国会会議録

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母子加算削減やめよ 田村参院議員 財務省を批判

日本共産党の田村智子議員は10日の参院内閣委員会で、財務省が求めている生活保護の母子加算削減を取り上げ、「子どもの貧困対策の逆行は許されない」と追及しました。

 財務省は財政制度等審議会で、ひとり親世帯の生活保護水準(子ども2人、月18・4万円の場合)について、一般世帯の消費支出との比較で「年収500万円を超える世帯の消費支出と同水準」とし、「不公平感を招かないよう検討するべき」だと求めています。

 田村氏は、財務省が示した一般世帯の消費支出に「住居、医療、教育費などが含まれず、恣意(しい)的だ」と批判。財務省・藤井健志主計局次長は「母子世帯の生活水準や環境が、年収500万円を超える世帯と同水準であることを意味しない」と認めました。

 田村氏は、「第1次安倍内閣が強行した母子加算廃止と同じことが進んでいる」と指摘。母子加算復活の際に「貧困の撲滅とナショナルミニマムの考え方の確立を目指す」と確認した原告・弁護団と厚労省の基本合意を「ほごにするつもりか」と迫りました。厚労省の堀内詔子政務官は「子どもの貧困対策の視点も含めて議論している。一般低所得者世帯とのバランスだけで議論すべきでない、との意見も出されている」と釈明しました。

 田村氏は「貧困が子どもの成長や学習意欲に影響を与えている。生活保護世帯より低い収入世帯の底上げをどう図るかを議論すべきだ」と主張。加藤勝信1億総活躍担当相は「必要とする方に必要な支援が届くことが大事だ」と答えました。 

2016年11月15日(火) しんぶん赤旗

 

【11月10日内閣委員会 議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 子供の貧困問題について質問をいたします。

 日本は一人親家庭の貧困率が五〇%を超えると。OECD諸国の中でも最も高くて、そこへの経済的支援というのが急務だということは明らかです。

 政府も今年度から、児童扶養手当について第二子以降の支給額を引き上げるという施策を取りました。二の矢、三の矢が求められているというふうに思うわけですけれども、子供の貧困対策に関する大綱、これを見てみますと、経済的支援、いわゆる家計の支援に値するような政策というのが見当たらないわけですね。

 今後、この分野どうするのか、加藤大臣にまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(加藤勝信君) 政府においては、今お話がありました子供の貧困対策に関する大綱に基づきまして、子供の将来がその生まれ育った環境に左右されない、そういった意味で教育の支援、生活の支援、保護者に対する支援、保護者に対する就労の支援に加えて経済的な支援など、子供の貧困対策を総合的に推進するとしているところでありますし、今お話がありましたように、すくすくサポート・プロジェクトやニッポン一億総活躍プランを決定をした中で、給付型奨学金の創設や養育費の確保の仕組みについての検討を開始するなど、多方面にわたって子供の貧困対策の拡充を進めさせていただいているところでございます。

 今御指摘ありました経済的支援については、第二子以降への児童扶養手当の加算額の倍増を行ったところでございまして、この平年度化が平成二十九年でございますから、まずその予算の確保にしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

 その上で、これまで実施した施策の効果も含めながら、経済的支援だけではなくて、先ほど申し上げた総合的に様々な支援について検討を進めて必要な施策を講じていきたい、こういうふうに考えております。

○田村智子君 やっぱり家計の支援というのが本当に必要だと私は思っているんですね。

 ところが、心配な動きがあるんです。十月二十七日の財政制度審議会財政制度分科会に社会保障に関する財務省資料が提出をされました。その一部、今日、配付資料していますので、表紙をおまくりいただきたいと思います。生活保護の基準と消費実態(有子世帯の扶助等)という資料があります。有子世帯というのは子供のある世帯ですね。

 これはどういう資料かといいますと、低所得者から高所得世帯までこれ十の分位に階層を区切りまして、それぞれの階層ごとの生活扶助相当の消費支出なるものを財務省が全国消費実態調査から試算をしているんですね。これどういうものかと。その消費支出の中から住居費を除くとかあるいは教育支出を除くとか、こういうのをやって生活扶助相当という新たな概念をつくり出したかのようにして試算をしているわけです。

 その中で、論点の中でどう書かれているか。この生活扶助水準、これは母子世帯と比べると、五百万円を超える世帯の消費支出と同水準であることを意味していると。この生活保護世帯というのは、二級地一、栃木県宇都宮市を例に取って、母子世帯で子供が二人という設定なんです。一般世帯、五百万円を超える世帯と消費支出が同水準であると。

 これ財務省にお聞きしたいんですけれども、ということは、この母子世帯の生活保護世帯は五百万を超えるような収入の一般世帯と同じような生活水準、子供の生活環境が同水準であると、こういうことが言いたいわけですか。

○政府参考人(藤井健志君) お答え申し上げます。

 御指摘の資料は、平成二十九年度に次期生活扶助基準の検証が行われますことを踏まえまして、財政制度等審議会における議論の土台として私どもの立場から提案を行ったものでございます。

 今般の資料は、委員からの御指摘もありましたように、一般世帯における消費支出全体から住居、保健医療、教育などを控除して算出いたしました生活扶助相当の消費支出と、一例として母子世帯の保障水準を比較しているものでございます。このため、同じく十八万円だからといって、母子世帯の子供の生活水準や環境が年収五百万円を超える世帯と同水準であることを意味しているものではないと、かように認識しているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後、生活保護の保障水準については、厚生労働省において検証、議論が進められていくものと承知しているところでございます。

○田村智子君 極めて恣意的な資料なんですね。実態と乖離しているんですよ。

 次のページ見ていただきたいんですね。さきの資料と同じ手法で、今度は収入三百万円以下の一人親世帯のまた生活扶助相当支出というのを支出して、一人親世帯の生活保護基準額、これは生活扶助、児童養育加算、母子加算、教育扶助、これ積み上げているんですね。これと比較をして、一般低所得世帯、年収三百万円未満の世帯における消費実態と比べるとはるかに高い水準だとしているわけです。そして、このページの下、改革の方向性、案、何と書いてあるか。生活扶助の保障水準について、一般世帯の消費支出と比べ不公平感を招く水準とならないように検討するべき、また、有子世帯の加算、扶助についても、その在り方、水準について検証を行うべきであると。

 つまりは、一人親世帯の生活扶助基準、母子加算、児童養育加算、教育扶助の水準が高過ぎるんだと、不公平感を招くんだと、こういうことが言いたいわけですか、もう一度財務省お願いします。

○政府参考人(藤井健志君) 御指摘の資料でございますが、ここでは一例といたしまして、母子世帯の生活保護基準と一般低所得世帯、世帯年収三百万未満でございますが、におきます一人親世帯の消費支出を取り上げて比較しているものでございます。

 生活保護制度につきましては、一般世帯との公平性が確保され、また適正に運営されることで国民からの信頼を得ていくことが制度の持続性を確保する意味でも重要なことだと考えております。そのため、次期生活保護基準の見直しにおいては、一般世帯の消費支出と比べ不公平感を招く水準とならないように検討していただきたいという改革の方向性について述べたものでございます。

○田村智子君 これは本当に、この加算等々に対する見直しって執拗に財務省迫っているんですね。

 二〇一四年度予算執行調査結果、これは財務省、別の資料で示しているんですけれども、子供のいる世帯の生活保護費について、少なくとも、生活扶助費と児童養育加算を加えた水準について、一般所得世帯の消費支出額、生活扶助相当分との均衡を図るよう調整すべきだと、こういう結論付けた文書も示されているわけです。これは事実上、一人親世帯の生活保護費の水準を切下げを検討せいと求めているのと同じなんですね。

 問題は、厚労省がこの予算執行調査の文書をそのまま二〇一四年十月二十一日の社会保障制度審議会生活保護基準部会に資料提出しているんですよ。この議論というのは今に続いています。そして、来年度、生活扶助基準の検証、これやられるわけで、基準部会がまさにその検討を行っているところなんですね。

 私が大変危惧をするのは、小泉内閣、そして第一次安倍内閣が強行した母子加算廃止と同じことが進んでいるのではないかということなんです。このときにも財政制度審議会で、一般母子世帯の平均収入と比べて保護水準を引き下げるということが求められました。しかし、国民の大きな批判、また違憲訴訟の提訴も経て、母子加算は復活されました。原告団、弁護団と厚労省、政府との基本合意の中では、我が国における貧困の撲滅とナショナルミニマムの考え方の確立を目指すということも明記をされたわけです。

 厚労省政務官、お聞きします。この基本合意をほごにして、今後、子供の貧困対策に逆行するような生活保護に関する議論が行われるのではないですか。

○大臣政務官(堀内詔子君) 委員御指摘の資料につきましては、財務省が財政当局の立場から提出された、そういったものと承知しております。

 厚生労働省といたしましては、現在、社会保障審議会生活保護基準部会におきまして、生活保護基準の次期検証に向けた検討を進めており、この中で生活保護制度における母子世帯を含めた子供がいる世帯の扶助や加算の在り方についても議論しているところであります。

 同部会では、子供の貧困対策の観点も踏まえて、一般低所得者世帯とのバランスという考え方のみで見直すことは適切ではないという意見も述べられております。

 厚生労働省としては、様々なデータに基づきながら検証を進め、議論を深めてまいりたい所存でございます。

○田村智子君 これ、生活保護の制度を議論するときにも、私は子供の貧困の解決をどう進めるのかという、この視点を欠くことは絶対にあってはならないというふうに思うわけです。

 この間、子供の貧困問題に取り組む研究者からは、やっぱり経済的困難というのは消費だけじゃないんですよ、子供の社会的な経験の不足が子供の学習意欲に影響を与えていると、こういう調査結果が様々に示されています。母親と子供の接する時間がほとんどなかったり、休日も親子で過ごす時間がない、博物館や美術館あるいは映画や演劇、音楽の鑑賞、こういう機会がない、旅行やイベントへの参加の機会もない、こういうことが子供の成長、学習意欲に影響を与えているという指摘です。実際に、生活保護世帯、一人親世帯の、その他の世帯と比べると、高校進学率に明確な格差もこれ出てくるわけですよね。

 また、今日資料でもお付けしましたけれども、生活保護世帯が抱える様々な困難、これが子供にどういう影響を与えているかということも見るべきです。厚生労働省が財政審に出した資料の中では、健康状態に関する調査というのが出されています。時間がないので詳しく述べませんけれども、健康状態が悪いとか、心のストレスを抱えているという割合は、これ保護世帯のお母さんの方が、母子世帯で比べたとき、はるかに大きい。その状態が子供たちにどういう影響を与えているかということを見ていかなければならないと思うんですね。

 それで、加藤大臣にお聞きしたいんです。生活保護の世帯よりも低い収入の世帯が相当数ある、これ私もそうだと思います。このことを議論するならば、そういう世帯をどう支援をして生活の底上げを図るのかと。このことを議論しなかったら、子供の貧困の解決の議論になっていかないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) 子供の貧困という立場で申し上げさせていただきますと、先ほども申し上げましたが、子供の貧困対策を進めるに当たっては、教育の支援、生活支援、保護者に対する就労の支援等、まさに様々な課題があるわけですから、それに応じて総合的に支援を行っていく必要があるというふうに思っております。

 そういう中で、今御指摘の経済的な支援でありますけれども、こうした経済的な支援、そして現物給付、こういったものも組み合わせた形でそうした世帯の生活の下支えをしていく、こういった必要があると思っておりますし、さらにこの子供の貧困対策大綱においても、「経済的支援に関する施策については子供の貧困対策の重要な案件として、確保していく必要がある。」と、具体的、明示的に述べているところでございます。

 具体的な施策については、それぞれの趣旨等があって議論されているんだろうと思いますが、大事なことは、必要とする方に必要な施策が、あるいは必要な支援が届けるようにしていく、このことが大事であるというふうに考えております。

○田村智子君 これ、低い方に合わせるなんて議論やっていたら、子供の貧困の解決にはならないということ、これを厳しく指摘しておきたいと思います。

 最後一問、給付制奨学金についてお聞きします。

 文部科学省の検討チームでは、児童養護施設退所者、生活保護世帯、住民税非課税世帯を経済的な基準として、ここに給付制奨学金やっていこうという検討がなされています。しかし、現在の生活保護の実施要領では、保護世帯の子供は、高校卒業後は稼働能力を生かすことが求められ、昼間の大学等への進学は認められていません。これは、整合性取れるように生活保護の実施要領の見直しが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。

 生活保護制度につきましては、利用できる資産能力その他あらゆるものを活用することを要件としておりますことから、高校卒業後は、就学によって得られた技能や知識の活用を図り就労していただくこととしております。したがいまして、現行の運用上、生活保護世帯の子供が大学に就学する場合には、その子供についてはその世帯から分離した上で進学していただく取扱いとしているところでございます。

 現在、文科省で検討されております給付型奨学金につきましては、生活保護世帯を含む低所得者世帯を給付対象とすることが検討されておりますが、これは大学入学後に世帯分離により生活保護世帯から除外されたとしても、生活保護世帯以外の世帯の子供と同様に、経済的事情により就学を断念することがないよう、その負担を軽減するために奨学金の支給対象とする方向で検討されていると承知しております。

○田村智子君 これ、結局、実施要領を見直しをしないと、進学した後、生活費は自分で稼げよということになるわけですね。奨学金が学費や教材費、全部賄えるような額にもならないというふうに思うわけですよ。これいろいろ難しい問題あると思います。しかし、もう時間がないので要望にとどめますが、是非政府全体として一般低所得世帯、生活保護世帯、高校卒業後の進学を保障するためにどうするかということ、これ真剣な議論をしていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

 
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