国会会議録

国会会議録
教育に大変な打撃 首長介入 大阪の先行例告発



○政府参考人(前川喜平君) 御指摘の大阪府教育行政基本条例の第二条におきましては、委員会及び知事は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条及び第二十四条に規定する職務権限に基づき、適切な役割分担の下、府における教育の振興に関する施策の充実を図らなければならないと規定されていると承知しております。
 また、同条例の第四条第一項におきましては、知事は、委員会と協議して、基本計画の案を作成するものとすると規定されていると承知しております。
 また、同様の内容は大阪市の教育基本条例におきましても規定されているというふうに承知しております。

○田村智子君 計画の議会同意という点を除けば、今回の法案と同じように首長の関与を強めるという仕組みを導入したということです。その後、二年で大阪の教育の自主性、自律性は大きく崩れ、保護者、住民の教育への信頼を損ねる事態が次々と起きています。時間の関係で、ここでは一例として民間人校長について取り上げます。
 学校教育法施行規則では、校長は原則として教育に関する職に就いていることが条件とされています。ただし、学校の運営上特に必要がある場合には、教育に関する職の資格を有する者と同等の資質を有すると認める者等を校長として任命し又は採用することができるとして、いわゆる民間人校長、これを認めているわけです。
 大阪市では、市長が全ての長を公募にすると強く主張をして、二〇一二年に制定した大阪市学校活性化条例で、学校長を原則公募としました。公立学校の校長の半分は民間人からの公募、あとの半分は教育職からという目標も設定されたわけです。初代民間人校長は、二〇一三年の春、応募者九百二十八人の中から十一名が採用されました。ところが、半年もたたないうちに、保護者へのセクハラ等、六人がトラブルを起こしています。地元の新聞では、三か月で辞任、セクハラ、六人に問題と報じられたわけです。つい先日も、府立高校ですけれども、民間からの校長が万引きで逮捕をされています。
 問題となっている民間人校長がいるある中学校で保護者がまとめた資料を私も入手することができました。告発されている問題事例の一部を紹介します。
 修学旅行でのラフティングで生徒を川に突き落とす、生徒の顔を水につける。一年生と三年生の学年集会で、授業がつまらないなら一時間当たり千円換算で返せと要求しなさいと発言し、授業の収拾が付かなくなる。猛暑日に独断でイベントを開催、ところが、PTAには学校行事と言い、教職員にはPTA共催行事だと各々にうそをついていたことが判明。連日、校長室で議論という名の揚げ足取りを教頭に行い、教頭は、校務が滞り仕事に戻してほしいと一分近い土下座を校長に行う。一学期の間に私的に生徒の写真を約二千枚撮影。社会科見学でビールを飲み、帰校後、赤ら顔で校務に就く。韓国・朝鮮人等への差別的な文章を内部文書に記し、抗議され、その後の卒業式には欠席。近隣の小学校卒業式に中学校長として列席するが、礼服を着用せず、汚れた靴で、しかもかかとが踏まれた状態であったと。
 この文書には、誇張した表現は一切ありません、第三者の裏も取れているものであり、PTA役員が校長本人から事後確認が取れた事例のみ記載ですと書かれています。
 民間人だろうとなかろうと、こういう校長、これ全部、一人の校長がやったことなんです。こういう校長は教育者として失格で、教育職と同等の資質があるとは到底言えないと思いますが、大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(下村博文君) それは、今聞いた範囲内ではおっしゃるとおりだというふうに思います。
 そもそも校長は所属職員を監督する立場にある者でありまして、大阪市において民間出身の公募校長による不祥事が続いていること、これは大変遺憾であるというふうに我々も認識しております。
 リーダーシップを発揮し、組織的、機動的な学校運営を行うことができるような適任者を校長に確保するため、教育委員会が教員出身でない者を校長に任用することは一つの方法でありますし、それ自体は決して否定することではないというふうに思います。その際、教育委員会は採用の際に資質について十分な調査、選考を行いまして、教育に関する職にあった者と同等の資質を有すると認める者を校長に任用する必要があります。
 大阪市教育委員会では、民間出身の公募校長について、書類及び面接による選考を通じ、リーダーシップを発揮し、その権限と責任により自律的な学校運営を行えるかなどの観点から候補者の教育的識見等をしっかり見極めたとのことであります。これにより、教育に関する職にあった者と同等の資質を有すると認める者を校長に任用したというふうに聞いております。
 しかし、今御指摘があったことを含め、民間出身の公募校長による不祥事が続いている状況を踏まえれば、採用の際の選考の在り方そのものにも改善すべき点があるのではないかと考えております。
 文科省としては、校長の任用に当たっては、資質について十分な選考を行い、適任者を確保するよう、引き続き都道府県教育委員会等を指導してまいりたいと考えます。

○田村智子君 これもう大臣も失格だとお認めになったわけですけれども、市の教育委員会事務局は事実調査を行った上で更迭案を上げたんです。ところが、市教育委員会の会議では、これは橋下市長に賛同する委員が多数のためなのか、更迭案を否決したんですね。保護者たちは納得せず、市議会に更迭を求める陳情を上げ、これは自民党も共産党も、維新の会以外は全ての会派が賛成して採択をされました。それでも橋下市長は、感謝すべき校長だと言ってはばからず、現在に至るも擁護しています。
 市議会は事態を重視して校長の原則公募の条例を修正しましたが、橋下市長はこれを再議にかけ、議会は維新の会が多数であるため、原則公募の条例はそのままとなっているという事態なんです。民間校長の横暴な学校運営の影響からか、今や教頭の試験を受ける教員が激減をしていて、その合格率は八〇%にまで跳ね上がっているとも聞きます。
 このように強力な権限を持つ首長に教育について更に強い権限も与えると。この法案は運用次第では大阪のように教育に大変な打撃を与えると、こういう深刻な法案だということは指摘をしなければなりません。
 もう時間がありませんので、残る時間では運用面で、法案は悪いんですけれども、運用面で時間が許す限りただしていきたいと思います。
 十日の質疑で民主党石橋委員が、地教行法四十八条に基づき、都道府県教育委員会が大綱に基づき市町村教育委員会に指導できるかという質問をされました。初中局長は、指導はできるが、その指導に市町村教育委員会は従う義務がない旨答弁をされています。
 そこで、都道府県の大綱に市町村教育委員会の権限を拘束する内容、例えば市町村立学校の教科書採択であるとか、学力テストの学校ごとの結果公表を行うものとするなどの記載をすることは適当ではないと大綱に書くこと自体が適当ではないというふうに考えますが、その点、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 現行の地方教育行政法第四十八条に基づき、都道府県の教育委員会は市町村に対し、必要な指導、助言、援助を行うことができるものであり、各都道府県の教育委員会においては市町村立の小中学校の取組を支援する各種施策を行っているところであります。したがって、こうした施策について都道府県において大綱に記載することは、これはあり得ると考えます。
 一方、都道府県の大綱に市町村の権限を拘束する内容を記載することは、これは適当でないと考えます。仮にそのような記載の大綱が策定されたとしても、都道府県の大綱に市町村が従う義務はありません。

○田村智子君 適当ではないし、従う義務もないと確認しました。
 次に、総合教育会議の協議題にすべきでない事項として、委員会の審議では教科書と人事に関することがあるということが答弁されましたが、間違いがないかを確認したいのと、加えて、その他教育の自主性、自律性、政治的中立性の観点から協議題にすべきではないと考えられる事項にはどのようなものがあるか、お答えください。

○政府参考人(前川喜平君) 教育の政治的中立性を確保するという観点から、教育の政治的中立性の問題が生じ得る事項といたしまして教科書の採択でありますとか個別の教職員人事というものを挙げたわけでございますけれども、これは一つの例示でございます。ただ、この例示につきまして、例示を網羅的にするということは難しいわけでございますけれども、そのほかに考えられるものといたしましては、例えば、首長が自ら属する党派の主義主張に偏した教材を学校で使用すること、あるいは首長が自ら属する党派の主義主張に偏した教育の実施を求めるというようなことにつきましては総合教育会議において協議をすべき事項ではないと考えております。

○田村智子君 それは協議題にもすべきでないということを確認しました。
 教育委員会の権限に属する事務で、教育委員会が反対したにもかかわらず、協議を尽くさず首長が大綱に記載する、こういうことは教育委員会制度の趣旨に照らしても問題が大きいことだと思います。教育委員会が教育専門的な判断から学校ごとの学力テストの公開はすべきではないと表明しているにもかかわらず、首長が公開すると大綱に書くということとか、あるいは教科書採択の方針などが問題になるということが想定されるわけです。
 そこで、確認をしたいのですが、現行法の二十三条、教育委員会の職務権限、法案では二十一条ですね、教育委員会の権限に属する事務については、教育委員会が反対しているにもかかわらず首長が大綱に記載するということも適切ではないというふうに考えますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱は首長が策定するものとしておるわけでございますが、策定の際には、教育行政に混乱が生じないようにするためにも、首長と教育委員会との間で十分に協議し、調整を尽くすということが肝要でございます。
 仮に、教育委員会の権限に属する事項であって、それを教育委員会の同意がないまま大綱に記載するということは、これは起こり得ないとまでは言えないわけでございますけれども、一般的に望ましいとは言えないと考えております。

○田村智子君 望ましい事態が起こらないためにも、適切ではないと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 望ましくないということでございます。

○田村智子君 次に行きます。
 法案第一条の四、九項で、前各号に定めるもののほか、総合教育会議の運営に関し必要な事項は、総合教育会議が定めるとあります。この定めるというのは、教育委員会と首長の双方が同意をして定めるということなのか、また、その運営に関する事項の中に、大綱以外の協議題についてはあらかじめ双方の同意を必要とするという趣旨を定めることは可能なのか、確認します。

○政府参考人(前川喜平君) 御指摘の改正案の第一条の四第九項でございますが、この法律案に規定されている事項のほか、総合教育会議の運営に必要な事項につきましては総合教育会議で定めるとされているものでございまして、それはすなわち、会議の構成員でございます首長と教育委員会の合意に基づき会議の運営方法が定められるということでございます。
 会議の運営に必要な事項は、それぞれの地方公共団体の実情に応じまして必要と考える事項を定めるということになりますので、国として一律にこういうことは定めなさいとか、こういうことは定めてはいけませんとかいうことではございませんけれども、例えば協議題の決定方法として事前に首長と教育委員会の双方で同意したものとするというような運営方法を定めるということは考えられるところでございます。

○田村智子君 総合教育会議は教育委員会と首長との連携を強めることが趣旨だと言っている以上は、以上のように協議題にふさわしくないものを首長が一方的に決めるべきではないと思いますし、その大綱の記載が逆に対立を深めるというようなことがあってはならないと思うんです。それだけに、施行通知によって、首長が一方的に協議題決めるべきじゃないよ、あるいは大綱というのはこういうことが適切だよということは、きちんと整理をして周知徹底することが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 総合教育会議における協議の対象として適切でない事項や、大綱の策定に当たっては十分に協議し調整を尽くすことが重要であることなど、改正案の内容や運用の在り方につきましては、この国会審議の中で慎重に議論され確認されてきたところであります。こうした重要な事項については、法案が成立した場合には施行通知や説明会等を通じて丁寧に周知してまいりたいと考えております。

○田村智子君 それから、調整の付かない事項を首長が大綱に記載した場合、これは起こり得るわけです、権限を持つ教育委員会が執行しない事項を記載することになり、そのような記載は意味がないという答弁が繰り返されました。仮に首長がその意味のないことを書く場合、これは意味がない部分だということが正しく住民に理解できるようにすることが必要だと私は思います。
 こういう指摘、石橋議員からも何回か行われまして、大綱の策定過程は住民に公開されているとか、議事録で総合教育会議や教育委員会会議の議論を読めば分かるという趣旨の答弁も繰り返されたわけです。質問の中でも指摘されたとおり、総合教育会議を大多数の住民が傍聴するとか議事録を全て読むということは、これはなかなか考えにくいことなんですよ。まずあり得ないと私も思います。
 では、それ以外の周知徹底の方法が必要で、例えば大綱の公表に際して、この部分は意味がない部分であるということを首長が自ら付記をするとか、つまり合意に至っていない、執行できない部分ですと、あるいは教育委員会が独自に広報をするということなどはできるのかどうか。また、それができるとしたら、本来、合意できていないものというのはちゃんと知らせることが必要ですから、そういうことができるんだよということは奨励されるべきだと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱を策定するに当たりましては、策定権者は首長でございますけれども、首長が総合教育会議において教育委員会と協議し調整を尽くすということが何よりも肝要であると考えておりますので、調整の付かないことを、教育委員会が執行する方向で同意していないような事項について記載されるということは、基本的には想定されないわけでございまして、余りその例外的な事態につきまして周知しなければならないとまでは考えていないわけでございますけれども、仮に首長と教育委員会の調整が付かなかった事項が大綱に記載されているという場合に、それを明らかにする方法といたしまして、首長と教育委員会の調整が付かなかった事項が大綱に記載されているということを教育委員会が自ら広報するような形で情報提供をするというようなことでありますとか、あるいは首長に教育委員会が同意していない旨を大綱の中に付記してもらうというようなことは想定されないわけではないと考えております。

○田村智子君 教育委員会自ら広報できると。首長が判断すれば自ら付記できることは、首長の判断ですから私はできるというふうに思います。
 最後、一問、教育委員の任命の在り方について大臣にお聞きします。
 これ、多様な教育についての民意を反映する上では、一党一派に偏った委員構成では様々な問題が生じ得ます。地教行法でも同一政党には属せないというふうになっています。これ、政党所属ではなくとも、例えば首長のイエスマンのような人物ばかりを任命する、こういうことを重ねていって、結局教育委員会が首長の意のままに判断するということになれば、これは教育委員会制度の趣旨に反することになると思います。そうならないように多様な人選が大変重要だと思いますが、大臣の見解をお聞きして、終わります。

○国務大臣(下村博文君) 現行法におきまして、第四条第四項において、委員の任命に当たっては、委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないよう配慮する旨の規定があり、多様な民意が反映されるよう配慮することが求められております。
 教育委員には、大所高所からの知見や教育長の事務執行のチェック機能が期待されるところでありまして、こうした観点から、教育委員、教育長、適切な人材が行われることが望ましいと思います。

○田村智子君 終わります。