日本共産党の田村智子参院議員が20日の参院本会議で行った学校教育法・国立大学法人法改悪に対する反対討論(要旨)は以下のとおりです。
第一に、教授会を実態として学長の諮問機関化することは、大学の自治、学問・研究の自由を侵すものです。
教授会は、大学の自治の根幹を担う機関であり、多くの大学で、予算や教員人事に関わる事項を含め、教育・研究に関する重要な事項について実質的な審議・決定権を有しています。本法案は、こうした教授会の役割を認めず、「学長に意見を述べる」機関に矮小(わいしょう)化し、さらには審議事項も制限して、大学運営のあらゆる事項を学長個人の決定で行わせようとしています。
審議の中で、例えば入試での合否判定は教授会が決定し、その決定を学長が執行することを可能としなければ大学運営に支障をきたすと指摘しましたが、これさえも「学長が決定する」と、教授会決定を学長がくつがえすことはありうるとの答弁に終始しました。
学長が数千人、数万人の受験生の合否判定を行うなどありえず、教授会の決定を学長が変更することになれば、学長の恣意(しい)的な判断による不正入試さえ起こりえます。それでも、教授会の決定権限を断固として認めない、このような法案は、あまりに陳腐であり、むしろ大学の公正円滑な運営を阻害すると言わなければなりません。
政府は、教授会が法律をふみこえて権限を持たないように、国公私立すべての大学で学則・内規の見直しが必要、そのガイドラインを有識者会議でつくることまで明言しました。このように、大学自治に政府が介入し、上意下達の組織へと改変することは許されません。
第二に、学内の意思を民主的に反映させてきた学長選考意向投票制度を骨抜きにすることは重大です。
学長選考基準として、大学改革をすすめる資質能力の評価があげられました。文科省は各大学に「ミッションの再定義」を策定させ、これにもとづく改革を強力に進めようとしています。この中には、「大学の強み」とされた研究分野に大学内の予算を集中させる、そのための学部学科再編の検討までもりこまれています。
このような改革を学内の反対を押し切ってでもすすめることができる人物を学長にすえようという狙いは明らかです。
本法案は、文科省が省令改正で行おうとしていたものを、経済同友会のメンバーなどが再三「法改正で」と文科大臣に要望したことから急きょ法案として提出されたものです。
日本経団連は、昨年12月、「イノベーションの創出に向けた国立大学の改革について」との提言をまとめ、グローバル競争を企業が勝ち抜くために、産学連携の研究の強化、国立大学運営費交付金の基盤的経費を大胆に圧縮し、産業競争力につながる研究や人材育成への重点配分を政府に要求しています。
短期間に成果を求められる研究環境、基盤的経費の圧縮による教員・研究者の非正規化は、すでに日本の大学に深刻な疲弊・停滞をもたらしています。このような改革に大学の未来はありません。
教授会をはじめ大学内での民主的な討論、意思決定こそ、学問研究を発展させる力であることを指摘し、反対討論を終わります。