国会会議録

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過労死まで自己責任 安倍「働き方改革」 月45時間 残業上限規制を 参院予算委 田村副委員長が追及

「安倍内閣の『働き方改革』では、過労死も自己責任にされてしまう」―。日本共産党の田村智子副委員長は31日の参院予算委員会で、電通新入社員の高橋まつりさんの過労自殺事件に触れて安倍内閣の「働き方改革」を追及し、労働時間管理の徹底と上限規制を求めました。

 残業時間は、厚生労働大臣告示で月45時間などとされていますが、労使で「三六協定」を結べば際限なく延長できます。電通は、「三六協定」で残業上限を月70時間に設定。しかも、労働時間を自己申告制にして、高橋さんは月70時間以下になるよう過少申告させられていました。

 田村氏は「自己申告制は長時間労働の隠れみのになっている」と指摘。労働時間の適正把握を企業側に義務付けた厚労省の「4・6通達」(2001年)に反するとただしました。

 塩崎恭久厚労相は「通達があっても守られていないことに問題がある」と答弁。安倍晋三首相は「厚労省が今月、策定したガイドラインに基づいて監督指導の徹底をはかっていく」と答えました。

 田村氏は、安倍内閣が提出している「残業代ゼロ」法案(労働基準法改定案)に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度」導入と、裁量労働制の対象拡大について追及。あらかじめ決められた時間しか働いたと見なされない裁量労働制が拡大されれば、高橋さんのような広告営業も対象になると指摘しました。安倍首相は「相当絞られる」というだけで否定できませんでした。

 塩崎厚労相は、成果で評価するという「高度プロフェッショナル制度」について、時間規制が適用除外になり、成果を評価されると答弁。田村氏は「成果が出るまで働くことが求められる。過労死も自己責任になる」と批判しました。

 さらに、田村氏は、安倍内閣が残業時間の上限について過労死ライン(月80時間以上)を上回る方向で調整していると報じられている点を批判し、「大臣告示を法制化すべきだ」と主張しました。安倍首相は「(労働時間の)上限を決めるにあたっては、過労死基準をクリアすることは前提だ」と答えました。

2017年1月31日(火) しんぶん赤旗

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【1月31日 予算委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 働き方改革についてお聞きいたします。

 過労死、過労自殺という痛ましい事件が後を絶ちません。安倍内閣は、働き方改革で多様な働き方を実現すると、こういうふうに言われていますけれども、総理、端的にお聞きします。これは労働条件や労働環境を良くしていこうという改革なのか、そうではないのか、お答えください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、働き方改革を始める際に、働く人の立場に立った改革、意欲ある皆さんに多様なチャンスを生み出す労働制度の大胆な改革を進めますと申し上げてきたところでありまして、働く人の視点に立った改革を進めてまいります。

○田村智子君 そうしますと、日本の労働条件良くしていこうと。これ、EU諸国と見ても大きな差があるわけです。パネル御覧ください。資料御覧ください。(資料提示)

 例えば労働時間の規制、EU諸国が守るべきルールというのがEU指令というもので出されていて、この指令に沿ってEU各国は自国の法律を整備しています。

 そうすると、時間外労働も含めて週四十八時間まで、これがEU指令の中身なんですね。残業をやっても週四十八時間まで。一方、日本は残業時間の上限規定がありません。これ、後でまた詳しくやっていきます。

 また、インターバル規制、昨日も議論になっていました。仕事が終わった時間と次の日の出勤時間の間に十一時間の休息時間の確保を義務付けているのがEU指令、EUの国々です。日本には規制がありません。ですから、深夜一時、二時まで働いても翌朝の定時出勤というのは当たり前になっているわけです。

 こうした国際的にも遅れている労働条件を改善する、この道に踏み出すべきではありませんか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど総理から御答弁申し上げましたとおり、働く方々の立場に立った改革をやるということで、当然のことながら、労働時間規制等々、そういった制度についてしっかりと今回も働き方改革実現会議で議論するということになって、もう既に始めているわけであります。特に長時間労働についてはこれから本格的に議論をするということで、我が国の実態を見ながら、働く方々の立場、視点に立ってしっかりと議論をし、実効性のある制度を、そして対策をつくってまいりたいと考えているところでございます。

 今、海外との比較をされました。例えばILOの条約などについても指摘をされることがありますが、おおむね我が国の労働法制と整合的に私はなっていると思っておりまして、批准にはもちろん、一部改正、国内の法改正をしなきゃいけない点がありますので慎重な検討があるというところがありますけれども、労働時間の水準をILOが求めているわけでありますが、それについては基本的には実現をしているというふうに考えているわけでございます。

 また、G7の中でもイギリスとかアメリカとかでは、やはりこの労働時間に関するILOの条約というのは十ありますけれども、いずれも一つも批准をしていないという、しかし国内と海外とのバランスはおおむね取れているという恐らく理解でそれぞれの国もやっているんではないかというふうに思っております。

○田村智子君 先にILO条約まで御答弁いただいたんですけれども、このEU諸国と日本の労働条件の大きな違い、厚生労働大臣言われたとおり、そのILO条約の批准というのは、私、やっぱりこれは指標になるというふうに思うわけです。ILO条約というのは労働条件の最低基準を国際基準として決めていくと、こういう中身なんですね。

 改めてお聞きします。じゃ、このILO条約の中で労働時間についての条約、これが幾つあって、日本が批准しているものは幾つあるのか、お答えください。

○国務大臣(岸田文雄君) ILO条約のうち、ILOによって締結が奨励されている労働時間に関する条約、合わせて十本あります。そのうち我が国が締結しているものはございません。

 この十本につきましては、日本以外にもアメリカ、イギリスなど四十五か国が十本全く締結していないという状況でありますし、G7各国を見ましても、日本、アメリカ、英国、これは全く締結していませんが、それ以外も、ドイツが十本中一本だけ締結している、フランスとカナダが二本だけ締結している、これが現状であります。

○田村智子君 例えば日本が批准していないILO条約、一号条約という最も基本的な条約、工場の労働者に一日八時間以上働かせてはならない、週四十八時間働かせてはならない、これも日本は批准をしていないわけですよ。労働時間という最も基本的な労働条件で国際基準を受け入れようとしていない、この政府の姿勢の下で過労死という、これ世界が驚く異様な事態が日本で起きていると、このことは直視しなければならないと思うんです。

 先ほどもう厚労大臣御答弁いただいたので総理にお聞きします。労働時間の上限、休息時間、休日の保障、こういうことを決めた基本的なILO条約、これは批准していないんです、日本は。やはり批准に踏み出していって国際基準に追い付く、よく世界をリードすると総理おっしゃるわけですから、追い付いて更に前に行くということが必要ではないでしょうか。総理。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど一号条約についてもお話がございました。

 これは一日八時間かつ一週四十八時間に制限するという条約でありますけれども、原則一週間を平均して週四十八時間の実労働時間の上限を設定をしていますけれども、労働基準法において我が国は三六協定の締結によって週四十八時間を超えて上限を定めることができるために、批准については慎重な検討が必要だということで整理をしているわけで、それぞれの国には労働市場がそれぞれあるわけでありまして、そこは労使の間での話合いの中でどういう形の規制がいいのかということは絶えず議論をしていただいた上で決めていくということが大事で、先ほど申し上げたように、また岸田大臣からもお話があったとおり、ILOの条約をそのまま受け入れているかというと、必ずしもそうなっていない。しかし、じゃそれを、言ってみれば哲学を潜脱しているかといったら、それもまた違うわけで、それぞれの国にはそれぞれの国の国内法制でもって働く方々を守るということをやっているというふうに理解すべきだというふうに思います。

○田村智子君 私、働き方改革の方向ということでILO条約の問題をお聞きしたんですけれども、これ現行と変わらなくていいよというような御答弁で、本当にそれで働き方改革できるのかなということを大変疑問に思わなければならないです。

 じゃ、具体的にお聞きしてまいります。

 私は、二〇一〇年に初当選をして以来、その間もなくのときから、過労死や過労自殺で息子さんや夫を亡くされたという遺族の方々と何度もお会いをしてまいりました。特に、全国過労死を考える家族の会の皆さんは、どうして過労死や過労自殺が繰り返されるのか、一日も早くこれをなくしていく抜本的な対策が必要だと、何度も何度も何年も掛けて私たち国会議員へのロビー活動を続けてこられました。その最初の一歩として超党派の議員立法で過労死防止対策推進法も作られましたが、この法律には盛り込まれなかったたくさんの政策提言を受けているわけです。

 そういう下で、電通で入社して一年足らずの高橋まつりさんが長時間労働に追い詰められて命を絶つという痛ましい事件が起きてしまいました。この事件に真剣に向き合うということが求められていると思います。まず、この事件について概要御説明ください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 私ども、この電通の問題については真剣に取り組んでいるところであることはまず申し上げたいというふうに思います。

 本件は、昨年の九月に労災認定を行った後に、この事件そのものがまずどういうことかということでありますから申し上げますと、十月にまず電通の本社、それから三支社、主要子会社五社の本社に対しまして管轄の労働局が立入調査を実施いたしました。その後、十一月の七日に電通の本社と三支社に対しまして強制捜査を実施をいたしまして、十二月二十八日に東京労働局が労働時間に関する労働基準法違反の容疑の固まったものについて、電通ほか一名、これを書類送検をいたしました。これは、労働基準法第三十六条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間を超えて、平成二十七年十月一日から同年の十二月三十一日までの間にそれぞれ違法な時間外労働を行わせたものだということでございます。

 現在、三支社も含めて捜査継続中でございます。

○田村智子君 総理も、この事件については、このような悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意ということを国会で繰り返し表明をしていただいています。

 なぜこういう事件が起きたのか、この検討が必要だと思いますが、総理の御見解を。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 当然、なぜこの事件が起きたかという実態について解明していくことは絶対的に必要だろうと、こう思っております。

 この件については、現在、全容解明に向けて労働局において継続した捜査が行われておりますが、一方、厚生労働省は昨年十二月に過労死等ゼロ緊急対策を取りまとめまして、労働時間の適正な把握の徹底や、長時間労働に関し企業本社に対する指導、是正指導の段階での企業名の公表等、法改正を待たずに対応可能な施策についてはスピード感を持って対応しておりますが、いずれにせよ、二度とこのような悲劇は繰り返してはならないとの決意の中で取り組んでいきたいと思っております。

○田村智子君 これは先週の本会議でも自民党の代表の方が、働き過ぎや残業して当たり前の企業風土があるという御指摘をされているんですね。習慣とか風土ということが言われていることがあるわけですよ。しかし、過労死という深刻な問題を、風土とか習慣とか、こういう問題に解消するわけにはいかないわけです。

 二度と起きないように政治が何をすべきかというこの観点から、一つ一つ聞いてまいります。

 まず確認いたします。日本でも、使用者、いわゆる経営者は、一日八時間、週四十時間を超えて労働させてはならないと法律で定めているはずです。どうして一日八時間を超えた労働が許されるのでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 労働基準法におきまして、時間外労働に関する労使協定、いわゆる三六協定を締結をして、所定の労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間、今の一日八時間、一週四十時間、この原則でございますが、これを超えて労働をさせることができるというふうになっているところでございます。

 三六協定で、まあ、そこまででよろしいですかね。

○田村智子君 パネルにもしました。労働基準法三十二条、一日八時間、週四十時間を超えて労働させてはならない。これ、違反をすれば懲役六か月以内若しくは罰金三十万円という、こういう罰則も定められているわけです。

 ところが、経営者と労働組合あるいは労働者の代表が労働時間の延長、つまり残業時間、これを例えば一か月四十五時間以内というふうに協定をする、約束をする。そして、その協定書を労働基準監督署に届け出る。すると、その範囲の中で、一日八時間を超えて働かせても法律違反にならなくなってしまう。これが労働基準法三十六条に基づく協定なので、いわゆる三六協定と呼ばれているわけです。

 では、この三六協定で、一日八時間、週四十時間、この大原則をなきものにされるんですけれども、労働時間延長の上限、この定めはありますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 三六協定で法定労働時間を超えて労働させる時間を定める際には、例えば、一月四十五時間、一年間で三百六十時間などの延長時間の限度を定めた大臣告示というのがございまして、いわゆるこの限度基準告示に適合するようにしなければならないというふうになっているところでございます。

○田村智子君 これも表にしました。この大臣告示の上限基準、これ週十五時間からあるんですね、細かい単位では。週十五時間、月四十五時間、年三百六十時間。これを超える労働時間の延長は、それでは認められないということなんでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) お配りの資料にもございますように、特別条項というのがございます。限度基準告示において、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限って特別条項というのが定められることになっておりまして、その限度時間につきましては、それを超えて労働をさせることができるというふうになっているわけでございます。

 現状として、特別条項では上限時間は限定をされていないわけでありますが、限度基準告示におきまして、延長時間はできる限り短くするよう努めなければならないとされているところでございます。

○田村智子君 これは労働組合の方とかあるいは弁護士の方などにお聞きしますと、三六協定、どんなふうに届けられているか。

 まず、この大臣告示の基準である月四十五時間を残業時間の上限とすると、こう決める。その上で、ただし書で、受注が集中し納期が逼迫したときには、労使の協議を経て一か月百時間まで延長することができるなど、これ例えばです、この時間とか文章は。こういう簡単なただし書で、繁忙期にはとか納期が逼迫しているときにはとか、こういう曖昧な文章の一文で一か月百時間とか書けちゃうわけですよ。

 先ほども御答弁ありましたが、もう一度確認します。このただし書の特別条項と呼ばれるものに上限時間の上限を課す何らかの規定、これはないということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) それはございません。

 したがって、今、働き方改革実現会議でまさに三六協定が実効性のあるものになるように議論しようということで、今議論がまさに始まるところでございます。

○田村智子君 ないんですね。ですから、私もインターネットで三六協定ってどういうものかと調べていきますと、企業向けに三六協定の書き方を教えるサイトがいろいろあるんです。そうすると何と書いてあるか。特別条項はできるだけ長い時間を記載しておきましょうと、こうアドバイスするようなものまであるわけですよ。一日八時間を超えて労働させてはならないという法律も、残業時間は月四十五時間以内とする大臣告示も、こうやって合法的に骨抜きにされている。これは長時間労働が、風土ではなくて、法制度そのものの欠陥、大穴にこそ一番の原因があるということを示しています。

 電通の問題に照らしてこの問題見ていきます。報道では、電通は一日の労働時間は七時間としていて、残業時間上限は月七十時間というものだそうです。ただし、繁忙期には、これに加えて五十時間の延長というとんでもない三六協定を届け出ていて、こんなとんでもない三六協定を労基署は受け取っていたということだと思います。

 では、高橋まつりさんの実際の残業時間はどのように確認されていますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回、電通を書類送検をしたのは、労働基準法違反の容疑で長時間労働を強いていたということでございます。

 ただ、今御質問の件につきましては、個別の事案の詳細でございますが、ただいま捜査中でもございますので、お答えを差し控えたいというふうに思います。

○田村智子君 報道では、遺族が労災認定に当たって入館記録を集計したところ、月百三十時間を超える残業があったと言われています。

 では、高橋まつりさんが会社に申告をしていた残業時間はどうなっていましたか。

○国務大臣(塩崎恭久君) それもやはり個別の捜査案件のことでございますので、詳細は差し控えたいというふうに思います。

○田村智子君 これもう報道もされていますし、これだけの大問題なので、せめて三六協定以内だったぐらいの御答弁いただきたかったというふうに思うんですけれども、これ申告は、三六協定で出している月七十時間に収めるように、十月は六十九・九時間、十一月は六十九・五時間、十二月は六十九・八時間と、こうなっていたと言われているんです。

 上司らは、申告された時間が実態と全く違うということを知っていた。それでも、仕事の期限を守るようにと指示するだけで、業務量の調整などは全くやらなかった。そして期限内に仕事ができないと、あなたの能力が足りないんだと、こういうパワハラを繰り返していたと、こういう報道されているんです。

 労働時間を自己申告制とすることで三六協定も歯止めになっていない、こういうことではないんでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘の自己申告でありますが、原則は使用者が把握をしないといけないと、労働時間に関しては、といいながら、この自己申告というのもあり得るということで、この労働時間把握を自己申告を通じてやる場合には、労働時間管理が曖昧になりがちであるということから、各企業において労働時間を適正に把握するための措置をしっかりととる必要があるというふうに考えております。

○田村智子君 自己申告に問題があるからいろんな指導をしてきたということだというふうに思いますが、これ、仕事が遅いとか、あなたの残業は無駄だと、こんなふうに上司に言われていたら、残業をありのままに申告することはこれできないですよ。

 自己申告制は長時間労働の隠れみのです。この問題は今指摘されていることじゃないんですね。過労死問題に関わってきた皆さん、長年指摘され、私たち日本共産党も九〇年代から二〇〇〇年の初めにかけて集中的に国会で取り上げてきました。その下で、二〇〇一年四月六日、厚生労働省は初めて、使用者には、経営者には労働者が働いた時間を把握する責任がある、このことを明確にする通達を出しています。これ二〇〇一年四月六日なので、日付を取って四・六通達というふうに呼ばれていますが、この中で自主申告制についてはどのように述べていますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) いわゆる今おっしゃった四・六通達でございますが、その中で、御指摘の通達は、労働時間を管理する原則的な方法として、使用者自身による確認あるいはタイムカード等の客観的な記録を基礎とした確認を定めていたわけでございます。他方で、自己申告制による労働時間把握を行う場合は管理が曖昧に先ほど申し上げたようになりがちでありますので、このような場合に講ずべき措置として、自己申告で把握をした労働時間が実際の労働時間と合致しているか、必要に応じて実態調査することなどを定めていたというふうに理解をしております。

○田村智子君 管理の仕方をこれもパネルにしました。

 適正に自己申告を行うようにと説明をする、あるいは、それが合致していない場合には実態調査を行う、労働時間ちゃんと申告ができないような阻害要件、こういうのを作っては駄目だと、ありのままに申告できるようにしなさいと。

 電通が、この四・六通達、二〇〇一年ですよ、二〇〇一年に出されたこの四・六通達にのっとって実際の労働時間を真面目に管理していれば、三六協定を超えるような月百三十時間もの残業というのはこれできなかったはずなんですね、させられなかったはずなんですよ。

 そもそも、この四・六通達、労働時間の管理責任は使用者、企業にある、これ明確にしたのはどういう経緯だったか。一九九一年、電通に入社をして二年目の二十四歳の男性社員が自殺をしたと。遺族は長時間労働が自殺の原因だとする裁判を起こして最高裁まで闘って、二〇〇〇年に日本の司法判断で初めて過労自殺を、これは過労自殺ということを、過労が自殺を生むということを初めて認定したんです。これ確定したんです。この判決が四・六通達の直接の契機だったはずなんですね。

 この一九九一年の事件についても概要を御説明ください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今の最高裁の事件の概要でございますか。

 この判決では、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の執行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負うというふうに判決がなされたところでございます。

 ただ、私どもは、この御指摘の判例につきまして、四・六通達の発出に至ったもとだという御指摘でございますけれども、我々はそうは考えておりませんで、この四・六通達を発出するに至ったきっかけは、平成十二年十一月の中央労働基準審議会、ここで、使用者が賃金全額払いなどの労働基準法の規定に違反しないよう労働時間管理を行うことについて建議がなされたことによるものでございまして、いずれにしても四・六通達は、今回実は新しいガイドラインを年末の緊急対策で出しましたので、この緊急対策によって、このガイドラインができることによって四・六通達は廃止をしたということになるわけでございますが、先ほどの最高裁の話は先ほど申し上げたとおりでございます。

○田村智子君 大臣言われたところにつながっていくんですよ、この電通の初めての過労自殺の認定ですからね。

 これ、どういうことが起きていたかというと、もう自殺するまで、一月から八月までのこの期間で残業時間の一か月平均百四十七時間、これ事実認定されているんですよ。ところが、自己申告していた残業時間は、少ない月が四十八時間、多い月が八十五時間、こういう申告がされていたと。これに乖離があるということを使用者は知っていたのに何ら手だてを取らなかった、その安全配慮義務違反ということがこれ認定をされているわけですよ。これ全く同じじゃないですか、今起きている高橋まつりさんの事件と。

 この裁判でも、九一年のときにも、電通は一貫して、自己申告された労働時間を根拠に長時間労働はなかったといって裁判を闘ったわけです。遺族は苦労に苦労を重ねて、深夜退社するときにはセキュリティー上この記録がされていると、退社時間記録されていると。この事実をつかんで、ようやくその時間を集計して労働実態を暴いていったという裁判だったわけですよ。

 電通がこのときの最高裁判決を真摯に受け止めて、そして四・六通達に基づく労働時間の管理徹底していたら、高橋まつりさんを死に至らしめることはなかったと思いますが、どうですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘をいただいた四・六通達に従って企業が、あるいは電通のような企業がその手順をしっかりと踏んで遵法精神に満ちた対応を取っていれば問題が起きなかったんじゃないかという御指摘でございますが、私どもも基本的に、今回、何でこの働き方改革をやっているかといえば、それは法令としてはきちっとある、そして、今の法律になっていなくても通達があって、それが守られていないということに問題があるというふうにも思っているわけで、さっき企業の風土といって御指摘をいただきましたけれども、まさに、この企業文化というのはまさに法律どおりやらないという文化でもあるわけでありますので、これは看過できないと。

 私どもとしては、やはりきっちり法律に従ってやらなきゃいけないし、法律が十分でなければ、今回議論を経て、どういうふうにこれが実効性のあるものにして、長時間労働、意に反する長時間労働を強いられるというようなことがないようにするかということをまさにこれから議論するということでございます。

○田村智子君 こういうところで文化なんて言葉が出てくるのは驚きですよ。

 これ、総理にもお聞きしたいんです。これ、電通一社のことではないんですね。この事件を繰り返さないと言うんだったら、やはり、労働者が過労によって病み、命をも落とす、こういう事態を防ぐためには、労働者一人一人の労働時間を適正に管理する、この責任を企業に徹底する、その厳正な実施を求める、これが必要だと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 長時間労働を防止をし、そして労働者の健康を守るためには、事業主が労働時間を適切に把握し、そして管理することは当然のことであります。この労働時間をタイムカードなどでなく自己申告により把握する方法を取った場合、実際に働いた時間と自己申告により把握した時間との間に乖離があってはならないと、こう考えています。

 このため、厚生労働省では、昨年取りまとめた過労死等ゼロ緊急対策に基づいて、今月二十日に使用者向けの新たなガイドラインを策定しました。自己申告により把握した労働時間と入場記録などから把握した在社時間との間に著しい乖離があったときは必ず実態調査を実施することや、労働者が自己申告できる時間外労働に上限を設けてこれを超える申告を認めないなど、使用者が適正な自己申告を妨げることをしてはならないことなどを盛り込んでおります。

 今後は、このガイドラインに基づいて労働局や労働基準監督署が監督指導を行い、労働時間の適正な管理の徹底を図っていく考えでありまして、引き続き、長時間労働をなくし、過労死の悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意であらゆる手段を講じていく考えであります。

○田村智子君 ところが、政府が国会に提出している労働基準法改正法案、これ、労働時間の管理を強めるどころかむしろ後退させるものではないかというふうに私は大変危惧をしています。

 具体的に聞いていきます。その一つ、裁量労働制の規制緩和、対象拡大、これについてお聞きしますが、まず、裁量労働制というのがどういうものなのか、御説明ください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 裁量労働制といいますのは、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定をする自律的で創造的に働く方を対象として限って、労使であらかじめ合意をした時間を労働時間とする制度でございます。

 この制度では、深夜や休日は時間に応じた割増し賃金を支払いつつ、通常の労働時間は労使であらかじめ決めた時間労働にしたとみなすものでございます。

○田村智子君 みなし時間というのをあらかじめ例えば八時間というふうに決めますと、十二時間一日働いても四時間分の残業はなかったことにされるということなんですね。深夜労働と休日労働については割増し賃金の支払の義務がありますが、それ以外の残業代は払わなくていいという制度になります、簡単に言うと。

 もう一点確認しますが、裁量労働制の労働者、では、これは過去五年間、労災認定はどういうふうになっていますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 労災認定の件数のお尋ねでございましたが、過去五年間を見ますと、これ平成二十三年度から二十七年度の五年間でございますが、裁量労働制の対象者に係る脳・心臓疾患の労災認定、この件数を申し上げますと、これ二種類ございますが、専門業務型というのと企画業務型というのがありますが、専門業務型が十五件、それから企画業務型が一件でございます。それぞれ死亡事例は、専門業務型が五件、企画業務型はゼロでございます。

 また、精神障害の労災認定件数というのは、専門業務型が二十六件で、うち死亡事例が四件、そして企画業務型、今回法改正をお願いをしている分でありますが、これについては二件でございまして、死亡事例はゼロでございます。

○田村智子君 この専門業務型というのは大変対象が広くて、いわゆる技術職というのは広く対象にされているわけです。例えばIBM、システムエンジニアはほぼ全員が裁量労働制だとお聞きをします。どんな働き方しているんですかというふうにお聞きしましたら、ある会社のシステム開発を受注すると、自分の会社ではなくて、そのお客さんの企業に行って働くことになる。客先常駐というそうです。お客さん企業にずっと行きっ放しになっちゃう。自分の会社が無理な納期で仕事を請け負うために、約束の期限が近づくと異常な長時間労働になるのはもう当たり前だと。自分の裁量で働けるどころか、会社が請け負った契約と顧客企業の都合で長時間労働を余儀なくされていると。こういう下で過労死まで起きるような労災認定が行われているということです。

 大臣が言った過労死起きていないよという企画業務型、こういうのは限定的なんです。営業職の業務、極めて限定的に対象となっていますが、今の法律で裁量労働制の対象となり得る営業の業務の例、なり得ないものの例を示してください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の労働基準法の改正で御提起申し上げている裁量労働制、企画の方を指しているというふうに理解すれば……(発言する者あり)今回の企画裁量型の労働制に関して申し上げれば、自社の、まあ言ってみれば自社の経営を全体を変えるような、自社の事業計画などの企画立案の調査分析をするような、そういう場合のものが対象でございますので、例えばルートセールスみたいな、コピー機を売り込みに行くとか、そういうようなものが対象となるわけではないのでございます。事業の運営に関する事項についての企画立案、調査分析業務でございまして、そういうものでございます。(発言する者あり)

○委員長(山本一太君) 塩崎厚労大臣。

○国務大臣(塩崎恭久君) いや、ですから、さっき申し上げたとおり、企画業務型の裁量労働制の場合の業務の対象という意味において申し上げれば、今申し上げたとおり、現在の制度でもそうですが、当該企業の事業の運営に係る事業についての企画立案、調査分析、こういう業務になるわけで、いわゆる外に行って営業するというようなものが対象になるものではないということでございます。

○田村智子君 今の法律では、自分の会社の営業方針を企画するという営業職は認めますが、裁量労働にしていいけれども、外に向けての営業、これは駄目ですよという、裁量労働やっちゃ駄目ですよと。

 じゃ、法案、今度出してきている法案は、個別の企業をお客さんとする営業、これは認めることになるんじゃないんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) これも、今回提起申し上げているのは二種類あります。それは、一つは、自社の中だけで完結するような事業計画などの企画立案、調査分析に加えて、自社の中でも実施の管理や実施状況の評価、改善を行うために、例えば自分の会社の工場の現場に行って実際にシステムが機能するかどうかということをやるという、自社の範囲だけれども本社の中だけではないというところに出張っていくときもあり得るということについて、これはPDCAを回す業務と我々は言っていますけれども、裁量的に、ここに追加をしようということが一つであります。

 今御指摘の、自社じゃない、当該企業ではないところへのいわゆる営業とおっしゃいましたが、我々はこの営業という言葉はもう少し分かりやすくした方がいいかなと思っておりますけれども、我々は今回、法人顧客、つまり取引先の相手、相手の事業計画そのものの全体、言ってみれば経営を左右するようなそういう企画立案、例えば、あれですね、銀行でいえば、例えば決済システム全体の提案、そういったことを指すわけでございまして、顧客である法人の事業全体に影響するような重要な事業計画の、あるいは経営方針の問題解決につながるものに限って提案をする、あるいは自ら企画立案して開発したプランとかサービスを提案すると。こういうものをできるように初めてしていこうということを今提案をしているところでございます。

○田村智子君 これ、課題解決型提案営業というのを新たに加えるというんですね。

 じゃ、ちょっと具体的に聞きますよ。例えば、電通での高橋まつりさんの主な業務は、インターネット広告のデータを、相手先の企業のインターネット広告のデータを確認、分析し、問題を解決して新たな広告やサービス、こういう戦略をその顧客企業に提案するというものですけれども、これは課題解決型の営業そのものだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど申し上げたように、あっ、その前にまず、この企画業務型裁量労働制の適用対象は、大臣告示で三年ないし五年程度の職務経験を経る必要があると定めておりますので、高橋まつりさんのように、一年生がなることはあり得ないことでございます。

 それに加えて、今回追加をする課題解決型提案営業というのは、顧客である企業全体の経営を左右するような、さっき申し上げたとおり、ですから、何か部分的な宣伝のやり方とかそんなことではなく、それは企業全体の広報戦略とかそういうようなことはあり得ますけれども、ですから企業全体の経営を左右するような経営方針の企画立案などを対象とするものでありますので、高橋さんの仕事は、我々は報道で見る限りはそのような業務ではないというふうに聞いておりますので、そのような対象になることはあり得ないというふうに考えているわけでございます。

○田村智子君 それじゃ、広告業務全体はなり得ないでよろしいですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) いわゆる狭い意味の広告ということで、単品の商品の広告とかそういうようなことでやることではないということであって、企業全体のイメージ戦略をどうするのかとかいう大きなお話の場合にはあり得るかも分からないということであって、それはしかし、広告業界の要望などについては我々はまだ承知をしておりませんので、今回の法改正に影響を与えるものでもないし、そういうことになることでもないと。少なくとも先ほど申し上げたように、高橋まつりさんは新入社員でありますから、少なくとも三年から五年という職務経験もない方が対象になって長時間労働を強いられるようなことはあり得ない制度だというふうにお考えをいただきたいと思います。

○田村智子君 電通は、オリンピック全体のイメージ戦略とか会社のイメージ戦略なんて幾らもやっているじゃないですか。

 先取りしていただきましたけれども、確かに広告業界というのは、これは電通の会長さんが広告業協会の会長だったとき、一九九八年の法改正に当たって広告業務を営業職裁量労働の対象にしてほしいという要望書を当時の労働大臣にも出しているんですよ。広告業界の業務、これ当たらないとは、当時、最初にこの裁量労働制、企画業務型に広げるって議論やったときには広告業界の業務は入らないって当時は明確に答弁しているんですよ。今度はそれ崩れているじゃありませんか。

 今、電通というのは、今回の事件を受けて夜十時に消灯ですよ。そうすると、朝の五時から出勤しているそうです。ちなみに、裁量労働で支払義務があるという深夜割増し賃金は深夜十時から翌朝五時までが深夜割増しの賃金対象なんですよ。ということは、今の電通に裁量労働制適用したら労働者全員残業代ゼロ、そういうことになるんじゃないですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この裁量労働制の制度についてのお尋ねが最初にございましたけれども、そのとき申し上げたように、自らの裁量でやり方とか時間とかを自分で決められる、それだけの力のある、専門性のある方が対象になるということでありますので、今回、課題解決型提案営業にしても、これは、その高橋まつりさんのような方がなることはないというのは、一年生だからならないというのも当然のこととしてありますけれども、それ以外でも、やはりこの対象になる人はまさに自ら企画立案、調査分析を行う方でなければいけないのであって、その相手の企業の言ってみれば経営を左右するような大きな問題についての企画提案を、立案をするということでありますので、十把一からげにそれに関わる人は全員裁量労働制になるかのようなことはあり得ないということでございます。

○田村智子君 労政審の建議で、これ広げると言ったときに具体的に何と言っているか。例えば、取引先企業のニーズを聴取し、社内で商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた課題解決型商品を開発の上、販売する業務、こういうのが当たると言われているんですよ。まさに、まつりさんがやっていたような仕事なんですよ。そうじゃないですか。

 こういう広告業界、裁量労働制適用したら、総理、お聞きしたいんですけれども、残業代ゼロ法案じゃないと言うけど、これ、深夜と早朝までの間さえ働かなければまさに残業代ゼロで働かせることできるようになっちゃうんじゃないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今厚労大臣からもお答えをしております。今の質疑をお伺いさせていただいて、この裁量労働制に課題解決型提案営業の業務を対象として追加をしますが、その際、厚労大臣から答弁をいたしましたが、法人顧客の事業全体にとって重要な事業計画等の課題解決につながる業務であることということでありますから、これはやはり相当絞られるんではないかという私は印象を持っております。

 その中において、これは電通ということではなくて一般論でありますが、一般論で申し上げれば、広告代理店が行う個別の広告の制作や広告枠、この広告枠の営業業務というのは大変多いと思いますが、企画業務型裁量労働制の対象とはならないと、このように考えております。

○田村智子君 それは労政審の建議で出されたものと総理の見解はかなり食い違っているということと、もう一つ、顧客企業との関係という仕事を入れてしまったら、さっきIBMの働き方言いましたけれども、相手の企業の納期に合わせなきゃいけないんですよ。相手の企業の要望に合わせて企画立案、調査しなければならないんですよ。そこにどうやって労働者の裁量が入り込むことができるのか。現に過労死まで起きているじゃないかということ、これは厳しく指摘しておきたいというふうに思います。

 もう少し議論を進めたいんですね。

 この裁量労働制よりも更に企業の労働時間管理の責任を後退させるのが高度プロフェッショナル制。これがどういうものか、御説明ください。

○国務大臣(塩崎恭久君) これは、高度プロフェッショナル制度というのは、高い専門能力を有して、時間ではなくて成果で評価をされる働き方を希望される方々について、自律的で創造的な働き方が可能となるような働き方の選択肢を増やすものだということでございます。

○田村智子君 一日八時間、週四十時間以上働かせてはならない、この労働時間の規制を適用除外とする働き方ということでよろしいですね。

○国務大臣(塩崎恭久君) この制度は、健康確保措置をしっかりと掛けた上で、言ってみれば残業代込みの年俸制のような働き方だというふうに御理解をいただければ分かりやすいかなというふうに思っております。(発言する者あり)

○委員長(山本一太君) 発言はきちっと委員長の許可を取ってからにして。質問してください。(発言する者あり)

 塩崎厚労大臣。

○国務大臣(塩崎恭久君) 御指摘の労働時間の規制につきましては、先ほど申し上げたとおり、高い交渉力を有する高度専門職でございまして、労働時間規制は適用除外をいたすわけでございますが、それに代わって、働き方に合った健康確保のための新しい規制、罰則付きの規制というものを設けるということになっているわけでございます。

○田村智子君 済みません、罰則付きの規制って何ですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) これは健康確保措置に関するものでございまして、これは、百時間を超える労働をした場合には医師の指導を受けないといけないということで、それをしなければ罰則が掛かると、こういうことでございます。

○田村智子君 まあその程度ってことですね。

 それで、総理にもお聞きしたいんですけど、何でこんな働き方、これまで私ずっと労働時間の管理がいかに大切かということを過労死、過労自殺の問題で議論してきたわけですよ。その管理の対象から外すという働き方をなぜ今つくる必要があるんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 現在提出をしている高度プロフェッショナル制度は、働き過ぎを防止するための施策を講ずるとともに、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものでありまして、この制度は、時間ではなく成果で評価される働き方、これは自らそういう評価をしてもらいたいと、こう選んだ人にのみ適用されるわけでありまして、そして、かつ高い交渉力を有する高度専門職を対象としているわけでありまして、例えば、アイデアが湧いてきたときに集中して働く、健康の確保に十分留意しつつ、意欲や能力、創造性を存分に発揮できる環境をつくるためのものであります。

 労働時間に画一的な枠をはめる従来の発想を乗り越えて、高度なプロフェッショナルの方々が自らの創造性を思う存分発揮できるようにするための制度であり、必要なものと、このように考えております。

○田村智子君 私、素朴に疑問なんですよ。例えば、総理、過去の御答弁でも、昼間休んで深夜に出勤してという働き方もあるじゃないかとか、長く働く日もあるけどたっぷり休む日もあるじゃないかという御答弁もあったんですけれども、これ、裁量労働制と何が違うんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 裁量労働制は、先ほど申し上げたとおり、時間法制は掛かるわけでありまして、そしてみなし時間で労使の合意の下で行われるということで、高度プロフェッショナルの場合には、これは時間で測るのではなくて成果で測るということで、これも労使の五分の四の多数決で決められた要件の下で合意をもちろん本人がした上で導入をされる新しい働き方であって、先ほど申し上げたとおり、残業代込みの年俸制というべきものだろうと思いますし、これ通常払われる賃金の三倍を超える所得のある方に限ってということで、これどのぐらいいるかというと、これ国税の統計で見ますとせいぜい三%ぐらいですけれども、その中で役員というのもありますので、まあその半分ぐらいしかおられないというごくごく限定された専門的なお力を持った方が選ばれる可能性のある働き方として提案を申し上げているということでございます。

○田村智子君 これ、時間ではなく成果では測る、そこが裁量労働制との違いだと。

 それは具体的にどういうことか。裁量労働制は、先ほども言いました、深夜・休日労働については割増し賃金を支払うという義務があります。高度プロフェッショナル制にはその義務はないということですよね。

○国務大臣(塩崎恭久君) さっき申し上げたとおり、高度プロフェッショナルは残業代込みの年俸制とお考えをいただければいいということは、おっしゃるとおりでございます。

○田村智子君 裁量労働制だって残業代込みなんですよ。みなし時間ってそうやって見ているわけですよ。残業代込みの賃金にして、だけど深夜と休日は払う。高度プロフェッショナルはそれさえ払わなくていいと。

 もう一点確認します。裁量労働制の場合は、どの時間帯で何時間働くか、あるいは業務のやり方について使用者が労働者に具体的な指示をしてはならないというふうに法律で定めています。高度プロフェッショナルはこういう定めがありますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 高度プロフェッショナル制度は裁量労働制と異なりまして、深夜労働も含めた割増し賃金等の労働時間規制を適用除外というふうにしておりまして、これによって労働時間の長さと割増し賃金のリンクを完全に切り離すことが可能となっているわけでありまして、また、高度プロフェッショナル制度の対象業務については、先ほど来申し上げているとおり、企画業務型の裁量労働制と異なりまして、高度の専門的知識などを必要とし、その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるといった要件が法律で定められております。

 これらのことから、同制度は、この高度プロフェッショナル制度は、業務の遂行の手段や時間配分の決定などに関して使用者が具体的な指示をしないことを要求する企画業務型裁量労働制以上に、仕事の進め方や労働日、日にちですね、あるいは労働時間の配分、こういったことについて働く方に、その裁量に全く委ねるという制度になっているわけでございます。

○田村智子君 だったら、指示しないという条文が必要なんですよ。それすらないんですよ。裁量労働制は、それで指示しちゃったら裁量労働から元に戻らなくちゃならない、残業代全部払わなきゃならない。こんな定めも高度プロフェッショナル制にはありません。

 これ、総理にお聞きしたいんですよ。裁量労働制よりも結局よっぽど使い勝手がいい働き方、こういうのをつくることになるんじゃないのか。年収要件というふうにおっしゃいましたけれども、結局、経団連の榊原会長は今年の年頭インタビューで、法律が成立してもいないのに、年収基準を引き下げて対象を広げるべきだと、既にこんなことも述べているわけです。

 成果で測るんだ、こう言われれば労働者どうなるか。成果を上げるために長時間労働へと駆り立てられていくんじゃないのかということは、これもう考えればすぐに分かることだというふうに思うんです。それでも労働時間は自分が管理するんだ、そうなったら、過労死さえも自己責任にされてしまうんじゃないですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 再々厚労大臣からも答弁させていただいておりますが、年収要件としては大体一千万円以上ということになっています。そして、それは管理職ではないわけでありまして、管理職でなくて一千万円の年収があるという人は、まさにこれはプロフェッショナルな知識や能力がなければそういう報酬を受け取ってはいないんだろうと、こう思いますし、そういう人というのはこれは本当に少ないと思います。

 そういう方々が、今、先ほども答弁をさせていただいたように、こういう、結果で見てもらった方がいいというそういう要望があればそういう働き方ができるようにするものでございまして、そういう人たちを言わば過酷な労働条件の中に落とし込んでいこうという考えは、もうこれは毛頭ないわけでありまして、むしろそういう方々が、そういう働き方を望んでいるという方々がそういう働き方ができるようにしていこうと、こういうものでございます。

○田村智子君 労働時間の管理がこれだけ問われているときに、その規制を一切受けない、こんな働き方つくるなんということは断じて認めるわけにはいきません。やるべきは逆ですよ。おっしゃるとおり、労働時間をしっかり管理する、そしてその上限を定めるということです。

 上限規制のことに話を進めたいというふうに思います。

 時間外労働を罰則付きで上限決める、そのための法案を提出する、私も賛成です、やらなきゃいけないと思います。ところが、この間の報道ですよ。繁忙期などは月百時間、二か月平均八十時間を上限とすると、こうやって決めるという報道が流れてきて昨日も議論になっていました。私は驚きました。過労死ラインを働く基準として法律で定める、こんなことがあってはならない。私は、せめて総理はその考え方示すべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今まで田村議員が御議論いただきましたように、現在の三六協定では労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められると。これを見直して、誰に対して何時間の上限とするか、これを明確に定めたいということで議論をさせていただいております。

 この上限については、現在、政府の働き方改革実現会議において、まさにこれから有識者、経済界、労働界の代表の皆さんから様々な意見を伺って検討していくことになるわけでありますが、しっかりその実態、現状を見ながら議論をして結論を出したいと思っております。

 何時間の上限とするかを決めるに当たっては、脳・心臓疾患の労災認定基準、いわゆる過労死基準をクリアするという健康確保を図る、これはまず大前提でありまして、その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点、またワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、様々な視点から議論をしていきたいと、こういうふうに考えております。

○田村智子君 総理は働き方改革実現会議を主宰されているわけですから、いよいよあした議論するというわけですから、この過労死ラインの法制化は駄目だと、それぐらい言ってくださいよ。考え方として。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、もう既に加藤大臣から答弁をさせていただいているところでありますが、時間外労働の上限については、政府の働き方改革実現会議において、これから有識者や労働者、使用者側の議員から様々な意見を伺って検討していくことになるわけでありまして、実態を見ながらしっかりと議論して結論を出していく考えであります。

 誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、脳あるいは心臓疾患の労災認定基準、いわゆる過労死基準をクリアするといった健康の確保を図ることが前提であります。その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点やワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、様々な視点から議論をする必要があると考えております。

○田村智子君 その月百時間、二か月平均八十時間、これはいかがなものかという総理のお考えを示すことはできないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まあ、今まさにその議論が始まろうとしているわけでございますから、専門的な観点からしっかりと御議論をいただきたいと、労働者の代表の方も入っておられるわけでございますから、御議論をいただきたいと思っております。

○田村智子君 何で駄目かと言っているか。資料を御覧ください。

 過重労働による健康被害を防ぐために、これ、厚労省が出しているパンフレットから取った図です。これ、ちょっと御説明いただきたいんですね。この月百時間超又は二か月から六か月の平均で月八十時間を超えるとどうなってしまうのか、どういう検討だったのか、お答えください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 長時間労働や睡眠不足による疲労の蓄積というものが血圧の上昇などを生じさせて、その結果、血管病変等を著しく増悪させると。あるいは一日七、八時間程度の時間の睡眠ないしはそれに相当する休息を確保できる状態が最も健康的であるということなどに着目をしてこの専門検討会の報告書が医学的な知見を示しているということでございます。

 具体的には、一日七、八時間程度の睡眠時間が確保できる状態は一か月おおむね四十五時間の時間外労働に相当し、おおむね四十五時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど業務と発症との関連性が徐々に高まる。そして、発症前一か月前におおむね百時間又は発症前二か月間ないしは六か月間にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働に継続して従事をした場合、この場合には業務と発症との関連性が強いこと、そして労働時間以外の負荷要因である不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務などについても評価する必要があるということなどが結論として報告をされているというふうに理解をしております。

○田村智子君 これ、大臣告示で何で週十五時間あるいは月四十五時間を決めたのか。健康に働けるラインがここだからということなんですよ。

 そうしたら、一日八時間が原則で、繁忙期であっても大臣告示以内で働くんだと、こういう基準にすることが健康に働き続ける上での時間外労働の上限ということにならなきゃ私はおかしいというふうに思いますが、先ほど公明党の議員の質問に、総理はかまぼこ屋さんの例挙げて、繁忙期のときにはなかなか難しいときがあるというふうにおっしゃいましたが、一度月百時間なんていうのを入れ込んだら常時繁忙期になっちゃうんですよ。それが電通で起きていたことじゃないですか。

 大臣告示を上限とする、これが必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、健康とそれから労働時間の関係について私からも御説明申し上げたとおりでございまして、それらを踏まえて、そしてそういった基準があるわけでありますから、それらも踏まえて、しかし、ワーク・ライフ・バランスであるとか女性や高齢者の活躍であるとか、いろんなことを踏まえた上で今回、長時間労働についてどういう実効性のある規制がなし得るのかということを議論していただこうということでございますので、今、大臣告示についての御指摘もございましたが、大臣告示の在り方の問題も含めて議論をこれからしていただいて、結論を出して、それを法律にしていくということでございます。

○田村智子君 これ実現会議の試金石ですよ。大臣告示とするのか、それとも特別条項のようなただし書でそれを超えるのを認めちゃうのか、あしたの議論を注視したいというふうに思います。

 法制化とともに、次に進みます、やっぱり企業の違法行為、これを許さないという、そういう行政の立場がとても求められていると思います。その点では、不払残業、この企業犯罪というのが後を絶たない。

 今日、この場ではヤマト運輸の例を出したいと思います。

 神奈川県内のヤマト運輸の支店に対して、昨年八月、不払残業に対する是正勧告が行われたというふうに報道をされました。これは、申告した男性は月百時間を超える残業もしていたと。二年分の不払残業として、タイムカードから集計すると百九十万円の残業代があるんだって言って、この男性は申告をしているということなんですね。

 このヤマトの事例で私がちょっと深刻だと思うのは、言わば違法なサービス残業、不払残業をシステム化していたということです。宅配業務というのはコンピューターで管理されていて、ポータブルPOSと呼ばれる端末機械で配達伝票のバーコードをピッと読み取るわけですね。これで配達状況を記録する。各ドライバー、みんなこのポータブルPOSを持っているわけです。

 ヤマトは、このポータブルPOSの電源を入れた時間が始業時間、電源を切った時間が終業時間。こうなりますと、ドライバーはまず事業所へ行って打合せとか朝礼やる、これは労働時間に含まれなくなります。事業所に帰って配達が終わってからの伝票整理をやる、これも労働時間に含まれなくなってしまいます。

 これ、ドライバーは全国に約五万人です。本社を含む全国的な調査、指導監督必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 一般論で言えば、今御指摘のように、きちっとした実労働時間をきちっと管理するということを私どもはしっかりやっていかなきゃいけないので、それを潜脱するようなことがあるかどうかということは当然見ていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 ただ、今のヤマト運輸の問題は個別の問題でございますので、これはお答えを差し控えたいというふうに思うところでございます。

○田村智子君 ヤマトのこの問題は、既に二〇〇七年に大阪南労基署で指導されている。二〇〇八年にも松阪労基署で是正勧告。二〇〇九年には徳島労基署、大津労基署、時間外割増し賃金の未払、これで是正勧告。こういう未払だけじゃないんですね。二〇一一年、千葉県船橋市で過労死認定、二〇一四年、仙台市でも過労自殺を認定。

 総理に一般論としてお聞きします。こういうふうに違法行為を延々と繰り返すような企業に対しては特段の厳しい対処が必要だと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 賃金不払での残業といった法令に違反することは決して許してはならないと考えています。企業全体で同様の労働基準法違反が認められる場合は、労働局や労働基準監督署が本社に立入調査を実施をして監督指導を行い、全社的な改善を図らせています。また、悪質な企業に対しては、捜査の上、書類送検を行うなど厳しく対応していく考えでございます。

○田村智子君 厳しい対処が必要だと。これは事業所のモグラたたきじゃ駄目なんですね。やっぱり本社に対する厳しい対処というのが必要だというふうに思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げましたように、これは本社に対して立入調査を行うわけでございまして、事業所、事業所ではなくて本社にしっかりと入って、これはもう言わばその会社全体がそういう働かせ方をしているのかどうかということについても徹底的に調査をしなければならないと、このように考えております。

○田村智子君 この点で疑念が湧いていることがあるのでお聞きしたいんですけど、昨年、働き方の未来二〇三五という懇談会が厚生労働省の下で十二回にわたって開催をされています。このメンバーの一人、山内雅喜さんという方はどういう方ですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 山内さんはヤマトホールディングス株式会社の代表取締役社長でございます。

○田村智子君 ヤマト運輸を始めとするヤマトグループ企業の役員を歴任してきた人物です。今言ったこれだけ違法行為を繰り返してきた企業のトップが、何で働き方改革を考えるこの懇談会のメンバーなんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この働き方の未来二〇三五の懇談会は、言ってみれば二十年先のことでありますから、二十年先でもまだ現役でありそうな方々、つまり若い方々に主に集まっていただいて議論をしていただき、また、顧問でアドバイザーとして連合の会長や経団連の会長などにもお入りをいただいているわけで、労政審の会長の樋口先生もおられ、また村木前厚労事務次官もおられるということでありまして、そういう中で様々な方々、いわゆる労政審の常連メンバーではない方々に様々議論をしていただく中にこの方もお入りをいただいたということでございます。(発言する者あり)

○委員長(山本一太君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(山本一太君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(塩崎恭久君) それは、なぜ入れたかということでございますが、それは経営者の一人としてお入りをいただいたということでございます。

○田村智子君 法令違反を繰り返していた企業のトップが、大臣が指名して懇談会のメンバーになっているんですよ。おかしいと思いませんか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 法令違反に着目して選んだわけでは決してないわけであって、そもそも法令違反をしているかどうかということはまた別問題でございまして、確認をされていないわけでありまして、これは、例えば、高付加価値サービスを支える働き方などに関しての知見をプレゼンしていただいたり、様々な角度から、経営の立場の方として御意見を聞く一人としてお入りをいただいているわけでございまして、広範な方々にお入りをいただいているこの懇談会でありますので、中では数少ない経営者の一人でございます。

○田村智子君 総理、どう思われますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 様々なこうした懇談会をつくる中において、その時点において、言わばどういうことが、言わばこの懇談会の中において御議論をいただこうかというテーマ、様々あるんだろうと思うわけでございますが、ただ、今御指摘をいただいた法令違反があるんではないかということについては、あるということについては、そうしたことも、これは我々も今後こうした懇談会をつくっていく上においては、特に働き方に関わることであれば、これは考慮していく必要があるんだろうと、このように考えております。

○田村智子君 これ、この懇談会の報告書を見ても、とんでもないんですよ。もう個人が時間も場所も選ばない働き方が当たり前だとか、副業、兼業も当たり前だとか、一つの会社に縛られない、働く人の個人の交渉力も強まる、だから、労働者保護という法律は時代遅れになるから今から改革を進めましょうと、まさに労働法制なんか関係ないって議論をやっているわけですよ。もうここに私は働き方改革の底が見えたなというふうに思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど申し上げたように、これから二十年先を展望して、いろいろな技術革新などがどういうふうに働き方に影響を与えていくのかということを議論をしていただいているわけでありますので、今御指摘のようなことを、批判をされる田村先生のような方もおられれば、これはすばらしいという方もたくさんおられて、今まさにこれが問題提起として、これは別に決定機関でも何でもありませんから……(発言する者あり)いいですか、決定機関ではないわけでありますので、様々な御意見を若手の方々を中心に御議論をいただくということでございまして、そういうことで幅広い方々にお集まりをいただき、そしてまた、さっき申し上げたように、連合や、あるいは労政審の会長、そしてまた経団連の会長にもアドバイスをいただきながら御意見もいただきながら、最終的にも取りまとめをしているということでございますので、御理解を賜れればと思います。

○田村智子君 犯罪起こすような企業の、企業犯罪を犯すようなそのトップの御意見を有り難がって聞くような、こんな働き方改革じゃ駄目ですよ。

 最後に、大企業のリストラ問題についてお聞きします。

 今、大企業の内部留保や利益、国民に還元すること重要だ、総理認めていらっしゃる。ところが、今、日立製作所、エーザイ薬品、武田薬品など、グループ全体で巨額の黒字を出しているにもかかわらずリストラを断行している大企業があることを御存じでしょうか。総理。

○国務大臣(塩崎恭久君) 様々な企業が様々な経営をされていることはもう当然のことだと思いますが、今、具体的なお名前を挙げていただいて、会社名を挙げていただいてお尋ねをいただきましたが、例えば、先ほど日立、武田、そういう名前が出ましたが、個別の事案につきましては差し控えなければならないというふうに、答えについては思っております。

 一般論で申し上げれば、今お話がございましたように、人を減らす等々のお話を御指摘になられましたけれども、例えば、殊更に多数回、長期にわたるなど、自由な意思決定が妨げられる状況での退職勧奨行為は、これは違法な権利侵害となり得るものでありますので、退職勧奨が違法なものか否かについては司法において判断をされるものだというふうに思っております。

○田村智子君 日立製作所の例を挙げます。

 二〇一五年三月期、史上最高益の六千四億円を記録しました。内部留保も二千三百億近く積み増して三・三兆円を超えた。ところが、利益率八%達成するためだといって、二〇一五年、一六年、この二か年で六千人の人員削減計画を進めています。

 この日立のICT事業本部、五十代の課長職Aさん、主任技師としてシステム開発を担当してこられました。このICT事業、日立の稼ぎ頭です。ところが、昨年夏、転籍を迫る面談が始まって、Aさんはその転籍を拒否しました。すると、その技術者としての仕事を取り上げられました。面接は年末までに五回を超えて、ベテランは要らない、日立での仕事にこだわっている限り面談を続けるなど、事実上の転籍強要にもなっています。

 これ、周りの方も面接受けているんですけど、全員が五十歳前後の技術者だと。面談のたびに人格を否定され、業績を否定され、耐え切れずに転籍に応じれば年収は三割減。利益を上げるため、経営強化のためだと言えば、こんな理不尽なことが許されるんでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 一般論として申し上げれば、殊更多数回、長期にわたるなど、自由な意思決定が妨げられるような状況での退職勧奨行為は違法な権利侵害となるとの裁判例があるように、企業において違法な退職勧奨等が行われることは許されるものではないと考えています。

 政府としては、企業の適切な労務管理を促していくため、関係する法令や裁判例等を示して企業が違法な退職勧奨行為を行うことのないよう、企業に対する啓発指導をしっかりと行ってまいります。

○田村智子君 確認しますが、転籍を拒否する労働者に新たな選択肢を示さず、転籍に応じなければあなたの仕事はない、事実上の退職を迫る、こういう面談は違法な転籍強要、退職強要に当たると考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、田村先生、非常にシンプリファイした形でおっしゃったわけで、どういう経緯でどういうことになるのかというのはそれぞれのケースでいろいろでございまして、これは民事の問題でありますので、先ほど申し上げたとおり、司法が判断をするということでございます。

○田村智子君 これまで、新たな選択肢示さず面談繰り返す、これは駄目だということを言ってきたんじゃないですか、ちゃんと答弁してください。労働者の権利懸かっているんだから、ちゃんと答弁してください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 最終的には司法が判断をするということを申し上げているわけでありますが、働く方の保護を使命とする、これ厚生労働省の役割として、企業内で違法な退職勧奨や配置転換あるいは出向などが行われるということは、これ不適切であるというふうに考えているわけでございますので、この観点から、私どもは昨年三月に企業の適切な労務管理を促していくとのパンフレットを改訂するなど、必要な啓発指導を行って、企業において不当なこの退職勧奨が行われないように進めているところでございます。

○田村智子君 これ、日立では今本当にこういう面談続けられているんですよ。こういうことをやられると、メンタルを病んで働けなくなるような実態に追い詰められていく。私何人も見てきたんです。日立に対して直ちに聞き取りなどを行って、不当なことがないのかどうか調べるべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 当然のことながら、私どもはいつも必要な指導はやっていかなければいけないと思っているところでございます。

○田村智子君 厳しく対処するって言ってきているんですからね、ちゃんと厳しくやっていただきたい。

 最後に総理にお聞きします。こういうふうにグループ全体が黒字の大企業で何でこんなリストラが横行しているのか。これ、アベノミクスが後押ししているのではないかと私は思います。骨太方針二〇一六、企業の成長力、収益力の強化と活用だといって、企業や産業の新陳代謝の促進、事業再編の円滑化を進める、こうあるわけですよ。この下で、選択と集中だ、新陳代謝の促進だ、やられてきた。実態は何か。ある部門の事業が失敗した、あるいは利益の見込みが小さかった、すると別の部門にシフトする。こんなの経営判断の誤りじゃありませんか。経営者の失敗をひたすら労働者に押し付ける、これは立派な経営者とは言えないですよ。働き方改革と言うのならば、冒頭言われたとおり、労働者の権利に立って企業の雇用責任をきちんと問うべきだと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 安倍政権が進めてきた経済政策によって、雇用は増え、働く場所が確保され、そして賃金が上がっているのは事実でございます。その中において、成長と分配の好循環を回していく、企業が利益を上げ、それを投資、あるいは賃金を引き上げていくという分配に回していくことによって経済の好循環が回っていくというのが我々の理論でございます。

 その中において、企業が競争力の高い新たな成長分野にシフトすることは我が国の雇用を中長期的に維持することにつながっていくわけでありますが、働く人が成長分野で活躍できるよう、成長企業が転職者を受け入れて行う能力開発や賃金アップに対する助成などにより支援をしていく考えであります。

○田村智子君 終わります。


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