安倍首相は「検定官によってなされることなので答弁は控える」と述べ、検定に合格した教科書が教育基本法にそっているとも言えない異常な姿勢を見せました。
田村氏は「河野談話」発表後に発見された、日本軍が女性を脅し慰安所に連れだした資料など529点が日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議から首相あてに提出されていることをあげ、政府として検証するように要求。安倍首相は「専門家によって検証される」と無責任な姿勢を示しました。
教育委員会の専権事項であっても首長策定の「大綱」(教育施策の指針)のなかに首長の考えとして記載できる問題で田村氏は、「教育委員会が適切と判断した場合においては、記載することも可能」(5月23日参院本会議答弁)と教育委員会の同意が条件であるかのように安倍首相が述べていたことを追及。「『首長が勝手に』記載できることを意図的に隠したのか」と田村氏がただすと、安倍首相は「教育委員会の合意まで必要としないが、十分協議し調整をつくすことが重要」とごまかしました。
【14.06.12】文教科学委員会 地方教育行政法改正法案
(首相質疑)
○田村智子君 五月二十三日の本会議質問で、この法案によって全自治体に策定が義務付けられる大綱、教育の基本方針ですね、これについて総理に質問しました。大綱には首長の判断で教育委員会の専権事項、例えば、愛国心教育に最もふさわしい教科書を採択するなどの内容まで書き込めるのではないかという私の質問に、総理は、「教育委員会が適切と判断した場合においては、教科書の取扱いに関することなど、首長の権限に関わらない事項について記載することも可能」と答弁をしました。
ところが、十日の委員会質疑で、この法案は、教育委員会の専権事項も教育委員会の判断に関係なく、大臣の答弁によれば、文科大臣の答弁によれば、首長が勝手に書くのは可能であるということが明らかになりました。
総理は、「教育委員会が適切と判断した場合」とわざわざ限定し、教育委員会が同意しなくとも首長が勝手に記載できるということを意図的に隠したということなんでしょうか。
いや、総理の答弁ですから、総理で。時間ないんですから、総理で、総理で。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大綱は首長が策定するものとし、教育委員会との合意までは必要としていませんが、策定の際は、教育行政に混乱が生じないようにするためにも、首長と教育委員会との間で十分に協議をし、調整を尽くすことが重要であると考えています。
これを前提に、大綱に記載する事項について、教育委員会が適切と判断した場合においては、「首長の権限に関わらない事項について記載することも可能」と申し上げたところであります。
また、先般の本会議においても、首長の大綱策定に当たり、教育委員会との合意までは必要のない旨明確に申し上げているところでありまして、わざわざ外して答弁したということではございません。
○田村智子君 私は望ましいケースを聞いたのではなく、法案の解釈について質問をしたんです。教育委員会が適切に判断した場合と、教育委員会の判断のいかんにかかわらずというのは、全く違います。
この法案によって、教育の自主性が首長によって侵されるのではないかということが国民の中でも最も大きな懸念です。中でも、教育委員会が反対したときに大綱に書き込めるのかどうかということが一番心配されること、これを答弁せず、都合のいいケースに限定したということは、極めて重大だということを指摘しなければなりません。
時間がないので、次に行きます。
大綱について、私が教科書採択を取り上げたのは、これはやっぱり歴史教科書の採択という、極めて教育の自主性、教育の政治的中立性が必要とされる事務が政治的に支配される懸念が現にあるからです。
現在、文部科学副大臣でおられます西川京子衆議院議員、昨年四月十日の衆議院予算委員会で、日本軍慰安婦のことを言わば単なる売春行為であると断定し、高校教科書が日本軍慰安婦を書いていることを非常に問題だと思いますと述べられました。
同じ予算委員会では、維新の会の中山成彬議員が、従軍慰安婦の問題が教科書に相変わらず残っているとした上で、日本人としての自信と誇りを取り戻す、そういうのも教科書検定の第一項目に挙げることについてどうかと質問し、総理は、「検定基準においてはこの改正教育基本法の精神が私は生かされていなかったと思います。そして同時に、検定官自体がその認識がなかったんじゃないのかなとも思います。」と答弁をされています。
さらには、改正教育基本法に沿った教科書採択をと、特定の出版社の教科書採択を進める政治的な運動もあります。こうやって見たときに、日本軍慰安婦を詳しく教える教科書は改正教育基本法に違反しているから採択するなという政治的主張が自民党など与党とする首長によって起きる懸念が払拭できません。
総理は河野談話を継承すると表明しています。河野談話は、慰安所における生活は強制的な状況の下での痛ましいものであったことなどを明らかにした上で、歴史教育、歴史研究を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を表明しています。この立場からすれば、現在、従軍慰安婦について記述する高校教科書を改正教育基本法の目的、目標にのっとっていない教科書だとは到底言えないと思いますが、総理の見解を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これまでも申し上げておりますように、歴史に対して政治家は謙虚でなければならぬと考えております。歴史問題は政治・外交問題化されるべきものではないわけでありまして、歴史の研究は有識者や専門家の手に委ねるべきものであると考えております。
そして、国民一人一人が自らの誇りと自信を取り戻すことができるよう、改正教育基本法の趣旨を踏まえた教科書で子供たちが学ぶことが重要であると思います。教科書にどのような事項を取り上げ、どのように記述するかは、教科書発行者が判断し、申請した内容について、先般改正した検定基準に基づき検定がなされるものでありまして、例として挙げられました慰安婦についてもその中で取扱いが検討されるものであります。
今後とも、教育基本法の趣旨を踏まえ、バランスよく記載された教科書を用いながら、我が国の歴史について子供たちがしっかりと理解を深めていくことができるように取り組んでいきたいと考えております。
○田村智子君 質問したことに答えていないんです。現在使われている従軍慰安婦について記述した高校教科書は教育基本法の目的や目標に沿っていないんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げましたように、その判断をするのは私ではなくて、まさにこの検定基準に基づき検定がなされる検定官によって検定がなされていくわけでありますので、私がその質問に答えることは控えさせていただきたいと、このように思いますが、検定官においては、先般改正した検定基準、これは教育基本法、改正された教育基本法にのっとって、この改定された検定基準にのっとって適切に検定がなされるものと思います。
○田村智子君 慰安婦の問題を政治化させているのは、自民党の皆さんたちの質問の中からどんどん出てくるわけですね。今のことについても明言されないというのは、私、重大だと思いますよ。私は、やはり河野談話を継承すると言っている以上は、政府としても、従軍慰安婦はただの売春だったなどという河野談話を傷つける主張とは闘う必要があると思うんです。
その上で注目すべきは、河野談話以降も、日本軍慰安婦の実態を明らかにする新たな証拠が発見されていることです。六月二日、日本軍慰安婦問題アジア連帯会議が総理に、河野官房長官談話後に発見された日本軍慰安婦関連公文書等資料五百二十九点を提出しています。その一つ……
○委員長(丸山和也君) 田村委員、質問の趣旨を本法案に関連する範囲にしてください。
○田村智子君 私のときだけそう言うのは非常に不当だと思います。
○委員長(丸山和也君) いやいや、私のときだけ、あなたの場合、特別だからですよ。
○田村智子君 私は、歴史教科書の問題は政治的中立性の問題なので聞いています。
この五百二十九点の資料のうちの一つは、野戦酒保規程改正に関する件、慰安所が軍の正式な施設として位置付けられたことを示す公文書です。オランダ領インドネシアのバタビアでの裁判資料には、ジャワ島に憲兵隊長として駐屯していた兵曹長が、断ると顔を平手で二十回くらい殴った、ピストルで脅迫し、撃ち殺してやるぞと脅したなど……
○委員長(丸山和也君) 本法案に関する質疑にしてください。
○田村智子君 女性たちを慰安所に連れ出した手口が生々しく書かれています。
総理、歴史教育や教科書の在り方を検討するためにも、こうして提出された五百二十九点の一部でも自らお読みになり、また一つ一つを政府として検証する、そのことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的に、そうした資料等については、言わば専門家によって分析がなされるべきであろうと、このように思います。資料の、言わばどれぐらいこれは確実な資料であるかどうかという分析も含めて専門家によって検証されるべきではないかと、このように思います。
○田村智子君 河野談話を検証するといった場合には、その河野談話の中で強制を示す資料はなかったということを言われているんですけれども……
○委員長(丸山和也君) 田村君、度々言いますけれども、法案審議ですから。
○田村智子君 それが本当だったのかということについても検証することが必要だと思います。
委員長に一言申し上げます。
私は、河野談話の問題は今国会でも何度も議論になってきた。しかも、それは歴史教育……
○委員長(丸山和也君) いや、だから、本法案に関する形で、独擅の演説場じゃないんだから、ここは。
○田村智子君 歴史教科書を問題とする中での議論になってきています。今法案の審議でも、このことが政治的中立性の問題として他党の議員からも何度も質問がされました。そのときに、私の質問に対してだけそのような抗議をするということは、私からも抗議を申し上げたいというふうに思います。
教育の政治的中立性という問題が非常に問われている問題で、法案に対する答弁についても不誠実な答弁が行われた、このことにも強く抗議をして、質問を終わります。