国会会議録

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火山観測・研究強化を 田村参院議員 「国立の機関必要」

 日本共産党の田村智子議員は11日の参院決算委員会で、箱根山の活動が活発化するなかで、強化が求められる国の火山防災対策について質問し、専門人材の不足など不十分な観測・研究体制を指摘し、国立の研究機関の必要性を強調しました。

 全国に110の活火山があるにもかかわらず、国の火山防災体制は弱体化が進行しています。

 火山噴火警報を出す気象庁は、東京はじめ全国4カ所の火山監視・情報センターで47火山を遠隔地から監視しています。監視に従事する人員は104人いますが、そのうち大学などで火山を専門としていた人は17人にすぎず、火山の評価体制が非常に不十分です。

 田村氏は、噴火の分析などに専門的知見が必要とされながら「地質学的な評価などは大学の研究者に任せており、気象庁には火山現象のすべてをきちんと評価できる体制がない。しかも予算がないため外部の研究者は手弁当で参加せざるを得ない」と指摘。御嶽山での戦後最悪の火山災害が起きてもなお対策の強化がされてこなかった問題をただしました。

 太田昭宏国土交通相は「現時点では精いっぱいやっている」と答弁するのみ。田村氏は「国の体制がとられてこなかったことは明らかだ」と述べました。

 田村氏は、火山の噴火はそれぞれに特徴があり、継続的な観測・研究が必要だと主張。火山国のイタリアやインドネシアでは火山ごとに観測所を配置し、個別の火山の専門家を育成していることを紹介しました。

 火山噴火時にその評価をする噴火予知連絡会は気象庁の私的諮問機関にすぎず、法的権限も予算もありません。田村氏は、同予知連の藤井敏嗣会長がそのことを指摘し、「日本にも国立の研究機関が必要」と提言したことにふれ、観測・調査研究・防災対策を一元的に担当する機関をつくるべきだと求めました。

 山谷えり子防災担当相は「一体的体制に向けて具体的な検討をすすめる」と答えました。

 (しんぶん赤旗、2015年5月12日(火))

【 議事録 】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 箱根山の火山活動が活発化しており、大変心配です。観測体制の強化、関係自治体や観光客への情報の徹底など、防災対策がしっかりと取られるよう、まず冒頭求めておきたいと思います。

 今日は、火山の観測、防災体制について質問いたします。

 戦後最悪の火山被害となった昨年の御嶽山噴火で、日本の火山対策に多くの課題があるということが改めて示されました。日本では一九七四年に第一次火山噴火予知計画が策定され、以来、国立大学や国の研究機関と関係省庁が連携する形で一定の観測網の整備が進められてきました。しかし、公務員削減などの行革によって測候所が廃止をされる、あるいは国立大学の独立行政法人化などが行われて、火山の観測網や火山対策というのは弱体化が進行しています。

 まず、火山の観測研究を歴史的に担ってきた国立大学についてお聞きします。

 二〇〇八年十二月、科学技術・学術審議会測地学分科会火山部会は、今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について提案を行っています。ここでは、次のような現状分析が行われています。国立大学の法人化等に伴い財政事情が厳しくなり、観測点等の維持管理が困難となりつつあること、また火山観測研究に携わる人材確保も極めて厳しくなりつつあると。

 この国立大学の法人化に伴って観測点の維持管理が困難になりつつあるというのはどういうことなのか。これ、法人化以前は、国立大学は火山観測所や研究所について施設整備費を国に予算要求することができました。当時も予算は十分とは言えませんでしたが、それでも火山予知計画の下で維持更新などが国の直接の予算措置によって行われてきました。

 しかし、法人化後は、施設整備費としての予算要求はできなくなって、運営費交付金の中で各大学が整備することとなりました。しかも、その運営費交付金は毎年減額が行われたと。これが観測点等の維持管理を困難にした要因の一つではありませんか。文部科学省。

○政府参考人(田中正朗君) お答え申し上げます。

 国立大学では、平成十六年の法人化以降、多様な社会的ニーズなどに対応するため、国立大学法人の事業規模が全体として拡大する一方、基盤的な経費である国立大学法人運営費交付金は政府全体の極めて厳しい財政状況の影響を受けているところでございます。

 このような中で、大学における学術研究としての火山研究については、企業などからの外部資金の導入が困難であるということ、また厳しい観測環境の中、老朽化した機器の更新には費用が掛かることなどから、観測研究の縮小が危惧される状況であるとの議論が平成二十年の科学技術・学術審議会測地学分科会火山部会においてなされたところでございます。

 そのため、火山部会におきましては、今後は学術的に重要と考えられる火山についての観測研究に重点化し、防災科学技術研究所の支援を得て、今後の観測研究体制を強化していくという方針を取りまとめたところでございます。

○田村智子君 これ、運営費交付金化され、更にそれが減額されたことが要因の一つだと事実上お認めになったと思います。

 では、人材確保の厳しさというのはどうかと。火山観測というのは大変厳しい自然環境の下で行われるため、機器へのダメージも大きいわけですね。法人化前から定数削減の影響で技術職員が削減をされて、この保守管理が困難になっていました。さらに、法人化後の運営費交付金の削減は、国立大学での常勤の研究職ポストの減少に直結をして、ポストドクター問題も深刻化させ、今や博士課程進学者までも減少しているという現状です。

 元々、研究者の層が厚いわけではなかった火山の観測研究にとっては、まさに危機的な状況がもたらされていると言えます。

 そこでお聞きします。例えば、北海道大学有珠山観測所、ここは、二〇〇〇年、有珠山の大噴火を予知をしまして、一万人もの避難を実現して人的被害を未然に防いだという実績があります。この大噴火当時の観測所の人員は五名でしたが、現在の体制はどうなっていますか。また、東京大学の四つの火山観測所、これ有人で行われていましたが、現状どうなっていますか。

○政府参考人(吉田大輔君) お答えいたします。

 北海道大学の有珠火山観測所には、現在、准教授一名、技術職員一名、計二名が配置をされているところでございます。

 また、東京大学の火山観測所、これは四つございます。浅間、小諸、霧島、伊豆大島でございますけれども、現在、小諸観測所には准教授一名、技術職員一名、計二名が配置されておりますけれども、他の三か所の観測所は常時配置されている職員はおりません。なお、必要に応じまして他の研究者も観測所に赴き調査研究を行っているところであり、また近年は、GPSや通信技術等の進展に伴い、常駐の人員を配置しなくてもデータ収集が可能になってきております。そのための観測機器の定期的な点検等は行っているところでございます。

○田村智子君 現状では、体制もそうやって弱体化しているということです。

 前述の二〇〇八年の火山部会の提案、先ほどもありましたが、資金と人材の不足に対応するため、国立大学等における火山観測の重点化というのを打ち出した提案だったんです。

 日本には百十の火山があります。国立大学等では三十三火山の観測をしてきたけれども、活動度が高く、研究的価値の高い十六の火山に重点化をして、そしてこの十六の火山については、防災科学技術研究所による施設整備補助を行うということで、観測点の維持更新、高度化を図ると、やむなくこういう体制をしなければならなかったわけですね。

 この重点化の方針というのは、学術的に重要と考えられる火山への重点化でもありました。この学術研究の分野というのは、政府の方針で競争的環境が強調されてきて、論文を書けるかどうかが問われるということになっています。火山というのは、穏やかなときの状態のデータというのは噴火して初めて活用されるわけで、必然的に噴火の頻度が高い山が研究対象になりやすくなった。災害対策上重要でも、噴火の頻度が低い山は結果として重点化の対象から外れたわけです。御嶽山はその対象外となった山の一つでした。こうした重点化の方針、十四火山に計五十五か所の観測点を設けるという計画が作られました。二〇〇九年度から整備も始まりました。

 それでは、この五十五か所の整備計画はどうなっていて、昨年度までに整備された観測点というのは何か所ですか。

○政府参考人(田中正朗君) お答え申し上げます。

 平成二十年十二月の科学技術・学術審議会測地学分科会火山部会において取りまとめられまして、重点的な研究対象十六火山を定めました今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方についてのフォローアップといたしまして、防災科学技術研究所では、平成二十二年四月の同分科会地震火山部会において火山観測網の整備計画案について報告を行っているところでございます。

 この整備計画案におきまして、重点的な研究対象十六火山のうち、既存の火山観測網の整備がされております富士山、伊豆大島、三宅島を除きまして、那須岳を加えた十四火山、計五十五観測点を新たに整備することとしております。このうち八つの観測点につきましては平成二十一年度補正予算により措置されておりましたので、平成二十二年度以降に四十七の観測点を整備することとしておりました。

 防災科学技術研究所では、気象庁における観測点の整備状況も加味しながら整備を進めておりまして、平成二十二年度以降に整備することといたしました四十七観測点のうち、二十七の観測点の新規整備に係る費用を予算措置済みでございます。

 他方、これに加えまして、平成二十六年度までに気象庁が新たに整備をした観測点が十九観測点ございますので、これを加えますと、全体では五十四の観測点となっておりまして、当初の整備計画はおおむね進んだものというふうに認識してございます。

○田村智子君 質問レクでは三十五か所というふうに答弁受けていたんですけど、五十四か所なんですか。

○政府参考人(田中正朗君) 先生の方に申し上げましたのは、防災科学技術研究所が自分で独自に整備したものは二十二年度以降で二十七の観測点、それ以前に八つがございましたので、三十五でございました。

 それに加えて、先ほど申し上げましたように、防災研としてはそれだけでございましたけれども、それ以外にも気象庁がその対象となっております火山につきましては十九の観測点を追加してございますので、防災科学技術研究所と気象庁の新たに追加した観測点を合わせると五十四の観測点となるということでございます。

○田村智子君 そうすると、だから二〇〇九年、文科省主導でやろうとした五十五か所のうち三十五か所しか整備がされていないということですよね。気象庁のものを含めて今お答えいただいたということですね。

 これ、予算見ますと、二〇〇九年度は七億円、二〇一〇年度はゼロになるんです、二〇一一年度一億円、東日本大震災直後の二〇一二年度は十八億円、二〇一三年度はまたゼロ、御嶽山噴火後の二〇一四年度は六億円、しかし今年度はまたゼロなんですよ。こうなると、そもそも文科省が造ろうとした、国立大学で重点化したという五十五か所、この設置も、文科省のサイドからは、これ、いつになるか分からないような実態だというふうに質問レクでは説明を受けたわけです。

 次に、では、私、気象庁のお話もありましたので、気象庁の観測体制、これも見てみたいと思います。

 火山の観測を現地で行う測候所、九十七か所ありました。しかし、行革によって九十五か所が廃止をされ、ほぼ全廃と言えるような実態です。現在は、全国四か所の火山監視・情報センターに四十七火山のデータが送られ、二十四時間体制で観測を行っています。設置場所は、札幌、仙台、東京、福岡ですから、都市で遠隔地の火山のデータを集めて観測をしているということになります。

 このセンターの職員、現在八十二名、その他本庁で火山業務に従事する職員を合わせると、気象庁で火山観測に当たる人員は百四人だとお聞きをしています。では、このうち、大学や大学院で火山を専門として研究してきた方、これは何人いますか。

○政府参考人(西出則武君) 全国四か所の火山監視・情報センター及び気象庁本庁で火山業務に従事するその百四名のうち、大学や大学院で火山学を専攻していた者は十七名でございます。

○田村智子君 十七名なんです。火山の現地観測、研究の経験がない職員が遠隔地でデータを見て評価を行っているというのが実態だと。しかも、気象台など他の部署への異動もあるわけで、まさにそこに就いたからといって火山を専門的に担当し続けるわけでもないわけです。

 昨年の御嶽山の噴火は水蒸気爆発でしたけれども、火山灰など噴出物を分析してマグマ噴火ではないというふうに確定をしたのは東京大学や産総研の研究者でした。これ、どういう噴火なのかということを素早く把握するということは、その後の噴火予想にとっても大変重要なことだと思います。

 気象庁も現地へ出動する機動観測の体制を持っていますが、自前でそうした評価ができなかった、地質学、岩石学的な分析を行わなかった、この理由はなぜですか。

○政府参考人(西出則武君) 火山活動を評価するためには、広範囲な分野での観測、解析が必要であります。地震活動、地殻変動、火山灰の分析など、多岐にわたりそれぞれの専門性が必要です。このため、気象庁だけではなく、大学や研究機関等がそれぞれの専門分野を生かして観測、解析を行っており、その結果を火山噴火予知連絡会において総合的に判断しております。

 御指摘の御嶽山噴火においては、火山灰分析等の専門の知識を有するそれらの機関が分析を行い、火山噴火予知連絡会に報告したところであります。

○田村智子君 私、大学との連携というのは大切だとは思うんですが、気象庁の現地観測、いざ噴火が起きたというときに機動的に行くその部隊も、試料の採集や評価などは行うけれども、地質学的な評価などは大学などの研究者が行っていると。現在のところ、気象庁では火山現象の全てをきちんと評価できる体制がないということだと思います。

 この御嶽山の噴火を受けて、中央防災会議火山防災対策ワーキンググループ、今年三月に報告をまとめています。そこで、火山機動観測体制の強化として、「気象庁や大学・研究機関等は、火山噴火予知連絡会の総合観測班等の枠組を活用して、速やかに現地に立ち入り、調査観測を実施すべきである。」と記述をしています。大学や研究機関等も素早く行くべきだと、調査観測を実施すべきだと。

 しかし、この大学や研究機関の現地調査というのは、法的にはあくまで要請によるものでしかありません。研究者や研究機関の任意の協力であって、現地への機器の設置とか必要な経費も参加した各機関独自の負担になっているのではないですか。

○政府参考人(西出則武君) 総合観測班は、火山噴火が発生した際に、火山噴火予知連絡会が司令塔となりまして関係機関が各種データを共有するとともに、火山活動を総合的に評価するために設けるものであります。その構成メンバーとしては、火山学者や大学、研究機関、気象庁など、火山に関する我が国の専門家に広く参加をしていただく形となってございます。

 この総合観測班の活動については、その設置目的に即して各観測機関が参加するものであり、観測の実施に当たっては各機関が費用を負担して行うこととしております。

○田村智子君 これは、気象庁だけでは分析はとてもできなくて、学者や研究者の協力が必要なんだと、ところが、その協力は自前、手弁当でやってくれという体制になっているということなんですよ。

 これは実は、この問題は既に前から指摘がされていて、二〇一三年に内閣府等が開催した広域的な火山防災対策に係る検討会、ここでは、大規模火山災害対策への提言というのをまとめています。この中で、「噴火時に火山噴火予知連絡会が設置することができる総合観測班に参加する火山専門家の活動経費は、各火山専門家の所属機関が負担しなければならない。大規模火山災害時に火山専門家を現地へ派遣するか否かは各火山専門家の所属機関が判断するため、特に火山活動が長期化する場合は火山専門家の協力を得ることが難しくなる。」と、こういう問題点も指摘をしているわけです。

 現地の調査というのは非常に過酷な状態でやられますので、持っていった機器だって破損する、その破損も研究機関が補わなければならない、観測に入った人が重大事故に巻き込まれる、そういう危険性もある、それも全部大学や研究機関が責任を負わなければならないという体制なんですよ。こういうことがずっと指摘をされてきました。

 国土交通大臣にお聞きしたいんです。御嶽山で戦後最悪の火山災害が起きてもなお、こうした大規模噴火時の対応の弱点について事実上対策は取られていないんですよ。これでいいのかと。なぜ対策が取られていないのか、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(太田昭宏君) 現在の火山学を学んだ人を始めとして、また大学やあるいは専門家、気象庁と合わせて現時点では精いっぱいやっているというのが現実のところだと思います。

○田村智子君 現場は精いっぱいなんですよ。しかし、それを保障する国の体制が取られていないと。これはやっぱりこの弱体化という問題を真剣に、これは政府が責任持って解決していくこと、必要だというふうに思うんですよ。これはまた後ろの方で具体にお聞きをしたいと思いますが、これが皆さん、実態なんですよ。

 じゃ、これが防災体制にはどういう影響を与えていくのか。防災体制についてもお聞きをしたいと思うんです。

 火山監視・防災センター、これは、各火山を有する地方気象台には、自治体の火山防災対策の支援などを担当する火山防災官が一名ずつ、これは全部で二十七人、これも私は少ないと思うんですけど、全国で二十七人配置をされています。では、この二十七人のうち、大学や気象研究所などで火山研究に従事した者は何人なのか、また気象庁の火山業務に従事した経験のある人は何人か、お答えください。

○政府参考人(西出則武君) その二十七名の火山防災官のうち、大学や気象研究所などで火山研究に従事していた者はおりません。現職就任前に気象庁の火山業務に従事していた者は二十三名でございます。

○田村智子君 もう一点お聞きします。

 常時観測四十七火山には、関係自治体等国の防災機関で構成する火山防災協議会というのが設置をすることとされて、御嶽山の火山があって、ようやくその四十七火山に全て設置をされたんです。では、そのうち火山の専門家が参画している火山協議会というのはどれだけですか。

○政府参考人(兵谷芳康君) お答えいたします。

 火山防災協議会は、現時点において、常時観測火山四十七全てにおいて設置されておりますが、このうち火山専門家が参画していると認められる協議会は三十六でございます。これは、協議会の規約等から明確に確認できるというものでございます。

 ただ、規約上は火山専門家が協議会のメンバーとなっていない場合でも、火山専門家に協議会への出席を継続的に依頼をしているというケースもございますので、実態といたしましては火山専門家が参画している事例が多いものと伺っております。

○田村智子君 火山というのは、観測研究とともに、噴火による人的被害というのを未然に防ぐための防災計画というのが欠かせないはずなんです。ところが、火山防災官も専門的な知見を持っているとは言えない。そして、火山協議会にも専門家が配置できていないというところもあると。

 こうした体制の脆弱さもあって、常時観測四十七火山のうち、ハザードマップの作成というのは三十七にとどまっています。避難計画は、部分的なものも含めて作成がされているのは十五火山、関係市町村百三十のうち僅か二十にとどまっていると。これ、昨年十一月現在なので、もしかしたら少し変動があるかもしれません。

 日本では、二十世紀にはたまたま大規模な火山災害というのは少なかったので、こうした観測研究体制の弱体化、あるいは防災体制の不十分さ、これ大きな問題にならなかっただけだろうと私は思うわけです。今、富士山の火山、これも視野に入れなければならないとか、あるいは、東日本大震災を受けて、単発の火山が爆発するだけじゃないと、一つが噴火したときに、それが連動して大規模噴火を起こす可能性もあるということが研究者の皆さんからは指摘をされているわけです。

 そうすると、ここは防災担当大臣、お聞きしたいんですけれども、こういう防災という観点から考えても、このような体制でいいのかどうか、是非見解と今後どうするのかをお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(山谷えり子君) 昨年九月の御嶽山の噴火を踏まえまして中央防災会議に設置した火山防災対策推進ワーキンググループにおいては、火山監視観測体制の強化についても御議論をいただきまして、昨年度末に報告が取りまとめられたところでございます。

 本報告には、「火山活動の評価をより的確に行うことのできる人材が必ずしも十分でない。」と記載をされています。我が国の火山の監視観測については必ずしも十分な体制が確保されているとは言えない状況にあると認識をしております。

 本報告の提言にも記載されているとおり、例えば、大学等において専門的な知見を習得した人材などが火山活動評価に参画する体制を整備していくことなどにより、火山監視観測体制の充実を図る必要があると考えているところでございます。

○田村智子君 そういう体制強化を本当に急いでほしいんですけれども、その体制強化を進める上で、私は幾つか提案もしたいんですね。前述した中央防災会議のワーキンググループの報告では、「火山噴火現象は火山ごとに特徴があることから、火山噴火災害への対応については、各火山における具体的な研究成果に基づき火山の特徴を把握したうえで防災対策につなげていくことが必要」だという指摘があります。

 これは、防災上重要な火山については、一つの火山を長期にわたって観測評価するホームドクターのような専門家が大切な役割を果たし得るというふうに私は考えます。火山大国であるイタリアやインドネシアでは、こうしたホームドクター的な専門家というのを一火山に一人必ず配置をしているわけですね。日本でも同様なホームドクターの育成というのが必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(山谷えり子君) 火山によってそれぞれ特徴があるというところでございます。各火山における火山防災対策については、火山噴火の現象や規模が火山によってそれぞれ特徴があることから、火山ごとに設置されている火山防災協議会において推進されておりまして、この協議会には科学的な知見を有する火山専門家が積極的に参画していくことが不可欠であります。

 一方で、火山によっては、活動が活発でなく、調査研究の対象となりにくい火山もありまして、また火山の専門家も限られております。個々の火山にその火山のみを専門とする火山専門家を配置することは難しく、効率性などを考えた場合、複数の火山をまとめて観測研究を行う仕組みなどについても考えていくことが重要であると認識をしております。

 このようなことから、政府としては、火山防災対策推進ワーキンググループの提言も踏まえ、例えば関係省庁や地元大学、研究機関の間で調整を図りながら、火山防災協議会への火山専門家の参画を促進する、各火山防災協議会に参画する火山専門家が連絡、連携する場を設置する、長期的には火山研究者の人材育成を図るなどの取組を関係省庁一体となって推進してまいりたいと考えております。

○田村智子君 インドネシアのジャワ島では、昨年、御嶽山の五百倍と言われる火山の噴火がありました。九万人に上る住民を事前に避難させ、人的被害がゼロだったと。この事例は日本の報道番組も取材をして、私も見たんですけれども、これは、ホームドクター的研究者が毎日登っていくわけですよ。そして、ガスの噴出の音などがいつもと違う、こういう僅かな変化を捉えたことが大規模避難に結び付いたということも紹介をされていました。

 だから、今の脆弱な体制を前提としてどうするかということを議論しているだけでは駄目で、やっぱり長期的視野も持ってホームドクター的な専門家を各火山に配置できるような、こういう体制、是非検討していただきたいというふうに思うんです。

 ただ、こうした体制、日本で取れない大きな要因は、先ほど大臣からも御指摘のあった専門家の圧倒的な人材不足。これは、中央防災会議ワーキンググループの報告見ますと、日本の火山研究者は全国で約八十人、うち大学に所属する研究者は僅か四十七人しかいないわけです。研究者が増えない最大の要因は、先ほども指摘した安定した研究環境がつくられていないと。これ、重大な問題です。

 文部科学省は、火山の研究プロジェクト、来年度から立ち上げるというふうにお聞きしていますが、これは何年単位のプロジェクトで、これによって火山研究者の安定的なポストというのが増えていくのでしょうか、お答えください。

○政府参考人(田中正朗君) お答え申し上げます。

 昨年の御嶽山の噴火を踏まえまして、平成二十六年十一月に科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会におきまして、御嶽山の噴火を踏まえた火山観測研究の課題と今後の進め方についてを取りまとめまして、今後重点的に進めるべき火山観測研究や人材育成の在り方等について報告をいたしました。このうち、委員御指摘の火山研究人材の育成につきましては、プロジェクト研究を組み合わせた人材育成プログラムの構築の必要性が示されておりまして、文部科学省におきましては、同プログラムの実施機関や育成すべき人材の対象や規模なども含めまして、その具体的方策を現在検討しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き関係機関と協力いたしまして、出口を見据えた火山研究者の育成確保に努めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 プロジェクトに参加しても、その後プロジェクトが終了したら安定した雇用が切られてしまうということが解決されない限り、これはやっぱり人材不足という大きな問題に私は解決の策見えてこないと思うんですよ。さっき言ったホームドクターの育成というのも、あるいはそういう体制取るということも、安定した働き場所として研究がずっと続けられるという、そういうポストを増やすことにもつながっていく、そういうことを考えていかないと、これは大変危機的な状況がますます進行してしまうというふうに思います。

 こんな事態がなぜここまで進行してしまったのか。私、やっぱりアメリカ、イタリア、インドネシア、フィリピンといった主要火山国と日本の決定的な違い、それは火山観測、調査研究が特定の国家機関に一元化されていないと。逆に言うと、今言った主要火山国は一元化されているわけですよ。これが非常に重大な問題だと思います。

 火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は、日本にも国立の研究機関が必要だと繰り返し提言をされています。この火山予知連絡会というのは、日本にある火山のデータを見てその火山の評価を行う、あるいはさっき言った噴火したときや、あるいは噴火の危険性があるというときにはすぐに班を編成して現地に派遣すると、そういう役割持っているんですけれども、この予知連というのは気象庁長官の私的諮問機関なんですよ。だから、常時いるわけでもないんですよ。平常時には年三回集まって、学者が集まってデータなどを見ているというにすぎない、そういう機関なわけですね。

 国立大学や各省庁が連携しているとはいえ、火山防災対策の基本方針もない、法的根拠もない、一元的に担当する機関もないと、これはやっぱり解決が必要だと思いますが、山谷大臣、いかがですか。

○国務大臣(山谷えり子君) 一元的な調査研究体制を構築すべきではないかということでございますが、火山防災対策を更に推進していくためには、充実した監視観測・調査研究体制の下、火山防災対応が常に火山専門家の知見を得ながら実施されるような体制を整備していく必要があると認識しております。

 政府としては、火山防災対策推進ワーキンググループの提言にも記載されているとおり、内閣府に火山防災対策推進検討会議を設置し、まずは複数の関係機関同士の連携強化を図り、それぞれの機関で火山監視・評価体制の強化、火山防災協議会の取組の強化、火山研究体制の強化を推進してまいります。その上で、本検討会議において、より一体的に火山防災を推進する体制を整備するための具体的な検討を進めてまいる所存でございます。

○田村智子君 終わります。


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