日本共産党の田村智子議員は13日の参院東日本大震災復興特別委員会で、福島第1原発事故収束作業の労災事故について政府の対策強化を求めました。
同原発では約7000人が働き、今年1月に雨水受けタンクの点検作業中に労働者が落下し死亡するなど事故が相次ぎ、2014年度の労災は前年度から倍加しています。
田村氏は、無理な作業工程が労災の原因と東電も認めていることを指摘し、「スケジュールや人員体制のチェックを原子力規制庁が行うべきだ」と要求。田中俊一規制委員長は「労働環境の整備は重要」としつつ、規制庁による評価実施には言及しませんでした。
田村氏は、ベテラン労働者の不足も要因の一つとして、「労働者が技術や知識も蓄積し、長く働ける支援や対策を国が行うべきだ」と強調。具体策として「危険手当」の完全支給と、悪質な事業所を入れない監督指導の強化をあげました。
田村氏は、宮沢洋一経産相が東電に行った労災対策の要請は法的拘束力はあるのかと質問し、高木陽介経産副大臣は「一般的な行政指導」にすぎないと答弁。田村氏は、「国が前面に」といいながら東電との関係は他の電力会社と同じだと批判し、国の関与を強める法整備を求めました。
(しんぶん赤旗、2015年5月15日(金))
【 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
福島第一原発で、今年一月十九日、雨水受けタンクの点検作業をしていた労働者が、タンクの蓋を開けた際、蓋もろとも約十メートルの高さから落下し死亡するという事故が発生しました。昨年三月にも、倉庫の下の掘削作業で土砂崩壊し、生き埋めとなり死亡事故が発生しています。一Fでの作業で労働災害は二〇一四年度六十四件、資料でお配りしています、前年度の三十二件から二倍増えています。こうした労働災害は、事故収束作業にも影響を与えています。
重大事故、労働者の事故が急増している原因、また事故収束作業への影響など、原子力規制庁は分析や評価を行う予定はありますか。委員長。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 労働安全に係る規則については、所管省庁において必要な対応がされているものと認識しておりますが、原子力規制委員会委員長として、この労働環境の改善については大変大きな関心を持っておりまして、これまでも、東京電力廣瀬社長と面談し、二度ほど作業員の作業環境整備、サイト内の放射線対策等を求めて、作業環境の改善を優先的に改善するように求めてきたところであります。
本年二月に私どもは福島第一のリスク低減目標マップを作成しました。平成二十七年二月版です。ここでも、原子力規制委員会として、この労働環境の改善ということも重要項目としてうたっているところでありまして、これについて引き続き監視を求めていきたいと思います。
○田村智子君 説明を求めましたら、関心はあるけれども分析や評価を行う立場にはないという説明も受けているわけです。
一月二十九日、東電の数土会長は一Fを視察し、相次ぐ労働災害について、国や東電の日程で作業スケジュールが決まり、これに追い付くためにやってきた、今後は無理な工程をつくることはない、事前の準備作業を十分に行い、元請や下請企業とも理解を共有して作業を進めると述べています。
原子力規制庁は、事故収束や廃炉作業の技術的評価を行うというのが役割ですけれども、スケジュールや人員体制を含めた評価をしなければ、その工程が実現可能かどうかということは判断できないのではないのかと私は思います。特に、国や東電の日程による作業スケジュールが問題だったと東電自身が認めたわけです。そうすると、原発を規制する機関が、スケジュールや体制、人員体制含め、事故収束作業をチェックするということが必要だと思いますが、いかがですか。田中委員長。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 先生御指摘のように、スケジュールありきの作業ではいけないということで、労働環境、労働災害が非常に増えているということ、その大きな原因としては、一つは労働環境が悪い、タイベックスーツを二枚着るとか、全面マスクをしなければいけないとか、これから夏場にかかるとそうですけれども、日射病にかかる、そういったことがありますので、まず作業環境を、放射能のレベルを、放射線のレベルを下げるということを強く求めてきました。
さらに、やはりベテラン、今大体一日に七千人から八千人の労働者が入っているということを聞いておりますけれども、この中、十人一組ぐらいで一つのグループをつくって作業をしていますが、そのリーダーとなるべきベテランが、被曝線量が増えてなかなか継続的に作業ができない状況が生まれております。これについても改善を求めております。
ですから、いろんな意味で、働く人も含めて命と安全を守るというのは我々の大きな任務だと思っております。
○田村智子君 ここは、実行力、指導力を持ってできるような仕組みというのを今後是非検討していただきたいというふうに思うんです。
国や東電の日程というふうに數土会長が指摘をしたと。これが無理だった。その最たるものは、汚染水を二十六年度末までに浄化すると廣瀬社長が安倍首相に約束をしたことです。
安倍総理は、二〇一三年、平成二十五年の九月、一Fを視察し、その場で廣瀬社長にしっかり期限を設けて全量処理をしてほしいと汚染水の問題で要請を行いました。廣瀬社長はそれに応えて二十六年度末までに汚染水処理を完了させると約束をしたわけです。その二週間後、安倍総理はオリンピック招致の演説でアンダーコントロールと全世界に発信をしたと。これが現場に強いプレッシャーになったんだと、現場の労働者は指摘をしています。
もちろん、汚染水の問題は早期の解決が求められます。しかし、当時もALPSはトラブル続きで、非常に困難な現状でした。
経産省に確認します。
平成二十六年度末までに完了するというこの東電社長の安倍総理への重大な約束は、東電と経産省がしっかり評価、検討した上でのものなんですか、経産省。
○政府参考人(土井良治君) お答え申し上げます。
平成二十五年九月十九日に、委員御指摘の東京電力の廣瀬社長の方から総理の方に二十六年度中に全ての汚染水の浄化を完了できるよう取り組むという趣旨の御発言があったことは承知しておりますが、この当該浄化目標に関しましては東京電力が自主的に設定したものでございまして、経済産業省といたしましては事前に承知していたものではございません。
○田村智子君 昨日聞きましたら、一緒に行ったエネルギー庁の方はもうびっくりしたと。こういう全く無責任に期限が設定されちゃったんですよ。それで、無理なスケジュールが現場に横行して労働災害の急増につながったと。だからこそ、私は、第三者機関によるしっかりとしたチェックが必要だということを求めたいというふうに思うんです。
次に、厚生労働省にお聞きします。
タンクから落下で死亡したのは元請企業の災害防止責任者。この災害防止責任者というのは、作業に加わることは禁じられています。また、高所作業で義務付けられる安全帯も使用していないことが分かっています。また、倉庫下の土砂崩れですね、この死亡事故は落札した事業者に同様の工事実績はない。掘削作業を行う上で必要な安全措置もとられずに事故が発生をしています。
どちらも通常の工事現場ではあり得ない事故で、そうすると一Fの構内では法令に定める労働安全対策がなおざりになっているということがうかがえます。
福島労働局や富岡労基署が月に一、二回のペースで立入調査を行って努力していることは承知をしています。では、その調査で指導を行った件数をまとめて、あるいはその指導でどういう内容の指導を行ったのかということなどを経産省や規制庁に情報提供を行っているのかどうか、厚労省、お聞きします。
○政府参考人(大西康之君) 委員御指摘のとおり、福島労働局におきましては、平成二十三年五月から二十六年十二月までの間に四十二回、おおむね一か月に一回立入調査を実施いたしました。その結果、二百八十八の事業者について四百三十二件の法違反が認められたものでございますので、必要な是正指導を行ったところでございます。
この立入調査の結果につきましては、平成二十六年の十二月に福島県庁で行われました会議の場におきまして、当時の最新情報でございますが、それを関係省庁、原子力規制庁あるいは資源エネルギー庁の方も御参加された会議の中で福島労働局から説明し、情報提供を行ったところでございます。
○田村智子君 これは、仕組み的にはないわけですよね。
私は、事故が起きて、確かに経産大臣も厚労大臣も呼んで東電に、何というか、再発防止を要請するということをやっているんですけれども、やっぱり労働安全対策を事故収束の重要な柱と位置付けて常日頃の実態把握ということをやっていくべきだと、これも要望しておきたいと思います。
この東電の報告を抜粋した資料、おめくりいただきますと、事故発生の原因、スケジュールの問題と同時に、やっぱりベテランが少ないという問題が指摘されています。
昨年度の災害発生の七割は一Fでの作業経験一年未満の労働者が起こしているものです。東電の会長も、元請の現場監督が人的にも技量的にも不足をし、安全手順に違反する作業があっても見過ごされるずさんな実態だったと、ベテラン労働者の不足が深刻であるということを認めています。
事故収束や廃炉作業というのは、やはり三十年、四十年、それ以上という長期のスパンで行われるものです。一Fというのは、ほかにはないような労働環境で働かなければなりません。となれば、一Fで労働者が技術や知識を蓄積し、長く働けるような様々な支援や対策というのが求められると思います。これはとても東電任せにはできない、国も関与して対応すべきだと思いますが、経産省でしょうか、いかがですか。
○政府参考人(土井良治君) 委員御指摘のとおり、福島第一原発における廃炉・汚染水対策に関しましては、高い放射線環境下における高度な技術を要する作業が多く、作業員の確保のためには専門性の高い人材がモチベーションを維持しながら安全に働ける環境を整備することが重要であるというふうに認識しております。
東京電力の方では、第一原発における労働環境の改善を図るという観点から労働環境に関するアンケート調査を数次にわたり行いまして、その結果を踏まえて、給食センターの設置、大型休憩所の設置、労務費割増し分の増額、中長期の作業員確保に配慮した随意契約の適用といった労働環境の改善に取り組んでいるところでございます。
○田村智子君 それは東電がやっていることで、私がお聞きしているのは、やっぱり国が、長く働けるような労働者の生活環境、労働環境、こういうのを本当に、あるいは育成も含めてですよ、一Fで働くそういう労働者が技量が積めるような育成も含めて、何らか国が対応を取ることが必要じゃないですかとお聞きをしたんです。
○政府参考人(土井良治君) 福島第一の廃炉・汚染水対策を遂行する上で、委員御指摘のとおり、必要な労働者の方々を確保すると、それも計画的に確保するということは極めて重要であろうと思っております。
私どもは、中長期ロードマップに基づきまして廃炉・汚染水対策を進めているところでございますけれども、そのロードマップの中におきまして、今後数年を見通してどのような計画で労働者の方々を確保するかということは、東京電力にも相談しつつ、ロードマップの中に位置付けているところでございます。
経済産業省としましても、福島第一原発の廃炉・汚染水対策が着実に進むように、労働環境の改善に向けて継続的に東電の取組状況を確認するとともに、適切に行われていない場合には更なる必要な対策を東電に求めるといったような対応をしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 国がやるべきということで、具体的に求めたいと思います。
一つは、労働者の待遇改善。危険手当と呼ばれる労務費基準単価の割増し分が現場の労働者に渡っているかということを私たち何度も取り上げてきました。一定の改善があるとは聞いています。
しかし、昨年九月には、危険手当や残業代の未払があるんだといって、東電と下請企業十六社を四人の労働者が提訴しています。二〇一四年十一月、東電が現場労働者に行ったアンケートを見ても、割増し、いわゆる危険手当について説明も受けていないと回答した労働者は六百七十六人に上ります。
除染作業というのは国の直轄事業なので労働者に危険手当分がちゃんと払われるという仕組みがあります。もっと危険で過酷な事故収束作業について、せめて危険手当の完全支給が実現する仕組み、必要だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(土井良治君) 東京電力の方では、平成二十五年十一月に発表しました緊急安全対策の中で、元請各社の協力の下、作業員の方々に賃金改善に取り組み、モチベーションの向上を図ることを目的に、工事費を積算するための労務費割増し分の増額対策を打ち出しております。
これを踏まえまして、元請各社に対しましては、まずこの対策の趣旨を丁寧に説明する、割増し分の労務費分が作業員の方々に確実に行き渡るよう具体的な施策の立案や実行を要請する、その施策が適切に行われていることを適宜確認してきているというふうに聞いております。
政府としましては、作業員の方々が放射線レベル等の異なる様々な作業環境におきまして、賃金や仕事の内容、作業環境などについてしっかり説明を受けて、納得をした上で働いてもらうことが重要だというふうに考えているところでございます。
○田村智子君 危険な作業をしているのは自分たちなのに、何でピンはねされなきゃいけないんだと。これ、労働者の士気に関わる問題なので、今後も私質問していきたいと思います。
事故収束作業に悪質な事業者を入れないという対策も必要です。東電のアンケートでは、作業内容や休憩時間等を指示する人の会社と賃金を払っている会社は同じかという問いに、回答した労働者の二八・三%が違うというふうに回答していて、これ、一年前のアンケートよりも一〇%以上増えています。これ、違法派遣、偽装請負の横行が疑われるアンケート結果なんです。
アンケートの回答、厚労省は東電から受け取っているのでしょうか。事業所名が分かるものは労基署が調査すべきだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(坂口卓君) お答えいたします。
都道府県労働局におきましては、定期的な調査以外につきましても、労働者等からの具体的な情報により、いわゆる偽装請負のおそれがある事案を把握した場合には調査を行いまして、必要な指導を実施しているところでございます。
特に、御質問のこの東電の福島第一原発の中で作業に従事している労働者の方につきましては、いわゆる御質問の偽装請負について相談しやすい環境を整えるということのために、相談先も明記しました労働者向けの分かりやすいリーフレットを作成しまして、労働局やハローワークを通じて配布しているところでございます。
こうした取組を通じまして、私どもとして情報収集をし、しっかり対応してまいりたいということで考えております。
○田村智子君 これ、アンケート、是非東電からも提供を受けるべきだと思うんですよ。それで、もっとやるべきは、やっぱり厚労省自らもつかむことじゃないかというふうに思うわけですね。
いわき市の日本共産党は、多数のポスターやチラシで労働者励まして、相談の電話番号なども直接知らせる努力をしています。そういう中で寄せられる声の中で、アンケートは会社の回収とボックス回収があるが、会社の回収にするようにと指示をされて正直に書けないと、こういう声も寄せられているわけです。やっぱり東電や関連企業や雇用主から独立した機関でなければ、労働者は危険手当のこと含めて問題をなかなか話すことできないと思うんです。
厚労省が直接アンケートに取り組むなど、自ら違法行為などをつかみ一掃する、労働者の権利擁護の仕組みをつくる、こういうことを検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(高階恵美子君) 田村委員には発災当初から労働者の安全衛生確保に大変懸念を示していただき、また改善点などを提案していただいております。改めて感謝を申し上げたいと思います。
そしてまた、本日御提案いただいたアンケートの直接実施ということでございますが、前提としては、今福島労働局におきまして、労働者の皆様からいただいた情報、それに基づきまして立入調査等の指導を進めさせていただいておるということと、それから、先生御承知のとおり、リーフレットの作成あるいは配布、こういったことを通じてなるべく労働者の皆様の正直な声がきちっと聞けるように対応してまいりたいと努めさせていただいているところではございますが、なおまだ十分な状況には至っていないのだという御指摘だと思います。
今後は、東電が実施しておりますアンケート、この結果の詳細な内容についての提供、あるいはそれをどのように活用して次の施策に反映していくか、こういったようなことも併せて真摯に検討し、対応してまいりたいと思います。
○田村智子君 これ、悪質事業者の一掃とか違法行為の一掃に、まさにチームつくるぐらいのことで取り組んでいくということを是非求めたいと思うんです。
現場は、実は使命感とか士気とかやりがいがもうどんどん失われていって、すさんだ労働現場になっていると。待遇への不満や、いきなりの雇い止めが行われて、それへの不満も鬱積して、それが、わざとトラブルを起こして、それで辞めていくということにつながるんじゃないかと、ここまでの危機感が今現場の中では広がっているわけです。
事故収束というのは東電の責任で行うことは当然なんですけれども、それでは、総理も国が前面に立って事故収束に当たると言ってきた、これは一体何を示しているのか、改めて確認したいと思うんです。
今の質問の中でも、作業工程の外部チェックというのはやっていません、起きている問題はこれからいろいろつかんでいく、努力されるということでしたけれども、今のところ直接つかむという仕組みもないわけですよね。今回の死亡事故などを受けて、経産省は東電社長を呼んで再発防止や対策を要請したと言いますけれども、その要請に法的拘束力があるのか。この一Fの事故収束というのは、他の電力会社と経産省との関係とは違う、もっと行政指導が強力に行われるような関係というのがあるのかどうか、お答えください。
○副大臣(高木陽介君) まず、結論から申し上げますと、今御指摘のありました、東電の社長を呼んで、私が経済産業副大臣として、また内閣府副大臣、原子力災害の現地対策本部長という立場もございましたけれども、この徹底した原因究明及び労働安全対策、この実施を図るようにと、このように指示をいたしました。これは一般で言われる行政指導として行われたものでございます。
ただ、先ほどからお話がありましたけれども、私も現地対策本部長として毎月一回、現地におきまして現地調整会議というのを行わさせていただいております。これは、東電の担当者も参りまして、そのほか各省庁が集まっていろいろと確認をしながら、この廃炉・汚染水問題についての進捗状況を確認しながら進めさせていただいています。
正直、昨年、私が九月に就任してから十月、十一月と労災事故が、軽微なものでございますが、幾つかございました。そのときにも確認をしましたが、その後、一月に死亡事故が起きたということで、これはもうとんでもないということで、東電の社長を呼んで、ここで指導をいたしました。
その後、約二週間、この原子力発電所の全作業、全て中断をしまして、安全点検、さらには事例の検討会の実施、また東京電力及び元請企業による現場の確認、原因究明その他行いまして、労働安全対策に関するマネジメント改善策についても新たに講じていくことになっております。
その後、モチベーション下がっているという、先ほどからありましたけれども、実際私も現場に行って感じました。ですから、三月、二回にわたりまして朝四時から現場に行きまして、朝礼にも参加をさせていただいて、現場の作業員と話もさせていただきました。
このように、国としても前面に立って取り組んでいるところでございます。
○田村智子君 済みません、一言だけ。
これね、法的拘束力というのは事実上なくて、他の電力会社と経産省の関係というのは法的には全く同じなんですよ。私、それでいいのかという問題を感じます。ほかにはない事故現場なんです。国が前面と言えるような法整備が必要ならそれもやって、しっかりとした事故収束をやっていただきたい、要望して、終わります。
ありがとうございました。