日本共産党の田村智子議員は31日の参院内閣委員会で、安倍内閣が「待機児童対策」として推進しようとしている企業主導型の保育事業について、「『安心安全な認可保育所で子育てをしたい』という保護者の願いに逆行するものだ」と批判しました。
田村氏は、企業主導型の保育施設について、受け入れる子どもの年齢制限も人数制限もないのに保育士配置基準・設備基準が小規模型保育B型(0歳~2歳児が対象で定員19人以下)と同水準にされていることを指摘。B型は、保育士資格を持つ職員が全体の半数でよいとされていることなどを示し、「これまでは定員20人以上の施設では、全て保育士とされてきた。今回、これを大幅に後退させ、施設基準は努力義務。これでは保育の質は確保されない」とただしました。
内閣府の武川光夫政策統括官は「保育従事者すべてが保育士の(企業主導型の)施設には、加算を考えている」と答弁。田村氏が、保育士の配置基準・設備基準が最低基準を満たさなかった場合「改善指導を行うのか」とただすと、武川統括官は「著しく不適当な保育内容や保育環境である場合、児童福祉法上の改善勧告の対象となる」と答えました。
2016年4月1日(金)しんぶん赤旗
(議事録 3月31日 内閣委員会)
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今日は、保育の現場を知る方に是非お話を伺いたいということで、全国保育団体連絡会事務局長の実方伸子さんにお越しいただきました。
まず、実方参考人にお聞きをいたします。
安倍内閣は、待機児童解消加速化プランの柱として、この法案で企業主導型保育事業を新設し、五万人の受皿にするとしています。それでは、今保育所に入れずに困っている保護者の方の要求にこれは応える施策だとお考えかどうか、お願いいたします。
○参考人(実方伸子君) 本日は、このような機会をいただいて、有り難いと思っています。全国保育団体連絡会の実方と申します。
今、田村議員からもありましたように、この問題は連日マスコミをにぎわしていますが、三月二十八日に厚生労働省待機児童緊急対策を公表しました。小規模保育所の定員基準の緩和や国の基準以上で保育をする自治体の基準を国基準並みに引き下げること、つまり今以上に受持ち人数を増やすように自治体に要請するなど、規制緩和策が中心になっています。この間話題になっている保育士の処遇改善には全く触れられておらず、現場の保育士からは、次は保育士は死ねということかとの落胆の声も上がっています。
しかし、その中で示された企業主導型保育事業の積極的展開については、二〇一六年度予算において既に八百億円近くが措置されています。残念ながら、その位置付けや内容が関係者に十分説明されているとは言い難く、利用者である保護者や現場で働く保育士から疑問や不安の声も多数上がっています。現場の声あるいは保護者のニーズであるというふうには私たちは考えておりません。
今、果たして企業主導型保育が今求められる待機児童対策として十分なものなのか、今緊急の課題とされている保育士の処遇改善よりも優先されるべきものなのか、以下の点について十分な検討、審議をお願いをしたく、この場をお借りして意見を申し述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、企業主導型保育事業は認可外施設であり、新制度の実施主体である市町村が関与しないという問題があると思います。
子ども・子育て支援制度は保護者にとって最も身近な市町村が中心となって進めることになっており、これが保護者がこの制度に信頼を寄せるゆえんでもあります。現在、都市部で待機児童が問題になっていますが、市町村に保育の実施責任があるからこそ、保護者は市町村に対して認可保育所入所を、待機児童の解消を求めるのであって、市町村が責任を持つということの意味は大変大きいものです。
しかし、企業主導型保育事業は、補助金の管理、事業の執行を内閣府が行い、都道府県が指導監督し、事故等があった場合は設置運営の主体者が責任を負うという、保育に対する責任の所在が多元化しているため、非常に中身が分かりにくくなっています。また、認可外施設であるために、災害共済給付制度の対象にはならないということも保護者の不安を大きくしています。これも保護者のニーズではないということの証左であると思います。
二つ目に、企業主導型保育事業の基準の問題です。
企業主導型保育事業は、夜間、休日勤務あるいは短時間勤務、一時預かりなど、柔軟に対応できるということになっていますが、登園、降園時間が異なる子供、短時間しかいない子供、毎日登園しない子供、様々なニーズの子供たちを一緒に保育し、かつ、先ほど藤本先生からもありましたように、一人一人の発達を保障するという、そういう保育をするということは、毎日同じ時間帯に毎日同じ子供が保育される一般的な保育所とはその内容も保育の組立ても大きく異なり、通常の保育以上に高い専門性が必要になります。特に、夜間や短時間などは特殊な保育であるために、柔軟な対応ではなかなかできません。明確かつ日常の保育以上に安全を担保できる基準が必要です。
ところが、ここで想定されている保育の基準は小規模保育のB型、保育士の資格者は二分の一でいいということで、これは認可保育所の基準より低くなっています。こういうことも保護者の願いには応えるものにならないというふうに思います。
私たちは、事業所内保育所が果たす役割を否定するものではありませんし、そういう役割は十分承知しておりますが、仕事と子育ての両立を願う多くの保護者は、できれば家の近くで就学まで安心して預けられる保育所で保育を受けたいと考えており、地域で保育施設が整備されることを願っていると思います。だから、地域の認可保育所に入れてほしいということで市町村に保育所の増設を求めています。地域の保育所の整備以上のニーズが企業主導型の保育事業、事業所内保育の整備にあるとは思えません。
私は、国におかれましては、こうした保護者の切実な願いを踏まえて、二年目に入る子ども・子育て支援新制度など既存の制度が更に改善されて、市町村が保育に責任を果たせるように、財政も含めて御支援をいただけるようにお願いをしたいと考えています。
○田村智子君 今大きくお答えをいただきました。
それで、少し踏み込んでお聞きをしたいのは、一つは、実はこれまでの法案審議の中でも、例えば毎日満員電車に揺られて、そこに乳幼児抱えて通うなんていうのは大きな負担になるじゃないかと、こういう指摘も他党の議員からもされました。
そこで、地域での子育て、今お触れになりましたけれども、この地域での子育てという観点から見たときに企業主導型保育をどのように評価をされますか。
○参考人(実方伸子君) 多くの保護者は地域での子育てを望んでいるということをお話ししましたが、経験されている方はもう御存じだと思いますけれども、幼い子供を抱えて通勤をするというのはちょっと大変厳しいことだと思います。
まして、登園、降園をする保育所の送り迎えというのは、大きな荷物があったり、それから汚れ物があったり、非常に負担が大きいです。子供が二人、兄弟がいたりすると更にそれは大きなものになります。ですから、ただ子供を連れて出勤するということではなくて、いろいろな付随するものを持って、荷物を持って出勤する、またその荷物を持って帰っていくというようなことを考えると、とても保護者のニーズには合っていないのではないかなというふうに思います。
そして、保護者にとっては、ゼロ、一、二、あるいは三、四、五のところだけの子育てがあるのではなくて、その後、地域で小学校、中学校まで見通した保育あるいは子育てというのを展望しているわけで、企業の保育所、事業所内保育所に入ってしまうと、例えば保護者、両親が同じ職場である場合はいいですけれども、多分夫と妻は違う職場にいるんじゃないかと思います。そうしたときに、どちらの職場の事業所内保育所に子供が入るかということになって、片方だけに保育の負担が掛かってしまうのではないかと、そういうことを懸念されている特にお母さん方がたくさんいらっしゃいます。
そうしたことを考えるときに、保育はもう働く保護者にとっては生活の一部というふうになっていますので、できるだけ家庭の近くで、そして何かあったときに地域のコミュニティーの中で、両親が迎えに行けないときは、地域の子育てネットワークを幼いときから形成して、そして近所の方も含め、あるいは保育所の子育て仲間も含め、子育てが支え合えるようなそういう状況をつくっていくという上でも、やはり地域での子育て、地域の保育所での子育てというのが非常に重要になってくるのではないかと思います。
○田村智子君 もう一点、最初に指摘のされた質の問題で、私も、企業主導型保育が、保育士の有資格者、これは保育をする人の半数でも構わないと、こういう基準になっていることを大変危惧していますが、この点についてもう一度お願いできますか。
○参考人(実方伸子君) 保育の専門性、先ほど保育の質というお話もありましたが、保育というのは集団の子供たちを集団で保育するというのが特徴です。一対三とか一対六というのがありますけれども、多くの保育所では、クラスに十人の子供がいて、そこで複数の保育者が保育をするというふうになっています。日常的にはそのクラスの子供たちというのは変わらないということになっていますが、ここで想定されている企業主導型保育は、短時間の子供だとか、あとは二十四時間の開所なども想定されています。
今、多くの保育所で一時保育など突発的な保育の受入れもしていますけれども、子供にとっては初めての場所で知らない人に保育をされるというのは非常にストレスがたまりますので、そういう子供を受け入れるということは保育者の専門性が非常に問われます。大体、子供は大泣きします、初めて行った場所で。そういう子供たちが毎日入れ替わり来る、それに対応するというようなことはやはり相当の専門性がないとできないというふうに思います。それが資格者が二分の一でいいとか保育士の資格がなくてもいいということになると、これは子供にとってもストレスですし、その子にもストレスですし、そういう子供に手が掛かるということになると、周りのほかの子供たちに対して目が向けられない可能性も出てくるということで、全体として保育の質の低下が招かれるのではないかというふうに思います。
ですから、普通の保育以上に保育士の配置を手厚くするということの方が私は必要だと思いますので、資格者が二分の一というのは非常に安全性の面からも、あるいは保育の質を担保する面からも問題があると思われます。
○田村智子君 こういうお声を聞いてから、私は是非法案を作っていただきたかったというふうに思います。
政府にお聞きします。
事業所内保育事業というのは、児童福祉法に規定をされて、厚生労働省令によって保育を行う人の配置基準、設備基準など最低基準の定めがあります。これとは別に企業主導型保育事業を行うとなれば、保育士など人の配置や保育室の面積など施設の基準がどうなるのかと。
実は、施行日はあしたなんです。ところが、昨日までも何度聞いても、内閣府はこれから考えると、これから決めるんだという答弁で、余りに無責任だとまず言わなければなりません。
これまでの答弁では、現行の事業所内保育事業の小規模保育B型に準じて考えるのだと言います。これだと、今指摘あったとおり、保育を行う人のうち保育士資格を持つ人は二分の一以上、つまり半数でもよいということになります。小規模A型は全員保育士という基準になっています。わざわざ低い方の基準に準ずるということにしたということですね。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
企業主導型保育事業の設置基準につきましては、子ども・子育て支援新制度における事業所内保育や小規模保育事業の基準を参考に、一定の保育の質が担保されるような基準を定める予定でございます。このうち、人員配置につきましては、弾力的な施設運営を可能とするよう、おっしゃいましたように、事業保育型B型に準ずるものとして検討しております。しかしながら、例えば保育士を更に配置した場合は小規模保育A型に見合うような高い単価設定の助成も考えております。
いずれにいたしましても、実施要綱で質の確保には十分配慮してまいりたいと考えております。
○田村智子君 質の確保に配慮すると言いながら、わざわざ低い方の基準に準ずるとしたんですよ。
小規模保育事業というのは定員が十九人以下とされています。しかし、企業主導型は、小規模Bに準ずると言いながら、定員を十九人以下には限定していません。定員二十人以上の事業所内保育については、雇用保険の助成事業でも子ども・子育て支援法の事業でも、これ人員配置は認可保育所と同一の基準です。
企業主導型保育で定員二十人以上の場合はどうなるのか。同じふうに認可保育所と同一の基準にするのか、それとも、二十人以上であっても保育士は半数でいいという基準にするんですか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
二十人以上の場合であっても保育の従事者の最低限度は二分の一以上ということで検討しておりますが、それはあくまで最低基準でございまして、保育従事者全てが保育士の施設については小規模A型に見合うような高い単価の設定を考えております。
○田村智子君 あり得ないですよ。こんな基準持ったことないですよ、最低基準で。二十人以上の保育であっても半数は保育士じゃなくていいなんて、こんなことを公費が入る保育でやっていいのかと本当に問われます。これは後で加藤大臣にお聞きして、施設基準についても先に聞いておきます。
事業所内保育事業は、厚生労働省令で、保育室、ほふく室、園庭の設置や必要な面積、避難路など安全確保のための施設あるいは調理室設備など、施設基準を定めています。これを満たさなければ指定を受けられません。小規模B型についても当然こうした基準が定められています。定員二十人以上の場合には、保育室の面積基準は認可保育所の最低基準と同じになっています。それでは、企業主導型保育は施設設備についてこの最低基準を遵守するということですか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
企業主導型保育施設の設備、面積につきましては、都市部においても設置を可能とするよう、事業所内保育事業の小規模保育施設に定める基準を原則としてする方向で検討しております。また、人的配置については二分の一以上を保育士とすることは厳守したいと考えております。
○田村智子君 これ、施設設備の最低基準がどうなるかということは明確に分からないんですよ。最低基準、遵守するんですか、遵守を求めるんですか。もう一度お願いします。
○政府参考人(武川光夫君) 施設基準については、保育の質の確保の観点から、原則として、できる限り小規模保育施設の基準としたいと思っておりますが、一部例外もあり得ると思っております。
○田村智子君 こんな曖昧な答弁で、あしたが施行日なんですよ。
保育室やほふく室、園庭の設置やその必要な面積、避難路などの安全確保のための施設、調理室の設備、これらは子供の安全と育ちを保障するための最低基準なんですよ。与党の議員がこれ保育の質だと、単なる子預けじゃ駄目だと言いながら、この最低限の基準さえも決められていないんですよ。こんなのでどうして法案が成立させられますか。
これ、加藤大臣にお聞きしたいんです。
安倍政権は、この企業主導型保育を待機児童対策の大きな柱に据えているんですよ。五万人もの受皿にするんだと言っているんですよ。ところが、人の配置は、初めて二十人超えても、それでも保育士半分でいいなんという基準にしようという、施設設備の最低基準は全くどうなるのか分からない。これ非常に重大だと思います。どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 待機児童解消加速化プランの基本はやはりあくまでも認可保育園等であることは私ども前から御説明しているとおりでございまして、今回でもこの五十万に対して四十五・六万人分については認可保育園等で対応するということでありますし、また、そうした数字そのものは、それぞれの市町村からその地域における待機児童等あるいは今後の動向等を見極めながらそれぞれの市町村からお出しいただいた数字ということを遵守しているわけでございまして、ただ、それを超える部分については、また、認可保育園には例えば入り難い、そうした方々も、そうしたニーズがあるわけでありますから、そういったニーズに対応していくということで、今回企業主導型の保育事業というものを提案をさせていただいている。
今、中身については政府委員からも御説明いたしましたように、そうした考えに沿って今進めさせていただいておりまして、いずれにしても、一定の保育の質が担保されるように補助金要綱できちっとそれは定めていきたいと、こう思っております。
○田村智子君 補助金要綱をどう定められるのか。丸投げにしろということですか。本当に私、許し難いことだと思いますよ。保育士の資格を持つ人は半分でいいと。これもう人的配置の最低基準を事実上大きく掘り崩したに等しいですよ。それで、施設設備の最低基準については努力義務だ、これでどうして保育の質が確保されるのかと。五万人はもう仕方がないというのかと。本当に無責任だと思います。
施設や設備、これ最低基準を満たすように努力してほしいというふうに言われます。それでは、例えばつくられたその企業主導型の保育、ある事業所が、保育室が狭過ぎると、改善が必要だと認められる場合、これは改善を指導するんですか。その改善が行われない場合、助成の対象外とするんですか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
認可保育施設の最低基準と懸け離れた水準にある施設であって、著しく不適当な保育内容や保育環境である場合、著しく利用児童の安全性に問題がある場合、その他児童の福祉のために特に必要があると認められる場合においては、児童福祉法上の改善勧告の対象となると考えております。また、勧告に従わない場合などは、同法の事業停止命令や施設閉鎖命令の対象となると考えております。
また、本事業は補助金適化法の対象でございまして、定める要件に反する水準のものであれば本事業に対する改善の対象となると考えております。
○田村智子君 今のような答弁は初めて出てきたんですよ。これまでどんなにレクやって聞いても、今みたいな明確な説明は一切ありませんでした。
では、そういう改善がなされるような指導監督がどうなるのかということをお聞きします。
企業主導型保育については、認可外保育施設指導指針によって都道府県が指導監督を行うということです。また、助成先を応募、選定する公募団体が、助成の実施、事業実施状況の確認、補助金の執行に関する監査を行うということです。
それでは、認可外保育施設指導監督基準である年一回の立入調査、これを原則とするということですか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
御指摘のとおり、企業主導型保育事業は、児童福祉法に根拠を持つ認可外保育施設として、同法五十九条に基づきまして都道府県知事に立入りの権限が与えられております。これに基づきまして、厚生労働省の通知では、都道府県では年一回以上立入調査を行うことを原則といたしております。
○田村智子君 では、そういう立入りの調査が現実にどう行われているか、厚生労働省にお聞きします。
都道府県に届出のあった認可外保育施設の施設数と立入検査の件数はどうなっているのか。また、年一回の立入りが厳格に規定されているベビーホテル及び事業所内保育の立入り状況はどうですか。
○政府参考人(吉本明子君) お答え申し上げます。
都道府県知事への届出の対象となっている認可外保育施設の施設数は八千百六十三か所、立入調査の実施箇所数は五千六百四十六か所でございます。また、ベビーホテルにつきましては、同じく届出の対象となっている施設数が千五百九十三か所、立入調査の実施箇所数が千百三十四か所。さらに、事業所内保育施設につきましては、施設数が七百七十五か所、立入調査の実施数が三百三か所となっております。
○田村智子君 これ、現在でも、今の事業所内保育所で見れば六割が立入調査行われていないんですよ。ここに、更に五万人分の受皿だと。これ、恐らく二千か所とか、二千数百か所つくろうという規模だと思いますよね。そうなれば、ますます立入りの未実施が増える危険性さえあるわけです。
私がなぜここまで厳しく指摘をするのか。それは、コストを抑えた認可外施設が増え続ける下で、起きてはならない子供の死亡事故というのが毎年繰り返されているからです。
二〇一〇年の四月、川崎市で、生後十一か月の飯山拓斗君が保育室に通い始めて六日目に死亡するという事件が起きました。うつ伏せ寝にして放置したのではと御両親が施設長に事故当時の状況を尋ねると、うつ伏せ寝ではない、腹ばいだとの説明が繰り返されました。御両親は非常に不審に思って川崎市に情報開示請求をしたところ、この保育室が十年前にも死亡事故を起こしていたこと、この事故が起きる前の数年間、保護者からの苦情が多数あり、何度も川崎市が立入検査をしていたことが分かりました。その内容も、保育士の配置が足りない、子供をどなる、たたく、園長が痛みを分からせるためだと子供の腕にかみつく、衛生上の問題も多々指摘をされていました。驚くのは、それでも児童福祉法に基づく勧告、公表、事業停止などは一度も行われず、口頭指導、文書指導で終わっていたことです。御両親は、こういう事実が分かっていれば子供を託すことは絶対になかったと、こう話しておられるわけです。
立入調査未実施の施設はたくさんある。立入調査が行われても死亡事故が防げなかったという事例がある。大臣、こういう実態を見て、今回の企業型保育でどうなるのか、どういう認識をお持ちですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今の事例を言われたように、やはり子供さんを預けて、そして迎えに行ったら全く朝と違う状況であったというのは、大変何とも言えない親御さんにとっても思いだったというふうに思います。
まさに、教育・保育施設というのは子供たちが安心して過ごせる、そういう環境の中で行われていかなければなりませんし、事故で子供の命が奪われることがあってはならない、まさに事故の未然防止に努めていくのは当然の責務だと、こういうふうに思います。
立入調査や指導を円滑に行われるよう、現行では事業主の従業員のみを保育している場合には都道府県知事の届出を求めないということになっておりますけれども、今回の企業主導型保育事業においては届出をした施設のみを助成の対象とするということで、そうした都道府県における対応がよりやりやすい、こういう状況にもしているところでございます。
また、もちろん、不幸にして死亡事故が発生してしまった場合には、事故から教訓を学び、今後の施設、事業主の取組や行政の指導監査の手法を生かし、再発防止策に役立てなければならないというふうに考えておりますし、また教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会、昨年十二月に最終取りまとめが行われておりますけれども、死亡事故等の重大事故については、地方自治体において、外部委員で構成する会議で検証する仕組みの設置、また国においても、事故報告の集約や傾向分析、再発防止の提言を行うための有識者会議の設置、これはもう年度明け早々には設置したいと考えておりますけれども、こうした提言をいただいておりますので、しっかりとこうした事故防止策を進めていきたいというふうに思っております。
○田村智子君 これ、都道府県が指導監督するんだとおっしゃいますけれども、企業主導型保育事業は、自治体の財政措置はないんですよ。先ほど来の御答弁のとおり、遵守が求められる施設基準さえもないんですよ。曖昧なんですよ。これでは、指導監督は現行の事業所内保育と比しても弱まる危険性さえあります。公募団体が、全国の企業主導型保育を指導監督して、是正の点検などして回るんだろうかと。一体、誰が保育の質の確保に責任を持つことになるんですか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
企業主導型保育は、児童福祉法に根拠を持つ認可外施設でございます。具体的には、企業主導型保育施設は都道府県の指導監督を受けるということでございまして、設置に当たって、都道府県への届出義務、施設の運営状況の報告義務、都道府県による報告徴収、改善勧告、閉鎖等の命令を受けることとなっております。さらに、虚偽報告や閉鎖命令への違反の罰則が科せられることとなります。
また、補助金の適切な執行の観点からは、公募団体により現地調査を通じた不正受給の防止や事業者に対する是正命令、義務違反に対する助成の取消し等を行うことを想定いたしております。
○田村智子君 都道府県は補助金出すわけでも何でもないんですよ。都道府県と事前によく協議して安全性がどう担保されるのか、そんな話合いもせずにこの法案出してきているでしょう。本当に無責任極まれりと私は思います。
この企業主導型保育は、当該事業所から離れた市街地に設置をしてもいいと。当該事業所の労働者の子供を受け入れるために開設されていれば、結果として利用者は地域の子供だけであってもいいと。そうなると、事業所内保育と言いながら、現行よりはるかに緩い規制で企業が地域の保育に参入できると、こういうことにもなっていくわけですよ。
その上、もう一点確認したいのは、保育料の設定、これも自由なんじゃないでしょうか。何らかの基準を設けるんでしょうか。
○政府参考人(武川光夫君) お答えいたします。
企業主導型保育事業における利用者負担につきましては、事業者の裁量で設定いただくことを想定しております。しかしながら、事業者に対する運営費補助につきましては、認可の小規模保育事業等と同程度の利用者負担を前提として補助の水準を設定することを予定しておるところでございまして、この前提としている利用者負担の水準につきましては、利用者負担の目安として企業主導型保育事業者にもお示しすることといたしております。
したがいまして、本事業が当該事業者の従業員を対象に実施されることということも併せて考えますれば、保育料が必要に高額に設定されるということは考えにくいと考えておりますし、むしろ事業者の判断により利用者負担を低く設定する場合も多くなるのではないかと思っております。
○田村智子君 保育士が半分でよければ利用料が安くなる可能性もあるかもしれませんが、それは保育の質を置き去りにしたような、あるいは保育士の処遇改善に逆行するようなやり方だと言わなければならないと思います。
企業が積極的に参入をした都内の認証保育所、やはり保育料の設定は自由です。見てみますと、一歳児で月五万円から六万円、こういう保育料がほとんどです。多くの自治体が、これではとても高過ぎるという声に応えて所得に応じた補助というのを行っています。これも、自治体によってもう物すごいばらつきです。それでも、年収三百万円の世帯で認可保育所の保育料の二倍になってしまうと、こういうところは珍しくありません。
企業主導型保育、これ、夜間を含む二十四時間とかあるいは病児保育ということも想定しているわけで、費用はもっと掛かりますよ。掛けなかったら安全性が置き去りにされるということになります。
また、ほかにも、企業がどういうときに保育に参入したいかと。例えば、英語の早期教育などオプション付ける、高い保育料をオプションとして徴収し、これで利益を上げるということも可能です。そうした利益を株式配当に回すことにも何の規制もありません。
加藤大臣にお聞きします。
公費の入る保育を事業所のもうけの手段にさせない、そのための何らかの規制、あるいは保育料が高くなり過ぎないような基準の設定、これ待機児童対策だと言っているんですから、こういうことを求められると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 委員御指摘のように、認可外保育施設の中には、もちろん公費の補助を受けていないということもあるんでしょうけれども、保育料が大変高額な施設があるということは承知をしております。
一方で、今般の企業主導型保育事業に係る運営費については、先ほど御説明いたしましたけれども、認可の小規模保育事業等と同程度の利用者負担を求めることを前提に、全体として無認可の小規模保育事業等と同程度の事業収入になるよう補助の水準を設定をすることにしております。
したがって、企業主導型保育事業が主として当該事業者の従業員を対象に実施するものであることも併せて考えれば、利用者負担が想定される水準を超えて必要以上に高額に設定する、そういったことは禁止をしていく必要がある、要綱上、そのことをはっきりと定めていく必要があるのではないかというふうに考えております。もちろん、これは上限でありますから、事業者の判断で安い設定をすることは、それは自由だろうというふうに思います。
○田村智子君 ここまで本当に答弁を聞いていますと、やっぱり企業主導型の保育というのは保護者の要求に応えているとは私にもとても思えないわけです。保護者が求めているのは、お庭があって、保育室も子供が遊べるスペースがちゃんと確保されて、そして専門職の保育士さんが子供に寄り添う、育ちをしっかり支えてくれる、保育料の負担も所得に応じたものにしてほしいと、こう願うから保護者の皆さんは認可保育所へとその申請を行うわけですし、認可保育所を増やしてほしいというふうに願っているわけです。それを、保育士半数でいいとか、施設基準はないとか、保育料も自由設定だとか、どうしてこういう保育施設のために巨額の公費を充てるのか。
結局、これまで企業は相当に規制緩和を求めてきました。だけれども、様々な施設の、あるいは設備の基準がハードルが高くてなかなか参入できない、そういう声はずっとこの十年、十五年、私たちの元にも寄せられてきていたわけですよ。そうすると、自治体の関与もなく保育事業に参入できるよ、保育の質を担保するハードルも下げられるよ、認可保育所の設置に匹敵するような公費がそこに投入されるよと。これは企業の要求ではあるかもしれない、しかし保護者の要求ではないと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 先ほど、今回の企業主導型保育事業については様々な弾力的な対応が取れるということでありますから、そういった意味では様々なそこには当然ニーズがあるんだろうと、こういうふうに思います。
また、先ほどから申し上げましているとおり、認可保育施設の代替施設としてこれを考えているわけでは全くないわけでございまして、また、今年においても、多分四月頃にまた各市町村から今後の整備計画を聴取することになるんだろうと思います。また、その段階においてはそれを踏まえた対応を当然考えていくべきものだと、こう考えております。
○田村智子君 最後に、今日もうこれ法案成立というか採決になってしまうので、与党の議員も含めて、私本当にお願いしたいんです。子供の命が懸かっています。二十人を超えても保育士資格者は半分でいいなんという基準でいいのか。与党からも声上げて、内閣府に迫ってほしいんですよ。二十人超えたら認可と同じ基準、ほかの保育所と同じ基準にするようにと、要綱そうなるようにと働きかけてほしい。施設基準も、最低基準は本当に命に関わる問題なんです。最低基準が要綱にどう定められるのか。これが本当に質を落とすような要綱であってはならないと、このことを是非とも、この法案がたとえ可決した後であっても求め続けていただきたい。そのことを心からお願いをして、質問を終わります。