。

○田村智子君 非正規の処遇の改善が求められていくというのはもちろんなんですけど、働き方改革実行計画の中では、非正規という言葉を世の中からなくすと言っているんですよ。なくすと言いながら、学卒で初めて働く女性の半分が非正規だと。これをどうやって解決していくのかということが真剣に私考えられなければならないというふうに思うんですね。

 そもそも何で非正規で雇うのか。私、その合理性こそ使用者に問うべきだと思いますね。非正規というのは、直接雇用をしないで派遣労働者にする、あるいは無期雇用ではなくて三か月とか半年とか、長くても一年という有期雇用にすると、これを非正規というふうに呼ぶわけですけれども、その理由が人件費抑制のためでしかないんだとしたら、私は、正規と非正規で格差が生じてしまうのは当然で、根本的な是正など不可能だというふうに思います。

 社会人となって初めての職が非正規、こういう方々が増加していくということに歯止めを掛けるためには、これは私たち何度も長年にわたって提起しているんですけれども、なぜ非正規で雇うのかというその理由、この入口の規制が何らかの検討必要だと思うんです。

 では、働き方改革のこの検討の中で、この非正規労働の入口規制については何らかの検討は行われたんでしょうか、何らかの施策盛り込まれたのか、お答えください。

○政府参考人(小林洋司君) お答え申し上げます。

 合理的な理由がない場合に有期労働契約の締結を禁止するという、今おっしゃいましたいわゆる入口規制につきましてでございますが、今般の働き方実行計画には盛り込まれていないところでございます。

○田村智子君 いないんですよ。盛り込まれたのはこの非正規の待遇どうやったらという、合理的な理由がなければと言いながら非合理な待遇格差も認めるようなガイドライン案を出してくる。

 それから、もう一つ進めようとしているのは、入口では非正規だったと、だけど五年が経過をしたら本人の申出によって無期転換ができるということで、これを徹底していくことで非正規減らしていこうということは安倍内閣は持ち上げました。しかし、私何度も国会で取り上げてきましたけれども、五年前の雇い止めというのが国立大学や研究所など独立行政法人、省庁の足下でも防げていないという実態があります。

 これに関わって、今日厚生労働省にもお聞きしたいんです。

 厚生労働省は、この五年経過したら無期転換ということについてパンフレット出しています、周知を図るために、「有期契約労働者の円滑な無期転換のために」と。しかし、当初出したパンフレットは、基幹的な業務は無期転換の対象だけれども、補助的な業務は必ずしも転換しなくてもいいという中身が書かれていて、私はこれはおかしいということを厳しく批判して、新たに出されたパンフレットはその記述はなくなったんですね。しかし、「長期勤続が見込まれる有期契約労働者については、無期労働契約への転換を検討する。」とし、「業務の大半は正社員が担っており、業務量の変動への対応として有期契約労働者を活用しているため、五年を超えて契約更新する者については選抜する。」と書いてあるんですよ、パンフレットに。選抜なんですよ。

 これ、法律上は、本人が申し出たら、これは無条件で無期転換しなくちゃいけないんです。そうすると、選抜というのはいつやるんですか。五年の前にやるしかないですよ。五年の前に、五年契約に図る前に、あなたの契約は今年で打ち止めですよという選抜を五年の前にやるということを私このパンフレットは事実上認めているようなものだというように思いますが、厚生労働省、いかがですか。

○政府参考人(土屋喜久君) お答え申し上げます。

 労働契約法におきます無期転換ルールは、業務の内容にかかわらず、同一の使用者との間で有期労働契約が五年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みによって期間の定めのない労働契約に転換できるという仕組みでございまして、私どもとしては、これ、できるだけ多くの方がこれによって無期転換して雇用の安定が図られることが望ましいというふうに考えているところでございます。

 そういう前提の下で、現在、事業主の方々が労働契約法の趣旨を踏まえて無期転換ルールへの対応に積極的に取り組んでいただくよう、ポータルサイト、ハンドブック等を用いまして周知啓発を図っているところでございますが、こうした周知啓発に当たりましては、現在使用しているハンドブック等におきましては、業務の必要性が恒常的なものについては、基幹的な業務か補助的な業務かにかかわらず無期契約労働者が担うことが適しているといった例示を示しながら周知啓発を図っているところでございまして、いずれにいたしましても、無期転換ルールの内容が使用者の方あるいは有期契約労働者の方々に十分御理解いただけるように引き続き周知啓発を図ってまいりたいと考えております。

○田村智子君 引き続き議論していきたいと思いますが、余りに不十分な中身だということを指摘して、質問を終わります。


 |