ひとり親家庭に支給される児童扶養手当法の政府改定案が4月28日の参院厚生労働委員会で採決され、全会一致で可決されました。これに先立ち日本共産党の田村智子議員は、ひとり親世帯への支援に関して生活保護利用世帯に対する滞納処分問題を取り上げ、法令違反だとして中止を求めました。厚労省の唐沢剛保険局長は、処分停止の必要を認めました。
田村氏は、千葉県に住む母子世帯が、以前住んでいた自治体での国保料滞納を理由に自宅差し押さえの処分を受けていることを追及。地方税法で「滞納処分によって生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」(153条)は滞納処分の停止ができると示し、「処分は停止させるべきだし、法令を改めて周知すべきだ」と求めました。
厚労省の唐沢保険局長は、「現に生活保護を受給している人は、滞納処分を行うことにより生活を著しく窮迫させる恐れがあるときに該当すると考えられる。速やかに執行停止を行う必要が高い」と述べ、法令を周知徹底すると表明しました。
田村氏は、高校生が受ける奨学金が生活保護で収入と認定され、ケースワーカーから奨学金辞退を指導されると批判。「いまや大学・専門学校進学は7割を超える。貧困の連鎖を断ち切り、教育を受ける権利を保障するうえでも見直しを」と迫りました。
塩崎恭久厚労相は、「高校卒業後は就労すべきとの考えだ。どこまで収入認定から除外するかは今後、適切に検討していきたい」と答弁しました。
2016年5月1日(日) 赤旗
【4月28日参院厚生労働委員会】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
二十六日の質問で、私は一人親世帯への支援として現金給付も現物給付も極めて不十分だということを指摘いたしました。今日の質疑の中でも養育費が大分取り上げられているというふうにお聞きをしています。
養育費、確かに私も、離婚しても親が子供の成長に対する責任を果たすものとしてこれは確保されることは大切だというふうに思います。ただ、私の二十六日の質問の後で大臣の答弁を聞いていましたら、離婚の場合にはまず自己責任で養育費を確保することが必要なんだと、児童扶養手当の拡充には予算も必要だからと、こういうふうな御趣旨の答弁もあったわけです。私は、ちょっとこれは政府の姿勢としてはどうなんだろうかというふうに思うんですね。養育費を当事者間の自己責任としていることには様々な問題があって、これなかなか養育費が確保できていないというのが現状だというふうに思うんですね。
ですから、二〇〇二年のときの児童扶養手当法の質疑のときにも、やはり例えば保証機関による代理徴収などの制度が必要ではないかと、こういう問題提起も行われていたところだと思うんですよ。
何か、養育費なのか、これが取れれば児童扶養手当の予算が抑えられるのかと、こういう議論ではなくて、やっぱり児童扶養手当というのは国が一人親家庭の児童の福祉のために支給するものであると、子供の成長、発達の権利を保障するものなんだと、やはりこういう立場でしっかりと議論していくことが必要ではないか、このことは指摘をしておきたいというふうに思います。
生別母子世帯の就労収入、今日資料もお配りいたしました。直近の二〇一一年で中央値が百九十六万円、これ、児童扶養手当を加えても二百四十六万円にとどまります。資料で配付した生活保護基準と比較をしますと、東京二十三区や横浜市など一級地ではこれは保護基準以下の収入となります。世帯の人数によっては二級地などでも保護基準以下になる可能性があると私は思います。
また、母子世帯の半数近くが就労状況はパート等、そのうちの八割が二百万円未満の収入で、これ平均収入を見ると百二十五万円、正規雇用でも二百万円未満という方は三〇%に達しないわけですね。ということは、やはり児童扶養手当を受給しても、その大半が生活保護基準以下ということになります。こういう貧困線を下回る、保護水準を下回る母子世帯にどういう対応をするのかということが問われていると思います。
前回、民進党、石橋委員も提起をしていましたが、やはり就労しながら生活保護を受けて生活を安定させる、そうやって子供と向き合う時間も確保する、こういうことも母子支援策としては位置付けるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
我が国の一人親の家庭は約八割が就業しておりますけれども、そのうちの約半数がパート、アルバイト等の不安定な就労形態にございます。生活保護を受給している方、これは母子世帯のうちの一四・四%でございますけれども、こういった方々も含め、経済的に様々な困難を抱えているというのが現状であるというのは認識しております。
このため厚生労働省では、すくすくサポート・プロジェクトに基づきまして、パソコン技能等の簡易な技能習得が対象となる自立支援教育訓練給付金の支給額の引上げ、さらにマザーズハローワークにおける一人親支援の体制の充実等を図らせていただいております。あと、いろんな様々な支援がございますので、これを自治体の窓口を一本化してワンストップ化の推進もさせていただきます。ということで、生活保護を受給している方を含め、一人親家庭の生活や就労を支援するためにきめ細やかな措置を講じることとさせていただいております。
これに加えて、生活保護制度におきましては、例えば就労意欲の喚起を目的としたセミナーの受講等に必要な費用を技能実習費として支給する仕組みがございまして、これにより生活保護を受給している一人親の方を支援することも可能となっております。
このように一人親の支援施策とさらに生活保護施策、この二つは適切な役割分担、連携を図ることで生活保護世帯を含めた一人親家庭の自立支援にしっかりと取り組んでいくことが大切であると、このように考えております。
○田村智子君 これ、シングルマザーが追い詰められて児童虐待になってしまうようなケースというのも幾つも起きているわけですね。だから、それは私は、窓口で生活保護を受けてはどうですかと勧めるぐらいのことを経済状況においてはやるべきだというふうに思うわけですよ。
現状では、残念ながら自治体の側はむしろ勧めるどころかブロックするという問題をいっぱい聞いていますので、この方向転換、姿勢の転換が必要だと、これは指摘をしておきたいと思うのと、もう一方、やはり当事者の方も保護申請をためらうというケースは多いと。そのためらわせる要因として、保護世帯への差別的な扱いとかあるいは保護世帯を蔑視するような行政の在り方、これをやっぱり指摘しなければなりません。ちょっと具体の事例を出します。
千葉県の死別母子世帯から相談があったんです。今年三月から生活保護受給となりました。この保護申請の前から二人の高校生があしなが育英会の奨学金を借りている、これは高校生活のためであり、また進学の準備金に充てるためだと。ところが、ケースワーカーさんが、これはほとんど収入認定することになってしまうと、借金にもなるので奨学金は辞退をという指導をされているんです。進学のためにはアルバイトで貯金するしかないんだよという指導で、これはケースワーカーの勝手な判断ではないんですね。奨学金は、給付であっても貸付けであっても高校卒業後の進学費用に充てることはできないというのが今の扱いだからです。
あしなが育英会の奨学金、これは年三十万円、三年間で九十万円ですから、貯金していれば、例えば専門学校などで専門的な技能を身に付ける、そのための準備金になるわけですよ、十分に。同じだけをアルバイトで稼ごうとすれば、これは勉学の時間を削ることになってしまいます。現行の生活保護の収入認定のルール、これが奨学金を辞退させて高校生に働けと求めると。これは私は本末転倒ではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今、生活保護の問題と大学進学の問題、なかんずく奨学金との関係のお尋ねでございました。
生活保護は、利用できる資産、能力、その他あらゆるものを活用することを前提として行われるわけでありますが、生活保護世帯の子供たちの自立を支援するために、奨学金の使途を確認をして、高校の修学旅行費とか私立高校の授業料などに充てる場合については収入認定から除外するということを今やっているわけでございます。
一方で、高校卒業後は高校への就学を通じて得られた技能や知識を生かして就労をすべきという考え方から、保護を受けながら大学の就学は認めていないというのが現状でございます。こうした生活保護の原則や生活保護を受給されていない方との均衡を図る観点から、奨学金を大学入学料や授業料に充てる場合の収入認定除外は現行運用上は認めていないというものでございます。
生活保護制度におきまして、最低生活を保障しながらどこまで収入認定から除外をするかということについては、生活保護の原則に留意をしながら、生活保護世帯の子供たちの自立を助長するという観点なども踏まえて、今後、適切に検討をしてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 今御答弁の現行運用を是非見直してほしいんですよ。
〔委員長退席、理事羽生田俊君着席〕
これ、例えば文部科学省の家計費の調査なんかを見ますと、親の学歴が子供の学習意欲に直結している、全国学力テストの結果に明確に表れていると、こういう研究調査がもう出されているわけですよ。そうすると、保護世帯の子供さんはもう高校を卒業したら働くのが当たり前なんだよと。私は、それでは貧困の連鎖を断ち切るということになっていかない。高校で習得した技能を生かして就職と言いますけど、それで果たして本当に正規の職業に就けるのか、それで本当に安定した生活保障になっていくのか、これ今の時点で考えると極めて疑問ですよ。
それで、生活家電の場合、全世帯の七割に普及すれば保護世帯でも保有を認めるという運用がなされてきたんです。これでクーラーの保有というのも認められるようになってきたわけですよね。今、大学や専門学校への進学というのは七割を超えているんです。これはやっぱり教育を受ける権利を保障するというこの点からも、生活保護世帯の高校生に、卒業したら働けじゃなくて、その先の進学の道があるよと、こういう運用を是非とも検討していただきたい。いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 生活保護の制度というのは、もう御案内のように、憲法第二十五条の文化的な最低限度の生活を営む権利を有するということから生活保護法に定められているわけであって、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とすると。
今、子供さんの大学進学の話でございまして、確かに貧困の連鎖が起きないようにするためにはやはり自らの能力アップをしていくことによって将来の自立に結び付けるという、そういう考え方はそのとおりだと思いますし、我々もそういう形で若い人たちを応援をしていくということは大事なことだと思っております。
今、この生活保護の制度における奨学金の中での扱いについての、もう少し収入認定の除外に、拡大をもっと考えるべきじゃないかと、こういうことだろうと思います。その問題意識は今申し上げたとおりでございますけれども、今後、先ほど申し上げましたように、生活保護世帯の子供たちの何しろ自立をどう促していくかということが大事でございますので、その点をよく踏まえて今後しっかりと検討をしてまいりたいと思います。
○田村智子君 是非前向きな検討をお願いします。
この千葉の母子世帯についてもう一点指摘したいんです。
現在、この方は千葉の郡部の自宅に住んでいますが、以前住んでいた自治体で国保料の滞納があって、それを理由に以前住んでいた自治体がその自宅を差し押さえてしまっているんですよ。しかし、直ちに換金できない住宅の場合、このような扱いはできないはずです。ところが、このことを指摘をしても、その自治体は、差押えを解除しないどころか、換価処分もできるんだと、こう豪語をしています。
地方税法十五条の七第一項二号は、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは滞納処分の停止ができるとしています。この要件は、生活保護若しくは滞納処分によって生活保護になるおそれがある場合ということです。この法令に照らしても、このような滞納処分、当然停止すべきですし、やはり私が指摘した法令を改めて自治体に周知すべきだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) 滞納処分の執行停止の要件、これは、先生今御指摘いただきましたとおり、滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫させるおそれがあるときとは、滞納者の財産につき、滞納処分を行うことにより滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態になるおそれのある場合とされているわけでございます。
個別の事情は様々ございますけれども、一般的に申し上げれば、現に生活保護を受給している人は、滞納処分を行うことにより生活を著しく窮迫させるおそれがあるときに該当すると考えられるわけでございまして、速やかに執行停止を行う必要が高いと考えております。
厚生労働省といたしましては、これまでもこういうことは申し上げておりますけれども、様々な機会を捉えて周知を図ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 もう一点、生活保護の問題で、これ不正受給とされる件数で多いのは、高校生など保護世帯の子供のアルバイトの収入が未申告だったという場合です。厚生労働省は二〇一二年七月に事務連絡を出して、このようなケースでは生活保護法六十三条ではなく原則七十八条を適用して費用徴収をすることとしました。
高校生のアルバイト収入の使途、これは就学、進学、修学旅行などで、申告すれば使った分は全額収入認定から除外をされる、これは六十三条では除外して収入認定になるんですけれども、七十八条適用をすると、使ってしまった分も含めて全部返しなさいということになるわけです。勤労控除も未成年控除も適用しないという極めて厳しい徴収になるわけですね。
保護を受けながらぜいたくをするために所得を隠す、これは悪質だと思います。七十八条適用、仕方がないと思います。しかし、高校生が制度を十分理解せずにアルバイトをして、その使途が学業のためであって既に使ってしまっていても全額返還させる、こういう扱いは余りにも酷だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 生活保護制度は、もう先ほど来申し上げているとおり、資産、能力、あらゆるものを活用していただくということが要件であるわけでありますが、となれば収入がある場合の申告義務というのは、これは高校生を含めた未成年者に対しても同様に適用されるというのが現行の制度でございます。
したがって、不正に受給する意思がなくて申告を行わなかったことにやむを得ない理由があると認められるなどの特別な場合は別としまして、そういったことは除き、高校生のアルバイト収入であってもその申告がなかった場合には、収入未申告によって保護費の返還を求めるということとなっているわけでございます。
〔理事羽生田俊君退席、委員長着席〕
このため、アルバイトをする高校生に収入申告義務を理解をしていただくために、福祉事務所において、保護開始時であったり、あるいは受給中については年に一回以上、申告義務の内容について説明をすることとなっており、その説明を御理解をいただいた上で適切に対処していただくということで、この制度を運用していっていただきたいというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 これ、昨年三月十一日に、未申告のアルバイトについて生活保護法七十八条が適用された、このことについて横浜地裁川崎支部での判決がありました。これは、事実関係省略しますけれども、判決では、高校生のアルバイト収入が申告されなかったことを理由に七十八条を適用するに当たっては、その収入の使途、使い道ですね、これについて少なくとも検討の対象とすべきものだと、こう指摘をしています。また、アルバイト収入全体は、本人の修学旅行や進学に有効に使われていたと、このことを指摘して、アルバイト収入全体について、これを申告せずに保護を受けたことをもって直ちに不実の申請その他不正な手段により保護を受けたと断ずるには原告にとって酷だと、こういう指摘もしているわけですね。
それで、大臣、今丁寧に説明も高校生に行うべきだということなんですけれども、保護開始のときには小学生だった、中学生だった、それから高校生になったという場合にちゃんと説明がされていないということは多々あるわけですよ。お母さんに用紙渡してね、お母さん、これ説明しておいてね、本人の署名をもらっておいてねと。お母さんが、ケースワーカーさんが来てこれ置いていったから署名しておいてね、高校生よく理解しないまま署名をしたと。この署名したことをもって、あなたは申告すると約束をしたのに申告しなかった、不実だからと。たとえ修学旅行のためにお金使ったとしても、これは稼いだ分は全部収入認定、遡っても収入認定、遡って返せと。これは、私は高校生の気持ちを物すごく傷つける、自立に対してむしろ阻害にもなりかねないというふうにも思うわけですよ。
だから、高校生のアルバイトについての七十八条適用、これやっぱり見直すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど申し上げたように、アルバイトをする生活保護世帯の高校生に対しては、収入申告義務を負うことをしっかり御理解をいただくということが必要であって、福祉事務所は、先ほど申し上げたとおり、受給中については年に一遍以上、少なくとも、この申告義務の内容についての説明をすることということになっているわけでございます。
福祉事務所が、例えば訪問する際に、保護開始時や、受給中については年に一遍以上、保護のしおりを配付するなどによって、世帯主と高校生を含む世帯に収入申告義務について十分説明をするとともに、その際、確認書の様式を示しながら本人による署名を求めることとしているわけでございまして、こうした収入申告義務に関してしっかりと説明をすることについては、自治体による生活保護行政の実施状況を厚生労働省が監督する場で確認をしているほか、全国会議等を通じて周知徹底をしており、今後とも機会を捉えて適切に対応しなければならないと考えており、高校生が全く認識をしていないという状況をなくしていく上で、理解の下でこの制度を運用をしていくということが好ましい形ではないかというふうに思います。
○田村智子君 終わります。