日本共産党の田村智子議員は12日の参院文教科学委員会で、中学・高校の運動系部活動で生徒も教員も心身の疲労が蓄積している実態をとりあげました。
田村氏は、部活動の指導が教員の多忙化や長時間勤務の要因となっているが、「教員の熱意」に任され、問題が棚上げされてきたと指摘。文科省の久保公人スポーツ・青少年局長は「わが国の教員は諸外国にくらべ課外活動の指導時間が長いという結論も出ており、負担に感じている教員がいることも承知している」と認めました。
田村氏は、文科省の調査(1997年)では週7日部活動指導があると回答した教員は中学で1割近く、高校で1割超にのぼっていること、また、生徒の悩みで中学生の28・9%、高校生の30・5%が「疲れがたまる」と回答したことを紹介。心身の疲労やスポーツによる外傷や身体障害、卒業後の“燃え尽き”などへの対策が必要だと主張しました。
田村氏は、長野県の教育委員会が休養日を設定するよう求め、実態調査をしていることなどを示し、国としても実態調査や関係者や専門家との協議検討をするよう求めました。
(しんぶん赤旗、2015年5月13日(水))
【 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
スポーツ庁設置により、広く国民がスポーツに親しめる環境の整備や競技スポーツの健全な発展に寄与する施策が前進していくことを期待をいたしまして、私もこの法案には賛成です。
このスポーツ庁はスポーツ基本計画の実施に直接の責任を持つことになると思いますが、この基本計画の中で私が違和感を持たざるを得ないのが、二〇二〇年東京オリンピックで金メダルランキング世界三から五位を目指すとしていることなんです。
日本の選手の競技力向上の支援やトップアスリートへの直接の支援、これが重要だということは私もそう思います。しかし、当然のごとく、オリンピックは国のメダル獲得合戦ではないわけで、国が政策目標としてメダル獲得数というのを掲げれば、それは競技団体や選手への押し付け、あるいは勝利至上主義のゆがみというものをスポーツ行政にもたらしかねないのではないのかと危惧をしますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) スポーツに関する施策を関係団体と一体となって総合的かつ計画的に推進していくに当たりまして、施策の評価を改善サイクルに結び付けるためにも客観的な到達目標を設定することは重要であると考えます。このため、文科省が平成二十四年三月に策定したスポーツ基本計画におきまして、国際競争力の向上に向けた人材の養成やスポーツ環境の整備の政策目標として、オリンピック・パラリンピック競技大会それぞれの金メダル獲得ランキングについての目標を掲げたところであります。
これらの目標については、しかし文科省だけで独善的に決めたわけではなく、競技団体の意向や中教審での議論を踏まえて設定したものでありまして、競技団体や選手等の意向も十分反映されたものというふうに認識しております。
○田村智子君 例えば二〇二〇ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト、今年度からの新規施策で十三億七千万円が計上されているんです。これ、二〇二〇年に二十三歳から二十七歳になる若い年代のタレント発掘、育成、強化を掲げたもので、これ自体は競技力向上の支援だと思います。しかし、予算説明の資料を見ますと、二〇二〇年東京大会で金メダル二十五から三十個、総メダル数七十から八十個を獲得するとして、日本人が本来得意とする競技種目で将来メダル獲得の可能性のある競技種目をターゲットにするということまで柱とされています。
競技団体や選手が自主的な目標としてメダルに言及すると、これはあることだと思います。国民が日本選手の活躍を期待をしてメダル獲得を是非と、こう期待するのも当然のことだと私は思います。しかし、国がメダル獲得ができるかどうかということを予算配分の指標とするようなことはスポーツの自主性を阻害しかねないし、スポーツ庁の設置に向けた検討の中では、競技スポーツへの補助金や予算の配分を独立行政法人日本スポーツ振興センターが一元的に行うという案も一度は示されたわけで、これはJOCと加盟競技団体が猛反対して撤回されるという経過もあったというふうに聞いております。
ですから、競技力向上の施策、補助金や予算、これはスポーツ庁と競技団体との関係、これはしっかり取っていかなくてはいけないというふうに思いますので、競技団体の自主性の尊重、これどのように担保されるのか、これも大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) 今後の選手強化につきましては、資金配分も含め、メダル獲得数の向上のためしっかりとした戦略を立てるということは、これは必要だと思います。このため、競技力向上事業におきまして、引き続きスポーツ団体と十分意思疎通を図りつつ、今年度から戦略性を持った選手強化となるようPDCAサイクルを強化することといたしました。
具体的には、文科省においてはJSCやJOC、JPC等の関係者も加わった競技力向上タスクフォースを設置し、戦略性を持った基本的な強化、配分方法の作成と事業後の全体評価等を行い、そしてこの方針に基づきましてJSC、JOC、JPC等が、それぞれ我々とも連携を図りながら、競技団体への選手強化費の配分及び事業評価等を行うということにしております。
文科省としては、今後とも、このようなスポーツ界のそれぞれの関係の方々の意向をきちっと踏まえながら選手強化事業の実施に努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 これは是非、スポーツ庁の設置が、国がメダル獲得ばかりの旗を振るようなことにならないようにということを強く要望しておきたいというふうに思いますし、やっぱりトップアスリートへの支援というのは、午前の議論でもありましたけれども、競技に集中できる環境をいかにつくるかということとか、あるいは引退後の活躍の場や生活保障をどうするかという多面的で長期的な視野での支援策こそが求められているというふうに思います。
このことに関連して、障害者スポーツのトップアスリートへの支援についても一問お聞きします。
二〇一二年、日本パラリンピアンズ協会、PAJがパラリンピック選手に行ったアンケート調査では、ほぼ毎日練習時間が取れると答えた選手は三割強にとどまり、週一日から二日という選手が一割を超えていました。やはり様々な環境整備が障害者スポーツの分野で非常に立ち遅れているということが表れていると思います。
この調査の中で、選手が苦労していることを挙げる欄があるんですが、最も多い、断トツに多いのが、やはり費用が掛かるということなんですね。選手の自己負担、これは海外への遠征なども含めてだと思いますが、平均で年間百四十四万円、六割以上の選手が年間百万円以上の自己負担をしています。選手の費用負担を軽くするという施策は急務だと思います。
また、ナショナルトレーニングセンター、国立スポーツ科学センターをオリンピック強化選手と共同で利用できるようにしてほしいという要望も強く出されています。
スポーツ庁の競技力向上課は、障害者スポーツのトップアスリートへの支援も担当することになりますが、こうした要望に応える予算や施策、大きく拡充が図られるのでしょうか、局長。
○政府参考人(久保公人君) 二〇二〇年パラリンピック東京大会等に向けまして、今後、パラリンピック選手の選手強化活動に対する支援を様々な方策で充実していくことは極めて重要だと思っておりまして、JPCからもいろんなニーズを聞いた上で予算措置に取り組んできているところでございます。
まず、各競技団体で行われる大会遠征や強化合宿の実施、専任コーチの設置などに必要な経費を配分します競技力向上事業につきまして、対前年度比三億円増の十一億円を計上したところでございます。さらに、パラリンピック選手等は、ナショナルトレーニングセンターや国立スポーツ科学センターの利用希望が高いという御指摘いただきました調査結果も踏まえまして、ナショナルトレーニングセンター及びJISSの共同利用に向けて、日本スポーツ振興センター、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会、文部科学省等を構成員といたします連絡協議会を設置しまして、共同利用の仕組みなどについて協議を進めてきております。
このほか、パラリンピック選手の集中的、継続的なトレーニングの実施を支援しますために、本年二月から、トライアル実施として初めて自転車につきまして既存施設をNTC競技別強化拠点として指定いたしまして、平成二十七年度予算ではこれを十三拠点に拡充するための経費を計上しておりまして、トレーニング機器等の環境整備や強化合宿、医科学サポートの実施など、拠点施設を活用した事業を本格的に実施する予定といたしております。
パラリンピック選手が自らの障害と向き合いながらひたむきに挑戦する姿は、人々に大きな夢と感動、勇気を与えるものでございます。今後も、より一層パラリンピック選手への支援に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 一層の予算の拡充を要望したいのと、やはり障害者スポーツもトップアスリートというくくりをしっかりつくることが、私、大切だと思っていて、ナショナルトレーニングセンターも、一時期は別建てで障害者スポーツのトップアスリートだけが使えるような施設という議論もあったとお聞きをしていて、ここに大変障害者のアスリートの皆さんは反発をしたわけですよね。やっぱりそうじゃない、トップアスリートとしての共同利用が必要なんだと。やっぱりここが、是非施策が充実することを重ねて求めておきたいと思います。
次に、私も運動部活の問題、取り上げたいと思います。
学校体育、運動系の部活動、これは学校教育の一環だけれども、文部科学省の外局であるスポーツ庁が所管をすることになると。この点については、私は、今後も議論が必要だということは一言述べておきたいというふうに思うんですね。
この部活動、中学や高校の教員の多忙化や長時間勤務の大きな要因となっています。全日本教職員組合青年部が主に二十代から四十代の教職員を対象に昨年行ったアンケート調査、回答数約一千二百ですけれども、これ見ますと、土日のどちらかが仕事というのが四四・二%、土日共に校務に関わる仕事をしている、二八・八%と。自由記述には、部活動で全く休みがない、部活動の負担が余りに大きい、こういう記述が多数見られました。
部活動顧問の教員の時間外勤務というのが、これが常態化をしていて、休みも取れないという実態が広範に生じている。ところが、これは教員の熱意の問題にされてしまって、解決が事実上棚上げされているのが実態だと思います。
スポーツ庁としてこの問題にどう取り組んでいくのか、局長、お願いします。
○政府参考人(久保公人君) スポーツ庁におきましても、学校体育、運動部活動を担当いたしますために、今御指摘いただいたような問題についても真摯に取り組んでいくつもりでございます。
学校教育の一環として行われる運動部活動は、生徒にとってスポーツに親しむとともに学習意欲の向上、あるいは責任感、連帯感の涵養等に資する重要な場であると思っております。一方で、中学校等の教員を対象とした調査によれば、我が国の教員は諸外国に比べ課外活動の指導時間が長いという結論も出ておりまして、負担に感じている教員がおられるということについても承知しております。
運動部活動の運営につきましては、学習指導要領の中でも、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすることとされております。
これを踏まえまして、文部科学省では、平成二十五年度に運動部活動の指導ガイドラインを定めますとともに、運動部活動指導の工夫・改善支援事業におきまして、外部指導者の活用などによる効果的、計画的な指導体制の構築に向けた取組の支援を行ってきております。
さらに、現在、これらの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方につきまして中央教育審議会に諮問して、運動部活動での指導体制も含めて学校組織全体の総合力を一層高めるための方策について審議いただいているところでございます。
スポーツ庁設置後におきましても文部科学省と連携を行いまして、中央教育審議会の審議や実践的な取組の結果なども踏まえながら、外部指導者の活用など、運動部活動を充実していくための取組を進めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 教員の問題だけではないんですね。休養日のない練習や試合は、肘や肩などの故障、疲れて授業に集中できないなど、生徒の成長発達にも影響を与えているのではないかと。そういう調査をしていないのかというふうにスポーツ・青少年局に聞きましたら、一九九七年、平成九年に、中学校、高校、それぞれ百校を対象とした中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査研究協力者会議の報告、これが最新だということでした。
この調査を見ると、中学校で一割近く、高校では一割を超えて、週七日部活動指導があると、これは教員が回答しています。生徒の悩みでは、疲れがたまる、中学で二八・九%、高校で三二・八%。また、スポーツ障害の経験の有無、中学三年生で二〇・八%、高校三年生で三〇・五%が経験があると回答をしています。この調査の考察としては、第一項目で活動量の問題が挙げられていて、行き過ぎた活動量は、生徒の心身に疲労を蓄積し、スポーツ障害の要因となるのみならず、その学校を卒業すればそのスポーツは行わないというバーンアウト、燃え尽きの一因ともなると考えられると、こういう指摘もされています。
この調査から二十年近くが経過していて、心身の疲労、スポーツ障害など看過できない生徒に起きている問題の解決のため、どのような取組が図られたのでしょうか、簡潔にお願いします。
○政府参考人(久保公人君) 今御指摘の調査を踏まえまして、まず、平成十一年には「みんなでつくる運動部活動」を作成しまして、この中で、例えば質、量ともにバランスが良く、ゆとりのある運動部活動についての検討、あるいはオフシーズンを設けて生徒のスポーツ障害や燃え尽きを予防するなどの工夫を促してきております。さらに、二十五年に取りまとめました運動部活動での指導のガイドラインにおきましても、成長期にある生徒のスポーツ障害や事故防止、また心理面での疲労回復のため、年間を通じた計画的な指導プログラムの設定や休養日の設定について促してきているところでございます。
○田村智子君 促しているというのは確かにいろんな文書の中で表れているんですね。しかし、それで解決というか、改善が進んでいるのかという、フォローアップ的なものはやられていないというのが、私もいただいた資料を見てみて、これは実態だというふうに実感いたしました。
長野県教育委員会、昨年二月、中学生期のスポーツ活動指針というのを示して、平日に一日、土日に一日の休養日を設定する、休日の練習は午前、午後にわたらないようにするなどを示し、各学校の取組の実態も調査しています。沖縄県教育委員会、昨年十月、小中学校に平日の週一日を部活動の休養日とするよう求め、熊本県教育委員会も運動部活動指導の手引きを今年三月に改訂して、一週間の練習日は五日以内を原則とし、土曜日、日曜日のいずれかを休みとするなどを示しています。
これらはやはり事態の深刻さを受けて踏み込んだ判断を教育委員会がされているということの表れだと思います。専門家の方からは、優秀な選手であっても十代で一種目に特化せず、広くスポーツに親しむということが身体のバランスの取れた成長をもたらすんだと、こういう指摘も行われています。
大臣に伺いたいんです。これは強豪校と言われるところも含めて、やっぱり学校での部活動は選手の成長に主眼を置いて、休養日を取るなど適切な運用、これが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 確かに一生懸命やれば全てうまくなるということではなくて、やっぱりスポーツ庁が設置されれば、スポーツ医科学的な観点から、また科学的な観点から、より子供にとってベストな状況はどうなのかということについてはしっかりと検証すべきだと思います。
○田村智子君 私も、この間、スポーツ議員連盟の学習会など参加してきましたけれども、やっぱり川淵三郎氏は、アメリカのオリンピック選手を対象とした調査を見ると、一流選手も早期思春期までには多様なスポーツに取り組んでいる、十代後半から競技を絞り込んでいくんだ、こういうことが言われている。
私も、運動部活動での競技力の向上、これは子供や保護者の要求だというのはよく分かります。一方で、今、上手じゃないけどバレーやサッカーをやりたいという子供たちがはじき出されていないか、あるいは強豪校と言われるところで、百数十名、二百名という部員を抱えて、果たして選手一人一人が本当に運動に参加できているのか、こういった問題が多々あると思います。是非、実態調査、それから学校関係者や専門家、競技団体含めて、学校部活動の在り方の協議、検討を進めていただくことを求めまして、質問を終わります。