国会会議録

国会会議録
公立学校教員の労働時間把握や健康管理について質しました

2015年4月7日 参議院文教科学委員会

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 おはようございます。質問の順序に御配慮をいただきまして、ありがとうございます。
 三月三十一日の続きで、教員の長時間勤務の問題を取り上げます。
 まず、改めて文科省に確認をいたしますが、公立学校の管理者や設置者は職員の安全と健康を確保する義務がある。当然、過労死や長時間過重労働に伴う脳・心臓疾患などの公務災害を起こさないよう労働環境の整備をする努力義務があると考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(久保公人君) 御指摘のとおり、公立学校の校長や設置者は、労働安全衛生法に基づきまして、管内の学校の職員の職場の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する義務があるものと認識しております。
○田村智子君 前回と同じ御発言なんです。確認しますが、公務災害を起こさないようにということに努力する義務がありますよね、当然。
○政府参考人(久保公人君) それは御指摘のとおりだと思います。
○田村智子君 次に、今日は厚労省さんにも来ていただきました。厚生労働省は、時間外労働が月四十五時間を超えて長くなるほど脳・心臓疾患と業務との関連性が強まるということから、月四十五時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合でも、事業者は実際の時間外労働を月四十五時間以下とするよう努めるものとすべきと考えて、そのような行政指導をしていると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(大西康之君) 労働基準法の三六協定につきましては、いわゆる時間外労働が月四十五時間などの基準に適合しなければならないわけでございますが、臨時的、特別な事情があるときには基準を超えた時間を定めることができるとされております。
 三六協定で月四十五時間を超える時間外労働を定めた場合、それをもって直ちに労働基準法違反では言えないものの、委員御指摘のように、この働き過ぎの是正は重要な課題でございまして、企業は実際の時間外労働を月四十五時間以下とするよう努めることとされておるところでございまして、労働基準監督署では、こうした過重労働による健康障害を防止するため、企業への監督指導において実際の時間外労働の時間が月四十五時間を超える場合には、その削減に向けた指導を行っておるところでございます。
○田村智子君 これ、厚生労働省は、過重労働による健康障害防止のための総合対策ということを取って、月四十五時間超えるようなものは健康障害引き起こす危険性があるということも周知しながら、今御努力されているところだと思うんです。
 そこで、もう一度文科省、今度、初中局長にお聞きします。
 公立学校の管理者、設置者についても、脳・心臓疾患との関連性が強くなる月四十五時間を超える時間外勤務を縮小するように努める、あるいは疲労を回復できないような過重な公務を縮減するように努めるということが求められると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小松親次郎君) 教職員の労働環境を改善していくということは、おっしゃるとおり喫緊の課題でございまして、公務災害を防ぐという観点等も含めまして、時間外勤務の縮減に取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。
 このために、管理職による労働時間の適正な把握や勤務時間縮減の促進、あるいは衛生推進者や産業医の選任といった労働安全衛生体制の整備といったところに取り組んでいるところでございまして、この労働環境の改善については、各教育委員会に更に指導してまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 ここで、大臣にお聞きをいたします。
 問題は、それではその長時間勤務の問題を解決するということは、やっぱり縮減すべき公務というのが何なのかということを、これ学校全体の認識あるいは教育委員会の認識にしていかなければならないと思うんですね。
 前回、私は鳥居裁判の判決を取り上げました。今日ももう一度資料でお配りをしています。この判決で重要なところ、下線を引きました。次の部分です。校務分掌等による包括的な職務命令の下、所定勤務時間内に職務を終えられず、やむを得ずその職務を時間外に遂行しなければならず、それが社会通念上必要と認められるものであるならば、とりわけ次です、指揮命令権者の事実上の拘束力下に置かれた公務に当たると。
 ここで、ごめんなさい、大臣の前にもう一度初中局長に確認しなければいけませんでした。
 初中局長、改めて聞きますが、今私が読み上げた部分、これを公務災害認定上の公務の判断基準として受け止め、周知するということでよろしいですか。
○政府参考人(小松親次郎君) そのように考えております。
○田村智子君 ここで、大臣にお聞きいたします。
 なぜ私がこれを前回からこだわって取り上げているかといいますと、教員の皆さんがやっている仕事というのは、やはり自発性であったり自立性という要素が強い、そういう側面はもちろんあると思います。それだけに、学校現場では時間外の勤務というのは教員個人の責任に帰してしまう、そういう傾向が今も大変強くあると思います。鳥居裁判でも、被告となった地方公務員災害補償基金は、敗訴してもなお、明示的な命令のない時間外勤務は教員の自主活動であるという態度を変えていないというふうに聞きます。それだけ根が深いわけです。
 大臣、公務とは何かということを明確にすることが私は必要だと思います。教員の長時間労働、過重労働の解決進めるためにそのことを明確にすることが必要。
 鳥居裁判では、教材研究、朝、放課後、夏休み中の部活動指導、行事や行事の準備などの職務を時間外であっても公務だと認定をいたしました。これをしっかりと受け止めて、公務災害上の公務の判断基準、そしてこの判断基準に基づく公務に従事した勤務時間の把握、公務災害を未然に防ぐ労働安全衛生上の対策などについて、教育委員会や学校管理者に周知することが必要と思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、教職員の勤務時間を適正に把握し、勤務の負担軽減を図っていくことは急務であるというふうに考えております。このため文科省としても、各教育委員会に対して、管理職による労働時間の適正な把握による勤務時間縮減の促進や、教職員の負担軽減に向けた公務の情報化、公務の効率化などについて周知徹底を図ってまいりたいと思います。
 文科省としては、今回の判例の趣旨の周知を図るとともに、引き続き、国や自治体の研修等も活用しながら、国と自治体が一体となりまして教職員の負担軽減に取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 ちょっと、大臣、一点確認したいんですけど、今度の鳥居裁判というのは、これ時間外の活動は一律に自主活動というふうにみなされちゃったんですね、当初。それはやっぱり私はあり得ないと思うんですよ。お一人お一人どこが公務なのか、これしっかりつかむということが必要だというふうに思いますが、そこを一点確認したいと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) その辺の整理というのは、今後していく必要があるというふうに思いますが、いずれにしても、今回の判例の趣旨、その周知はきちっと図ってまいりたいと思います。
○田村智子君 是非、教員一人一人の勤務実態や勤務時間というのを把握しなければ、どこまでが公務で、どれが縮減できる公務かということは、これは分からないわけですね。だから、そういうお一人お一人、勤務時間、学校の中に残っている時間の把握ということ、これをやっぱり大前提として取り組まなければならないと思いますが、その点もちょっと大臣に認識をお聞きしたいんですね。
 勤務時間の把握というふうにおっしゃったけど、少なくとも、学校にどれだけ残っているかということを把握する、これがなければ、縮減すべき公務、鳥居裁判の判断基準というのを当てはめていくこともできないと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 御趣旨はよく分かりますが、なかなか一般的な、例えば工場に勤めているような単純労働と違って、教職員の任務というのは、御本人の明確な使命感でされている部分もあるし、それから公務全体の中での位置付けとしてされている部分があって、そこがどう線引きできるかどうかは学校における例えば人間関係にもよる部分もあるのではないかと思いますし、単純に線引きできない部分があるかと思いますが、かといって、教職員の時間外労働を放置するということを、あってはならないと思いますし、さきのOECDの調査においても、我が国における教職員の労働時間が最も長いということがこれは指摘されていることでありますから、負担軽減にしっかり取り組んでいく、その辺で関係者の方々と、よくお聞きしながら文部科学省としても整理をしていく必要があると認識しております。
○田村智子君 是非整理してほしいんですけれども、私も勤務時間だけつかめとは言っていないんですよ。勤務時間をつかむのは大前提で、その勤務実態、中身もつかんでこそ、どこが縮減できるのかということが分かるんだということになると思うんですね。
 まあ文科省としても整理したいということですから、ちょっとここだけの議論では時間がなくなってしまうので、今後も私も質問を続けたいと思いますが、次に進みます。
 勤務時間の把握、これは私は大前提だというふうに思っているんですね。実際、文部科学省も、現認又はタイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し記録するということを通知をしています。
 しかし、この現認、これは誰かが記録せよということで、教頭先生が目視で確認して記録するという学校も少なくありません。資料で二枚目にお配りしたのは、千葉県習志野市のある小学校の警備システムの記録です。
 朝、最初に来た方が警備システムを解除する。これは学校に入った時間です。最後に退勤する方がシステムを設定する。四月一日を見てください。解除の時刻は午前三時十八分、そして帰った、設定、翌朝の四時四十五分。その一時間半後、午前六時十二分にはまた解除されています。学校は不夜城です。四月十六日、設定、帰った時間、これも日付を越えて午前四時二分。ところが、同じ時刻が翌日の解除時刻になっています。
 こんな働き方を現認しようとすれば、校長や教頭は日常的に学校に泊まり込むしかないわけですね。現認で勤務時間を把握するというのは事実上不可能だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 文科省としては、平成十八年に各教育委員会に対して通知を発出し、管理職が自ら現認し、又はICカード等の客観的な記録を基礎として確認、記録することなどにより、労働時間の適正な把握を努めるよう指導しているところであります。
 教員の労働時間につきましては、学校の規模や組織運営等の実情に応じ、各学校における適正な方法で把握することが重要であるというふうに考えます。
○田村智子君 現認というのは、その場に管理職が必ずいないと現認やりようがないんですね。管理職の方だって学校からいなくなることだってあるわけですから、これ現認って無理だというふうに思うんですけど、いかがですか。現認で勤務時間、把握できますか。
 あるいはもう一つ、じゃ、局長、手を挙げるならもう一点ね。
 あるいは、出勤簿に出欠の判こを押すというやり方も、例えば東京都内の公立小中学校によく見られます。それは出てきたか欠席したかは分かるけれど、勤務時間の把握は不可能だと思いますが、併せていかがですか。
○政府参考人(小松親次郎君) 学校における出勤時刻、退庁時刻の管理方法、現認それから報告、点呼、目視、いろいろな方法がございます。出勤簿への押印もその一つでございます。
 労働時間の把握については様々な方法があると考えられるわけでございますが、その中でICカード等の客観的な記録を基礎として確認し記録することなども適切な方法としてあるところでございまして、これらを実態に合わせてどのように使っていただくかということを各現場でも判断していただく必要があると考えておりますので、私どもとしてはそのように指導しているところでございます。
 そして、管理職につきましては、その役割分担等に応じまして、それが、必要な確認ができるように工夫をしていただくということは大変重要なことだというふうに考えております。
○田村智子君 なかなか長時間勤務の問題が解決しないのは、実態が正確につかまれていないということが大きいと思うんですよ。これ、是非文科省、検討してほしいんです。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、やっぱり学校の多忙化というのは、十年前、二十年前と比べてはるかに深刻なわけですよ。それで、現認というやり方は管理職の負担を重くすることになりますし、教員の自己申告、これは教員の業務を増やすだけになります。そしたら、文科省として、タイムカード、まあICカードはなかなかないかもしれないけど、せめてタイムカードですよ、客観的な方法で合理的に把握をするのが原則なんだと、現認というやり方はその過渡的なやり方なんだというぐらいの意向を示すこと必要だと思いますが、いかがですか、大臣。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、各学校におきまして、労働安全衛生対策の一環として管理職が教員の勤務時間を適正に管理する、これは非常に重要なことであるというふうに思います。
 その具体的な労働時間の把握方法につきましては、ICカード等によるのか、それとも管理職の現認等によるのか、又はそれらを組み合わせるか等、これはそれぞれの学校の規模とか組織運営の実情等によって多様にあり得るものではないかと、また、そういう、ある意味では現場における柔軟性は任せてもいいのではないかという思いがございます。
 文科省としては、そういう意味では各学校における適正な方法での勤務時間を把握していただきたいと考えておりますが、しかし、国全体として、確かに日本の教員が労働時間が過重であると、労働時間外の仕事が多いということは事実でありますから、これを適正にしていくことについては文部科学省としてもしっかり対応について取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 今どき、三人とか五人の従業員の会社でもタイムカードを置くというのは本当に普通のことで、これだと学校は本当に社会から取り残されるといいますか、非常識な世界になりかねないというふうに思うんですよ。
 是非、文科省の中で、客観的な記録、これをやっぱり原則とするんだという、このことを言っているわけですから、タイムカードをまず置こうよと。現認というのはそのための意向だったり特別な事情があったりという、それはあり得るかも、それぐらいの姿勢示さなかったら、私は長時間勤務の問題の解決に向かっていかないというふうに思います。
 もう少しその先のことについてもお聞きをしたいんです。
 管理職が個々の教員の勤務時間等やあるいは勤務状況を把握して、負担軽減が必要と思われる教員と面談を行う、あるいは校務分掌の変更などの対策を取る、こうやって具体に長時間勤務の問題が解決に向かっているぞということがなければ、これ、記録しても何のための記録かということになっていくと思います。
 安全衛生についての認識をやっぱり学校現場に徹底するということが、私、今求められていると思います。管理職に対して、教職員の勤務実態を把握することがなぜ大切なのか、先ほど厚労省さんがお話しいただいた、月四十五時間超えたら脳疾患、心臓疾患起こし得るんだというこの健康衛生上の問題、こういう研修というのを、私は管理職あるいは教育委員会対象に行っていくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 労働安全衛生法の趣旨、目的が教育現場で十分に生かされるためには、御指摘のように、教育現場が労働安全衛生法に基づき、例えば衛生管理者、推進者の配置等体制の整備を行うとともに、特に管理職がその目的を正しく理解をし、適切な労働環境の確保に努めることが、これが望ましいことであるというふうに思います。
 文科省としては、教職員の安全と健康を確保し、質の高い教育活動を維持していくために、このような法の趣旨、目的とその重要性について普及啓発のためのリーフレットの配付や通知等によりまして、教育委員会や学校現場への周知を図っているところでございます。
 各教育現場におきましては、管理職がリーダーシップを発揮して現場の意識改革に取り組むなどによりまして、労働安全衛生法の趣旨に沿った取組が進むと考えられ、文科省としても、校長マネジメント研修等を通じて今後取組の充実を図ってまいりたいと思います。
○委員長(水落敏栄君) 田村さん、時間が迫っていますので、まとめてください。
○田村智子君 はい。今日もちょっと時間が足りなくなってしまいました。
 実際、まず労働時間の把握をすること、そして、その時間を把握した上で衛生委員会や衛生推進者を含めて、学校が管理者を含めて本当にどうやって長時間勤務の問題、解決していくのかということを検討すること、あるいは、今日紹介したかったのは、埼玉県の川口市で、自治体レベルでも長時間勤務どうやって解決するか、自治体レベルでそういう話合いを行って様々な対策を行っている、こういう取組が本当に求められていると思います。
 まず、文科省自身も、あの厚生労働省の過重労働の対策などを是非学んでいただいて、文科省の中で、これまでの延長線ではない、もっと抜本的な長時間勤務の対策を行うことを求めまして、最後、一言大臣にいただいて終わりたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) 文科省としても、自らそれについてはきちっと対処してまいりたいと思います。
○田村智子君 時間になりましたので、終わります。


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