<訪問するには「パスポートを持って行くように」と外務省>
横浜市に住む佐治さんご夫妻を訪ねるのに、外務省から「国籍を確認できるパスポートを持って行ってください」と言われました。日本に住む有権者を訪ねるのに、身分証明が必要と言われるのは初めての経験です。
なぜか。佐治さんが米軍基地に囲まれた飛び地に住んでいるからです。
横浜市中区、磯子区、南区にまたがる米軍根岸住宅。1947年に畑や民家が米軍に接収され、385戸の住宅(庭付きの一軒家)、小学校、公園などがつくられました。
ところが、なぜか日本人住宅の一部が接収されずに残されたのです。
ここに住み続ける佐治さんご夫妻が、「日常生活を制限されてきた」「国に土地の借り上げや買い取りを要請しても拒否されてきた」として、昨年12月、国を提訴。
「神奈川新聞」で報道されたことで、私たちも、この異常な現実を初めて知ることとなりました。
党横浜市議団の基地対策を担当する古屋靖彦区議が、「ぜひ訪問してお話をお聞きしたい」と申し出て、佐治さんご夫妻とのつながりをつくることができ、私の訪問につながったのです。
訪問するには、基地のゲートを通過しなければなりません。外務省に、基地内を通過して佐治さん宅を訪問することを伝えました。米軍との窓口として、必要な手続きを要請したわけです。
ところが外務省から返事が来ない、どうなっているかと問い合わせると、「米軍が、運用上の理由から許可できないと言っている」というのです。
運用上の理由とは何かと問い合わせても「具体的には聞いていない」としか回答がない。
ここで引き下がるわけにはいきません。私から直接、外務省北米局の日米地位協定室に電話しました。
「国会議員が有権者の家を訪ねるのを米軍が妨害するのか。そんなことは許されない。外務省の対応を含めて、このことを赤旗で報道するしかない。」「いったいどのような運用上の理由があるというのか。それならば、10日は、郵便配達や宅急便なども、米軍の運用上の理由で佐治さんの家に行くことはできないと言うことなのか。」
国会質問さながらの追及に、「米軍にあらためて確認する」と言う外務省。
数時間後、「通常の手続きで中に入れる」と連絡がありました。
通常の手続きとは、中に入る人の名前、車輌のナンバーを佐治さんから米軍に届けてもらうこと。訪問者は6人以内、国籍の確認が必要なのでパスポートを持っていくように、と言われました。
日本国民を訪ねるのになぜパスポートが必要なのか、国会議員が日本国籍を有しているのは当然のことなのに。
これにもカチンときましたが、まずは中に入ることが重要と、佐治さんに手続きを尾根がしました。
10日、約束の午前10時。
迎えに来ていただいた佐治さんが、車の通行許可証を渡し助手席に乗り込みました。いよいよゲート通過、警備にあたる男性から身分証明書の提示を求められ、一人ひとりが提示。
「今まで5、6回訪ねたけど、初めてゲートで身分証明を求められましたね」と古屋市議。通る道も指示されましたから、警戒しているのでしょう。住宅がガラガラなのを見られたくないと思いますよ」と佐治さん。
ゲートからのわずかな通行距離で目にした住宅は、そのほとんどが、外からでも空き家とわかりました。それでも芝刈りはしているようで、荒れてはいません。
一番木が生い茂っている一角、「ここが私たちの住んでいるところです」
3軒の日本人住宅、実際に住んでいるのは2軒とのこと。車を路上に止めて、細い坂道をくだり、佐治さんのお宅に到着。
それから1時間半にわたりお聞きしたお話は、想像を絶するものでした。
(つづく)