日本共産党の田村智子議員は21日の参院決算委員会で、日本の高学費・奨学金制度の実態を告発し、学費値下げと給付制奨学金の創設を迫りました。
安倍晋三首相は「子どもたちの未来が家庭の経済事情によって左右されることがあってはならない」と繰り返しますが、児童のいる世帯の平均所得は1996年と比べて2013年には約100万円も減少。大学の初年度納付金は10万円も増えています。所得は大幅に下がっているのに学費だけ値上がりが続いています。
田村 総理、この学費はあまりに高い。多くの家庭で自助努力の限界を超えている。
首相 家庭の経済状況によって大学等進学率に差があると各種調査で示されていることは認識している。
首相は来年度予算でも対策をとっていると強弁しました。
経済協力開発機構(OECD)は高等教育の授業料水準と公的補助水準の高低を四つのモデルに分類し、日本、韓国、チリは「高授業料・低補助」に該当します。韓国は2008年から生活保護受給者から低所得層、中所得層へと給付制奨学金制度を拡大。チリは昨年、低所得層の授業料を国立・私立とも無償化することを決定。日本はOECD諸国の中でも高学費であり、公的な給付制奨学金制度もありません。
田村 総理がいう地球儀を俯瞰(ふかん)した時、日本の「高学費・低補助」はあまりに際立つ。
馳(はせ)浩文科相 奨学金を含む教育費の負担軽減策は、国によってさまざまな制度があり一概に比較できない。奨学金や授業料減免の充実をはかる。
田村氏は、授業料免除などを受けても1日8時間ものアルバイトや奨学金の借り入れをせざるを得ない学生の実態をつきつけました。
首相は「学生の負担減免に努めている」と弁明。田村氏は「結局学生への国の支援は奨学金の貸し付けしかない」と批判しました。
奨学金貸し付けで多額の借金を抱える若者が増えています。
日本学生支援機構の奨学金借り入れ総額が500万円以上の貸与者は、10年度の7431人(4・4%)から14年度2万2341人(8・7%)へと急増。田村氏は「ギャンブルをしたわけでも浪費をしたわけでもない。大学や大学院で学ぶための借金だ」と強調しました。
ドイツの貸与制奨学金制度は半額給付・半額貸与が原則で、総額140万円を超える分は返済免除されます。
田村 返済総額を減らす支援があって初めて奨学制度といえるのではないか。
文科相 給付型奨学金の導入は今後の課題として検討する。
財務省は国立大学の授業料値上げの議論が必要だという立場です。
参院予算委員会の審議で文科相は「給付制奨学金は必要だ」との答弁をくり返し、首相も「馳大臣が言われた通りだ」とのべてきました。
田村 総理が「若者の未来が家庭の経済状況に左右されることがあってはならない」と叫んでも、それはカラ文句でしかない。この場で、給付制奨学金に向かう、検討を開始すると約束せよ。
首相 給付型奨学金について、われわれは政策の選択肢としてとらないといっているわけではない。
子どもたちの未来が家庭の経済事情で左右されてはならない―。安倍晋三首相が国会でこんな言葉を繰り返しています。しかし、日本は世界でも異常に大学の学費が高く、国としての給付制奨学金もありません。21日、日本共産党の田村智子議員が参院決算委員会で突きつけた困窮する学生たちの実態に「孫がいるけど本当にその通り」「日本の学費はあまりに高すぎる」と反響が次々寄せられました。
田村氏が取り上げた実例とは―。▽東京大学に授業料免除で入学したAさん。夕方4時~深夜0時まで塾でアルバイト、午前1時半からやっと勉強する日々。講義がない日も日雇い派遣で1日7時間働くも、卒業後は奨学金という借金を300万円以上抱えました。▽私立大学1年生B君。奨学金を月12万円借り、深夜から早朝はアルバイト、自宅と大学の空き時間で仮眠をとるのみ。それでも授業料が滞納になり「これ以上大学にいても借金が増えるだけ」と中退を決意せざるを得ませんでした。
こうした学生の実態に対し首相は「学生の負担減免に努めている」などと弁明するのみ。
「大学に学びにきたのか、働きにきたのか分からない」。こう言った学生時代の友人を思い出すと胸が痛みます。
“家庭の経済事情で未来が左右されてはならない”というなら、学費の値下げ政策と首相も「政策の選択肢」と認めざるをえなかった給付制奨学金にただちに踏み出すべきです。(吉)
2016年 1月22日(金) 24日(日) 赤旗