国会会議録

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妊娠・出産雇い止め不当 参院総務委 田村氏が追及

 日本共産党の田村智子議員は10日の参院総務委員会で、地方公務職場の臨時・非常勤職員が妊娠や出産を理由に雇い止めや任用期間の短縮を強いられ、育児休業がとれない問題を追及しました。

 田村氏は、妊娠・出産などを理由にした不利益的取り扱いを禁止する男女雇用機会均等法9条3項や育児・介護休業法10条に地方公務員が適用除外とされていることを口実に各地で任用打ち切りが出ている一方、地方公務員法は性別による差別的取り扱いを禁じていると指摘。西日本の自治体の非常勤職員が妊娠を理由に産休直前で雇い止めされた事例を示し、「妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いは女性差別そのもの、地方公務員法に照らしてもおかしい」と強調しました。

 高市早苗総務相は「育児休業の取得を契機に不利益な取り扱いを行うことに合理的理由はない」と答え、「地方公共団体の臨時非常勤職員の採用は国家公務員と同様、妊娠・出産による労働能率の低下等ではなく本人の能力に基づいて行うとされている」として、地方公共団体に通知や助言などを行うと述べました。

 田村氏は、「本人の能力を評価する」とした国の考え方を地方公共団体に徹底することや政省令などの改正によって臨時職員の不利益を解消するよう求めました。

2016年3月15日(火) 赤旗

 

【 議事録 2016年3月10日 総務委員会 】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 安倍総理は施政方針演説で、「女性が活躍できる社会づくりを加速します。妊娠や出産、育児休業などを理由とする上司や同僚による嫌がらせ、いわゆるマタハラの防止措置を事業者に義務付けます。」と述べられました。

 当然これは地方公務員についても同様の取組が必要だと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(高市早苗君) 事業者に対するマタハラ防止措置の義務付けについては、法令において、現場の上司や同僚等が、妊娠、出産や育児休業取得の申出等をする労働者に対し、継続就業や休業の取得等を断念させるような言動を行うことにより当該労働者の就業環境を害することについて、事業主が防止するための措置を講ずることを義務付ける、こういう趣旨のものと承知をしています。

 マタハラの防止の重要性については、もうこれは地方公務員についても同様でございます。このことから、国家公務員における検討を踏まえまして、私どもでも必要な検討を行ってまいります。

○田村智子君 今、公務の職場には非正規という働き方が驚くほど広がっています。

 資料をお配りしました。総務省の調査です。二〇一二年四月時点で、全地方公共団体の臨時・非常勤職員は約六十万人、そのうち七四%が女性職員です。女性の活躍、マタハラ防止という施策がこうした臨時・非常勤の職員の女性たちを対象としたものになっているかどうかということが問われていると思います。

 そこで、具体の事例を示します。これ、西日本のある自治体、非常勤職員の看護師Aさんが、医療的ケアのために特別支援学校に配置されました。任期は六か月、更新を前提とする配置です。Aさんは、昨年六月妊娠が分かり、九月には不正出血が起きたために安静が必要となり、妊娠障害休暇を取りました。このことを知った教育委員会は、十月に行うはずの更新をしないという方向を示したんですが、労働組合の側がAさんの復帰は可能だと、こういうふうに後押しもいたしまして、何とか再任用にはなりました。ところが、その任用期間は半年ではなく産前休暇に入る直前までとされてしまいました。教育委員会は、どこまで法律で受け止められるか考えての判断だという説明をしたと聞いています。このAさん、実際に二月に任用を切られて無収入になり、今社会保険料負担も大変厳しい状態だとお聞きをしています。

 このケースは、産前休暇直前でわざわざ半年ではなく任用を縮めてそこで任用を打ち切ると。まさに妊娠を理由とする雇い止めだと言わなければなりません。民間事業所であれば明らかな育児休業法違反ですけれども、地方公務員であればこれは許されてしまうのでしょうか。

○政府参考人(北崎秀一君) お答えいたします。

 非常勤職員の任期につきましては、各地方公共団体の任命権者において、職員に従事させようとする業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に設定すべきものと考えております。一方、一般論として申し上げれば、産前産後休暇の取得のみを理由として任期の更新あるいは再度の任用に当たっての任期を必要な期間より短く設定することは合理的な理由があるとは言えず、地方公務員法第十三条の平等取扱いの原則に違反するおそれがあるものと考えております。

 以上であります。

○田村智子君 これ、非常勤の職員の場合は、地方公務員育休法の改正もあって、育休は取れるという法改正にもうなっているんですね。ところが、教育委員会は、労働組合に対して、妊娠、出産を理由とする不利益取扱いを禁止する男女雇用機会均等法九条三項、これは地方公務員は適用除外だと、だから産休直前の任用切りは違法ではないと、まさに開き直りとも言えるような説明を行っています。

 私は、実はおととしの三月にも決算委員会で、非正規の地方公務員は産休さえ取れないんだという問題を取り上げました。このときに安倍総理は、非常勤は取れる、そういう法改正も行っていると、しかし、臨時については法律上そうではないという状況だということを認めて、民間で進んでいくこともよく平仄を合わせながら、臨時の方々にとってもそういう環境が生まれるような状況をつくっていく、地方公共団体とも相談しながらよく考えていきたいと答弁をされました。

 それから二年が経過しようとしています。今なお、法律でも認められている非常勤の職員でさえ産休も保障されないという事態が現に起きています。非常に重大だと思います。これ、民間事業者についてはどのような指導が行われているのかを厚労省にも確認をしたいと思います。

 一昨年の十月、マタハラ裁判が注目をされました。これは広島の病院職員が妊娠に伴い負担の軽い業務への転換を申し出た、そうしたら病院の側は、業務転換は受け入れたけれども彼女を降格扱いとした、そして職場復帰後も降格したままだったと。これが妊娠、出産を理由とした不利益取扱いに当たるというのが最高裁の判断でした。

 この判決の後、厚労省は、こうした妊娠、出産を理由とする不利益取扱い、とりわけ雇い止めや更新期間の短縮についてどういう指導を行っていますか。

○政府参考人(吉本明子君) 妊娠、出産、育児休業等を理由とする解雇、雇い止め、あるいは雇用期間の契約の更新の打ち止め等の不利益取扱いにつきましては、男女雇用機会均等法、それから育児・介護休業法により禁止されておりまして、その規定の徹底、それから違反事案に対する是正指導を行っております。

 今ほどお話のございました平成二十六年の十月の最高裁判決を踏まえまして、翌一月に、妊娠、出産、育児休業等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合には原則として法違反と判断するということを明確化する解釈通知を出させていただいたところでございます。

 そこで、契機としてといいますのは、原則といたしまして、妊娠、出産、育児休業等の事由の終了から一年以内に不利益取扱いがなされた場合にはこれに該当するということで判断をしているものでございます。

 法違反については、引き続き厳正に指導してまいりたいと思っております。

○田村智子君 厚生労働省は、妊娠、出産から一年以内に行われた不利益取扱いについて厳正に指導すると、勧告や企業名公表も行うんだということも明確にしていて、実際に企業名の公表というのも行われているんですね。ところが、地方公務員は、産休直前までという、わざわざ任用期間を短縮するというような取扱い、あるいは妊娠中の雇い止め、これも行われてしまう。それでも違法ではないと開き直るような自治体もあると。

 地方公務員法は、性別による差別的取扱いを禁じています。私は、妊娠、出産を理由とする不利益取扱い、これはまさに、これ女性ですから、妊娠、出産というのは、ですから、これはまさに女性差別そのものだと。言わば、先ほど紹介したような事例も、地方公務員法に照らしてもおかしいんじゃないかというふうに思うんです。あるいは、女性差別そのものと、こういうのをなくしていかなきゃいけないというふうに思いますが、大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(高市早苗君) 先ほど来、委員が御指摘いただいたような事例、これはやはり一般論として言えば、明らかに女性という性に対する差別であると思います。育児休業の取得を契機として不利益な取扱いを行ったりするということに合理的な理由は絶対にございません。地方公務員法第十三条、平等取扱いの原則に違反する可能性が高いと考えております。

 さらに、これからも地方公共団体に対しまして、折に触れその趣旨を周知してまいりたいと思っております。

○田村智子君 是非お願いしたいと思います。

 政府は、非常勤の地方公務員も育休が取れるんだということで法改正を行ったと説明をされています。地方公務員育休法では、育休取得の要件が示されています。これ簡単な言い方にしますと、引き続き一年以上在職をしていること、子供が一歳の誕生日を迎えた後も在職をしていること、子供が二歳になる前々日までに任期が終了し、かつ更新されないことが明らかではない場合という要件なんですね。これ多くの非常勤職員の場合は、やはり一年とかあるいは半年、こういう短期間の契約です。そうすると、これ任期付きの職員も、産休明けの時点で残る任期が一年未満、こういう方は多くいらっしゃるというふうに思うんですね。

 そうすると、この要件に照らしたときに、一年以上在職している、これはクリアしたとしても、その後も一年以上にわたって任用があるよと、こういう見込みがあるよと言われても、果たしてそうなるんだろうか、ここで非常勤の方々が育児休業が取ることができなくなってしまう、こういう事案を私も実はいっぱい聞いているわけです。

 そこで、今私の言った要件、これはどういう解釈を行っているのか、このことについて御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(北崎秀一君) お答えいたします。

 地方公務員の非常勤職員の育児休業の取得要件といたしましては、国家公務員と同様、請求時に、一つは、任命権者を同じくする職に引き続き在職した期間が一年以上であること、二つには、その養育する子が一歳に達する日を超えて引き続き在職することが見込まれること、三つには、子の一歳誕生日の前日から一年を経過する日までの間に任期が満了し、かつその任期が更新されないことや引き続き採用されないことが明らかでないことのいずれにも該当する場合、育児休業を行うことができるものとしております。

 これらの要件のうち二番目に申し上げました、その養育する子が一歳に達する日を超えて引き続き在職することが見込まれることの見込まれることという判断基準につきましては、職務の内容が類似する新たな職が設置されない等により再度任用されないことが明らかな場合以外は一定程度の任用の継続の可能性があると判断できるものと考えております。このため、御質問のような場合には再度任用されないことが明らかとは言えないため、一般的に育児休業の取得が可能であると考えておるところであります。

 以上であります。

○田村智子君 これ、任期が切れても業務が継続するならば再任用の可能性があるんだから、任用継続の見込みがあるんだと、こういう解釈だというふうに思います。

 問題は、じゃ、それで私にも再任用のチャンスがあるというふうなことはクリアしたとしても、そうすると自治体の側が、乳幼児を抱える、つまり家庭生活への一定の配慮が必要な女性、これを実際に再任用するのかどうか、ここがやっぱり問題になってきます。

 国も地方公共団体も、再任用に当たって本人の能力を評価するというふうになっています。国は、任期付職員の公募による再任用に当たり、妊娠、育児などによる労働効率などの低下を考慮に入れずに本人の能力によって任用を行うというふうにしていると思いますが、このことを人事院にも確認をいたします。

○政府参考人(大下政司君) お答えいたします。

 国家公務員の採用は、成績主義の原則によることとされております。妊娠や出産という事情にかかわらず、あくまでも本人の能力の実証に基づいて採用が決定されるものと考えております。

○田村智子君 地方公共団体に、今私が確認した、先ほどの任用が切れてもその職がないことが明らかでない場合を除いて等々のその見込まれるということの解釈、あるいは今、国家公務員の再任用のときの評価の基準、こういうのは是非、地方公共団体に徹底をしていただきたいというふうに思うんです。

 特に再任用に当たって、妊娠、育児による労働効率などの低下を考慮に入れずに、これはとても大切で、本人の能力評価の中に、この人は子供がいるから例えば超勤ができないよとかということを入れては駄目だということなんですよね。ここを抜いて本人の能力を評価するという、これしっかりと地方公共団体に徹底していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(高市早苗君) 地方公共団体の臨時・非常勤職員の採用につきましても、国家公務員と同様、成績主義の原則により能力の実証に基づいて行うということとされております。

 この能力の実証でございますが、妊娠、出産による労働能率の低下等ではなく、本人の能力を評価することによって採用の適否を判断するということでございますので、総務省としましては、各地方公共団体において職員の採用の際の能力実証が適切に行われますように、そして先ほど来答弁申し上げた件も併せて必要な助言を行ってまいります。

○田村智子君 妊娠、出産を契機に公務職場で女性たちの任用が切られる、こんな事態をそのままにしていては、これ、何が女性の活躍かと、これは誰でも思うと思います。既に、こうした問題は私だけではなくいろんな政党の方からも何年も前からも指摘をされています。だけれども、臨時の職員だったり非常勤の職員だったりすると、妊娠を上司に告げれば次の更新はないものとされてしまう、こういうことが多々見受けられるわけです。

 やはり、こうした不利益取扱いを公務職場からも一掃する、この決意を示していただきたいと思います。

 最後にもう一点、これ特別職の非常勤職員、資料でもお配りしたところによる、地方公務員法三条三項三号、これ、全体で二十三万人を超えているというこの職員の方々ですね、この方々についてお聞きをしたいんです。

 この方々は、例えば審議会の委員などが想定されているんですけれども、実際には、保育士さんとか図書館の司書さんとか常勤的な任用で働く方が多数おられます。この特別職の非常勤職員、実は育休期間中に、育休が取れたとしても、育休期間中、本人も自治体も社会保険料の負担が免除になりません。民間労働者や一般職の公務員が育休を取った場合には社会保険料は免除となります。この表で言うと、法十七条とか二十二条二項、五項、こういう任用の方々が育休を取った場合にも社会保険料は免除になります。

 ところが、三条三項三号の方だけが免除にならない。どうしてこういう取扱いになっているんでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。

 お尋ねの特別職の非常勤公務員につきましては、労働時間が常勤の公務員のおおよそ四分の三以上である場合には厚生年金の対象になります。厚生年金におきましては育児休業中の保険料負担を免除しておりますけれども、その対象者は法律に基づく育児休業を取得した者となっております。特別職の非常勤公務員はこれらの育児休業の対象となっておりませんことから、保険料免除の対象とはなっておりません。

○田村智子君 まさに法律や制度の谷間に陥っちゃっているということなんですね。

 これ、自治体によっては条例によって臨時・非常勤職員の育休取得を保障しています。その際にも、特別職の非常勤職員のみ社会保険料負担が免除になっていない。まさに法の穴に陥っちゃっているということなんですね。

 これ、実際に育休を必要とする人がこの三条三項三号の働き方でいらっしゃる、そのことを踏まえれば、これはまさに、非正規と正規の均等待遇ももちろんなんですけど、非正規の中でも均等待遇になっていないという問題でもあって、何らかの手だてで社会保険料が免除となるようにすべきではないのか、そういう検討必要じゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(高市早苗君) 特別職の非常勤職員の方々ですが、本来特定の学識経験を必要とする労働者性の低い勤務態様が想定され、地方公務員法の適用が除外されています。また、様々な職種の方が職務に応じた多様な勤務形態を取っておられまして、法律で一律の取扱いを定めることが困難であるため、地方公務員育児休業法の対象にもなっておらず、厚生年金保険料の支払免除制度の対象ではございません。しかしながら、地方公共団体によりましては特別職非常勤職員で労働者性のある方もいらっしゃいますことから、これらの方々の育児休業の取得については地方公共団体で適切に対応していただくように助言をしております。

 そもそも、職務の内容が補助的、定型的であったり、一般職の職員の方と同一と認められるような職であったり、勤務管理や業務遂行方法において労働者性の高い職については本来一般職として任用されるべきでありますことから、平成二十六年七月の通知において、このような職については特別職非常勤職員として任用することは避けるべきであるし、任用根拠の適正化ということも助言をしております。まずはこの任用根拠の適正化に向けてしっかりと取組を進めてまいります。

○田村智子君 本来はもう定数増によって、まさに正規で雇うべきような方々が相当やっぱり非常勤で働いている、ここの問題は根本的に解決していかなければならないと思うんですが、この非常勤の場合、三条三項三号であるがゆえの不利益取扱い、これはやっぱり、その三条三項三号から動けばいいという話じゃないと思うんですよ。ここの不利益取扱いの解決ということを、やはり女性の活躍を掲げる安倍内閣であるならば、私は一歩踏み出して行うべきだと、このことを求めて質問を終わります。


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