総工費が2520億円まで膨れ上がった2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場について、下村博文文部科学相は9日、その財源の見通しが立っていないことを国会で初めて認め、ずさんな計画であることが改めて浮き彫りになりました。参院文教科学委員会の新国立競技場の集中審議で、日本共産党の田村智子参院議員の質問に答えたもの。
新国立は開閉式屋根の設置など大会後の工事費も含めると建設に2708億円以上かかります。田村氏は、文科省が財源と説明する国費の392億円とスポーツ振興基金の取り崩し分125億円など合計626億円は、国立競技場の解体費用にも充てられ、全額が建設工事の財源にならないと指摘。「財源はいくら確保されているのか」とただしました。
これにたいし、下村文科相は「財源確保の積算根拠を申し上げることはできない」と回答し、その見通しがないことを認めた形となりました。
これまで文科相は、財源確保について「(競技場の)命名権や民間からの寄付を含め、200億円くらいは集めたい」としていましたが、それだけではとても足りないことも明らかになりました。
田村氏は、「建設費のほとんどが財源のめどもない。こんな公共事業は前代未聞だ。施工業者と契約すべきではない」と批判しました。
世論調査でも8割が見直しを求めている新国立の計画は国民から支持されていないと田村氏が迫ると、文科相は「問題は税金投入によって国民の負担が増えること。負担をなくす工夫が必要だ」と答えました。
2015年7月10日(金) 赤旗
【 文教科学委員会 7月9日 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
日本スポーツ振興センター、JSCは、七日、国立競技場将来構想有識者会議を開いて新国立競技場の総工費を二千五百二十億円とする案を報告し了承されたと。
私も、昨日の朝、早速、ここで配付された資料もいただきまして詳しい説明を受けました。これを見ますと、二千五百二十億円には可動席は含まれていません。可動席については、いまだ設計途中ということで、この費用の外に置かれています。加えて、オリンピックには間に合わない部分の建設費も含まれていないと。そうすると、オリンピック後も含めたこの新国立競技場の総工費、本当の総工費というのは一体幾らになるのか、お答えください。
○国務大臣(下村博文君) 国立競技場の整備計画につきましては、設計者側との協議の結果、二〇一九年ラグビーワールドカップに確実に間に合わせるため、段階的に整備するということといたしました。
具体的には、オリンピック・パラリンピック大会後に整備する予定のものは、開閉式遮音装置、芝育成補助システム、そして東西面のガラスカーテンウオールでありまして、それらに掛かる工事費は、設計者の試算によれば合わせて百八十八億円であります。
また、簡易着脱式可動席につきましては、今後詳細設計を行うということで、その工事額については詳細設計を行う中で定まることとなりますが、元々の電動式可動席にした場合は予算が六十二億円というふうに計上していて、これをコストダウンをするための簡易着脱式可動席でありますので、当然それよりは低額の予算になってくる、工事額になってくるというふうに想定しております。
○田村智子君 それを足し上げると、二千七百八億円プラスアルファ可動席分、これが全体の総工費ということになると思うんですね。これが今後、もっと工事費の高騰とか人件費の高騰で膨れ上がる危険性もあるわけです。当初の建設費は一千三百億円、この二倍以上になるというのはもう確実なんです。基本設計からも一千億円以上費用が膨れ上がると。
それでも、私が驚いたのは、有識者会議では批判的な意見は出されていないと報道されていることなんです。これまでも建築関係者始め国民から計画見直しの意見というのは繰り返し示されてきました。しかし、有識者会議は耳を傾けず、現行案の後押しをしてきました。私は、その無責任さというのは目に余るものがあると思います。この有識者会議の了承をもって国民の了承、合意が得られたなどとは全く言えない。実際、読売新聞、六日の発表の世論調査でも、八一%が建設計画を見直すべきと回答している。現行デザインのまま建設することを歓迎するという意見は、報道を見ても私は皆無に等しいというふうに思います。
文科大臣、この国民の批判、見直しを求める意見をどのように受け止め、どう対応されますか。
○国務大臣(下村博文君) 新国立競技場の整備につきまして、特に建設費用が当初の予定を大幅に上回る見込みとなったことについては、国民の皆さんからも懸念や批判があるということは報道等を通じて当然承知しておりまして、真摯に受け止めたいと思います。
新国立競技場の整備は、平成二十五年九月のIOC総会におきまして二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の東京開催をオールジャパン体制で勝ち取る原動力の一つになったことは事実であります。当時、厳しい中で、これも一つのセールスポイントとして、結果的に東京都がほかの二都市よりも上回ったという要因になったということは事実であると思います。
また、東京都心に位置する八万人規模のスタジアムについても、今後、国際競技大会の継続的な招致、開催にも資するレガシー、これは例えばサッカーワールドカップを開く場合には八万人規模でなければできないということでありますが、我が国については今それがないということであります。
他方、改築に要する費用につきましては、建設物価や労務費用の高騰などにより多額の建設費用が必要となっております。しかし、先ほどもちょっと答弁をさせていただきましたが、それがそのまま国民負担として増やすということがないように、競技場の命名権販売や寄附の募集、また運営の民間委託など様々な創意工夫を行うこと、そして多様な財源の確保に更に努めることにより、そのようなことを一つ一つ丁寧に説明することによって国民の皆さんの理解が得られるように努力をしてまいりたいと思います。
○田村智子君 説明されても理解できないと思いますね。というか、説明もできていないですよね。
先ほどの民主党の斎藤議員の質問で財源論ありました。そこで局長は、既に措置されたのが三百九十二億で、それから基金の取崩しで百二十五億、totoの収入で百九億という御答弁されましたが、これ建設費に充てられる丸々の額なんかじゃないでしょう。国立競技場の解体の費用、JSC等の移転の費用などで八十八・一億円、これはもう支払われる見込みになっていますよ、この中から。さらに、これまでに使われてきた建設の費用等々もここから出していくことになる。この今局長が答弁された額でさえも、建設費の二千五百二十億プラスアルファには丸々充てることなんかできないんですよ。そうですよね、局長。
○政府参考人(久保公人君) 今おっしゃられた三百九十二億といいますのは、日本スポーツ振興センターの特定業務勘定の財源として確保しているわけでございまして、これにつきましては、それをどういうふうに使うかというのは、具体的な使途が何か制度で定められているわけではございませんので、三百九十二億の枠としてはこの新国立競技場の建設に充て得る枠という意味で申し上げたわけでございます。
○田村智子君 だから、財源としてそれが丸々使えるということにならないわけですよ。これからJSC移転するわけです。日本青年館も移転で、それに対する補償をどうするか、これもまだ決まっていない。そういう額を全部丸め込まれているんですよ。
大臣にもお聞きしたいんですね。
だから、結局、幾ら、じゃ、もう確保されたお金かと言えないわけですよ、分からないんですよ。分からないです、幾らがもう財源として確保されているのか分からない。じゃ、財務省と一体どんな話合いになっているのか、この点を是非お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) 財務省と具体的なことについては、先日、JSCの有識者会議で二千五百二十が建て替えとして了承されたということをもって、これから説明を詳しくしてまいりたいと思っておりますので、今時点で具体的な詰めを行っているわけではございません。
ただ、先ほど申し上げましたように、多様な財源を確保してこの国立競技場の整備については賄うという基本方針がございます。国費だけでなく、スポーツ振興くじの財源、また東京都に対しても一部負担、費用をお願いをしているところでございます。
いろんな創意工夫によって進めていきたいと思いますが、財務省については、平成二十八年度の概算要求、そのときそのときの相当額についてきちっと説明をしながらお願いしてまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、私も昨日から、一体幾ら財源確保されているのか、マスコミでは、この部分は確保されている、これだけ足りないという表なんかも出ているので、それを何度も問い合わせているんですけれども、今の時間になっても出てこないんですよ、幾ら財源が確保されているのか。つまり、全く分からないということですよ。それで、こんないろんな、こういうこともある、こういうこともあるということを入れて、東京都の負担だって幾らになるか分からないわけですからね。東京都の負担といえば、それは都民にとっては税金ですから、税金使わないようになんていうことは全く成り立たないわけですよ。
こんな公共事業、まさに前代未聞。これで私、契約なんていうのはあり得ない、契約しちゃいけないというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 今はっきり二千五百二十億についてのそれぞれの積算根拠で合計こうなるということを申し上げられる状況ではありません。それは、しかし、いいかげんだとかそういうことじゃなくて……(発言する者あり)いや、そういうことではなくて、例えばスポーツ振興くじにおいても、これは超党派の議員連盟でこのことが、以前から五%から一〇%に対する負担については検討しようという協議を進めていただいている最中でありますし、また、東京都とも、昨日、遠藤オリパラ担当大臣が舛添氏に会って、協力してもらう前提で今後協議をしていこうということも進められているわけでありますから、最終的にしっかりと賄うようなスキームについてはもちろん当然作ってまいりますが、今の時点で確定していないからこれは契約できないということでは全くないと思います。
○田村智子君 これは余りに無責任だと思いますよ。私、契約、絶対やったら駄目だということを改めて申し述べたいというふうに思うんですね。
〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
それで、先ほどもありましたけれども、槇文彦氏ら建築家の皆さんが代替案ということも示して、本当に今見直すべきだということもやられたと。それをいろいろ検討したということはもう御答弁いただいたので、私、時間短いから答弁いただきませんが、結局、大臣の答弁を聞いていますと、先ほどもありましたオリンピックの公約としてやっぱり東京オリンピックというのを招致したと、その一つのセールスポイントがザハ案のデザインだったということを繰り返し答弁される。
しかし、これ、毎日新聞七月一日付け、IOCのジョン・コーツ副会長へのインタビューが掲載されています。そこで、新国立競技場の現行案を変更できるのかと問われて、それは政府が決めることだ、変更したいと思えばすればいい。五輪を象徴する施設にしたいと言っていたが、我々が象徴的な施設を求めたわけではない、総工費が増大して負担となることは心配している、国民にとって満足できる施設になってほしいと、こうお答えになっているわけですよ。
現に、東京都は、競技会場を東京以外に広げるということをもう決めてIOCに了承を得ているわけですよ。これに対してIOCが公約違反だと言ったかと。セールスポイントはコンパクトなオリンピックだったわけですよ。それがもう東京都の外に飛び出しているわけですよ。それに対してIOCはコスト削減を歓迎しているわけです。
そうすると、新国立競技場についても、大臣が言われたような答弁とは全く違うと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) この国立競技場は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックのメーン会場だけでなく、その前の年の二〇一九年九月のラグビーワールドカップの決勝戦等、メーン会場にもなるところであります。
これまでも、基本デザインは維持しながら、規模の縮小等必要なデザインの見直しを行ってきておりますが、今年六月に、仮に槇さんたちの案のようにデザインを全く新しいものに変えるということを前提で試算したところ、設計者の随意契約、また施工者の技術提案、それから交渉方式による選定を、つまり一番コンパクトで、まあ年月掛からないでやるということで前提としたとしても、設計開始から竣工までには二〇二〇年六月まで掛かると。つまり六十一か月、五年一か月掛かるということが試算されました。これは私もいろんな方々に客観的にお聞きしましたが、オリンピック・パラリンピック直前で、オリンピック・パラリンピックのためのプレイベントもできなくなる、そもそも二〇一九年九月のラグビーワールドカップに間に合わないという結果でありました。このラグビーに間に合わなくてもいいのではないかというのが槇さんたちの提案の一つでありましたが、これはもう国際協約の中で二〇一九年九月のラグビーワールドカップ、間に合わせるための国立競技場の建て替えということもこれは同時に世界に対して約束をしていることであります。
そういうことと、それから先ほど答弁させていただきましたが、ザハ・ハディド氏のアーチ構造のデザインを示してプレゼンテーションを行い、そして結果的にそれも大きな要素として東京招致を勝ち取ったという経緯があるということは、これは事実であるというふうに思います。そういう意味で、このデザインの大幅な変更をするということは、これは我が国から見たらIOCとの信頼関係やあるいは我が国の国際的信用を失墜しかねないというふうに考えております。
そういう意味で、東京オリンピック競技大会の競技会場の中で、国立競技場は大会の主会場としての開会式、閉会式を行う極めて重要な施設であると、それからラグビーワールドカップに間に合わせる必要があるということで、国際的にも約束した基本的なデザインを維持するということを決めたわけであります。
○田村智子君 IOCに問い合わせてもいないわけですよ、見直ししていいですかって。現にそのコンパクトなオリンピックはもうなくなっちゃっているわけですよね、東京の外にも会場を広げて。そのことについて何も公約違反なんて言われていないですよ。これは全く理由になっていない。ラグビーに間に合わないって、間に合わなくさせたのは誰なのかということを言いたいですよね、本当に。
〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
もう一つ、この間ずっとマスコミなんかでも言われているのは、ザハ氏との訴訟が起こってしまったらこれは建築ができなくなるということもしきりに言うわけですよ。しかし、槇文彦氏は、これはザハ氏はデザイン監修者にすぎないと、施主が契約を終了させても国際法上は問題があるとは思えない、このような前例は幾らでも存在すると、これ読売の取材に答えているわけです。
そもそも、一千三百億円程度という募集の要件をザハ氏の案は満たしていなかった。加えて、ザハ案のアーチ型鉄骨や複雑な曲線ばかりの屋根や壁面などは技術的にも困難で、総工費が膨大になることも明らかとなった。
問題は、契約終了の、言ったら訴訟になっちゃうことを恐れることよりも、私は、もはやこのザハ案に対して国民的な支持はないわけですから、国民の支持がどんどん離れていくこと、このことの方が重大問題だと思いますよ。国民の反感が広がったままでラグビーワールドカップやオリンピックを迎える、この重大性、どうお考えになりますか。
○国務大臣(下村博文君) 国民の皆さんには何が問題かということでいえば、予想以上にコストが掛かった、そのコストの掛かった部分が税金投入されるということによって国民の血税がその分掛かるのではないかと、そういう御心配だというふうに思います。ですから、それについては、多様な財源を確保することによって国民の税金が増えないような工夫についてはこれはきちっとしていく必要があると思います。
一方で、ラグビーワールドカップも含めて、じゃ、間に合わない、あるいは違うものに変えるからそれは違う会場でいいじゃないかということについては、国民の皆さんがそう思っているかどうかは分かりませんが、これは関係者の中で約束してきたことでありますから、それはラグビーワールドカップの関係者の方々はこの国立競技場をメーン会場として使うという国際協約の中で進めているわけでありまして、それを破棄することはこれはできないと。
ですから、間に合わせるということがまず前提。それから、もう一つは、創意工夫の中で、できるだけ国民の税金が掛からないような工夫をするということによって国民の皆様方の理解が得られるような、そういう積み重ねをしてまいりたいと思います。
○田村智子君 最後に一言だけ。
国民の批判をそれは余りに過小に見ていると思います。
契約絶対やったら駄目だということを重ねて申し上げて、質問を終わります。