国会会議録

国会会議録
「もんじゅ」運転再開とんでもない 田村智子氏批判 保安規定違反 次々 参院文科委

日本共産党の田村智子議員は30日の参院文教科学委員会で、日本原子力研究開発機構の研究を高速増殖炉「もんじゅ」に特化する放射線医学総合研究所法改定案について質問し、ずさんな管理運営が続くなかでも「もんじゅ」の運転再開を狙う政府を批判しました。

 「もんじゅ」は1995年12月にナトリウム漏れ火災が発生。2010年5月に試験運転を再開したものの事故で停止。大量の機器の点検漏れ発覚などで、13年5月に無期限の運転禁止命令を受けています。

 田村氏は「さらに重大なのは運転禁止命令後にも、次々と保安規定違反が指摘されていることだ」と追及。文科省の田中正朗研究開発局長は、13、14年の2年間に「もんじゅ」の保安規定違反は12件にのぼると答えました。

 田村氏は、保安規定違反を指摘されても「これまで運転中に故障が生じた履歴がない」ことを理由に何も対応してこなかった実態を示し、「これでも運転再開をめざすのか」と批判しました。下村博文文科相は「原子力開発機構は直面する問題を一つ一つ解決し、運転再開をめざしていく必要がある」と運転再開にしがみつく姿勢を示しました。

 田村氏は、高速増殖炉研究の第一線にいた国々が研究から撤退し、原子力機構の職員も意欲を失っている実態を示し、「福島第1原発事故収束や廃炉技術対策などの研究にこそ力を入れるべきだ」と主張しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     2015年7月1日(水) しんぶん赤旗

  【 2015年6月30日(火) 文教科学委員会 議事録 】

○田村智子君      それでは、法案の質疑に入ります。

 本法案は、原子力開発研究機構の量子ビームと核融合の研究機能を放射線医学総合研究所に移すものです。衆議院の審議では、放医研の研究との統合というのは学術的な要求ではないということを確認をしています。

 必要とされたのは原子力機構の改革です。高速増殖原型炉「もんじゅ」での重大事故、虚偽報告、ずさんな管理運営など、深刻な実態を受けての改革。しかし、その内容は、原子力機構の機能を「もんじゅ」の研究、核分裂による原子力発電の研究に特化するというもので、つまりは「もんじゅ」の運転再開に集中的に取り組む、そのための改革と、こうみなされても仕方ないと思うんですが、いかがですか、大臣。

○国務大臣(下村博文君) 先ほどから答弁をさせていただいておりますが、量子科学技術に関しては、近年、加速器の高エネルギー化、レーザーの高出力化や、ナノテクノロジーの進展等によりまして、医療、エレクトロニクス、素材などの広範な産業への利用も含めて、イノベーションを支える基盤としての重要性が急速に高まっているという背景がございます。放射線医学総合研究所は、重粒子線によるがん治療等に取り組み、世界トップの治療実績を積み上げてきたところでありますが、放射線医学の分野では、近年、量子ビームの人体への作用に関するメカニズムの解明の推進等、新たな量子科学技術に関する治験の追求が不可欠となってきております。

 日本原子力研究開発機構改革については、私が本部長を務める日本原子力研究開発機構改革本部におきまして、平成二十五年八月に改革の基本的方向を取りまとめ、その中で、量子ビーム研究及び核融合研究開発に係る業務については切離しを含め検討すべきとの方向性を示しております。これらの観点から、文科省において検討を進め、量子ビーム研究及び核融合研究開発に係る業務を放医研に集約することで、放医研が行う研究が加速されるとともに、量子科学技術に係る研究開発の推進に資することが期待されることから、原子力機構改革を一つの契機として法改正を行うこととしたものであります。

○田村智子君 これは、第一義的には原子力機構の改革、そのための法改正も必要だということを、文部科学省自身も報告の中でまとめてきたわけです。

 改めて、それじゃ、「もんじゅ」の実態を見てみたいんです。一九九五年十二月、運転開始から約三か月で冷却剤のナトリウムが配管から漏えいし、火災発生。この事故報告の過程で、調査点検記録や調査ビデオの捏造が発覚。そして、運営主体であった動燃の解体、原子力研究開発機構の発足、これを経て、ようやく試験運転が再開されました。ところが、その僅か四か月後、二〇一〇年八月、原子炉容器内に三トンを超える装置が落下し、また運転は停止。二〇一二年十一月、保安規定に基づく機器の点検漏れが九千六百七十九か所に上ることを原子力規制委員会が公表。二〇一三年二月から三月にかけて行われた保安検査でも、重要機器の点検漏れ、虚偽報告が発覚をし、この年の五月、安全管理体制が再構築されるまで、無期限の運転禁止命令が出されて、今日に至っています。ここまでの経緯でも、極めて毒性の強いプルトニウムを扱っての原子炉の運転、これを担う資格が、これはもう原子力機構にはないと言わざるを得ないわけです。

 しかし、更に重大なのは、運転禁止命令を受けた後、集中改革とされた期間にも、次々と保安規定違反が指摘をされていることです。昨年度と一昨年度の検査で保安規定違反、この指摘は何件になるのか、お答えください。

○政府参考人(田中正朗君) お答え申し上げます。

 「もんじゅ」は、保安措置命令が発出されました平成二十五年五月末以降の原子力規制委員会によります保安検査におきまして、保安規定違反と判定された事項は八件、それから、これに加えまして、保安規定ではありますけれども、その影響が軽微なものということで、原子力委員会が監視に判定した事項が四件でございます。

○田村智子君 これ、合わせて十二件が不適切あるいは保安規定違反というふうに言われたと。

 資料でもお配りいたしました。この中で、平成二十六年度第二期の保安検査、二〇一四年九月に実施されたものですが、この保安規定違反とはどういうものか。ナトリウムの漏えい事故を受けて監視用カメラ百八十台が設置をされましたが、そのうち三割が故障していた。このカメラは生産中止、修理対応の終了、後継機もないということを二〇一二年に業者から通告をされながら、機構は対応計画も策定せず、点検頻度を延期し、二〇一三年度から故障が相次いでもそのままにしてきた。ナトリウム漏えい事故が起きたときに、このカメラの故障が与える影響も評価をしていなかったということです。

 平成二十六年度第四期の保安検査、今年の三月に実施されたものです。これは、一万点近い点検漏れへの対応について、機構が二〇一四年十二月に提出した報告書が適切かどうかを検査したものです。

 報告書では、重要度の高い機器である補機冷却水系配管について、外観状態に異常等なしと記載されていたが、腐食などの進行状況について点検計画が適切に定められていない、また、配管に保温材が巻かれているなど、多数の視認不可部、目で見て分からない、そういう部分があるのにその健全性評価が行われていないなどが確認されました。さらには、点検漏れを指摘された機器について、これまでの運転中に故障が生じた履歴がないとか、単純な構造であり、点検時期を超過しての使用に問題がないなどと評価している事例も複数確認されたと。こういうのが保安規定違反とされたわけです。

 保安規定違反を承知の上で放置をする、保安規定違反への対応をしたと言いながら実際にはきちんと対応がされていない、これほどモラルの欠如、危機感の欠如は他の原発ではあり得ないわけです。原子力規制委員会もあきれ返る事態が今年に入っても続いているということなんですね。これでは、「もんじゅ」の再運転を目指すのかと、そんな資格はないと言わざるを得ないと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 平成二十五年五月に原子力規制委員会より「もんじゅ」に対する保安措置命令が発出された後、日本原子力研究開発機構は、文部科学省が取りまとめた日本原子力研究開発機構改革の基本的方向に基づいて、平成二十五年十月から今年三月まで「もんじゅ」集中改革に取り組んできたところであります。その結果、保守管理体制及び品質保証体制の再構築を実施し、昨年末には原子力規制委員会に同命令に対する報告書を提出したところであります。

 この集中改革におきまして、「もんじゅ」を理事長直轄で運転及び保守に専念する組織に再編するほか、運転管理に精通した電力会社の技術者を受け入れて、民間との協力、強化といった体制強化策を実施してまいりました。また、理事長自らが週一回のペースで現地の福井県に出向き、安全文化の醸成などの改革を直接指導したというふうに承知をしております。

 しかしながら、御指摘ありましたが、「もんじゅ」について保安検査において原子力規制委員会により繰り返し指摘を受け、いまだ保安措置命令の解除に至っていない状況については極めて遺憾であります。

 今年四月からは民間から児玉敏雄新理事長を迎え、原子力機構改革を踏まえた新たな中長期目標の下、業務に取り組んでおりまして、集中改革の成果の定着、さらに改善という新たな改革の段階に進んでいるところであります。

 「もんじゅ」は、エネルギー基本計画におきまして、廃棄物の減容、有害度の低減等のための国際的な研究拠点として位置付けられております。原子力機構は、「もんじゅ」に対する保安措置命令が可能な限り早期に解除されなければならないという危機感を持って、直面する問題について一つ一つ解決をし、運転再開を目指していく必要があると考えます。

 文科省としても、前面に立って厳しく指導してまいりたいと考えております。

○田村智子君 今の答弁ですと、集中改革期間、今年の三月まで、これ順調にやってきた。順調にやってきて保安規定違反なんですよ。本当にもう資格が問われるというふうに思います。

 原子力機構への厳しい評価は原子力規制委員会だけではありません。二〇一一年十一月、会計検査院は、高速増殖原型炉「もんじゅ」の研究開発等について検査報告書をまとめています。その概要を端的に説明お願いいたします。

○説明員(斎藤信一郎君) お答えを申し上げます。

 御質問いただきました指摘の概要につきましては、まず一点目といたしまして、日本原子力研究開発機構が二十二年度までに「もんじゅ」の研究開発に要した経費として公表していた総事業費約九千二百六十五億円には、人件費、固定資産税、事故後の改修工事費等や、関連施設であるリサイクル機器試験施設、これは茨城県東海村に所在するいわゆるRETFという施設ですが、この建設費等が含まれておらず、これらを含めると総支出額は少なくとも約一兆八百十億円となって、機構が公表していた総事業費を約一千五百四十五億円上回りまして、全体規模が把握できるように公表されていない事態が見受けられました。

 二点目といたしまして、RETFの建設費等が約八百三十億円と多額に上っているにもかかわらず、使用可能な建物の部分が使用されることなく存置されている事態が見受けられました。

 したがって、経費の公表については、「もんじゅ」及びその関連施設の研究開発に要した経費の全体規模が把握できるように公表すべき範囲や内容を見直し適時適切に公表すること、RETFについては建物部分の暫定的な使用方法を幅広く検討するなどして、当面の利活用方法について早期に結論が得られるよう関係機関との協議等を行うこととする意見を表示したものでございます。

○田村智子君 ありがとうございました。

 これは費用を過少に示していたということですよ。それから、「もんじゅ」の関連研究施設、これについて掛かった費用が全く公表されていなかったという指摘なんですね。

 それでは伺います。この会計検査院の指摘への対応はどうなっていますか。研究開発の経費の総支出額を直近で示してほしいのと、この関連施設であるRETFどうするのか、お答えください。

○副大臣(藤井基之君) お答えいたします。

 先ほど御説明ありました平成二十三年度の会計検査院からの意見表示を受けまして、「もんじゅ」の研究開発費につきましては、全体規模が把握できるように公表を行うこととしております。これを受けまして、日本原子力研究開発機構では、「もんじゅ」の平成二十五年度までの総事業費の決算額については九千六百六十五億円、さらに、人件費五百三億円、固定資産税四百億円、原型炉建設準備費三十八億円である旨の公表を行っております。

 リサイクル機器試験施設、RETFでございますが、これは、「もんじゅ」等の高速炉の使用済燃料の再処理試験を行うため平成七年に建築が開始されたものでございますが、事業計画の見直しに伴いまして平成十二年に建設が中断されております。

 平成二十三年、会計検査院からの意見表示を受けまして、原子力機構では昨年十月に、日本原子力研究開発機構改革報告書におきまして、当面、ガラス固化体を最終処分場に輸送するための容器に詰める施設として活用を図ることとしまして、具体的検討を進める旨取りまとめられまして、現在、この方針に沿って原子力機構が具体的な検討を進めているものと承知しております。

○田村智子君 このRETFというのは、核燃料サイクルの中核的な技術が高速炉の燃料の再処理なんですね、その研究をやるんですよ。これが確立しないと、核燃料のサイクルというこの輪が完成しない、サイクルにならないわけです。ところが、この研究開発施設であるRETFは、建物を造ったまま十五年間使われず、今御答弁あったとおり、今後も研究施設として使用するという計画は立てられないわけです。一兆円を大きく超える研究開発費をつぎ込みながら、「もんじゅ」の運転実績は僅か三か月。それでも運転再開にしがみつくがゆえに、関連施設にも無駄な経費がかさんでいくと。こんなことをいつまで続けるのかということが問われなければならないと思います。

 さらに、お聞きします。「もんじゅ」の建屋の直下には八本の断層が確認をされています。今年三月に行われた専門家チームの会合では、活断層ではないと機構は説明をいたしましたが、これに疑問が呈され、敷地の西約五百メートルにある活断層が与える影響を含め更に検討することとなりました。

 私は、福島第一原発の後、二〇一一年五月二十三日、参議院行政監視委員会で、我が国の地震研究の第一人者である石橋克彦氏がこの若狭湾の問題、非常に警告を発したんですよ。あの敦賀半島には多数の活断層が入り組んでいると、「もんじゅ」の直下にもあるんだと、大津波をかぶるおそれのあるような場所で原発を運転するということ自体、正気の沙汰ではない、たかが発電所なわけです、例えば、遭難した漁船を救うための巡視船なんというのはどんな荒波でも航海しなきゃならないでしょうけれども、発電するために何もこんな危ないものを大津波のあるところで頑張って運転することはないと、こういうふうに真剣に意見表明をされたわけです。

 私は、文部科学大臣として、こうした科学者の科学的な知見からの真剣な検証、これは真摯に受け止めるべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 「もんじゅ」の破砕帯につきましては、東日本大震災で得られた活断層に関する知見を踏まえ、旧原子力安全・保安院が行った調査指示を受けて、日本原子力研究開発機構が平成二十四年十一月より調査を進めてまいりました。その結果、敷地内の破砕帯を活動的と評価する根拠は認められないこと、近くの活断層が活動した際にも敷地内の破砕帯が連動して動くことはない旨の報告書を取りまとめ、平成二十五年四月に原子力規制委員会に対して提出をしております。さらに、原子力規制委員会からの追加調査指示を受けて実施した追加調査の結果におきましても、問題ない旨を平成二十六年三月末に原子力規制委員会に報告をしております。

 私自身も、現地、実際に視察をいたしました。「もんじゅ」の中だけでなく、この破砕帯のありようについて自分の目でも確認をしてきたところでございます。

 「もんじゅ」の破砕帯につきましては、現在、原子力規制委員会の有識者による議論が行われ、今後、最終的な結論が出されるものと承知をしております。文科省としては、「もんじゅ」の安全確保に万全を期して、運転再開を目指してまいりたいと考えております。

○田村智子君 石橋克彦氏は、阪神・淡路大震災の後にも、この国会の予算委員会に呼ばれて意見陳述しているんですよ、こんな大地震に原発の備えができていないと。だから、この二〇一一年の意見陳述のときにも、一体私の国会でのこの発言は何だったのかというふうに言われているわけですよ。本当に、科学者の知見というのをこれほど文部科学省が軽んずる、あってはならないことだというふうに思います。

 この高速増殖炉、アメリカでは核不拡散の法律を踏まえて、技術的に、経済的にも不要であると撤退をした。フランスでも、事故が相次ぎ、経済的にも困難だと撤退、ドイツは、福島第一原発の事故後、原発そのものからの撤退を政治決断し、再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいると。これまで第一線にいた国々がこの研究に見切りを付けていると。

 私は、原子力機構は、職員の皆さんの意識調査を見ても、「もんじゅ」のプロジェクトを進める自信があるかと問われて、余り思わない、思わないという回答がもう多数になっちゃっているんですよ。こんな状態でこのまま改革なんてとんでもないと、むしろこれまでの原発事故を踏まえて、廃炉の技術や使用済核燃料を本当にどうしていくのかと、こういうことへの研究に特化させることこそ必要だと、このことを申し上げて、質問を終わります。

 

                                                                                                                 

 

 


 |