日本共産党の田村智子議員は25日の参院決算委員会で、安倍政権が病床削減をさらに進めようとしている問題を取り上げ、待機者の急増など地域医療の深刻な実態を受け止めて対応するよう求めました。
政府は都道府県に「医療費適正化計画」の策定を義務づけ、療養病床などの削減を進めた結果、療養病床に待機者が発生しています。にもかかわらず、安倍政権はさらに病床削減を進めようとしています。
経済財政諮問会議の民間議員が医療介護の費用削減を提案しています。療養病床の削減、規制緩和によって保険外の医療介護サービス約3兆9520億円の市場創出、1兆2430億円の医療費削減効果としています。
田村氏は、この削減効果について、サービスを受けた患者全員の病状が悪化しないという非現実的な数字と指摘しました。
田村氏はまた、要介護者の歯科治療や口腔(こうくう)ケアの必要性が増すなか、実際に歯科を受診しているのは3割程度にすぎない実態を紹介。医科・歯科連携体制の強化や在宅歯科診療のさらなる普及を求めました。
塩崎恭久厚労相は「口腔機能の維持は重要であり、そのために医科・歯科連携を強化することは大事だ」と答えました。
(2015年5月28日(木)、「しんぶん赤旗」)
【 2015年5月25日 参院決算委員会 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今日は、医療の問題についてお聞きします。
後期高齢者医療制度を導入した二〇〇六年の医療法改定によって、医療費適正化計画の策定が都道府県に義務付けられました。二〇〇八年度から始められた第一期計画、二〇一二年度で終了して、現在は第二期計画が進行中です。この第一期計画では、平均在院日数や療養病床の削減などを数値目標で掲げ、これにより医療費の伸びが九千億円抑制されるという見通しを示していました。実際の達成状況はどうなったのか、厚労省、お願いします。
○政府参考人(唐澤剛君) お答え申し上げます。
御指摘のように、第一期の医療費適正化計画、平成二十から二十四年度でございますが、この適正化計画では、各都道府県ごとに三つの目標を定めていただいております。一つは特定健診、保健指導の実施率でございます。二つ目は平均在院日数の短縮でございます。三つ目は計画期間における医療費の見通しでございます。
そして、それぞれの目標と実績でございますけれども、まず第一に特定健診の実施率、これは七〇%以上ということを目標にしておりましたけれども、なかなか被扶養者の方などの受診を進めることが難しい面もございまして、平成二十四年度の実績は四六・二%という状況になっております。
それから、保健師さんによる特定保健指導でございますが、こちらは四五%以上を目標としておりましたけれども、平成二十四年度の実績は一六・四%にとどまっております。改善はされてきておりますが、更に努力が必要でございます。
三つ目の平均在院日数でございますけれども、こちらは二十年度当初が三十一日台でございましたけれども、目標は二十九・八日というものを最終的な二十四年度の目標にしておりましたが、これは二十九・七日ということで、ほぼ同じような水準でございます。これは、DPCの進展などによりまして急性期の日数が縮まったからであると考えております。
さらに、医療費でございますけれども、こちらは計画策定時に見込みました平成二十四年度の見通しが三十八・六兆円でございましたけれども、二十四年度の実績は三十八・四兆円ということで、〇・二兆円低いという結果になっているところでございます。これにつきましては、平均在院日数の短縮が全てその影響だというようなことまではとても申せませんけれども、一定の効果があったのではないかというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 予防に関わるようなのはなかなか目標を達成していないけれども、平均在院日数は目標を超えたわけです。そして、医療費の抑制で見てみますと、二〇一二年度一兆一千億円の抑制となっていて、この年度の総医療費の約二・五%に相当するほどの額、目標超過達成をしたわけです。
一方で、高齢者の人口は増加をしています。当然、喀たん吸引や胃瘻など医療の必要度が高い患者さんも増加している。また、核家族化などによる在宅での受入れ能力、これは低下傾向が続いています。にもかかわらず、療養病床が削減され、平均在院日数も減らされていくと。これで行き場をなくした患者さんが続出しているのではないかということが考えられるわけです。
例えば、島根県出雲市、県立中央病院連携室というところに寄せられた相談は、二〇一二年度一万二千二十三件と、三年前の二倍にも上りました。出雲市内五か所の介護療養病床、これ、入院を必要としても数か月間ベッドが空くのを待たなければならないという事態。やむなく緊急避難的に、急性期が終わった後、市内の一般病院に短期入院を繰り返してしのぐ、それでも間に合わなくて県立中央に待機入院という患者さんが常時四十人から五十人にも上るという状況だと聞いています。
私、この決算委員会、四月十三日の日に、東京北区のシニアマンション、実態は制度外ホーム、ここで起きた高齢者虐待の問題を取り上げました。この施設というのは、病院の退院後に、寝たきり等の症状があるにもかかわらず介護施設などの受入先がなく御家庭で困難な生活を送られている高齢者等が増えている、それに対応するシニアマンションだと宣伝をしていたわけです。
医療費適正化だといって療養病床の削減を行ってきた、そして療養病床への待機者を急増させた、こういうことが不適切な制度外ホームを激増させた要因となっているのではないか、これは厚労大臣に認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど局長から答弁を申し上げたように、平均在院日数と今の先生の御指摘の療養病床の話は深く関係するわけでございますが、御指摘の平均在院日数の短縮というのは主に急性期の病床において進んでいるというふうに思っております。
これは、患者の方々の状態に応じた適切な医療を提供するために医療機能の分化とか連携というものを進めてきた結果、達成ができたのではないかというふうに考えておりまして、したがって、平均在院日数の短縮の結果、行き場をなくした高齢者が増えているという御指摘は当たらないのではないかというふうに思っております。
北区の有料老人ホームの問題、これ自体は問題含みであるわけでありますけれども、高齢者虐待に該当する拘束が行われていたものであって、平均在院日数の短縮とは少し趣の違うお話のところも多々ございまして、この事案については、老人福祉法とか介護保険法などの関係法令の規定に基づいて、東京都、そして北区において適切に対応されているんではないかと思います。
今後とも、病気や重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるように、医療、介護、予防、そして住まい、生活支援、こういったものが一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築に努めてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 第一期計画の中には療養病床の削減ということも含まれていたわけですね。これ、後でもまたお聞きしますけれども、そういうものが行き場をなくす患者さん、高齢者を増やしてしまった。これは事実だと思います、実態だと思います。
今後も受入れ体制をというふうに言いましたけれども、実際は地域での受入れ体制つくられないままに、まず療養病床削減ありき、これで医療費の適正化というのを進めてきたことが非常に重大だったというように思うんです。このことを、今の御答弁でも深刻に受け止めているとはとても思えないにもかかわらず、今また、回復期、慢性期の病床の更なる削減、これが狙われています。これは厚労省だけではありません。
経済財政諮問会議、ここで、五月十九日、民間議員の皆さんが、医療、介護の改革についてインセンティブ改革、目標達成を刺激する改革というのを提案をされているんです。中身を見ますと、診療報酬で誘導して病床再編を進めるとか、受診回数で保険料を傾斜設定するなど、とんでもない改革の提案というのが幾つも並んでいるわけです。ところが、安倍総理は、インセンティブを重視した改革を進めたいと、こういう発言もされている。驚きます。
この財政諮問会議の中で民間議員が提案したものの中には、医療・介護サービスの産業化の促進というのもあります。この中で、予防・重症化防止事業の市場創出と医療費削減効果の試算というのが示されているんです。いろんな企業が中に入ってきていろんなサービス提供する、そうすると、市場創出は三兆九千五百二十億円に及ぶと、医療費の削減効果は一兆二千四百三十億円だというふうに書かれているんです。これ、どういう数字かなと思って見てみたら、特に医療費削減効果、これ経産省の調査を根拠としたものなんですね。
そこで、経産省にお聞きします。
一兆二千四百三十億円の医療費削減効果があるというこの数字、これは、保険外の医療・介護サービスを糖尿病だとか様々な対象疾患の患者さんが利用すると、これを利用した方は全員、病状は悪化しないんだという想定での医療費の単純の積み上げではないんですか。
○政府参考人(富田健介君) お答え申し上げます。
議員御指摘をいただきました調査でございますが、この調査は、平成二十四年度に私ども経済産業省といたしまして、医療・介護周辺サービス分野の政策の参考とするために民間研究機関に委託事業として実施をしたものでございます。御指摘いただきましたとおり、糖尿病を始め四つの疾患に関しまして、医療・介護サービスが最大限効果を発揮するものと仮定をしたときの市場創出効果と医療費の削減効果を算定したものでございます。
具体的に申しますと、糖尿病の場合、重症化が進みますと、例えば透析を受けておられる患者さん、年間お一人当たり五百万円ぐらいの医療費が掛かるわけでございますが、こういったものを健康・医療サービスで予防をすると、予防するサービスが功を奏したと仮定をいたしまして、その際の医療費の削減効果を算定したものでございます。
そういった意味からいたしますと、想定し得る最大限の医療費の削減効果を試算したものというふうに理解をいたしております。
○田村智子君 最大限なんですよ。糖尿病の方が民間のサービスを利用して運動しました、栄養指導を受けました、そうしたら一人も重症化しないという数字だけなんですよ。あり得るわけないじゃないですか。こんなあり得ない数字まで示して規制緩和で医療・介護サービスの産業化を進めようとしていると。しかも、この試算、誤嚥性肺炎の予防、こういうものについては、口腔ケアについても民間サービスを利用したらという仮定になっているんですよ。これ、口腔ケアなんというのは本来保険の中で見るべきものなんですよね。
こういう資料を見てみると、これでは、経済成長至上主義のアベノミクスのため、甘利大臣にお聞きします、民間企業のビジネスチャンスに資するため医療保険の給付範囲も狭めようとしている、こういう議論が経済財政諮問会議の中で行われているんじゃないかと言われても仕方ないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(甘利明君) 御指摘の民間研究機関による試算につきましては、有識者議員より、疾病予防等の分野に多様な民間事業者が参入をして新しいサービスを創出すること等が重要であるとの御提言に関連をして、期待される効果の一例として御紹介いただいたものと承知をいたしております。
おっしゃるとおり、全ての患者にその効果があればこういうことになるということではじいている面もあろうかと思います。全てがそうなるわけではないというのも御指摘のとおりだというふうに思っておりますが。民間の力を活用した社会保障関連分野の産業化や、国民自身の取組による疾病予防、先ほどインセンティブというのがありました。
お年寄りの患者さんの中には、病院を幾つも回って同じような薬をたくさんいただいている方もいらっしゃると。全部薬飲むと病気になるよというようなことも指摘をされているわけですから、そこはきちんと整合性を取っていくと。そういう行動に対してインセンティブが働くということは、患者にとってもいいことであるし、医療費の削減にもつながっていくということであります。
経済のための医療費の削減ではございませんで、先回りして重症化することを予防する、そこに民間のいろんな患者に対する指導が言わば医療産業として入っていく余地はないかと。そういうことによって重篤化することを防ぐということと同時に、医療費は削減をされるし、健康づくりに先回りしてできると。いろんな効果があるということを多方面から検証しているわけであります。
社会保障費がどんどん増えていっている。財政の健全化にかなり厳しい状況に日本の財政は陥っている。支出各方面、聖域なき検証をしていかなきゃならない。そのときに本来業務を失わないでどうやって財政の健全化を図れるかということで、産業化という知恵も出しているところだというふうに思っております。
○田村智子君 民間議員の提案の中には保険収載の範囲の見直しなんということも入っているわけで、これはやっぱり、経済という見方からだけの接近でこんな医療の問題というのを議論していくということは非常に重大だというふうに言わなければなりません。
もう一点お聞きします。
この経済諮問会議で、民間議員が病床機能の再編というのを求めています。これは、今厚生労働省が進めようとしている病床再編をきちんと進めてくださいよという趣旨だと思うんですが、いかがですか。内閣府。
○政府参考人(岩渕豊君) お答え申し上げます。
経済財政諮問会議におきましては、有識者議員より、データ分析により病床数等の地域差を見える化した上で、地域差の解消や病床再編を進めるべきとの御提言をいただいております。これは、厚生労働省が現在進めている医療提供体制改革と同じ方向性の議論であるものと認識をしているところでございます。
○田村智子君 今や、厚生労働省、反発なんという報道も一部あるんですけど、とんでもないんですよ。経済財政諮問会議と一体とも言えるような改革に突き進もうとしている。実際、厚生労働大臣も、報道によりますと、私の考え方は民間議員の皆さんとそう変わるものではないとインセンティブ改革について述べられている。驚きました。
更にちょっとお聞きしたいんですね。
冒頭で指摘した第一期の医療費適正化、この都道府県の計画で療養病床の削減の問題を今言いましたけれども、この療養病床の削減の目標というのは、国の削減目標には達しないものが多く見られたんです。東京都などを見ると、二〇〇八年度よりもベッド数がむしろ増えるという見込みを示したところさえあった。これは、第一期計画のときには、国が示した目標は参酌基準で、都道府県は参考にするという基準だったからなんですね。
しかし、昨年の医療法改定による病床機能の再編、この病床削減目標は、国が作る基準というのは従うべき基準というふうにされて、病床数の目標について従うべき基準というふうに変えられていった。これ、非常に強力に病床削減を進めるということのためではないかと思うんですが、厚労省、いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) この地域医療構想は、今御指摘ございましたけれども、今後高齢化が進展をしてまいりますので、地域の中で患者さんがその状態に応じた適切な医療を受けられるように、将来の患者の医療需要とそれに対応する必要病床数を推計する、これは急性期から慢性期までございますけれども、そういう病床の機能分化と連携を進めるものでございます。
医療費適正化計画では、このような地域医療構想で定められる今後の患者のニーズというものを踏まえたあるべき医療提供体制を踏まえるということで、これは、現在の病床というものは、言わば一般病床ということで急性期に偏っておりますので、それを適正に分化をしていただいて、そして分化をしただけではなくて連携をしていただく、さらに地域包括ケアということで医療と介護のつながりをつくっていただくということで、この望ましい体制を都道府県ごとに御検討いただくということをお願いをしております。
それで、医療費適正化計画の中でこの目標を定めるということでございますけれども、これは、そういう望ましい医療提供体制あるいは医療や介護のつながりというものを踏まえてお考えいただくということでございまして、機械的に医療費の削減を進めるものではございません。
この考え方に即しまして、都道府県がその目標を定める際の算定方法を盛り込んだ適正化基本方針を定めるということにしておるわけでございますけれども、これにつきましては、現在、社会保障制度改革推進本部の下に設置されております専門調査会で御検討をいただいているところでございます。
○田村智子君 望ましい適切な体制の構築と言いますけれども、医療計画で慢性期の病床の削減、これ厚労省も数値目標化して示して、この目標に従った地域ビジョンを都道府県に持たせるわけですよ。
だから、今年の二月十二日、全国知事会がこのやり方について意見書を国に提出しているんです。地域医療構想策定ガイドラインに対する意見書。この中でどう言われているか。急激な見直しにより現在の医療提供体制が崩壊するおそれもあると。特に、慢性期の医療需要については、二〇二五年の医療需要の見込みが現状から極端に減少することとなる都道府県も想定され、地域医療構想の実現に当たり極めて困難になるところが生じると、こう指摘しているんです。仮に病床を削減しても、円滑に在宅や介護への移行や活用などが進むような施策を講じるとともに、その全体像を分かりやすく示し、地域医療構想の策定により入院患者が追い出されるなどネガティブなイメージを与えないよう努めることと、こういう要望まで出すほど相当な危機感が示されたわけです。
大臣にお聞きします。医療費抑制のために病床を減らせと、こういう計画では、知事会の指摘のように、医療提供体制への危機、これもっと深刻になると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今進めております医療改革につきましては、基本は、やはりできる限り地域で暮らしながらいけるというのをベースとしているわけでありますが、この今の地域医療構想は、御指摘のように、一律の病床削減を行うものではないかということではございますけれども、そんなことはないんでございまして、都道府県がデータに基づいて地域ごとの医療需要を推計する、そしてこれを踏まえた将来のあるべき医療供給体制の姿を示すというのが地域医療構想でございまして、先ほど来お話が出ております医療費適正化計画、これは都道府県が策定するわけでありますけれども、これについては、地域医療構想で示された将来の医療提供体制を踏まえるとともに、保険者による予防、健康づくりの推進などによる医療費適正化効果を盛り込むこととしているものであって、医療費を削減するために病床を減らしているというような御指摘は当たらないと考えております。
厚労省としては、やはりこの地域医療構想による病床機能の分化、連携に併せて在宅医療や介護サービスの整備を地域包括ケアシステムを構築する中で推進をするということによって、国民がその状態に応じて必要な医療を確実に受けることが、それも地域で受けることができるように努めていきたいというふうに思っております。
○田村智子君 実態は行き場をなくしている方がいっぱいいるわけで、だから、全国知事会からは、三月十八日にもう一回、今度は意見じゃなく要望書を出されているんですよ。この問題で、拙速を避け、受皿となる医療・介護提供体制の整備など重要な課題への対応を求めると。対応もできていないのに減らすなと言っているわけですよ。
そもそも、病床削減によって在宅や介護保険サービスにどんどん移行させていこうというふうに言っている。ところが、同じ昨年の法改正では、介護保険施設の入所者については要件を厳しくすると、介護給付の抑制策も盛り込んだ。これ、どっちも行き場を失うわけですよ、医療でも介護でも。これでは社会保障の改革の方向、決定的に間違っていると、このことは指摘しておきたいと思います。
今日は、それじゃ、どうしたら医療費って、例えば平均在院日数とか減らすというのが効果的に現れるのか、患者さんの権利に沿って現れるのか。私、現場ではいろんな工夫がされているというふうに思うんです。例えば、患者さんへのケアの充実や工夫で結果として入院日数が減少すると、こうした実践が注目されています。手術前後の入院の患者さん、あるいは化学療法を受けている入院の患者さんに口腔ケアを継続すると、平均在院日数が減少する、また術後の肺炎発症も減少する。これ、大きな効果があるんだとして注目されています。
お配りしたのは、一昨年、中医協専門委員会に出された資料です。いずれの診療科においても、在院日数の削減効果、口腔ケアを行えば削減が認められると、これ統計学的に有意であると認められるわけです。これは、入院患者さんだけでなくて在宅療養の患者さんについても言えると思います。低栄養とか誤嚥性肺炎の予防、あるいは食べる楽しみ、話す楽しみを得ることによる生活の質の改善、かむことや飲み込むことのリハビリテーション、こういう歯科保健医療の役割というのはとても大きいです。ところが、要介護者の九割が歯科治療や口腔ケアの必要性があるのに、実際にはその三分の一程度しか歯科診療を受診していないという統計もあります。
この入院時の医科歯科連携体制の構築、あるいは在宅歯科診療の更なる普及、これについて厚労大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今後の歯科医療につきましては、虫歯とかあるいは歯周病の治療を行うだけではなくて、食べるあるいは話すなどの口腔機能の維持向上の取組とか、あるいは歯を失うリスク増加への対応などが大変重要な課題になっていると思っております。
これらの課題に対応するためには、今先生御指摘のように、医科と歯科との連携強化や在宅で療養する患者への訪問歯科診療の推進というのがとても大事でございまして、平成二十六年度の診療報酬改定においても対応を図ってきたところでございます。
○田村智子君 確かに、前々回の診療報酬改定で周術期口腔機能管理料というのが創設されました。さらに、大臣御指摘のとおり、前回の改定でも周術期の口腔機能管理について医科歯科連携を評価する点数というのが創設されました。手術や抗がん剤治療以外でも、誤嚥性肺炎その他で口腔ケアによって在院日数の削減などの効果が現れているとお聞きをします。肺炎などで呼吸管理を行っている患者さんの場合、口腔ケアはなかなか難しくて、高度な専門的な処置を必要としているとも聞きます。
しかし、術後は見たんだけれども、周術期は見たんだけれども、そうでない場合というのが診療報酬の対象になっていないわけですね。また、そもそも周術期専門的口腔衛生処置の点数って八十点という大変十分な点数ではなくて、しかも手術の前と後の一回ずつしか点数見ないわけです。これは是非、内科的疾患の入院患者への歯科衛生士による口腔ケア、これも診療報酬で適切な評価を行うべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(唐澤剛君) 御指摘いただきましたように、周術期の専門的口腔衛生処置、これは手術の前後の口腔衛生ということでございますけれども、歯科衛生士さんの専門的なケアというものを評価をしているわけでございます。歯科衛生士さんの評価につきましては、周術期のみではなくて、機械的歯面清掃処置、訪問歯科衛生指導料等の他の指導料等においても評価を推進をしてまいったところでございます。
先生御指摘のように、周術期の専門的口腔衛生処置につきましては、入院患者の在院日数を減少させるというプラスの効果があるというふうに言われておりまして、ただし、算定回数につきましては、手術の前に一回、手術の後に一回ということで、現在は二回にとどまっているというのが現状でございます。
それから、内科的疾患での入院を含めた周術期以外の入院患者の方につきましては、周術期専門的口腔衛生処置は算定できませんけれども、機械的歯面清掃処置等で歯科衛生士さんの口腔ケアの評価を行っているところでございますが、今後とも、特に高齢化が進んで、口腔ケア、非常に重要視されてまいりますので、中央社会保険医療協議会での御議論をいただきまして、引き続き適切な評価に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 効果のあるところは積極的にやるべきですよ。
歯科診療科がない病院でこういう入院患者さんへの口腔ケアというのは、連携する歯科診療所からの訪問診療によって行われます。その際、訪問歯科診療料など訪問診療する際の手間を考慮した評価が行われています。
ところが、病院と歯科診療所が同じ法人だと、この訪問歯科診療料というのが算定できないんです。それよりも低い初再診料の算定になってしまう。そうすると、訪問の手間が評価されないし、訪問歯科衛生指導料も算定できない。これは同一自治体が設置する病院や歯科医療機関の間でも同様の問題が起こるわけです。
同一法人内の病院と歯科診療所、これは入院患者さんへの診療の情報が共有できるなど様々なメリットがあります。同一法人の医療機関、医科歯科連携やらなくていいよと言われているのと同じような、こういう不合理なやり方というのは改めるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) 同一法人の場合の医科歯科連携の問題につきましても、これはもちろん大変重要でございます。
ただ、これについてはいろいろな御議論がございまして、現在は、診療報酬における評価につきましては、ただいま御指摘いただきましたように、同一の法人で行う場合につきましては別法人で連携をする場合よりもやはり情報共有などは容易にできるのではないかということで、訪問歯科診療ではなく初再診料で算定をしていただいておりますけれども、引き続きこうした扱いについてもまた検討させていただきたいと考えております。
○田村智子君 理由になっていないんですよね。同一法人だって、口腔ケアの必要性、その効果というのは明らかなんだから、同一法人の歯科診療から行けるように、行ったときも正しく評価されるようにというのは当然だと思いますので、是非検討してください。
それから、いろんなルールが医科歯科連携を阻んでいるんですよ。例えば、二〇一四年の改定のときに、不適切事例というのを理由にして、同じ日に同一建物で複数の患者さんの診療を行った場合、これ非常に低い点数しか見ないわけです。そうすると、御夫婦で住んでいてお互いに歯科診療が必要だけれどもなかなか行くのが大変だと。手間も考えて同じ日に御夫婦を診ようとすると非常に低い点数になっちゃう、一人分にも満たなくなっちゃう。これについても見直し必要だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) 同一建物の在宅訪問診療でも、医科も同様の問題がございますけれども、これは御指摘のように、不適切事例の報道が続きまして、前回の診療報酬改定におきまして今日のような形になっているわけでございますが、これについてはきちんと検証をする必要があるということで私ども検証調査を実施しております。
また、次回の診療報酬改定の中でも、こうした点についてもいろいろ御指摘をいただいておりますので、きちんと議論を行って適切な対応をしてまいりたいと考えております。
○田村智子君 是非、現場が期待する、効果もあることをやるべきで、現場から問題だと言われているような改革の押し付けというのは是非ともやめていただきたい、このことを申し上げて、終わります。