日本共産党の田村智子議員は14日の参院文教科学委員会で、障害児への特別支援教育で、学年の異なる生徒で1クラスをつくる複式学級や大規模・過密化の実態を示し、きめ細やかに対応できる教育環境への改善を求めました。
田村氏は、岡山県倉敷市内の小学校にある特別支援学級では、ほとんどのクラスが4学年以上を一つにして、教員は全クラス1人だけだと批判しました。
馳浩文科相は「教員の負担は当然重い」と認めました。田村氏は、同市内の保護者から“担任はとても一人ひとりに目が行き届かない”という声が多数出ていると指摘し、学級編成の早急な実態調査と編成基準の見直しを迫りました。
大規模・過密化の問題について田村氏は、音楽室や図書室などの特別教室が普通教室に転用された茨城県内の事例を示し、法令上の設置義務がなくても特別教室は必要だと主張。馳文科相は「自治体の責任で適切に判断すべきだ」と責任逃れの答弁をするにとどまりました。
田村氏は、公立学校の施設整備国庫補助の上限となっている必要面積について、小中学校の保有面積は100%超なのに特別支援学校は6割台にすぎず、「狭いところに押し込まれている」と批判。「このままでいいとは思わない」としか答えない馳文科相に、「児童生徒数に基づく施設基準を定めるべきだ」と強調しました。
2016年4月19日(火) 赤旗
【 文教科学委員会 議事録 2016年4月14日 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
本日は、質問の順番に御配慮をいただきまして、本当にありがとうございます。
今年の四月から障害者の差別解消法が施行され、障害のある子供たちへの教育環境整備等、合理的配慮が国にも求められることになります。このことにも照らして、特別支援教育について質問いたします。
岡山県倉敷市で、配付資料の一枚目です、我が党市議団が学校ごとに特別支援学級の在籍児童について資料をまとめました。これは倉敷市が提出した資料に基づいてのものですけれども、このうち、学校名をA、B、C、Dに直したものを今日はお配りをしています。
この小学校のEというところを見ていただきたいんですけれども、特に一番下の情緒という区分で、クラスがこばとの5というところなんですけれども、ここは一年生から六年生まで全ての子供が一つの学級にいるわけですね、在籍をしているわけです。同じように、ほとんどの学校で、ほぼ四学年にわたるクラスというのが当たり前になっていることがよく分かります。こういうクラスであっても、配置されている教員は一人です。資格を持っていない補助員の方という方はいますけれども、有資格者の教員は一人しかそれぞれのクラスに配置をしていないわけです。これは、個々人への対応がよりきめ細かく求められる特別支援教育としていかがだろうかと。
まず、大臣に、この表を見ての御感想をお聞かせください。
○国務大臣(馳浩君) おはようございます。
小中学校における特別支援学級については、一学級を八人で編制することを標準としております。二以上の学年の児童生徒数の合計が八人以下である場合、複数の学年の児童生徒を同一学級に編制することとしております。
全国の実態の詳細を網羅的に把握しているわけではありませんが、三学年以上の複数の学年にわたる学級編制が行われている例があることは承知しておりますし、今ほど委員御指摘の、複数のというよりも四、五の学年にわたるクラスを抱えている教師の負担は当然重いだろうなということは想像できます。
○田村智子君 倉敷の障害児親の会の皆さんが保護者アンケートを行っているんですね。そうすると、小学校では、学年も多く、何をしたか子供自身が分かっていないような状況だと、あるいは、手の掛かる子がいると担任はその子を見るのに手いっぱいでほかの子はほっておかれてしまう、その場しのぎにならないか不安に感じるなどの声があります。中学校のアンケートを見ますと、知的クラスでは、それぞれの子供の状態が違う上、三学年同じクラスなので教科書ももちろん使用できず、参観に行ってみるとビデオを見て授業が終わりということもあると、こういう声も紹介がされていました。
これは、学級定数の標準法では、複式学級を置く場合、その基準を二学年を一まとまりにというふうにしているんですけれども、特別支援学級についてはこういう何学年のまとまりというものがありません。先ほど御答弁にあったとおり、特別支援学級は編制上、上限は八人だという基準しかないわけですね。こうなると、一年生から六年生、同じクラスということは、これは起こり得るというふうに思うんです。
それで、二つ要望したいと思います。
一つは、特別支援学級の学級編制について、これ是非実態調査を行ってほしいということです。この資料のように、障害種別ごとに、どういうふうにクラスに分かれているのかとか、あるいは一クラスの中に各学年で何人が在籍をしているのかと、こういう、全部は難しいかもしれないけど、何らかの実態がつかめるような調査を是非早急にやっていただきたいと思います。
二つ目です。その上で、特別支援学級の編制について、これやっぱり障害種別が必要だとか、あるいは複式学級の場合にはこういう学年のまとまりが必要だとか、こういう基準を是非検討してほしいんです。その際、現状の上限八人ということが果たしてきめ細やかな指導にふさわしいものなのかどうか、このことについても是非検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(馳浩君) 二つの御指摘がありましたので、分けてお答えいたします。
現在、特別支援学校や特別支援学級、通級による指導等に係る調査により毎年度全国の実態について把握を行っておりますが、特別支援学級の複式学級数についての詳細な実態についての調査は行っておりません。障害のある児童生徒の実態に応じて、例えば交流及び共同学習など様々な方法により教育が行われているほか、加配教員の配置、特別支援教育支援員の配置、介助員の配置など様々な形態があることから、一律の調査を行うことは考えておりません。
文科省としては、教育委員会からのヒアリングなどを通じて対応しているところであります。こうした方策によって、今後とも実態の把握に努めてまいりたいと思います。
二点目、編制基準についてであります。
小中学校における特別支援学級については、障害のある児童生徒に対して必要な教育を提供できるよう、これまでも数次にわたる改善を図ってきております。現在は、一学級を八人で編制することを標準としております。
近年、特別支援教育の対象児童生徒数が増加している状況を踏まえ、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応えるため、通級による指導のための加配の充実等の対応を行ってきたところでありまして、引き続き必要な特別支援教育の充実に努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 これは是非、例えば複式学級をやっているところの調査など、全体じゃなくても何らかの実態把握を急いでほしいと思いますし、複式でやっていても八人なのかということを含めてなんですよ。多学年にわたっても八人なのか、そういう標準でいいのかと、こういう柔軟なちょっと検討を重ねてお願いをしておきたいというふうに思います。
次に、特別支援学校の大規模化、過密化、これは何度も我が党、衆参にわたって質問をしているんですけれども、茨城県の勝田特別支援学校、これは大規模化、過密化が問題となっていて、今も特別教室、技術室、音楽室、美術室等々、図書室とかですね、八つの特別支援教室が普通教室に転用をされています。あるいは、教材室は更衣室と兼用とか医療的ケアルームが印刷室と兼用とか、労働安全衛生法に定める教員の休養室もないなどの現状があります。
来年度、これを解消するということもあって常陸太田特別支援学校が開校することとなって、これで教室不足が解消されるかなという期待があったんですけれども、これに伴って現在設置されているプレハブ校舎が解体されるという方針なんです。これでは結局、教室不足は解決しない。それどころか、示された案では新たに特別教室である木工室もなくなってしまうと、こういうことで、同校の教員が県の人事委員会に措置要求も行っています。
もちろん、私もプレハブ校舎でいいというふうには思わないんですけれども、しかし、県教委の対応の中でちょっと問題だというふうに感じるのは、特別教室は法令上設置の規定はないとして、事実上、県教委は特別教室は必要ないんだという立場を取っているということなんです。特別支援学校以外の学校も、法令上、特別教室の設置の義務付けの規定はありません。それでも、図書室とか音楽室、美術室、こういうのはあって当たり前なんです。じゃ、特別支援学校はこれがなくて当たり前でいいのかということなんですね。
そこで、文科省は特別支援学校に特別教室は必要ないという立場をお取りになるのかどうか、これまずお聞きします。
○国務大臣(馳浩君) 特別支援学校は、対象とする障害種に応じた多様な施設設備の整備が必要とされることなどから、設置者の責任において児童生徒の状況や地域の実情等を考慮した上で適切に判断すべきものであるため、設置に当たっての基準は設けていないところであります。
教室不足については、文科省において毎年度調査を実施し、各自治体における教室不足の解消のための計画的な取組を促す通知を発出しております。また、平成二十六年度からは、新たに廃校施設や余裕教室等の既存施設を活用した特別支援学校の建物の整備に係る補助制度を創設したところであります。
特別支援教育に係る環境の改善は極めて重要であり、文科省としても引き続き教室不足の解消に取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 これは大臣のお言葉でちょっと聞きたいんですけどね。これも転用の調査やっているんですよ、文科省はずっと。特別教室を普通教室に転用しているのがどれぐらいあるか。これは、やっぱりそれがよくないという認識でやっているというふうに思うんですね。これやっぱり特別支援学校も特別教室という役割はあるというふうに思うのですが、大臣、見解、是非。
○国務大臣(馳浩君) 大変私が心苦しい思いで答弁していることを御理解いただいているとは思いますが、やはり障害の種別に応じてより適切な施設の設置が望ましいと思っておりますが、御理解いただけると思いますが、毎年のように子供たちの状況というのが変わっていくものでありますから、すぐに臨機応変に対応することがなかなか難しい中で各設置者である教育委員会において判断をいただいているところであります。
通っているお子さんや、また御両親、保護者の皆さんがやはりより良いと思っていただけるような環境を提供する、そういった必要はもちろんあると考えております。
○田村智子君 設置基準はないのはほかの学校も一緒なんです。ほかの学校にあって当たり前の特別教室が特別支援学校にないとなれば、これは私、差別解消法の立場とも違うんじゃないかということは指摘せざるを得ないんですね。
今日、もう一点確認をしたいのは、設置基準はないと、施設の設置基準はない。しかし、公立学校の校舎は、建設する際の国庫補助の上限である必要面積というのは定められています。この必要面積の積算根拠、これを教えてください。
○政府参考人(山下治君) お答え申し上げます。
義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律に基づきまして、国は公立学校施設の整備に要する経費の一部を負担若しくは補助することとされております。その経費を算定する際の補助の上限として必要面積が定められております。
特別支援学校の必要面積については、同法施行令第七条第二項に基づきまして、障害区分ごとに学級数に応じて面積を算出することとなっております。
○田村智子君 学級数に応じて面積を算定をして、これぐらいの面積が必要、まあ上限ということですけど、一応必要面積として国庫補助の制度があるわけですね。
資料の二枚目を見ていただきたいんです。
その必要面積がどれだけあって、それでは特別支援学校の実際の校舎、学級数で見たときにその保有面積がどれだけかというものを、文科省の資料を基にこれは労働組合が作った資料ですね。これ、小中学校のところの茨城を見ていただきたいんですけど、茨城、小中学部は、必要面積、国庫補助の上限である必要面積は十四万七千七百三十平米と。ところが、実際に校舎の保有面積を見ると、全県全体ですけど、七万七千平米余りしかないわけなんです。
そうすると、例えばこの勝田特別支援学校も、これやっぱりその学級数見てもっと校舎増築するんだというふうになると、この必要面積までの国庫補助は受けられるということになるはずなんですね。財政的に国は措置ができるということなんです。
これは非常に、実は三枚目の資料を見ていただきたいんですけれども、学校種別ごとに見ると、小学校や中学校というのはもう今、二〇一四年を見ると一〇〇%超えているんですよ、必要面積に対して保有面積は。学級数が少子化の下で減っているという傾向があるかもしれません。高校も、二〇〇二年、七八%だったのが、これは今日八六%を超えているんですね。ところが、特別支援学校だけはいつまでたっても六割台なんですよ。
これは、本当にこれでいいのかと。これもまた、差別解消法との関係からいっても、言わば狭いところに押し込められている、国庫補助との関係で見ても、というのが現状だと思うんですが、大臣、この実態をいかがお考えになるか、お答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(馳浩君) このままでいいとは思いません。
以上です。
○田村智子君 じゃ、済みません、一言だけ。
是非、このままでいいのか、じゃ、どうしていくのかということで、やはり私は、特別支援学校についても、施設の基準というのを児童生徒数に基づいてこれは持つべきだと。繰り返しこれは求められていることですので、その検討を強くお願いをいたしまして、質問を終わります。