国会会議録

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賛否超え“議論不足”指摘 カジノ法案参考人質疑

刑法が禁じる賭博場・カジノを合法化するカジノ解禁推進法案について初めて専門家の意見をきく参考人質疑が12日、参院内閣委員会で開かれました。参考人からは法案への賛否を超えて国会の議論不足が指摘され、このまま採決に持ち込むなど到底許されないことが浮き彫りになりました。

 参考人は美原融大阪商業大学アミューズメント産業研究所長、マネーロンダリング対策などにくわしい渡邉雅之弁護士、日弁連多重債務問題検討ワーキンググループ座長の新里宏二弁護士、静岡大学の鳥畑与一教授の4氏。

 反対の立場から意見を述べた新里氏は、新聞の社説が共通して拙速な審議に疑問を呈していることをあげて、「審議は尽くされていない」と語りました。鳥畑氏も「基本法(今回の推進法)と実施法を分離することで重大な欠陥を先送りすることは国会の責任放棄だ」と批判しました。

 賛成派として発言した美原氏は「カジノがもたらす社会的インパクトを除却するための手だては国民にとって分かりやすく議論すべきだ。慎重な議論は実施法でもやってほしい」と、渡邉氏も「国会で重要な論点が顕在化した。実施法段階で論議していかなければならない」と発言しました。

 日本共産党の田村智子議員はカジノ解禁で国内初の民営賭博が解禁されることの社会的影響を質問し、新里氏は「いままでの公営賭博は公設公営で公益のためというものだったが、これからは自分の利得のために賭博を開帳できるということになり、刑法のあり方が大きく変わってしまう」と答えました。 

2016年12月13日(火) しんぶん赤旗

 

【12月12日 内閣委員会 議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 今日は、突然に決まった参考人質疑に御協力いただきまして、本当にありがとうございます。

 私、この法案の核心は、やはり刑法で禁じている賭博を民間企業がカジノとして行っても違法性を問われないと、そういう措置をとりなさいということを政府に求めるということがこの法案の核心だというふうに理解をしています。

 それで、ここが核心だと思いますので新里参考人にまずお聞きをしたいんですけれども、この民間カジノの解禁というのは今に始まった話ではなくて、二〇一三年当時に、特区という形で地域に限定をすれば民間カジノの解禁ができるのではないかということがかなり議論になったというふうに記憶をしているんですね。そのときに、それが駄目だというふうなことの根拠として出てきたのが、先ほどからいろいろ御指摘のある八項目ということが一つまとまって出てきたというふうに思うんですね。

 それで、私、やっぱりIRというのは、IRがくっつくとはいえ、ほかの施設がくっつくとはいえ、形としては地域限定の賭博の解禁という形では違いがないというふうに思うんです。そうすると、刑法で禁じている犯罪行為との関係ということを考えたときに、これは、相当にこの八項目は厳密に議論が必要ではないかというふうに思いますが、まず、総論的に新里参考人にお願いします。

○参考人(新里宏二君) じゃ、お答えいたします。

 やはり特に今回は、これまで公営でやられてきた形が民営の、まさしく民間の賭博施設を認めるかどうかということからすると、相当にハードルが高いのではないのだろうか。ですから、やっぱり刑罰の、禁止ということの一部解除を一地方だけでやっていいのかということが特区のところで問題があったのではないかと思います。日本の社会全体のことだということから、特区ではなくて法律全体として、どこで設置されるかどうかにかかわらず、きちっとした国の基本的な仕組みの中でやらなきゃ駄目、特区は駄目ですよねということだったと思います。

 そして、やはりこの八項目というのが常々議論されてきて、どうも八項目の頭のところ、いわゆる、例えば今日お示ししております資料五であれば、これは法務省が十二月七日付けに出されたペーパーということでお聞きしておりますけれども、例えば目的の公益性、前々から、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱いという格好で並列的に八項目が言われていて、それというのはいろんな解釈の余地があるのかなと思っていたんですけれども、今回、このペーパーによると、どうもそれ以上に法務省は厳格にこの八項目を考えているんだなということが出てきました。

 それで、この目的の公益性のところも、収益の使途を公益性のものに限ることも含むということで、これは必ず入るということですよね、これからすると。それ以外にも要件はありますけれども、これは、ずらしていいんですよということはこの解釈では言えないのではないかなと。その意味では、この十二月七日付けのペーパーということが、違法性阻却というのをやっぱり日本の社会の中できちっと議論しよう、厳格にしようよという流れの中でこういう法務省が出されたんだ、これは多として、これを踏まえて議論していかなきゃ駄目なんではないかなというふうに思います。

○田村智子君 そうなんです。私も十二月八日の日の法務省の答弁を聞いていてちょっと驚いたのは、その今の目的の公益性が収益の使途を公益性のあるものに限ることを含むというのが、確かに、これは一例を示したものだというふうに一夜にして答弁が何か変わったというふうにしか言いようのない答弁が行われたんですね。これは、公益性のあるものに限るか限らないかというのはどっちかしかないわけで、限ることを含むというのは必要条件としかこの文章では読み取れないというふうに私も思います。

 それで、事実、様々な今の認められている賭博行為というのは公設公営であると。私自身は文教科学委員会を担当してきましたから、例えば、サッカーくじでいえば文部科学省が所管をし、そして独立行政法人である日本スポーツ振興センターが運営を直接に行うと、そして、そこで得た収益は全て、人件費とか事業費、広告費を含む事業費ですね、これを除いたものの利益は全てスポーツ競技に使われたり、あるいは地方のスポーツ施設を造るために使われると。今年の国会では、このことに加えて新国立競技場の建設費にも使えるようにするんだということを法律によって議論をし、定めなければならないほど厳密にその収益金の使い方というのは限られてきたわけですよね。

 それじゃ、それがIRで民間になったときに同じようなことができるんだろうかということが非常に疑問です。例えば、サッカーくじの問題を私たちが議論しようとすればJSCを呼ぶことができます。日本スポーツ振興センターに直接私たちは事務所で説明を聞き、そして国会の場で質問することも、もちろん理事会の確認を得てではありますけれども、これが拒否されたということは過去にないと思いますよ、呼んで来なかったということは。それだけ公益性のある、直接に文部科学省が所管する団体だからだというふうに考えます。

 これが民間カジノになったときに果たして同じような扱いができるのかどうか、法律に照らして、新里参考人にもう一度お願いしたいと思います。

○参考人(新里宏二君) じゃ、お答えいたします。

 国会で誰を呼んでお話をするかということからすると、やはり一般の私企業を呼ぶということについてはハードルが高いのではないかなというふうに思います。

 特に、やっぱり一番問題になるのは、例えば五千億だ一兆円だ投資をするということになると、リターンを求めるということになりますよね。投資をした者は、結局、自分が営利行為をして利得に入るから投資をするという格好になります。そうすると、今までのもの、いわゆる賭博を収益の対象としていいんだということを認めてしまうということではないでしょうか。

 今まではそうではなかったんだと。公益で、例えば七五%の部分は配当に回します、それをあとは公益に回しますとかと決めてやっていた。だけど、基本的には、今回は自分たちの収益として取ってくださいよ、それが賭博での、まあ賭博だけではありません、例えばIRというのは三%で、八割が賭博の部分で、あと二割は一般のかもしれませんけれども、多くは賭博の収益を自分の利得としてもいいんですよねということですから、明らかに今までの考え方、この刑法の考え方と随分変わってきているのではないかな、そこについての議論がまだまだ足りてはいないのではないのかな。

 そこは基本的に本質的な問題であって、だからこそ、そこのところがあるから、例えば依存症の問題にどう対策を立てるかどうかということのところにもつながってくる。基本の一番のところが、民間の賭博を収益の対象にしていいのかどうかというところが問われているのではないかなというふうに思います。

○田村智子君 もう一点、新里参考人になんですけれども、そうやって民間賭博を解禁するという法律が一度作られたときのその影響です。今後、その他の法律やその他のものに与える影響ということをどのようにお考えになりますか。

○参考人(新里宏二君) じゃ、お答えいたします。

 それはもう非常に、もうそこで一回大きな壁が突き崩してしまえば、なし崩し的にいろんな形でどんどんどんどん広がっていくということが火を見るより明らかではないでしょうか。

○田村智子君 ありがとうございました。

 では、次に鳥畑参考人にお聞きしたいと思います。

 私、カジノというものを、もちろん映画とかテレビとかで見ただけで、その地域に行ったこともないんですけれども、今このカジノの法案がいろいろに議論される中で、様々にマスコミの方もお書きになっているんですね。

 その中の一つが、ダイヤモンド・オンラインで元朝日新聞の編集委員の山田厚史さんという方がお書きになっていることで、先進国のカジノというのは、生活都市から切り離すか都市の中なら目立たぬ場所でというのが世間の知恵だったということを指摘されているんですよ。マカオだったら、何というんでしょうね、そういう地域だよと、いわゆる一般の人がなかなか近づけないようなというような地域に限定するとか、あるいは先進国のイギリスのロンドンだったら、一般的にはどこにあるか分からないようなところで、ごくごく一部のいわゆる富裕層の方になるのかな、そういう方が行って大人の楽しみをするのかもしれませんけれども、そういうカジノだと。

 ところが、この山田厚史さんが言われているのは、ところが、日本で候補地として挙がっているのは東京や横浜やあるいは大阪の、しかも大変繁華街に近い、言わば人口密集地のところにぼんと造るというようなことが指摘されていて、家に例えれば玄関やリビングルームに賭博機を置くようなものだとまで指摘をしているんですね。

 私もなるほどというふうに思ったんですが、このような御指摘についてどのような御見解をお持ちでしょうか。

○参考人(鳥畑与一君) 発言させていただきます。

 ギャンブラーが何で依存症になるのかということについては、一つは、エクスポージャー理論といいますか、言わば被曝みたいなものですね。つまり、ギャンブルの頻度であるとか継続時間であるとか、あと賭ける金額、要するに脳に対する刺激ですね、これが大きくなればなるほど依存症になる危険性が高まるということを言われているわけです。

 そういう観点に立ちますと、どうしても、やはり自分が住んでいる近いところにカジノがある、毎週のように毎日のように通えるということになりますと、いわゆる常習性が高まって依存症になる確率が高くなる。これは、一九九九年に出されたアメリカの議会の国家ギャンブル影響度調査でも、五十マイル以内に住んでいる人は二倍依存症になると。

 今日お配りした資料は直近のもので、去年出された論文なんですけれども、表の十一の一と二ですね。例えばカジノからの距離、近ければ近いほどやっぱり常連、これは週二回です、ここの言う常連というのは。週二回通う方の割合が増えていって、問題ギャンブラーになる割合が増えていくということになるわけです。

 そうしますと、やはりラスベガスでできたのも砂漠の真ん中ですね。ニュージャージー州のアトランティックも、昔は海水浴でにぎわっていましたが、やはりある意味離れた場所にあって、あそこに限ってニュージャージー州の中でもカジノを認めるということでやってきたと思うんですね。ヨーロッパでは、いわゆる会員制という形で遮断をするということが取られてきたと思うんです。

 だから、そういった意味では、日本で東京、大阪のような大都市部、本当に人口密集地にばんと大きな、しかもIR型という形で家族みんなが足を運べるようなカジノを造ってしまう。例えばシンガポールのセントーサ行きますと、玄関のところにまずカジノの看板があって、入って左すぐがもうカジノの入口ですね。ヒアリングしたときは、もう家族で、地元では宣伝されない、でも、家族でみんなと遊びに行けば子供だってここにカジノがあると分かって興味を感じるという話なんですね。

 そういった意味では、本当、大都市部にカジノを造ることの危険性についてもっと議論しないといけないと思っています。

○田村智子君 ありがとうございます。

 もう一つ、いただいた資料の同じページの表の八と九のところでシンガポール・カジノのことが書かれているんですけれども、つまり、自国民のカジノ依存症を生まないためには、日本で造るカジノは、推進派の方のものを読んでみると、一万円ぐらいの入場料を取れば、何というんですか、そんなにたくさん頻度通うことができないじゃないか、先ほど、それを取り返そうとしてむしろ通うんだという議論もありましたけれども、そういうふうに入場料も課していけば一定の対策が取られるんじゃないかということが言われているんですけど。

 この表の九を見てあれっと思ったのは、シンガポールで家族申告や自己申告で立入り、入場の制限がされる人がどんどん膨れ上がっていくと。ところが、一方で、カジノの入場料の推移を見てみると、これどんどん現実に下がってきているということの表でよろしいんですよね。

○参考人(鳥畑与一君) 例えば、二〇一五年は一億四千七百万シンガポール・ドルです。これは、一日券が百ドルですので、延べでいえば百四十七万人に相当するわけです。ストレーツ・タイムという地元紙によると、九九%が百ドル入場券だという報道をされていますので、ほぼ一〇〇%これ百ドルの一日券と考えてもいいと思うんです。延べで百四十七万人で、これをどう評価するかと。

 先ほど、立入り制限で三十二万人といっても、本当の地元の市民は二万人ちょっとだよという御発言がありましたけれども、つまり常習者ですね、シンガポール市民でどれぐらいの人が行っているんだといったときに、先ほどの二%というと、市民でいえば八万人ぐらいなんですよ。

 これで、延べで百四十七万人で、毎月行っているといったときに、やっぱり十数万ですよね。多分、数万人の中で二万人ぐらいが自分でコントロールできなくなったから自己排除を申告しているんだよというのは小さな数字だと言えるのかということで、極めて深刻であって、その証拠に、シンガポール政府が回数制限を始めたのはかなり後なんですね。

 様々な対策が効き目がなくて深刻化したために、先ほど御発言がありましたように、月六回ぐらいですか、回数チェックをして警告を出すという取組、それから、地元の公務員に対しては回数を申告させるとかいう形の強化を、後から後から強化をしていくわけなんです。

○田村智子君 ありがとうございます。

 その今の、入場料自体は、やっぱり値下げしてきているということ自体は、この理由は分かりますか。

○参考人(鳥畑与一君) いや、値下げということじゃなくて、入場者数が減っていると。──表の九ですね。あっ、入場料総額です。あっ、入場料収入です。失礼いたしました。

○委員長(難波奨二君) 冷静にお願いいたします。

○田村智子君 済みません、入場料収入の推移ということですね。だから、全体の入場料としての収益は減っているけれども、人としては減っていないよということでいいということでしょうか。ごめんなさい。

○参考人(鳥畑与一君) いいえ、つまり、シンガポール市民のカジノ参加率が、参加数が相当減っているんじゃないかということです。

○田村智子君 分かりました。総数は減っているけれども、自己申告で入れないようにしている人の数は全然減っていないよというのが実態という数字、でもない。ごめんなさいね。済みません。

○参考人(鳥畑与一君) いや、シンガポール政府が自己排除制度を活用しながらシンガポール市民をカジノに行かせない政策を徹底してやる中で、現実に、例えば入場料総収入で見た場合に相当減ってきていると。ただ、減り方が滑らかなのは、やはり常習性が高まっているんじゃないかと推測しております。

○田村智子君 済みません、ちょっと数字の見方を混乱して申し訳なかったです。

 美原参考人にもお聞きしたいと思います。

 先ほど、やっぱり外国人を対象にして観光立国としてのカジノ、IRということでのお話だったと思います。確かに、大阪商業大学のアミューズメント研究所の研究者の方が行った試算がよく出てくるんですけれども、カジノの施設で消費額が四百十五億六千万円、関西経済同友会の資料でも、カジノの施設で五千五百四十五億円、これだけの消費が見込まれるだろうということが言われているんですけれども、それでは、シンガポールのように、自国民の人はできるだけ制限を掛けながら外国人観光客を呼び寄せるんだと。それでは、その外国人観光客というのがこれによってどれぐらい増えて、国内の入場者はどれぐらいを見込んでこういう試算が出てきているということになるんでしょうか。お分かりになれば。

○参考人(美原融君) 御指摘の資料は、かなり前の資料と最近の資料が入っておりまして、多分前提の取り方が大きく違うのではないかと思います。

 そういった意味においては若干誤解を招くような側面もあったのではないかと、こういうふうに私は感じておりますが、非常に、その予測につきましては、どういう前提条件を取るのか、税率あるいはマーケティングの予測、分析、そういったものによって変わってきますので、どういうふうな前提を取ったのか、ちょっと私、今、出元に、データとかそのデータの出元が分かりませんので、それが分からないとちょっとコメントを控えさせていただきたいと思います。

○田村智子君 しかし、主に外国人観光客が何割ぐらいとかいうことは試算をされているんでしょうか。

○参考人(美原融君) 多分していると思います。

 例えば、その八割方日本人、二割方外国人、そういった場合、一回の消費行動、すなわち、何日滞在してどのくらい一日当たり支出するのかというのは基本的な経済計算のベースになるものですから、当然そういう前提があるべきはずだと思います。

○田村智子君 是非、今後見ていきたいなと、そういう数字も見ながらの審議が必要だということは申し上げておきたいと思うんですけれども。

 大阪商業大学は谷岡学長がかなり積極的に推進をされていて、いろんな場でいろいろにお話をされていまして、最近も、毎日新聞ですかに登場されて、高齢者のたんす預金など世の中に出てきにくい金が回り始めることが期待されるということもお話をされています。

 先ほど紹介したダイヤモンド・オンラインのところで、二年ぐらい前に聞いた話ですがということで山田厚史さんが書かれているのは、海外の投資家がなぜ日本を魅力的と考えるかと。カジノについて、それは、ハイローラーと呼ばれるギャンブル愛好家はカジノのお得意様ですが、この種のギャンブラーだけを相手にしていては経営が安定しない、一般の方々が参加できる広い裾野が必要です、一定の所得と貯蓄を持つ分厚い中間層がいる日本の大都市圏は大変魅力ある市場ですというふうにお答えになっているんですけれども、やはりこれは、国際カジノ資本にとって日本が魅力的と言われるのはこういう理由なんでしょうか。

○参考人(美原融君) 私は谷岡学長ではございませんので、ちょっと谷岡の意見につきましてはコメントを控えさせていただきたいと思いますが、貯蓄ではなく消費を活性化するのもその一つの有効な経済対策、こういう御意向ではないかと、こういうふうに思います。

 もう一つの御質問でございますが、果たして外国のカジノ資本が日本市場をどういうふうに見るか、こういう形でございますが、確かに、歴史上こういうカジノ種類の賭博行為を初めてやった国で失敗した国はございません。それは、やはり日本国内にはこういうことを欲する新しい需要層があるのではないかと、こういう考え方からきているわけですね。例えば、パチンコに行く人はパチンコにしか行かないでしょうし、カジノはカジノなりの遊び方あるいはスキル、能力、面白さというのはちょっとまた他の賭博種とは違った頭脳的な要素があることも事実だと思います。

 そういった意味においては、恐らく外国事業者のお考え方というのは、やはり今まで認められていない市場においては可能性が高いと、こういうふうなお考えじゃないんでしょうか。

○田村智子君 眠っている貯蓄がカジノという消費に回ることが経済効果という考え方があるんだということだなというふうに理解をしたいというふうに思います。

 渡邉参考人にもお聞きします。

 現在のカジノは相当にこの違法性、あるいは違法性というか犯罪の絡みを排除してきているんだということがお話をされていました。とても単純な質問で申し訳ないんですけど、大王製紙の当時の会長が百六億八千万円をシンガポール・カジノで失ったというのは、あれは日本人にとっては衝撃的なカジノに対するニュースだったわけですよね。合法的に行われ、犯罪者集団も絡んでいないカジノでもこういうことが当然に起こるというふうな理解でいいんでしょうか。

○参考人(渡邉雅之君) 大王製紙の井川元社長のことですよね。私も、彼の書いた「熔ける」という本を読みました。

 ギャンブル依存症になる方の考え方というのがいろいろ出ているなということで、非常にこれは真摯に受け止めなければいけないなと思っておりましたけれども、彼がやはり変わっていった中で、読んでいくと、かなり先ほどお話ししたジャンケットという方にいろいろ誘客されていろんなカジノでプレーしていたという様子が出ております、実際に。やはりそういったことも踏まえて、いわゆる、要は、ハイローラーといいますかVIP相手のジャンケット制度の導入については非常に慎重に考えなければいけないのではないかと。

 シンガポールにおいても、今現在、インターナショナル・マーケット・エージェントという仲介業者が認められておりますが、そこは、要は、基本的にはコミッションの分割とかそういった、マカオで認められているエージェントとはちょっと違うんですね。要は、誘客しか認められていないようなエージェントとして認められているんですけれども、我が国において、そのインターナショナル・マーケット・エージェントのようなものも含めて、いわゆる仲介業者を主体として正式に認めるということについてはかなり慎重に検討する必要がある。

 要は、やはりカジノ事業者から離れて、仲介業者になるわけですから、当局の監督というのはどうしても遠くなるわけです。また、その仲介業者が更に下請をしているというのが、これ下請の連鎖が続いている、ネズミ講のように続いているのがマカオの実態です。

 シンガポールは、そこの一次請け以下の二次請け以下は禁止しているんですね。ただし、一次請けについては直接当局の目が及ぶといっても、やはりカジノ事業者本体よりは監督というのは弱くなると。そういうことからすると、ジャンケット制度導入については、私は非常に慎重に考えるべきと。

 実際に、シンガポールでも、このエージェントの導入、認められておりますけれども、たしか、最近はどうか分かりませんけれども、マリーナ・ベイ・サンズ、ラスベガス・サンズの方は、これ、そのエージェントを導入しておりません。要は自らのスタッフによって誘客をしているということで、やはり直接の主体の方が、先ほどもお話をしましたけれども、厳格な背面調査を経て採用した人材であるわけですから、そこでマネーローンダリングというのが生ずる可能性は低いということなので、やはりエージェント、ジャンケットの導入については慎重に考えるべきではないかと考えております。

○田村智子君 様々な規制を掛けなければということだと思いますが、規制を掛ければ掛けるほど他のカジノとの競争はどうなるのかという、そういう問題も出てくるんじゃないかという疑問もまた生じてくるなと思います。

 最後になるんですけど、ギャンブル依存症について取組されてきた新里先生にちょっとお聞きをしたいんですけれども、私は、このカジノで、言わば親子連れも参加するようなそのIRという施設の中でカジノが解禁になると、恐らくスロットマシンのようなものもカジノというのはあるというふうにもお聞きをします。そういうのが言わば当たり前の娯楽施設として認められるんだということになると、これまで自分の地元に帰ったときにパチンコにはハードルが高くてなかなか行っていなかったというような方が、よりカジノで経験したことによって、自分の地域に戻って、パチンコへのハードルも下がって、新たに通っちゃうような方が出てくる危険性もあるんじゃなかろうかと。

 カジノは一見さんで楽しむところでいいんだよというような主張をされても、そこで経験した一度の経験がその後のギャンブル依存症にもつながるということはあり得るんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○参考人(新里宏二君) じゃ、お答えいたします。

 直接的な答えになるか分かりませんが、実は、江原ランドに行ったときに、非常に、カジノといって紳士淑女の社交場というんですけど、僕が見た印象からすると、ジャージで入られている高齢者から若年もいるような中で、非常に身なり的には、もしかすると、今、日本の風情からするとパチンコ屋さんの風情ではないのかなというふうに思っていて、地元ではパチンコ、あっちに行ったらカジノということはあり得るのかもしれないなと思います。

 ただ、それも、きっと提案者からすると、そんなのでは駄目だよ、ドレスコードを作ってきちっとしたものをやるよと言うはずなんです。ただ、それをやってしまうと集客が落ちるわけですよね。そこもまさしく極めて微妙なところであって、ドレスコードを非常に下げていけば、どっちでも同じように入るようなことはあり得るだろうなと。

 これも、韓国の江原ランドのプロモーションビデオをホテルで見たことがあるんですけれども、カジノのことをどんなふうにやっているかというと、やっぱりタキシードを着て、女性は赤と白のドレスを着てワインを飲むというようなプロモーションビデオがありました。ただ、実際中に入ったら全く違いました。

 だから、日本はもしやるといった場合どのぐらいの規制を掛けるか。その場合には、掛ければ掛けるほど日本人が入れないような仕組みになって、そうすると収益が上がらないという問題につながっていく。それをどう、やっぱり基本的なところを初めの段階で議論しなきゃいけないというところにつながるかなというふうに思います。

○田村智子君 どうもありがとうございました。

 違法性の阻却の問題や大都市部にカジノを造るということの問題点など、まだまだ審議しなければならない問題があるなということ、よく分かりました。

 ありがとうございました。


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