日本共産党の田村智子議員は8日の参院文教科学委員会で、公認心理師法案について、心理職(カウンセラー等)が国家資格化されることで「心理学に関する専門性が保健医療、福祉、教育分野で公的に認められ、身分の保障等につながることが期待される」と賛成を表明しました。
田村氏は、文科省が、生徒の問題行動への対策が重視されている学校200校に週5日のスクールカウンセラーを配置する予算を概算要求しているものの、「1日4時間週5日勤務では、社会保険の適用除外になる可能性が高くなる」と指摘し、「身分が不安定なスクールカウンセラーを増やすことのないように」と要望。下村博文文科相は「身分のあり方について、しっかり検討したい」と答弁しました。
また、不登校の子どもへの支援では、子どもが追い詰められているような場合、スクールカウンセラーが「学校にこなくていいよ」と対応することも必要だと指摘。下村氏は、いじめで苦しむ児童生徒の緊急避難としての欠席が弾力的に認められるよう通知していると述べた上で「スクールカウンセラーが不登校の児童生徒の心の負担を軽減するため、無理をしなくていいむねを助言することはある」と答えました。
2015年9月10日(木) しんぶん赤旗
【 文教科学委員会 9月8日(火) 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。まず、提案者にお聞きいたします。
心理職が国家資格化されることで、心理学に関する専門性が保健医療、福祉、教育分野で公的に認められ、心理師の社会的地位の向上、待遇の改善、身分の保障につながることが期待されると考えますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(山下貴司君) 複雑多様化する国民の心の問題に関しまして、あるいは発達、健康上の問題に関しましては、これまで民間資格である臨床心理士の先生方を始め心理職の専門家がこれまで取り組んでこられたところでございます。
本法案は、これらの心理専門職の方々のこれまでの実績を踏まえ、御尽力を踏まえ、より一層国民の心の健康の保持増進に寄与するため、国により一定の資質が認められた心理職である公認心理師の資格を設けることとしたものでございます。
このため、御指摘のとおり、心理職の社会的地位の向上、待遇の改善、そして身分の保障につながることを期待しております。
○田村智子君 ありがとうございます。
もう一点、法案の条文に関わって確認をいたします。
四十二条二に、「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」とあります。
精神科などの医師の指示ということだと理解をいたしますが、例えばスクールカウンセラーの場合、相談者が精神科を受診しているということを言いたくないということもあり得ます。このような場合に、公認心理師が精神科受診の有無を相談者にただすとか、相談者は受診の有無を話さなければならないということまでも求めるものではないと考えますが、いかがですか。
○衆議院議員(山下貴司君) 第四十二条二項の趣旨は、心理状態が深刻で医学的治療を受けているような要支援者に対して、公認心理師が当該支援に係る精神科などの主治の医師の治療方針に反する支援行為を行うことによって要支援者の状態を悪化させる、そういうことを避けようとするものでございます。
したがって、このような趣旨を踏まえて、公認心理師の先生方には必要な注意を払っていただきたいと考えておりますが、他方で、要支援者に対して主治医の有無を確認することについては、そのような要支援者の心情を踏まえた慎重な対応が必要でございます。したがって、要支援者の意思に反して無理に主治の医師の有無を確認することまで法文上は求めるものではないというふうに考えております。
○田村智子君 簡潔な御答弁ありがとうございました。
冒頭、心理職の方々の社会的地位向上、待遇改善が期待される法案であることを確認いたしました。
そこで、文科省にスクールカウンセラーのことについてお聞きいたします。
スクールカウンセラーの方にお話をお聞きしますと、子供たちや保護者からの相談もあるけれども、学校の先生からの相談も多いと、子供の問題行動やトラブルなどどう捉えたらよいのか、どのように対応したらよいのかなど相談を受けて、心理職の専門性からアドバイスをすることも多いんだというお話をお聞きしました。こう考えますと、本当に学校と子供たちにとって非常に大切な役割を果たしていると私も思います。
このスクールカウンセラーの配置、予算上の基準は、週一日四時間、年間三十五週となっています。病院などに勤務する心理職の方が病院勤務を休んで週一日学校に行ってスクールカウンセラーとして働くと、こういう場合も少なくないとお聞きをしています。
来年度の概算要求を見ますと、生徒の問題行動への対策が重視される学校二百校については週五日の配置が盛り込まれています。この二百校では、平日の午後四時間、毎日学校でスクールカウンセラーが勤務するということになります。これは、病院の勤務との兼務ということはなかなか難しくなると思うんですね。そうなると、これ、一日四時間という勤務時間の関係で、このスクールカウンセラーの皆さんは社会保険の適用除外になる可能性が高くなると思うのですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小松親次郎君) お尋ねの点でございますけれども、現状、多くのスクールカウンセラーの方々は、先ほど御指摘のような形で非常勤の職として、週当たりで見ますと一回四時間という形で各学校で勤務をしておられます。
ただ、大きな課題を抱えております学校で、これも御指摘のとおり、スクールカウンセラーと教職員、先生方との連携を更に強化をしていくという必要がある場合がございまして、これらが実現できますように地域の実情に応じて弾力的にあるいは重点的な配置ができるようにしたいということから、その現状を基といたしまして、平成二十八年度においても、一つの学校に週五日一日四時間の配置が推進できるような形でその充実を図りたいということが予算上の取組でございます。
仮に週五日一日四時間の積算の勤務どおりにいたしました場合、週当たりの労働時間との関係等を見ますと、おっしゃるとおり、社会保険加入の条件を満たさないということになります。
ただし、これは、今申し上げました、御説明しましたとおり、その充実を図っていくための積算上の考え方として設けておりますので、これは地域あるいは学校によって実情が本当に様々だと認識しておりますが、それを踏まえて、例えば社会保険加入の条件を満たすような勤務形態の配置をしてもそれは可能だという仕組みで私ども考えておりまして、その実情に応じて弾力的に行うことは可能というふうに考えているということを申し上げます。
○田村智子君 これは調べてみますと、時給もかなり地域によって差があるわけですね。そうすると、地域によって社会保険加入ができないというようなスクールカウンセラーが学校常駐を増やせば増やすほど広がるという事態は、これは私、何としても避けなければならないし、この法律の趣旨とも逆行してしまうというふうに思うわけです。あるいは、スクールカウンセラーの場合、夏休み期間の収入をどうするかということも、これは常駐で置いた場合、検討しなければいけなくなるというふうにも思うわけです。
文科大臣にもお聞きしたいんですけど、これ、文科省だけでの課題ではなく、そもそも非常勤が多い心理職の身分保障、これどう進めていくのかと。これは他省庁とも協力をして、是非身分がより安定していくようにということで政策検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 文科省としては、このスクールカウンセラーだけでなく、チームとしての学校の在り方ということで、いろんな専門性に基づくチーム体制の構築について対応を考えていきたい。それだけ複雑化、多様化した子供たちの課題に対して、学校等に必要な職として職務内容等の法令上の明確化、また、日常的に相談できるよう配置の充実や資質の確保をする、あるいは、将来的には国庫負担化を検討することが盛り込まれておりまして、関係省庁とも連携しながら、スクールカウンセラーの身分の在り方についてもしっかり検討してまいりたいと思います。
○田村智子君 最後、一問ですけれども、来年度の概算要求では、不登校の子供への対応として適応指導教室へのスクールカウンセラーの配置というのも初めて要求されました。
この間、不登校の子供たちへの支援として議員連盟での学習会も行ってきたわけですけれども、その中である保護者から、学校に行けなくなった子供がスクールカウンセラーと学校外で話をしたいと要望したが校長が認めなかったと、こういう体験が述べられました。その場で文科省から、その校長の判断は誤りであるということが明言されたわけですけれども、スクールカウンセラーが学校外で不登校の子供の相談業務などに当たることは可能だということは、これ是非しっかりと周知をしてほしいと思います。
また、子供が学校に行けないということに苦悩し追い詰められているような場合、スクールカウンセラーが学校に来なくていいんだよと対応することも必要だと、こういうことも実感をいたしました。是非、心理職の専門的知見から、そういう対応をスクールカウンセラーはしていいと、学校のことなので、なかなか登校しなくていいと言っていいかどうかという思いというのは生まれちゃうと思うんですよ。それだけに、専門的知見から必要だと判断したら言ってもいいんだよと、こういうことは大臣からもメッセージとして示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) スクールカウンセラーは通常、学校の相談室において児童生徒等の相談を受けておりますが、御指摘のように、不登校児童生徒の状況によっては学校外で相談を受けるなどの弾力的な対応も可能であることについては、更に周知をしてまいりたいと思います。
なお、平成二十八年度概算要求におきまして、不登校児童生徒の支援のため、新たに教育支援センター千百四十七か所への配置を行うことといたしました。
また、文科省としても、いじめなどで悩み苦しんでいる児童生徒におきましては、緊急避難としての欠席が弾力的に認められることを通知等により周知しているところでありますが、スクールカウンセラーが、児童生徒の状況によっては、児童生徒の心の負担を軽減するため、例えばこの時期はもう自殺に走るかもしれないという子供が結構いるときでもあります。そういうようなところをスクールカウンセラーが判断して、無理をしなくてもいい旨を助言することはあるというふうに考えております。
○田村智子君 終わります。