日本共産党の田村智子議員が、27日の参院本会議で行った2017年度予算案への反対討論の要旨は以下の通りです。
反対理由の第一は、「アベノミクス」の破綻のしわよせを国民に押し付け、暮らしをいっそう追い詰めることです。
国内需要の6割を占める個人消費は2015、16年と2年連続でマイナス。賃上げも消費税増税を含む物価上昇にまったく追いつかず、実質賃金は4年連続のマイナスです。「経済の好循環」は生まれようがありません。予算案でも、来年度の所得税・消費税の税収を前年度比でマイナスとしており、政府も国民の所得と消費がさらに落ち込むと予想していることを表しています。「アベノミクスの破綻」を認めるべきです。
この20年間で、富裕層への富の集中、中間所得層の疲弊、貧困層の拡大が進行し、日本経済に大きなゆがみが生じています。貧困と格差を正すことこそ求められています。
ところが本予算案は、社会保障費の「自然増」を1400億円も抑制しています。後期高齢者医療の低所得者への保険料軽減を縮小するなど、とくに高齢者を狙い撃ちにして医療介護の負担増が狙われています。高齢者の家族にも影響を与え、現役世代の将来不安を増大させるものです。5年連続となる自然増の抑制はやめるべきです。
文教予算を3年連続削減することも重大です。大学生等への給付制奨学金が創設されますが、対象は限定的で、深刻な事態を変えるものではありません。
安倍内閣の4年間で、企業の内部留保は72兆円も積み増し、386兆円にも達しています。わが党は、これを暮らしと雇用に還元させることを繰り返し提案してきました。
ところが安倍内閣の「働き方改革」は、経団連の主張で月100時間もの時間外労働を法律で許容し、裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の導入で残業代ゼロの働き方を広げようとしています。断じて許すわけにはいきません。
第二の理由は、不要不急の大型公共事業、原発再稼働や核燃料サイクル推進にしがみついていることです。
国の財政赤字を理由に暮らしの予算を切り詰める一方、大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾など大型公共事業は優先され、安倍内閣の4年間で公共事業関連経費は著しい伸びとなっています。財政投融資から、リニア中央新幹線建設費として総額3兆円の貸し付けを行うとしています。
福島第1原発事故の賠償や除染等の費用がこれまでの倍、21・5兆円とされ、税金と電気料金上乗せという国民負担によって回収しようとしています。廃炉が決まった高速増殖炉もんじゅについて、1兆円もの費用を投じた壮大な失敗を認めようともせず、もんじゅに代わる高速実証炉の開発を進めるなど断じて許されません。
第三の理由は、「日米同盟第一」の立場で、異常な米国追随をさらに強め、軍事費の大幅増額など、戦争する国づくりをすすめていることです。
日米首脳会談で、安倍総理は「日本は同盟におけるより大きな役割および責任を果たす」ことを合意しました。「新ガイドライン」と安保法制=戦争法に基づいて、地球的規模で米軍と自衛隊の軍事協力を推進するものです。軍事費は3年連続の大幅増額、補正予算で前倒し計上をしてもなお、過去最高の5兆1300億円、米軍関係経費も過去最高の3985億円にのぼります。
日米共同声明では、米軍新基地建設について「辺野古が唯一の解決策」とし、沖縄県民の民意を踏みにじる無法な工事が強行されています。辺野古沖での工事の中止、新基地建設断念、普天間基地の閉鎖、撤去を強く求めます。
大学等へ軍事研究資金を提供する予算を前年度比18倍に激増させ、大学や研究機関を武器や軍事技術の開発に動員することは許されません。
自衛隊南スーダンPKO派遣部隊の日報隠ぺい問題は、安倍政権が南スーダンへの自衛隊派遣を継続し、「駆け付け警護」など安保法制にもとづく新任務付与を強引に実施するために、昨年7月の首都ジュバでの「戦闘」実態を国会と国民に隠ぺいしたものです。
政府は「テロ対策」との口実で、共謀罪法案の提出を強行しました。国民の思想や内心を捜査の対象とする本質は、3度廃案となった過去の共謀罪法案と何ら変わりありません。現代版「治安維持法」ともいうべき共謀罪法案は撤回すべきです。
2017年3月29日(水) しんぶん赤旗