カジノ解禁推進法案が13日夜の参院内閣委員会で一部修正のうえ採決され、自民、維新の両党と公明党の一部の賛成で可決されました。日本共産党、民進党、参院会派の「希望の会(自由・社民)」は反対しました。同日、予定されていた質疑が終了後、同委理事会で急きょ修正案を含む採決を自民党が提案。共産党と希望の会は激しく抗議し反対しました。
反対討論に立った共産党の田村智子議員は「今朝の理事会でも合意に至らなかった採決が突如として行われることに強く抗議する」と表明。「参議院の審議が尽くされたどころか、乱暴に断ち切られた。反対多数の国民の声を乱暴に踏みにじった」と批判しました。
田村氏は「このような乱暴なやり方で刑法に大穴をあけることは断じて許されない」と強調。「新たなギャンブル依存症を生み出す法案は認められない」と述べました。
これに先だって、日本共産党の大門実紀史議員は同日の参院内閣委員会で、刑法が禁じる賭博場・カジノを合法化するカジノ解禁推進法案について、「世論は反対。国民の声を受け止め立ち止まるべきだ」と強く反対しました。
2016年12月14日(水) しんぶん赤旗
【12月13日 内閣委員会議事録】
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、IR法案、すなわちカジノ・賭博解禁法案及び修正案に反対の討論を行います。
まず、このように突然修正案が提案され、今朝の理事会でも合意にならなかった採決が突如として行われることに強く抗議するものです。
これまでの本会議と委員会質疑でも、法務委員会等との連合審査、地方公聴会、ギャンブル依存症に関わる施設の視察、民間カジノ解禁についての法務省の見解をまとめた当事者を招致しての参考人質疑などが要求されており、これらは理事会協議事項となっていたはずです。参議院の審議が尽くされたどころか、乱暴に審議を断ち切られたと言わなければなりません。これでは、大多数の国民の皆さんが反対、不安の声を上げる中、衆議院に続いて参議院でもその国民の声を乱暴に踏みにじったと言わなければなりません。
本法案への反対の理由の第一は、刑法が禁ずる賭博行為であるカジノをIRという隠れみのによって違法ではないと、日本の歴史上初めて犯罪ではない違法性の阻却を行うことです。
発議者やカジノ推進者は、本法案がカジノを含む統合型の観光施設を整備するもので、カジノを解禁する法案ではないというごまかしを続けています。
しかし、これまでの審議で、カジノ抜きのIRならば法案は必要ないと明確に答弁があり、さらに、本日の委員会質疑では、民間カジノについて違法性の阻却の法整備を政府が行うことになることも明言されました。違法性の阻却をどのように行うかは政府が判断するが、本法案によってIRのカジノは刑法違反にはならないという結論を先に出してしまう、このような乱暴なやり方で刑法に大穴を空けることは断じて許されません。
昨日の参考人質疑では、これまで賭博が公設公営に限定されてきた、つまりは民間賭博が認められてこなかった理由として法務省が示した八項目について、弁護士の中でも百八十度異なる解釈論が展開されました。刑法という我が国の基本的な法律についてこのように解釈が分かれたままで、どうしてIRのカジノが違法性が阻却されるという結論を出すことができるのでしょうか。
これまでの特別法によって公設公営の賭博のみが認められてきたその理由の一つである目的の公益性は、収益の使途を公益性のあるものに限ることによって担保されてきた、これが法務省の見解です。これは、民間企業がその収益を上げることがなければ成り立たないカジノでは決してクリアできないことは明白ではありませんか。刑法に大穴を空ける、こんな審議で採決を行うことを改めて強く抗議をするところです。
本法案への反対の理由の第二は、ギャンブル依存症対策とどれほど繰り返し、それが修正案に盛り込まれたところで、一方でカジノを解禁するならば、新たなギャンブル依存症が生み出される、事後の処理しかできない、大変な欠陥の法案だということです。
これまでも、パチンコ、スロット、あるいは競馬、競艇などでのギャンブル依存症がいかに深刻かということがこの委員会の中でも審議がされてきました。マイナスがあるからといってプラス面に目をつぶるのか、こんな乱暴な議論でした。マイナスは、たった一つの家族であっても家庭の崩壊をもたらします。その人の人生をぼろぼろにします。そのマイナスを当たり前の前提として、プラスがあるからいいんだと、ギャンブル依存症に目をつぶり、新たなギャンブル依存症を生み出すことを是とする、このようなカジノ法案を認めることは絶対にできません。
本法案に反対の理由の第三は、経済成長戦略をカジノに頼るということが余りに情けなく、余りに恥ずかしいからであります。
元々賭博は人のお金を奪い取る所業であり、経済政策というような代物ではありません。その奪ったお金はカジノの営業を行う者に吸い取られていく、その一部が納付金にされて、それによって公益性があるなどという、こんな議論は余りにも情けないものではありませんか。推進してきた大阪商業大学の谷岡学長が言うように、これからは預金ではなく、預金をカジノに差し出せと言わんばかりの推進派の議論を認めることなど到底できるものではありません。だからこそ、多くの国民が今も反対の議論、声を上げているのではないでしょうか。
修正案が急遽出されましたが、これらの修正案は何らこの法案の欠陥を修正するものではなく、認めることはできません。引き続きの審議が必要であり、衆議院にもう一度審議を求めるというのならば、きっぱりと廃案にして、発議者に対しても猛省を促して衆議院での審議を求めるべきであった、このことを強く申し上げ、反対の討論を終わります。