日本共産党の田村智子議員は8日の参院文教科学委員会で、2020年の東京オリンピック会場に予定されている新国立競技場の整備計画「白紙撤回」は名ばかりだと批判しました。
巨額な整備費用が国民の批判を浴び、日本スポーツ振興センター(JSC)は今月1日、1550億円程度とする新たな整備事業の公募を開始しました。
田村氏が、整備条件となる整備要求水準書で新国立競技場の高さや人工地盤の計画変更はあるのかと質問したのに対し、JSCの鬼沢佳弘理事は「8万席のスタジアムで旧計画と変更はない」と答えました。
田村氏は「計画を白紙にするなら、高さ制限を含む都市計画決定の見直しをすべきだ」と主張。すでに首都圏には巨大スタジアムがいくつもあるにもかかわらず8万席とすることは、巨大施設建設となる整備計画にほかならないと指摘しました。
田村氏はさらに、計画見直しに寄与した建築家・槇文彦氏らによる人工地盤を前提としないコンパクト化の代替案は認められるかと質問しました。これに対し遠藤利明五輪担当相は、できると答えられませんでした。
田村氏は、当初の計画案は神宮の森の景観を無視した建物の高さにも批判が集中したとして、上限70メートルであってもできるだけ抑えることで景観との調和をめざすべきだと主張。「新国立競技場が神宮外苑の巨大開発の引き金になるようなことはあってはならない」と強調しました。
2015年9月9日(水) 赤旗
【文教科学委員会 9月8日 議事録】
○田村智子君 新国立競技場についてお聞きします。
八月二十八日、関係閣僚会議で、新国立競技場の整備コストは周辺整備を含めて一千五百五十億円程度と決定をされ、九月一日、JSCは整備事業の公募を始めました。再来年四月には強行するという消費税一〇%、また今後の設計労務単価等の値上げ分を考えると、費用は更に膨らむことは避けられないわけで、整備計画の見直しが十分だったとはとても言えないと思います。
時間が限られていますので端的にお聞きします。整備条件となる整備要求水準書では、新国立競技場の高さ、敷地、人工地盤、これらは変更されているのかどうか、JSC、お答えください。
○参考人(鬼澤佳弘君) この度、九月一日に開始いたしました新国立競技場の整備事業の公募におきましては、競技場の基本的規模を決めます観客席、これは最大八万席と変えておりませんので、施設規模、言わばスタジアムのボリュームですね、これはおおむね旧計画と同様としてございます。したがいまして、業務要求水準書の中で、施設の高さ、敷地、人工地盤については旧計画と変更はございません。
○田村智子君 そうなんです、規模を変更していないんですよね。前回の委員会で指摘しましたが、この新国立競技場とその周辺、これ都市計画決定がされて高さ七十五メートルが建てられるようになったんですね。これが、都市計画決定があるから今回の募集でもその要項を変えていないということを繰り返し私説明を受けています。
しかし、この都市計画決定は、そもそもJSCが巨大な新国立競技場を造るために東京都に認めさせたものです。まず、高さ七十五メートル以内、それから人工地盤で敷地を広げる、こういう条件で新国立競技場のデザインの公募を行った。この公募要領に沿って都市計画決定が後から行われた。出発点からして逆立ちした手法が取られていたということです。
その競技場の整備計画を白紙にしたならば、本来、高さ制限を含む都市計画決定の見直し、これを東京都と協議すべきではなかったんでしょうか。もう一度お願いします。
○参考人(鬼澤佳弘君) ただいまのお尋ねでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、まず、最大の観客席数八万席と、これ変えてございません。したがいまして、施設規模については旧計画と同様という考え方でございますので、そういう意味で、都市計画について現時点で変更する必要はないものと考えてございます。
今後、具体的にこれから施工応募者の方から施設計画等の提案があると思いますけれども、そういった点が明確になった場合には、これは必要に応じて適切に私ども対応をしていきたいと考えてございます。
○田村智子君 既に首都圏には巨大なスタジアムというのは幾つもあるわけですよ。オリンピック会場として求められる六万八千席、この一部を仮設にして、そもそも狭い敷地であることを踏まえた国立競技場の規模にすること、これも必要だったはずなんです。ところが、今の御答弁のとおり、整備計画は八万席にするということを可能としていると。こうなると、結局、白紙撤回と言いながら、可動式の遮音幕は諦めました、またデザインも変更はしますと、この程度で終わっているということなんです。
遠藤大臣にお聞きします。
今回の事業計画見直しに大きく寄与された槇文彦氏ら建築家の方々とも大臣は直接お会いをして、その代替案ということについてもお話をお聞きになったと思います。
この槇氏のグループが示したものは、人工地盤、これ千駄ケ谷駅から明治公園をも越えて都営霞ケ丘アパートにまで達する巨大な人工地盤です、これを前提としないものだったと思います。これでは、この槇さんたちが作ったような案では応募もできないということになるんじゃないんですか。
○国務大臣(遠藤利明君) 新国立競技場の新整備計画の策定に当たりましては、今御指摘がありましたように、建築家の槇先生始め、アスリートあるいは多くの有識者の皆さんの御意見をお伺いしてまいりましたし、またインターネット等も通じて国民の皆さんの御意見も聞いてまいりました。これらの意見を踏まえて、原則として競技機能に限定し、コストを抑制するというようなことにいたしました。
今後、槇さんが共同企業体と連携し業務要求水準書の要件を満たした上で応募していただくことは制度上可能であります。
○田村智子君 いや、私がお聞きしたのは、そもそも、示されたような代替案はこの募集の基準を満たしていないから募集できないということになるんじゃないですかということをお聞きしたんです。
○国務大臣(遠藤利明君) そうした皆さんの意見を踏まえた上で整備計画を策定いたしますので、それに基づいた業務要求水準書の要件を満たしていただければ応募は可能だと思っております。
○田村智子君 だから、つまり、できないんですよ。代替案は人工地盤なんか前提にしていませんから、もっとコンパクトに造ろうという案を槇先生たちは示していたわけですから。
見直しの直接的な要因となったのは巨額な費用。これはそもそも、狭い敷地に無理して巨大な建築物を造ろうと、こうしたことから発生したわけですよ。ところが、その巨大施設というのは今もって前提なんです。非常に問題だと思います。
見直しとなったザハ案への批判というのは、神宮の森の景観を無視した高さということにも集中をいたしました。
今回の整備計画の見直しでは、基本理念に明治神宮外苑の歴史と伝統ある環境や景観等との調和ということも挙げられています。ならば、これはもう募集掛けられていますので、ならばということで求めたいんですが、せめて高さについては都市計画の上限が七十五メートルであってもできるだけ抑える、このことで景観との調和、これ目指すべきだと思いますが、もう一度、遠藤大臣、お願いします。
○国務大臣(遠藤利明君) 新国立競技場の新整備計画におきましては、明治神宮外苑の歴史と伝統ある環境や景観等との調和を基本的な考え方としております。なお、東京都の都市計画である神宮外苑地区計画を踏まえ、JSCが定める業務要求水準書においては建物の高さを七十メートル以内と定めておりまして、設計・施工業者の具体的な提案を求めているところであります。
○田村智子君 これ重ねて、高さは七十メートルまででいいよということにしないで、できるだけ抑えるということを是非検討していただきたいというふうに思います。
やっぱり、今の御答弁聞いていても、白紙撤回というのは本当名ばかりだったなということを改めて実感いたします。結局、新国立競技場が外苑一体の高さ制限の突破口にされてしまっているんですよ。今後、周辺に、都市計画決定がされたからということで高層ビルが次々と建設されていく、こういう危険性があるわけです。これでは、やはり何のためのオリンピックかというこの大きな批判は今後も私は起きるというふうに思います。
景観との調和と掲げた以上は、この巨大施設、本当に造っていいのかと、このことも最後まで私たちも追及しながら、新国立競技場についてはまた意見も述べていきたいと思います。
質問を終わります。