日本共産党の田村智子議員は4日、参院内閣委員会で行われた「女性活躍推進」法案審議で、男女間の賃金格差解消こそ急務だと主張しました。
田村氏は、社会保険診療報酬支払基金の事例を紹介しました。同基金は、労働者数や就業年限に男女の差異はありません。しかし、労働組合の調査で、給与が低い等級の女性割合がきわめて高いことがわかりました。
田村氏は、法案では、企業に管理職の女性比率、就業年限の男女の差異を把握するよう求めているものの、「これでは、働き始めてすぐに始まる男女賃金格差の実態はみえない」と指摘し、賃金格差そのものの把握を強く求めました。
また、基金では、給与等級が3等級までは「転勤の有無」は関係ないのに、管理職である2等級は、ほぼ全員が転勤経験者です。基金の業務は、診療報酬の審査・支払いで、地域による業務内容の違いはありません。
田村氏は、18年間3等級にとどめ置かれた女性労働者が、速やかな2等級への昇給を求めている事例を紹介しました。兵庫労働局長が紛争調整委員会での調停を決めましたが、基金は「違法行為はない」とこれすら拒否しています。田村氏は、転勤を昇給の要件とする合理的理由が説明できなければ間接差別にあたるとして、基金への厳しい指導を求めました。
厚生労働省の橋本岳政務官は「企業に資料の提出を求め、合理性のない場合には法違反として厳正指導を行う」と答弁しました。
2015年8月6日(木) 赤旗
「コース別人事」批判 田村氏 理由なければ違法
日本共産党の田村智子議員は4日の参院内閣委員会で、銀行の「コース別雇用管理」による男女賃金格差の是正を求めました。
みずほ銀行では男性の多くが「総合職」、女性の多くが「一般職」とされ、一般職は勤続年数が長くても総合職27歳男性の給与水準。銀行業界全体でも、45~49歳男性の平均賃金62万円に対し女性平均30万円と2倍の格差となっています。
ある女性労働者は1986年のコース別人事制度導入時、総合職を希望しましたが、上司から「転勤してもいいのか」と圧力を受けて断念。昨年、女性は労組に加入し総合職に昇格。同期の夫との生涯賃金格差は約1億円です。
こうした事例に対し有村治子男女共同参画担当相は「コース別人事が男女を明確に区分することになっているなら、是正を図らなければならない」と答弁しました。
田村氏は、転勤が総合職の要件とされれば、妊娠・出産する女性を事実上、排除すると指摘し、「コース別管理で転勤を要件とするには、合理的な理由が示されなければ(雇用機会均等法違反の)間接差別だ」と批判。厚労省指針の改善や、「女性活躍推進」法案で「コース別人事管理実態がきっちり把握できるようにすべきだ」と求めました。
厚労省の安藤よし子雇用均等・児童家庭局長は、コース別雇用管理について「合理的な理由なく、転勤に応じる者のみ対象とすることは法に抵触する」と認め、「法案で雇用管理における男女間格差が把握されることで、コース別を含め対応が図られていく」と答弁しました。
2015年8月7日(金) 赤旗
【 内閣委員会 8月4日 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
本法案が職業生活でのあらゆる側面で男女間の実質的格差を解消させる力になるということを願いまして、具体的な問題についてお聞きをいたします。
厚生労働省は、男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドラインというものも作成をして、一貫してこの問題に取り組んできました。しかし、二〇一〇年に出された変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会、この報告では、「全体を平均して見た時の男女間賃金格差のその後の縮小は遅々としており、現行ガイドライン等の取組の効果が上がっていない。」との認識を示しています。
橋本政務官にお聞きします。現在も同様の認識なんでしょうか。
○大臣政務官(橋本岳君) 我が国の男女間の賃金格差につきましてですけれども、年々縮小傾向にはございますが、しかし、一般労働者の男性の賃金を一〇〇とした場合の女性の賃金は七二・二となっておりまして、国際的に見ても依然として格差がある状況であると、このように認識をしております。
○田村智子君 その格差がこの法案でどう解消されていくかなんですが、この法案では、三百人超の大企業に対して、男女格差について四つの必須項目プラス任意項目を検討ということなんですが、この把握と分析、そしてそれを受けた行動計画の作成と公表を義務付けました。この把握した必須項目プラスアルファの項目というのは企業が選択をして公表することになります。しかし、本会議でも指摘をいたしましたが、この必須項目に賃金の男女差の把握が含まれていない。男女間賃金格差解消のガイドラインでも把握の必要性というのは強調されています。労政審では労働者側から強く要求されていました。
男女別の賃金を把握する、これ必須項目に加えなかったのはなぜなのか。あわせて、本会議でも任意項目に加えることを検討と言っているんですが、なぜそういう検討を行うのか、併せてお答えください。
○政府参考人(安藤よし子君) 状況把握につきましては、多くの企業に該当する課題に対応するものとして、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率、この四つの項目につきまして必須項目としたところでございます。
賃金格差につきましては、それが生じている要因を分析し、それに応じた雇用管理上の取組を進めるということが重要でございます。我が国の男女間の賃金格差の要因を分析いたしますと、最も大きな要因が男女間の職階の違いであり、次いで男女間の勤続年数の違いというふうになっております。この男女間の賃金格差の二大要因であります管理職に占める女性比率と勤続年数の男女差につきまして必須項目として把握、分析を行うことによりまして、これらに係る課題を解消するための取組が各企業において行われて、ひいては男女間の賃金格差の縮小につながるというふうに考えたところでございます。
本会議におきまして状況把握の任意項目に男女間格差を加えることについて検討すると申し上げましたのは、衆議院の附帯決議におきまして男女間の賃金格差を状況把握の任意項目に加えることについて検討することとされたことを踏まえまして、法案成立後、そのような検討をすることを考えております。
○田村智子君 非常にかゆいところに手が届かないような御答弁なんですよね。けれども、やっぱり衆議院の議論を経ると把握が必要ないとも言えないということだと思うんです。この女性の管理職比率と男女の就業年数の差異、これで賃金の格差、実態把握ができるのか、非常に疑問なんです。
コース別管理の具体の事例を見てみたいと思います。
みずほ銀行、男性の多くは総合職、女性の多くは一般職とされています。女性の一般職は、勤続年数が長くても総合職の二十七歳男性の給与水準で頭打ちという実態があります。これはみずほだけじゃないんですね。銀行全体でも、賃金構造基本調査によれば、四十五歳から四十九歳で見てみると、男性の平均賃金六十二万円、女性は三十万円と半分にもならないわけです。同じ年限働いてもコースが違うからと、二倍以上の賃金格差が言わばシステム化されていると。有村大臣、この実態、どのように思われますか。
○国務大臣(有村治子君) 個別の企業の人事管理についてコメントをすることは差し控えさせていただきますが、一般に男女間の賃金格差の最も大きな要因ということは、管理職に占める女性の割合が低いこと、女性の就業年数が短いことであるというふうに承知をしております。これが男女の差というよりコース別人事というふうに言われたときには、そのこと自体に非合法性があるというわけではないのですが、やはり、この実質的な格差を埋めていく努力はこれからも続けていかなければならないものというふうに認識をしております。
○田村智子君 これは個別企業としてではなく、安藤局長にもお聞きしたいんです、一般職は女性が当たり前で、二十数年働いても、総合職、これは圧倒的に男性と、その賃金格差は二倍以上だと、これは間接差別ではないんでしょうか。
○政府参考人(安藤よし子君) 諸外国を含めまして一般的な間接差別の概念は、外見上は性中立的な要件等が一方の性に相当程度の不利益を与え、しかもその要件等に合理性、正当性がないものというふうにされております。こうした基本的な考え方に基づきまして、現行の男女雇用機会均等法においては、労働者の募集、採用、昇進、職種の変更で合理的な理由なく転勤可能なことを要件とすることや、労働者の昇進で合理的な理由なく転勤経験を要件とすることなどを間接差別として禁止しているところでございます。
個別の事案が間接差別に該当するか否かについては、多岐にわたる事項の事実確認の上に行われる必要もございますので、一律に御答弁することは困難でございますが、一方で、女性の活躍推進の観点から見ますと、多くの企業におけるコース別雇用管理の運用には、例えば総合職の男女別の採用競争倍率にいまだに大きな格差があるとか、総合職の女性は十年間で約六五%が離職している、男性総合職の場合はこれは二九%の離職にとどまっている、このような格差があるということから見ても課題があるものと考えております。
この法案は、こうした各企業における男女間の実質的な格差を明らかにできるように、採用から登用に至る四つの必須項目の状況把握、課題分析とその結果を踏まえた行動計画策定を大企業に義務付けることとしているところでございまして、こうした枠組みが実質的格差の縮小につながるようにしてまいりたいと考えているところでございます。
○田村智子君 コース別の問題ありということで御答弁あったんですけれども、もう少し具体的に見たいんです。
このみずほ銀行で、昨年、定年退職を目前にしてやっと昇格を実現した女性Aさんという方がいらっしゃいます。このAさんは旧第一勧銀に入社をしているんです。一九八六年、銀行がコース別人事制度を導入したときに総合職を希望した。男性は希望どおりほぼ認められる。ところが、Aさんは、上司に呼ばれて転勤することになってもいいのかと何度も言われ、一般職を選ばざるを得なかったと。その後もコース転換を何度も要求、しかし支店長推薦を得られず、試験を受けてもコース転換が認められない。Aさんはこのまま定年退職するわけにはいかないと労働組合に加入をし、団体交渉を重ね、昇格のためのアクションプランなどの課題にも取り組んで、昨年やっと総合職に転換を果たし、部長代理、課長代理相当の昇格を果たすことができたといいます。
組合に入ったときに、Aさん、何と言われているか。結婚したときには退職しないのか、彼の出世に響くと言われた、これ夫も同期入社なんですよ。そして、コース別人事管理導入時、総合職を要求すると、何度も課長に呼び出されて、ふざけているのかとどなられました。夫とは同期同年齢、生涯賃金差は約一億円です。銀行が長年にわたり私にしてきた嫌がらせを考えれば一億円では済みませんと、こういう思いで昇格懸けて闘ったということなんです。ちなみに、みずほ銀行は二〇一二年度、均等推進企業として厚労大臣に表彰をされております。
Aさんのように声を上げられる女性というのは、残念ながら一握りです。今も多くの女性が、一般職が当たり前というふうにされています。もう一度、この現実、有村大臣の受け止めをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(有村治子君) 今御紹介をいただきました個別の企業の人事管理についてお答えをすることは、恐縮でございますが、いま一度控えさせていただかなければならないというふうに認識をしております。
ただ、コース別人事ということで、それが文字どおり男女を明確に区分するということになっていれば、それは見える化をして、その是正を図っていかなければならないというふうに思っております。この法案を通していただければ、女性比率、採用者における比率、あるいは管理職における女性比率、あるいは勤続年数でどのくらいの違いが出ているかということを、明らかに三百一人以上の企業で明確にしていかなければならない、見える化をしていかなければならないということになっていきますので、それが市場の評価を得ていくという緊張感の下で是正になっていく、そのエンジンにしたいという思い、強い思いがございます。
○田村智子君 これは、法案にとどまらず求めたいことがあるんですね。このAさんのように、転勤できるかということが総合職の要件とされてしまう、これは一企業の問題ではないんです。妊娠、出産もある女性は転勤できないでしょうと、あらかじめ女性を総合職から排除する、こういうやり方が許されていたら、私は男女の賃金格差というのは解消しないと思います。
これ改めるために、厚労省が示しているコース等別雇用管理についての指針、これ是非見直ししてほしいんです。指針の第三項目、コース等別雇用管理の定義の中に、勤務地の限定の有無により異なる雇用管理を行うものも含まれるというふうにあるんです。これではまさに転勤できるかを要件にしていいよと、こう受け止められかねないんですね。コース別管理で転勤を要件とするには、やはりその必要性、転勤することがなぜ、総合職で転勤が要件となるためには合理的な理由、これが示されなければ間接差別とされるわけですよ。ところが、指針の方は単純に勤務地の限定の有無と書いてしまう、これ誤解を招くと思いますので、この一文、削除を検討していただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(安藤よし子君) コース等別雇用管理指針におきまして、勤務地の限定の有無により異なる雇用管理を行うものというのは、コース等で区分した雇用管理の一つの例として示されているところでございます。同時に、この指針におきましては、法に直ちに抵触する例として、募集又は採用に当たり、合理的な理由なく転居を伴う転勤を応じることができる者のみを対象とすることということを示しておりまして、コース等別雇用管理において転居、転勤要件を付する場合においても、合理的な理由がない場合には法に抵触するものでございます。
ですので、間接差別に該当する転勤要件を、この一文があるからといってこの指針が容認しているものではございませんし、現に勤務地限定の有無によりまして雇用管理区分を設定している企業がある中で、これをこの指針の対象から除外してしまうということになりますと、逆に言えばその網を掛けられなくなる、法違反であるというものについての指導対象から外れてしまうのではないかというような懸念もあるところでございます。
○田村智子君 これは、合理的な理由がなければ駄目なんだよということを本当に徹底しなければ、ここの一文見て、転勤できるかどうかって、実際にやられているわけですから、それで総合職にできるかどうかということが、それを是正できるように是非していってほしいというふうに思います。
そもそも、私は妊娠、出産などをあらかじめ想定して働き方を選ばせる、こういうこと自体が見直しが必要だと思います。結婚しましたと、子供どうするか、これは夫婦と個人で決めることであって、会社からあらかじめ決めるように求められるようないわれはないわけですよ。また、出産や育児を支援するためには、産休や育休の制度もあるわけですから、そういうときにはそれを使えばいいというだけの話です。また、それにとどまらない、予想できない様々な出来事ですね、ライフイベント、それは男女問わずにあるわけですよね。
ですから、将来的な家庭生活を想定してあらかじめコースを選択させる、人材養成もこれに伴って行うと。これ、合理性あるとは考えられません。むしろ、男女共に能力に応じて人材育成を行う、その時々の家庭の事情も考慮しながら人事を行うと、これでいいんじゃないのかと。
厚生労働省も、この賃金格差のガイドラインの中で、結果としてコース間の処遇の差が男女間賃金格差の要因となっていると考えられると、こう指摘をしています。ならば、この際、コース別人事管理、これいつまで容認するのかと。このことは検討必要だと思いますし、少なくとも、この法案の施行によって、このコース別人事管理の実態がきっちりと把握できるようにしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(安藤よし子君) 各企業においてどのような雇用管理を行うのかということにつきましては、各企業の労使において決められるべきことだと考えております。
その上で、今回の法案によりまして、各企業の雇用管理における男女間格差が把握されることによりまして、コース別雇用管理をも含め、そこにおける雇用管理の課題について明らかになり、それに対する対応が図られていくものだと考えております。
○田村智子君 その企業の判断でということで言わば雇用管理を企業任せにしてきたから、いつまでたっても男女の格差というのが縮まっていないというのが実態ですよね。
先ほど紹介しましたけど、旧第一勧銀、コース別人事を導入したのは一九八六年、これはどういう年か。男女雇用機会均等法の施行で求人、採用で男女を別に扱うことが禁止されたと、このときなんですよ。だから、結局、コース別というのを隠れみのにして、男女別の賃金構造、これを温存させたことになります。
こうした経緯から見ても、コース別雇用管理の実態把握、これは女性の活躍の妨げを取り除く上で絶対に必要なことだと。これはどうやってつかむのかは是非検討していただきたいと思います。
もう一つ、具体の事例を示します。
これ、社会保険診療報酬支払基金、厚生労働省のお膝元の事業所になります。これは資料も配付をいたしましたので見てください。これは給与の等級分布の図なんです。男女別にしてあります。白丸が女性で黒丸が男性というのが二枚目からの表なんですね。
一枚目の表は、支払基金というのが、これ見ていただくと分かるんですけど、働いている方は男性、女性、五〇パーずつ、ハーフ・ハーフなんですね。だけれども、等級ごとの女性の比率というのを見ると、一目で見て分かるのは、管理職、これ管理職というのは給与の等級でいうと二等級以上なんです。ここで女性が圧倒的に少ないと。就業年限にも大きな差はありません。注目してほしいのは、管理職としてカウントされるのは二等級以上なんです。じゃ、そこから下、三等級以下の等級の分布がどうか。男性はほぼ均等なのに対し、女性は明らかに下の等級ほど多い。女性の半数が五等級にとどまっています。
二枚目の資料、これは東京支部の給与の等級を白丸が女性、黒丸が男性というのにしたもので、三枚目は北海道支部の同じものです。五級に在籍しているのはほぼ全員が女性です。入所年度別に見ると、例外なく男性が女性よりも早く昇級をしています。
管理職の女性の比率、就業年限の把握の分析、これではここまでの実態は分からないわけですよ。働き始めてすぐに始まる男女格差、この実態把握をするためには、やはり男女の賃金の実態そのものを把握しなければならないと思うんですが、いかがですか。
○大臣政務官(橋本岳君) 今、管理職登用に至る以前の職階の段階でのその格差がどうなのかという問題提起をいただいたと思っております。
そうした管理職登用、今回の法案では、その必須項目の中で女性管理職の比率なども含めることで管理職に登用したところの段階では把握することとしておりますが、もちろん、今御指摘がありましたように、管理職以前の段階でも男女間格差が生じている場合というのも、それはそれであり得るのだろうと思っております。
その場合は、その登用状況の男女間格差が何によって生じているのか、その要因の分析を更に深めることが大事だと思っておりますし、それは、今既に必須項目になっております、まず採用の比率、採用の段階でどうなのか、あるいは勤続年数で男女差があるとしたら、女性が例えば勤続年数が少ない方が多い、働きにくい職場である、じゃ、どうすればいいのか、そうしたことをきちんと把握して要因を分析をしていくということが大事なんだろうというふうに思っているわけでございまして、今申し上げましたが、四つの必須項目の状況把握、課題分析を行った上で、各事業主の実情に応じ分析を更に深めるために把握する任意項目というものもあるわけでございまして、今後施行に向けて労働政策審議会で議論を深めてまいりますけれども、その際には、衆議院の附帯決議も踏まえ、また先生の御指摘も踏まえまして、男女間の賃金格差を位置付けるということも併せて検討してまいりたいと考えております。
○田村智子君 質問の冒頭で賃金格差解消のガイドラインの紹介をしましたけれども、このガイドラインにはこうも書いてあるんですよ。男女間賃金格差を問題として認識する者が減少し、また多くの企業が男女間賃金格差を計算したこともないという実態があると。このため、男女の取扱いの差異、賃金の差異が個々の企業においてあったとしても、それが見えていない場合もあると考えられる。こうした状況にとどまる限り、格差縮小に向けた労使の取組は進んでいかないものと懸念されるということなんですね。このように指摘をして、だからガイドラインでは男女間賃金格差把握のための支援ツールも示してきたはずなんですよ。
実は、支払基金も、一九八〇年代に女性たちが立ち上がって昇格差別を東京地裁に提訴をして、十一年掛けて東京高裁で昇格を含む職員処遇の男女平等、これを約束させる和解、結んでいるんですよ。ところが、二十数年が経過した現在、この和解の内容が徹底され実行されているとはとても言い難いからこういう表が出てくるんだというふうに思うわけです。
このあからさまな男女格差は、労働組合が一人一人についてこつこつと調査をすることで白丸、黒丸でここまではっきりと分かるようになったんです。ガイドラインが指摘するとおり、把握と分析を繰り返す、それが使用者に賃金の男女格差、この認識を確かなものとして、その解消を労使で一緒に取り組んでいかなきゃいけないんだと、こういうふうに進んでいく、推進していく、その道筋だと思うんですよ。
私は、どうしたらこの法案がその力になっていくのかなということを非常に考えているんですが、橋本政務官、いかがですか。
○大臣政務官(橋本岳君) これは、委員のお気持ちというか思いというのは、もうまさに私どもも共有をするところでございます。
男女間賃金格差の是正は重要な政策課題でございますし、おっしゃいましたように、本法案が成立をさせていただきましたらば、当然ながらその力に是非させていただきたいと思っているところであります。
ちょっと繰り返しにもなりますけれども、ただ、男女間の賃金格差というのはなぜ起こるのかというのは、管理職の比率でありますとか勤続年数の差異などが要因であるというふうに言われております。ですから、本法案に基づく省令において大企業が行動計画を策定する際に情報を把握すべき必須項目とし、課題分析することを予定しているところでございまして、こうした項目の把握、分析の結果、各企業の課題に即した行動計画が策定され、女性の継続就業や登用に向けた取組が進められることになり、男女間の賃金格差の縮小にもつながると、このように考えておりまして、そうした行動計画策定指針において、効果的な状況把握、課題分析の手法を私たちとしても更に提示をしたいというふうに考えておりまして、各企業において適切な検証を基に取組を進められるように努力をしてまいります。
○田村智子君 努力していただきたいと思いますが、加えて、支払基金の昇格の問題についても見てみたいんですよ。
もう一度資料を見てほしいんですが、これ二等級以上が管理職、女性は一割強、しかも組合の調査ではその九五%が転勤を経験した者です。三等級までで見ると、管理職でない人たちですね、を見ると、男女共に転勤がなくても昇格をしています。
そうすると、実態は、これ間接差別として禁止された転勤を昇格要件にしているというようにみなされると思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(安藤よし子君) 労働者の昇進に当たりまして、転居を伴う転勤に応じることができることや転勤の経験があることを要件とすることは間接差別となるおそれがある措置として厚生労働省令に定められているところでございますが、間接差別と認められるためには、転勤要件に合理的な理由がないということが要件となります。
この合理性の有無につきましては個々の事案について個別に検証する必要がございまして、御指摘の事案についても、その合理性の有無については詳細に検討して判断されるべきものでございますが、いずれにいたしましても、個別の事案の法違反の有無についての回答は控えさせていただきたいと考えております。
○田村智子君 これ診療報酬の支払ですので、厚労省と関係のない事業所ではないんですよ。
じゃ、この支払基金の業務、今言ったみたいに診療報酬の審査と支払、どこの支部でも仕事は同じ、そもそも転勤しなくても同一支部の中で能力形成は可能です。しかも、昇格できるポストがあってもわざわざ別の支部から転居を伴う転勤をさせてそのポストに充てる、同じ支部から昇格させないという運用を基金はやっております。
厚生労働省にお聞きします。基金の行う診療報酬の審査支払業務、これは政省令、告示、通知などで細かくルールが決まっていて、国保連も同じルールで運用されているのではありませんか。地域ごとの特殊性というのを認めているんでしょうか。
○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。
診療報酬の算定ルールや審査上の取扱いについては、今御指摘のございましたように、診療報酬に係る告示や通知などに基づいて全国統一のルールとして取り扱うべきものと考えております。
御指摘の支払基金が算定ルール等を実際に適用するに当たっては、各都道府県ごとの支部において関係法令等に基づいて公正かつ専門的な見地から個別の診療行為に基づいて審査がなされているというふうに私ども承知をしております。
○田村智子君 今の御説明でも、業務に地域性の特殊性はないんです。あったらとんでもないことになっちゃうんですよ、これ。地域の特殊性で診療報酬を決めるなんてことはあり得ないわけですからね。それでも転勤が昇格の要件に実態としてはなっている。これが禁止された間接差別ではないというのならば、使用者はその合理的な理由を説明しなければならないはずなんです。
この春、兵庫労働局に対して、支払基金の女性労働者Bさん、できるだけ速やかな時期に二等級管理職にすることを求めて、均等法に基づく調停を申し立てました。Bさんは十八年間三等級に留め置かれ、支部内に二等級のポストがあったのに昇格もできなかった。この申立てについて労働局長は紛争調整委員会での調停を決定しましたが、驚いたことに、基金側が法違反の事実は存在しないとして、調停会議に出席しないと通告をしてきた。基金は、組合が交渉すれば、個別事案は答えられないとしか述べない、話合いをするために第三者を入れた調停を申し立てると、ここには出てこない。
支払基金というのは民間法人とされていますけれども、これは役員選任、事業計画、予算、これは厚労大臣の認可を必要とするなど、極めて公益性の高い法人、言わば厚労省のお膝元、こういう態度を許していてよいのかどうかをお答えください。
○大臣政務官(橋本岳君) 御指摘のとおり、支払基金というのは厚労省のお膝元と言われればそういう面が、そうなんですけれども、ただ、答弁といたしましては、個々の調停申請事案の件については回答を差し控えさせていただくということにならざるを得ません。
ただ、一般論で申し上げれば、男女雇用機会均等法に基づく調停は、当事者双方の譲り合い、歩み寄りの互譲の精神に基づいて行われるものでございまして、労働局としては、当事者に対し調停への参加を求める働きかけは十分行っておりますものの、そうした働きかけにもかかわらず当事者に参加の意思がない場合には、歩み寄りによる紛争解決は困難であるということになるということでございます。
ただ、更に付け加えて申し上げれば、今回の法律における一般事業主に、支払基金も三百人以上の従業員を持っておりますので係ります。そういう意味では行動計画を作らなければならないことになりますので、そうした中でその四つの項目を始め様々な状況を把握をし、改善の計画を立てるということに、そしてそれについて取り組むということになりますので、そうした中で更に女性について働きやすい職場になるということを期待をしているものであります。
○田村智子君 出産、育児を契機とする差別を禁止した均等法九条、これ立証責任を使用者側に求めていると、これ本会議で厚労大臣は答弁されました。間接差別を禁止する均等法七条、これ九条と同じく強行規範なんですね。
広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店、支社などで勤務経験を積むこと、生産現場の業務を経験すること、地域の特性を経験すること等が労働者の能力の育成確保に特に必要であるということを客観的に事業主に説明をさせる、それができなければ、出産、育児を理由とする不利益扱いと同様に厳しく指導を行う、こういう姿勢が今この支払基金に対しても求められていると思うんですけれども、もう一度お願いします。
○大臣政務官(橋本岳君) まず、一般論として申し上げれば、先ほど御指摘いただきましたように、間接差別に該当するかどうか判断する場合には合理性の有無を判断することが必要であるわけでありますけれども、労働局においては、この合理性の判断に当たり当該企業から資料等の提出や説明を求めることとしており、合理性が判断できる資料等が得られない場合は法違反として厳正に指導を行うこととしております。
個別の事例についてお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、労働局としてそのような姿勢で対応させていただくということでございます。
○田村智子君 この事例でいえば、客観的な判断の前提である説明もしないという問題ですから、これを見逃していて何が女性の活躍かというふうに言えると思います。厳しく指導をしていただきたいというふうに思います。
もう時間ですので、是非、次の機会にもなんですが、やっぱりこの法案が、これまで見逃されてきた、隠れみのにされてきた、そういう女性に対する差別を本気で解消するという方向を切り開かなければ、何のための女性の活躍法案なのかというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。是非、そのことを引き続き質問して、頑張っていきたいと思います。
ありがとうございました。