ロケット打ち上げ事業の安全確保のための許認可や事故時の賠償規定などを定めた宇宙活動法案と、人工衛星をつかって得た情報の利用や管理などを規制する衛星リモートセンシング(リモセン)法案が8日の参院内閣委員会で、自民、公明、民進、維新などの各党の賛成で可決しました。日本共産党は反対しました。
衛星リモセン法案は、人工衛星による地球観測結果や画像記録といった「リモートセンシング記録」について、要件を満たせば首相の権限で外部への提供(公開)を禁止できるとしています。
採決に先立つ質疑で日本共産党の田村智子議員は、米国が「テロ掃討作戦」に際して当該地域のリモセン記録を非公開にするよう日本政府に協力を求めてきた場合、首相が記録の提供禁止を命じて応じることが可能なのか追及しました。
内閣府宇宙開発戦略推進事務局の高田修三事務局長は「お尋ねの場合も含め、個別具体的な状況に応じて判断を行う」と答え、提供禁止の可能性を否定しませんでした。
2016年11月9日(水) しんぶん赤旗
【11月8日(火)内閣委員会 速記録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
法案への質問の前に、鶴保大臣にお聞きをしなければならない問題があります。
沖縄県東村高江で、ヘリパッド建設に反対する市民に対して、大阪府警から派遣をされた機動隊員が土人、シナ人という言葉を発したことが大きな問題となっています。
鶴保大臣は、十月二十一日の記者会見で、大変残念な発言としつつ、殊更これが人権問題と騒ぐのではなく、県民感情を損ねているのかどうか虚心坦懐に見ていきたいと述べられ、さらに三十一日には沖縄県内で、本当に差別かどうかということになるといろんな問題が出てくると思うと述べられています。
言論の自由ということにも触れた発言ですが、一般に国民がこういう言葉を使ったというのとは違います。公務員が、しかも逮捕権を持つ警察官が、その公務の行為として、土人、シナ人という言葉を使って市民を侮蔑した、これが人権問題ではないということなんでしょうか。
○国務大臣(鶴保庸介君) 人権問題調査会というのが自民党内にございまして、そこの私は事務局長を長らく務めさせていただきました。人権問題に関しての議論を大変深く、そして広範にわたってこれまで議論をしてきた経験上、人権問題であるかどうかの問題について第三者が一方的に決め付けるというのは、これは非常に危険なことであります。
言論の自由は、もちろんどなたにもあることでありますし、そして状況的判断がやっぱりあるものでございます。その人権問題のやっぱり一番のポイントは、被害者、その差別発言を受けた方の感情に寄り添うことであることは論をまたないわけでありますけれども、その感情に対して、どうして、誰がどういう理由でこれが差別であると判断するかについては、大変けんけんがくがくの議論があるところであります。
そうした重い判断を私個人が大臣という立場でこれが差別であるというふうに断じることは到底できないことでありまして、まだ今もその議論は続いておると私は認識をしておるからこそ、そういう発言をさせていただきました。
○田村智子君 土人、シナ人という言葉は、自分よりも劣る民族、人種という意味で差別的な侮蔑用語として使われてきた、それ以外に使われた例なんて私聞いたことないですよ。
沖縄県では選挙で何度も米軍基地建設を拒否する意思が示されてきたにもかかわらず、沖縄担当大臣だった島尻氏が参議院選挙で落選した翌日から大量の警察官、機動隊員を動員して高江のヘリパッド建設が強行された。沖縄には民主主義がないのかという猛烈な怒りの声が起こる中で、沖縄県民に対するヘイトとも言えるような発言が飛び出したわけですよ。
これ、官房長官も国家公安委員長も遺憾であり謝罪という言葉しか述べていない中で、鶴保大臣が、人権問題かどうかとか、こういう事の重大性を薄めるような発言をすると。私は、これはいかがなものかというふうに思うんですけれども、もう一言いただきたいんですけれども。
○国務大臣(鶴保庸介君) 今委員がくしくも御発言なさった、土人という発言が差別以外の何物でもないとおっしゃったけれども、それこそが、申し訳ないけれども、私は判断のできるものではないというふうに思っています。
過去に、その土人という言葉の経緯でありますとか、その言葉が出てきた歴史的経緯でありますとか、様々な考え方があります。また、今現在は差別用語とされるようなものであったとしても、過去には流布しておったものも歴史的にはたくさんございます。そんな事例もたくさんございます。そういう意味におきましても、それを、土人であるということが差別であるというふうに、私は個人的に自分がこれは差別であるというふうには断定はできませんと、このことを強調しておきたいと思います。
○田村智子君 現代において逮捕権を持つ警察官が使った言葉だという、この事の重大性を私は理解していないんじゃないのかと。しかし、今日は法案の審議ですので、この問題はまた別の機会でお聞きをしたいと思いますが、厳重に鶴保大臣の今の発言に対しても抗議をして、法案に対する質問に進みたいというふうに思います。
衛星リモートセンシング記録に関する法案についてお聞きします。
人工衛星による地球観測、測位を国の許可制とし、画像記録の提供も国の管理下に置くことを目的とした法案で、特に十九条では、内閣総理大臣がリモートセンシング記録の提供を禁止することができると定めています。その要件は、先ほどもあったとおり、国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときと、大変曖昧なもので、日本の領土、領海の記録に限定したものでもなく、日本国内事業者であればいかなる地域の記録についても提供の禁止命令を出すことができることになります。
先ほどの質問にも、紛争当事国やテロ組織などによって利用されるおそれ、政治的、軍事的な情報収集手段として利用され我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがあると認識するのに十分な資料や合理的な理由がある場合という説明がされているんですけれども、これもよく分かんないわけですね。
そこで、具体的にお聞きします。例えば、アメリカはテロとの闘いだと言ってアフガニスタンやシリアでの空爆を繰り返していますが、このアメリカがテロ掃討作戦を展開するに当たり、当該地域のリモートセンシング記録を一定期間非公開にするよう日本政府に協力を求めた、このような場合に総理大臣はリモセン記録提供の禁止を命じることができるのでしょうか。
○政府参考人(高田修三君) リモセン法第十九条に基づく禁止命令につきまして、提供禁止命令の発動につきましては、個別具体的な状況に応じて総合的に判断されるものであり、一概にお答えすることは困難だということに御理解いただきたいと思います。
いずれにしましても、当該措置は、内閣総理大臣が衛星リモートセンシング記録の利用が国際社会の平和の確保などに支障を及ぼすおそれがあると認めるに足る十分な理由がある場合に発動するもので、委員お尋ねの場合も含め、個別具体的な状況に応じてこれらの要件に基づく判断を行うことになると、こういうことでございます。
○田村智子君 これ、あり得ると考えるしかないわけですよね。軍事的に利用されないようにと言いながら、米軍などの軍事行動を事実上支援することにもなりかねないような条文だと思います。
更に三点確認します。一つは、禁止命令は当該事業者のみが知るのか、それとも禁止命令が出されたことは公開されるのか。二つ目、禁止命令の理由は誰にどのように示されるのか。三つ目、禁止命令の妥当性は、事後的な検証はどのようにどこで行われるのか。お答えください。
○政府参考人(高田修三君) 本法案第十九条に規定するとおり、衛星リモートセンシング記録の提供禁止命令は、本法案において規制対象となる衛星リモートセンシング記録を保有する者に対して行われることになると。
それから、他方、提供禁止命令の発動につきましては、個別具体的な状況に応じて総合的に判断する必要があることから、記録保有者以外の者に対する情報提供の有無や理由の開示については一概に申し上げることは困難であると。
仮に本法案第十九条に基づく提供禁止命令が発動された場合には、本法案附則五条におきまして、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」こととされており、必要に応じ検討などを行うこととなると考えます。
以上でございます。
○田村智子君 これは、国民には情報も資料も明らかにされずに、ある地域に関する地球観測データの提供が禁止される、こういう状況になることが十分考えられますし、それが結果として多数の民間人が犠牲となるような軍事作戦への協力だったとしても、その妥当性の検討が果たして公に行われるんだろうかと、私たちが知り得るものとして検討が行われるのかと、これもよく分からないわけですよ。
戦時中、気象観測データは軍事機密として非公開とされて、大型台風が接近していた地域にもその情報は隠されました。東日本大震災では、大津波の撮影画像は非公開、原発事故による放射性物質拡散状況の観測データも隠されました。こういうことを繰り返してはならないはずです。地球観測は自主、民主、公開を原則とすべきで、このような強権を伴った国の統制は行うべきではないというふうに申し上げます。
次に、宇宙活動法案についてお聞きします。
この法案は、人工衛星等の打ち上げ、管理を許可制とし、打ち上げ時の事故等により地上で生じた損害の賠償規定を定めるものと。これらの規定を整備することで民間事業者の宇宙活動を推進しようということですが、こういう賠償規定などを定めることは必要だと思います。ただ、問題は、その宇宙活動が軍事利用の促進にならないかということです。
衆議院の委員会審議で我が党の島津議員が、国内企業が外国の軍隊が利用する衛星を打ち上げることは許可されるのかというふうに質問いたしました。答弁の議事録読んだんですけれども、よく分からなかったんです。
外国の軍隊が所有又は使用する人工衛星を日本の民間企業が打ち上げる、これを許可するのか否か、大臣にもう一度御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(鶴保庸介君) 本法律案では、人工衛星等の打ち上げに係る許可の基準として、搭載される人工衛星の利用の目的及び方法が、宇宙基本法の基本理念、すなわち日本国憲法の平和主義の理念にのっとり行われるべきものと規定されているその理念に則したものであること、あるいは宇宙関連諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないこと等を規定しておりまして、これらを満たす者のみについて許可することとさせていただいております。
○田村智子君 では、安全保障に資すると考えられれば認めるということもある。よく分からないんですね、今のね。
日本の防衛省も、Xバンド通信衛星の打ち上げを国内民間企業が受注をして、南米フランス領ギアナ宇宙センターで打ち上げる。これ、今年七月打ち上げる予定だったのが輸送中のトラブルで延期となっていますけれども、こういうことが進んでいます。
また、三菱重工は、ドバイの政府機関から人工衛星の輸送、打ち上げを実施し、これが海外からの受注の三例目となりました。今後更に受注拡大することを経営方針としています。
これらの人工衛星は、民間の人工衛星との相乗りの打ち上げです。経済性、効率性から民間を活用した軍隊を含む政府関係機関の衛星打ち上げというのは更に増えるだろうと思われるわけです。軍隊が衛星をどう使うか、これはもう管理のしようがないはずなんですね。少なくとも他国軍隊が利用する人工衛星の打ち上げ、これ排除しなければ、宇宙の軍事利用を更に推進するということにもなりかねない、この問題を指摘しておきます。
次に進みます。
本法案、今年四月閣議決定された宇宙基本計画の具体的推進の一つです。宇宙基本計画は、多省庁にまたがる宇宙開発事業について統合的な計画を立て予算配分等をするために五年ごとに策定されてきました。ところが、前回の基本計画策定から僅か二年で、我が国を取り巻く安全保障環境の急変を理由に、安倍総理が新計画の策定を指示しました。新計画は、二〇一三年一月に策定された前の計画と大きく様変わりをしています。
前の計画では、我が国宇宙開発の自律性の必要性を述べ、主に宇宙空間での研究、民生利用についての記述がなされています。ところが、新計画は安全保障が前面に出て、宇宙における日米同盟の強化ということが初めて打ち出されました。アジア太平洋地域における米国の抑止力を支える宇宙システムの抗堪性を向上させることを含め、等々で日米協力を総合的に強化するということが書かれているわけです。これは、二〇一五年に発表された日米防衛協力のための指針、いわゆる新ガイドラインで初めて宇宙に関する日米間の協力が盛り込まれたことを反映したものだというふうに理解します。この中でも、宇宙システム能力の抗堪性を強化するというふうに書かれています。
この抗堪性という言葉は余り耳にしないものなので調べてみますと、軍事用語だと。基地や施設が敵の攻撃を受けた場合に、被害を局限して生き残り、その機能を維持する性能などの説明がなされています。
米国の抑止力を支える宇宙システムの抗堪性を向上させる、これは具体的にどういうことなんでしょうか。
○政府参考人(岡真臣君) 宇宙システムの抗堪性に関しまして御質問をいただきましたので、お答えを申し上げさせていただきたいと思います。
宇宙ごみの増加、あるいは衛星攻撃兵器による実験といったことがございまして、宇宙空間の利用を妨げ得るリスクの拡散、深刻化といった新たな安全保障上の課題が発生をしておりまして、これに実効的に対処し、宇宙システムの抗堪化等に取り組むことが必要であると考えております。これは日米両国の共通の認識でもございまして、日米間では、相互の能力を強化、補完するために宇宙分野において協力を行ってきているところでございます。
我が国におきましても宇宙システム全体の抗堪性の強化は安定的な宇宙利用の確保のために重要であることから、同盟国等との衛星機能の連携強化など、政府全体で検討が行われていると承知しておりまして、防衛省といたしましても、こうした検討に積極的に参画をしているところでございます。
具体的な取組でございますけれども、防衛省では、宇宙状況監視、いわゆるSSAの体制の構築のためのシステム全体設計を進めておりまして、SSAの能力を強化するに当たっては米軍との連携が不可欠であると認識しており、宇宙協力に関わる日米間の協議の場を通じて、情報共有、要員の養成等も含め、日米間の具体的な連携の在り方について更に検討を進めていきたいと考えているところでございます。
○田村智子君 今、宇宙ごみということが出されて、確かにデブリどうするかというのは重要な問題なんですけど、書かれているのは、米国の抑止力を支える宇宙システムの抗堪性なんですよ、抑止力。
これ防衛白書の中でも、米国が圧倒的優位の立場を取って、宇宙の様々な利用、特に米軍の利用というのを進められているということが書かれているんですよ。しかも米軍のその立場というのは、これまで一国主義だったのが大分多国主義になってきた、同盟国と共にということが言われている、あるいは民間もということが書かれていると。その中で抗堪性の向上ということが求められてくるということになるわけですよ。
この人工衛星による情報通信と指揮統制、これは、米軍の中で活発に活用されているのは無人機による空爆ですよ。自分の位置を人工衛星からの電波で把握し、リモートセンシング情報で攻撃対象を把握し、人工衛星を中継器として攻撃命令を受ける。人工衛星を通じて操縦するわけです。これらの人工衛星のどれかが何かの、デブリにぶつかったということも含めてでしょうけれども、機能を失うようなことになれば、これは動かなくなっちゃうわけですよ。無人機が正確に攻撃ができなくなるわけですよ。そういうことを補完するようないろんな人工衛星が必要だ、これが抗堪性という意味ではないのかというふうに私は思いますよね。こういうアメリカ軍の宇宙システムの抗堪性を抑止力を高めるために日米同盟によって向上させようというのが本心なわけです。
この無人機の攻撃というのは、二〇一三年十月、国連総会で、パキスタン、アフガニスタン、イエメンの三か国だけで少なくとも四百七十九人の民間人が死亡していると、こういう報告も出されて、今国際社会は大変に無人機攻撃に対する批判を強めているところです。
この無人機による空爆が女性や子供の命を奪い、新たな憎しみやテロの温床となっていることももはや明らかで、こんな米国の宇宙システム能力の抗堪性を強化するということが果たして宇宙の平和利用と言えるのかどうか、この見解を鶴保大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(鶴保庸介君) 宇宙基本法におきましては、宇宙開発利用を我が国の安全保障に資するよう行うものと位置付けております。憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で防衛目的での宇宙開発利用は行えるという趣旨であると理解をしております。
また、平和利用決議が採択された当時に比べ、宇宙開発利用の状況は大きく変化をしておりまして、我々の日常生活の中でも宇宙の利活用は広く行われております。このように宇宙開発利用が進展する中においても、安全保障に資する宇宙利用を一切認めないとまでは言えないというふうに思います。
議員の御質問につきましては、仮定のお話にお答えすることは大変難しゅうございますが、いずれにしても、憲法の平和主義の理念にのっとり宇宙開発利用を進めてまいる所存であります。
○田村智子君 少なくとも、無人機に利用するような人工衛星を補完することはできないと、これぐらいの姿勢示さなければ何が宇宙の平和利用かというふうに言わなければならないと思うんですね。
今回、民間を大いに宇宙活動に巻き込んでいこうということで新たに整備をされるんですが、宇宙基本計画の中では、そうした民間の研究なども、いかに安全保障を始めとした利用ニーズを十分に踏まえたものをこれやっていくべきだというような記述も出てくるわけです。まず軍事利用、防衛の利用、安全保障ありき、そこに民間の研究や産業振興をつなげていこうというような考え方まで宇宙基本計画の中には記されていると、このことも指摘をしなければなりません。
本来、国境も領有権もない宇宙は、人類全体の未来のために研究開発が進められるべきです。日米同盟強化、安全保障を理由とした宇宙をめぐる覇権争い、宇宙の軍事利用に研究開発が従属させられていけば科学の進歩を妨げることにもなる、このことを指摘をし、質問を終わります。