国会会議録

国会会議録
暮らし追い詰める予算 参院本会議で成立 田村氏が反対討論
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(写真)反対討論に立つ田村智子副委員長=27日、参院本会議

 2017年度予算が27日、参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決・成立しました。日本共産党、民進党、自由党、社民党、日本維新の会は反対しました。

 日本共産党の田村智子議員は反対討論で、予算は、アベノミクスの破綻のしわ寄せを国民に押し付け、暮らしをいっそう追い詰めるものだと批判。来年度の所得税・消費税収を16年度比でマイナスとしているのは政府自身が所得と消費の落ち込みを予想したものだとし、「アベノミクスの破綻を認めるべきだ。この20年間で、富裕層への富の集中、中間所得層の疲弊、貧困層の拡大が進行し、日本経済に大きなゆがみが生じている。貧困と格差を正すことこそ求められている」と迫りました。

 高齢者を狙い撃ちにした5年連続の社会保障費の「自然増」抑制は「高齢者の家族にも影響を与え、現役世代の将来不安を増大させる」と指摘。文教予算の3年連続削減や、月100時間もの時間外労働を許容する「働き方改革」は断じて許すわけにはいかないと強調しました。

 国の財政赤字を理由に暮らし予算を切り詰める一方で、不要不急の大型公共事業や、原発再稼働や核燃料サイクル推進にしがみつく政府の姿勢を批判。「日米同盟第一」の立場で、軍事費を過去最高の5兆1300億円に増額するなど、戦争する国づくりをすすめていると指摘しました。

 「現代版治安維持法」である共謀罪法案の提出など、安保法制=戦争法の強行以降の安倍政権による暴走政治を批判。「立憲主義を政治に取り戻す市民と野党の共同で、安倍内閣を終わらせ憲法花ひらく新しい政治を実現する決意だ」と表明しました。

2017年3月28日(火) しんぶん赤旗

 

【3月27日 本会議会議録】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、二〇一七年度一般会計予算外二案に対して、反対の討論を行います。

 予算審議では、国有地が異例の手続により破格の安値で学校法人森友学園に売却された問題が集中的に議論されました。証人喚問で籠池理事長は、安倍総理夫人と複数の政治家の関与を証言し、疑惑はいよいよ深まっています。安倍昭恵氏を始め、関係者の証人喚問、徹底した真相究明を強く求め、以下、本予算案への反対の理由を述べます。

 反対の理由の第一は、アベノミクスの破綻のしわ寄せを国民に押し付け、暮らしを一層追い詰めることです。

 安倍総理は、都合の良い数字でアベノミクスの成果を主張しますが、国内需要の六割を占める個人消費は二〇一五年、一六年と二年連続でマイナス、賃上げも消費税増税を含む物価上昇には全く追い付かず、実質賃金は四年連続のマイナスです。これでは、経済の好循環は生まれようがありません。予算案でも来年度の所得税、消費税の税収を前年度比でマイナスとしており、政府も国民の所得と消費が更に落ち込むと予想していることを表しています。アベノミクスの破綻を認めるべきです。

 この二十年間で、富裕層への富の集中、中間所得層の疲弊、貧困層の拡大が進行し、日本経済に大きなゆがみが生じています。貧困と格差を正すことこそ求められています。ところが、本予算案は社会保障費の自然増を一千四百億円も抑制しています。後期高齢者医療の低所得者への保険料軽減を縮小するなど、特に高齢者を狙い撃ちにして医療、介護の負担増が狙われていますが、これは、高齢者の家族にも影響を与え、現役世代の将来不安を増大させるものです。五年連続となる自然増の抑制はやめるべきです。

 文教予算が三年連続で削減されていることも重大です。来年度は、国民的な要求に押されて大学生等への給付制奨学金が創設されます。しかし、対象は余りにも限定的で、多くの若者が数百万円もの借金を背負って卒業するという深刻な事態を変えるものではありません。国公私立とも学費を値下げする、月額三万円、七十万人規模での給付制奨学金制度を実現することは急務であり、そのためにOECD諸国で最下位を争う教育予算の抜本的な拡充は当然です。

 安倍内閣の四年間で、企業の内部留保は七十二兆円も積み増し、三百八十六兆円にも達しています。我が党は、これを暮らしと雇用に還元させることを繰り返し提案してきました。最低賃金は全国一律千五百円を目指す、そのために中小企業への支援を強める、正規雇用を原則とし、八時間働けばまともな暮らしができる雇用のルールを確立するなど、大企業に内部留保の社会的還元を迫る改革が求められます。

 ところが、安倍内閣の働き方改革は、経団連の主張で月百時間もの時間外労働を法律で許容し、裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の導入で残業代ゼロの働き方を広げようとしています。これら労働基準法の大改悪を断じて許すわけにはいきません。

 反対の理由の第二は、不要不急の大型公共事業、原発再稼働や核燃料サイクル推進にしがみついていることです。

 国の財政赤字を理由に暮らしの予算を切り詰める一方で、三大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾など大型公共事業は優先され、安倍内閣の四年間で公共事業関連経費は著しい伸びとなっています。財政投融資からリニア中央新幹線建設費として総額三兆円の貸付けを行うとしていますが、JR東海はリニアの赤字経営を明言しており、環境破壊、技術や安全性への問題も指摘されています。リニア中央新幹線の建設推進はやめるべきです。

 福島第一原発事故の賠償や除染等の費用がこれまでの倍、二十一・五兆円とされ、税金と電気料金上乗せという国民負担によって回収しようとしています。東電が全財産をはたいて負担し、金融機関の貸し手責任、原子炉メーカーなど製造物責任を徹底すべきです。

 廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」について、一兆円もの費用を投じた壮大な失敗を認めず、「もんじゅ」に代わる高速実証炉の開発を進めるなど、断じて許されません。

 安倍内閣は、原発再稼働と海外への原発輸出に固執し、福島第一原発の事故を終わったことにするかのように、住民の納得もないまま避難指示解除、これに伴う賠償の打切り、住宅支援の打切りが強行されようとしています。生活となりわいの再建へ国と東電は最後まで責任を負うべきです。

 福島の現実を見ても、原発にこれ以上固執することは許されません。再稼働も核燃サイクルも断念し、再生可能エネルギーの開発と普及にかじを切ることを強く求めます。

 反対の理由の第三は、日米同盟第一の立場で異常な米国追随を更に強め、軍事費の大幅増額など、戦争する国づくりを進めていることです。

 トランプ大統領の排外主義政策に米国内でも世界各国でも批判の声が強まっています。ところが、日米首脳会談で、安倍総理はこれを一言も批判せず、日米同盟の強化を世界にアピールし、日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たすことを合意しました。これは、新ガイドラインと安保法制、すなわち戦争法に基づいて地球的規模での米軍と自衛隊の軍事協力を推進しようとするものです。

 その下で、軍事費は三年連続の大幅増額、補正予算で前倒し計上をしてもなお過去最高の五兆一千三百億円、米軍関係経費も過去最高の三千九百八十五億円に上ります。

 日米共同声明では、米軍新基地建設について辺野古が唯一の解決策とし、沖縄県民の民意を踏みにじる無法な工事が強行されています。墜落事故の原因の解明もないままにオスプレイの低空飛行訓練が繰り返されるなど、沖縄は基地負担軽減どころか、騒音と事故の危険にさらされています。辺野古沖での工事の中止、新基地建設の断念、普天間基地の閉鎖、撤去を強く求めます。

 大学等へ軍事研究資金を提供する予算を前年度比十八倍に激増させ、大学や研究機関を武器や軍事技術の開発に動員することは許されません。日本学術会議が政府の研究への介入が強まると批判し、戦争協力の歴史的反省から軍事研究禁止の方針を継承する声明を決定したことを重く受け止めるべきです。

 自衛隊南スーダンPKO派遣部隊の日報隠蔽問題は、安倍政権が南スーダンへの自衛隊派遣を継続し、駆け付け警護など安保法制に基づく新任務付与を強引に実施するために、昨年七月の首都ジュバでの生々しい戦闘実態を国会と国民に隠蔽したものです。国会に対し虚偽の答弁を重ねてきた稲田大臣の責任は極めて重大です。

 しかも、実力組織である自衛隊が大臣を平然と欺き、指揮指導監督権限を持つ稲田大臣が防衛省・自衛隊を全く掌握できていないことが明らかとなりました。稲田大臣に防衛大臣の資格はないと言わなければなりません。

 国会の責任で、統幕長、陸幕長を始め関係者を証人喚問し、防衛省・自衛隊ぐるみの組織的隠蔽の真相を徹底して究明し、責任を明らかにしなければなりません。

 政府は、テロ対策との口実で共謀罪法案の提出を強行しました。国際組織犯罪防止条約を締結するためにテロ等準備罪をつくることが必要不可欠だと強弁してきましたが、この条約の起草段階で、テロリズムを条約の対象とすることに日本政府は反対していたことが明らかとなりました。テロ等準備罪などとする政府のやり方は、国民を欺くごまかしだったのです。国民の思想や内心を捜査の対象とする本質は、三度廃案となった過去の共謀罪法案と何ら変わりありません。現代版治安維持法ともいうべき共謀罪法案は撤回すべきです。

 立憲主義を取り戻す市民と野党の共同で安倍政権を終わらせ、憲法が生きる新しい政治を実現する、その決意を述べ、反対討論を終わります

 

 


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