国会会議録

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老人ホーム 未届け施設規制を 田村智子氏 老人虐待を告発 

  日本共産党の田村智子参院議員は13日の決算委員会で、老人福祉法にもとづく有料老人ホームとしての届け出をしないまま運営され、入居者への虐待が行われていた東京・北区の「高齢者向けマンション」の問題をとりあげ、未届けホームも規制対象とする法整備を求めました。

 東京都は、北区の施設は法にもとづく老人ホームではないとして、虐待発覚まで指導監督を行いませんでした。

 田村氏は、厚労省が2011年、今回と同様のケースを質問した山下芳生参院議員に調査を約束したにもかかわらず、速やかに対応してこなかったことを批判。「政治の責任は極めて重い」「老人ホームと同じなのに、行政が手を出せないのはおかしい」と指摘しました。

 塩崎恭久厚労相は「未届け撲滅のためどうするか、考えなければいけない」と答えました。

 未届けホームは、“特養にいつ入れるかわからない”“有料ホームは費用が高い”と悩む高齢者につけこむかたちで急増しています。

 田村氏は「(安倍政権による)介護報酬引き下げや利用者の負担増は、行き場を失う高齢者を広げ、悪質なビジネスを広げることになる」と批判し、歳出抑制ありきの介護政策からの転換を求めました。

 

 【 議事録 】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 この四月から特養ホームなど施設系サービスを中心に介護報酬の引下げが行われました。その影響が大変懸念されます。
 まずお聞きしたいのは、特養の待機者の数、現在何人で、介護保険制度スタート時との比較と併せて、厚労省、示してください。
○政府参考人(三浦公嗣君) 特養のいわゆる待機者の現状と推移状況でございますけれども、特別養護老人ホームの入所申込者の現状につきましては、平成二十五年度に実施した調査によれば約五十二万四千人ということでございまして、前回調査、平成二十一年度調査の四十二万一千人から約十万三千人増加しているところでございます。
 なお、このうち在宅で要介護三から五というような方々につきましては、平成二十五年度では約十五万三千人でございまして、平成二十一年度の十二万二千人から約三万一千人増加しているところでございます。
○田村智子君 二〇〇一年に私たち日本共産党は全都道府県への聞き取り調査を行いましたが、その当時の待機者というのは合計で十万四千五百九十九人と私たちカウントいたしました。現在はその五倍にも膨れ上がっているということになります。二〇〇〇年に介護の社会化ということを目指して介護保険は導入されましたが、実態はその社会化ということからは程遠いということが言えると思います。
 大臣にお聞きしたいんですが、この要介護状態の高齢者の受皿不足、大変深刻な状態にあると思いますが、そのような認識はお持ちでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 特別養護老人ホームなどの整備につきましては、御案内のように、市町村が作成する介護保険の事業計画というのがありますが、そして、都道府県が作成する介護保険事業支援計画に基づいて、このサービス必要量の見込みを踏まえて計画的な整備が進められてきているわけでございます。
 この四月から第六期の介護保険事業計画において、三年の計画期間だけではなくて、二〇二五年に向けて、この事業計画に基づいて地域医療介護総合確保基金が今回、医療に加えて介護についても今年度から使えるようになるわけでありますけれども、これによって介護施設等の整備が着実に進むように支援をしていくこととなっているわけでございます。
 御案内のように、二〇二五年というのは団塊の世代が七十五歳以上になる、超高齢化の社会ということで、それを見据えて、高齢者が重度の要介護状態になっても可能な限り住み慣れた地域で安心して日常生活を継続できるように、地域包括ケアシステムの構築を着実に推進していかなければなりませんし、施設とそれは在宅との組合せを考えながらこの新しいシステムをつくっていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。
○田村智子君 その計画的な整備というのは大変遅れているという認識を持っていないのかなとちょっと疑問に思ったんですけれども、今も在宅、住み慣れたところでということも含めて、言わば多様な受皿ということをこの間、厚生労働省は言ってきたと思うんです。
 では、その多様な受皿の実態というのはどういうものなのか。今日は、東京都北区で問題になりました高齢者への虐待、要介護状態の高齢者がベッドに縛り付けられたままにされるなど日常的な虐待が行われていたと、この問題について取り上げます。
 これはシニアマンションと銘を打たれて、昨年十一月の時点で百五十九名が入居をしていました。事業者側の説明では、そのうち百三十名を拘束状態としていたと。北区も、入居者の三分の二に当たる高齢者九十五名、障害者四名について虐待があったと認定をしています。ここは賃貸マンションというのは全く名ばかりで、部屋は外の廊下から鍵を掛けられる状態でした。個室は、四畳半ほどの部屋にベッドが置かれていて、そのベッドで寝かされて、おなかのところに太いベルトを巻かれたりあるいは手首にベルトを巻かれるなどしてベッドへの拘束がある。あるいは、ベッドを四辺を柵で囲って動けないようにする。これで、ある九十代の女性は、入居した後寝たきりになってしまって、何も考えずに天井を見詰めるだけの日々だった、気がおかしくなりそうだったと、こういうふうにも報道されているわけです。
 私、問題なのは、東京都が二〇〇九年にこの施設のことを知っているんですよ、このシニアマンションのことを。しかし、これは老人福祉法に言う有料老人ホームではないと判断をして十分な指導監督を行わなかった。翌年、北区から有料老人ホームに該当するのではないかと指摘をされても、今回の虐待報道があるまでこの判断を変えなかったと。これ、非常に問題だと思います。
 実は、こういう制度外のホームについては、我が党の山下芳生議員が既に、二〇一一年三月、予算委員会で取り上げていました。このときは、寝たきり専用賃貸住宅と銘打たれていたんですね。こういう問題を取り上げて、サービスを提供する事業者と賃貸契約者が違う場合には十分な指導が行えない実態がある、その問題を指摘しました。当時の細川厚労大臣は、この問題について調査を約束しました。
 厚労省にお聞きします。それでは、このサービス提供事業者と賃貸契約者が違う場合も有料老人ホームになり得るんだという見解を厚労省が示したのはいつのことですか。
○政府参考人(三浦公嗣君) 御指摘ございました、サービス事業者とマンションの所有者が別の方だということにつきまして有料老人ホームに該当するかどうか、このことにつきましては、今御説明ございましたように、従来より、都道府県などでその実態を把握した上で個別に判断が行われていると承知しております。一方で、現実には様々な形態が存在するということもございまして、都道府県などが指導を行う際の参考にするため、随時運用の考え方をお示ししているところでございます。
 入居者の方に対しまして、介護などのサービスを紹介、あっせんするなどによりまして、入居に係るサービスと介護等に係るサービスが事実上一体的に提供されている事業を有料老人ホーム事業者として取り扱うことにつきまして、平成二十五年の五月に通知し、その取扱いを明示したところでございます。
○田村智子君 これは、山下議員が取り上げたのは平成でいえば二十三年なんですよ。二年もたってからやっとそういう見解が示された。これ、政治の責任は極めて重いというふうに思います。
 更にお聞きします。それでは、有料老人ホームについて、届出施設と未届け施設の数、今、直近の数でどうつかまれていますか。五年前と比較しての数字で示してください。
○政府参考人(三浦公嗣君) 平成二十六年十月三十一日の時点で届出済みの有料老人ホームの数は九千九百四十一件でございます。一方、未届けの有料老人ホームの数は九百六十一件でございまして、未届けの率は八・八%となっております。また、その五年前、平成二十一年十月三十一日時点では、届出済みの有料老人ホームの数は四千八百六十四件でございまして、未届けの有料老人ホームの数は三百八十九件、未届け率で申し上げますと七・四%でございました。
○田村智子君 これは、この五年間でどちらも二倍以上に、本当に急増しているわけですね。しかも、拘束などが行われている、行動の制限があるということについて改善指導をした自治体というのは四十三に上っています。
 この北区のシニアマンション、ホームページを見ますと、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった、国の制度の類型に該当しない、一般の民間賃貸マンションですと、制度外のホームなんだよということを強調しているわけです。これは、制度外のホームということになりますと、行政は法律上の立入り権限さえ持てないわけです。このような制度の裏をかくようなやり方というのは本当に許されません。
 高齢者虐待防止法に基づいて今回はシニアマンションについても摘発が行われているんですけれども、それは当然です。しかし、実態としては老人ホームと同じようなことをやっている、ところが行政の側は介護施設としての調査や指導ができない、これはおかしいと思います。
 大臣、これは包括的な法整備が必要だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) おっしゃるように、未届けが先ほど局長から申し上げたようにまだ八・八%あるということでありまして、これを届出をすることについて、しなければこれは本当は本来は罰則が付いているわけでありますから、これをしっかり都道府県にもやっていただくように私どもとしても今働きかけを強くしているわけでございまして、この制度的な問題については、今回の対応は東京都の北区が先ほどお話が出たように高齢者虐待防止法に基づく虐待の認定とそれから改善指導をやって、それで東京都も介護保険法に基づく訪問介護事業者及び居宅介護支援事業者に対する是正勧告を行うということであり、また、老人福祉法に基づく有料老人ホームに該当する認定をした上で立入検査、指導監督をやってきているわけでありまして、こういった形で法令にのっとって対応は今回しているわけでありますけれども、問題は、未届けのところについて、これを撲滅するにはどうしたらいいのかということを更に考えなければいけないというふうに思うところでございます。
○田村智子君 届出するかしないかはまさに事業者の判断になってしまうわけで、こういう今のシニアマンションのように、自分のところは届出の必要がない民間賃貸マンションだということをアピールしているわけですから、今何らかのことが必要だというふうに答弁ありましたので、是非包括的な法整備、これ本当に踏み込んで検討していただきたいというふうに思います。
 このシニアマンションなんですけれども、家賃は月三万円なんですよ、マンションで。居室の面積が狭いからだということもホームページで説明をしています。この事業者だけでなくてほかの事業者でも、例えば一部屋に複数の方を生活させるなど、居住環境の水準を低くして家賃を抑えるということも見られるわけです。
 特養にいつ入れるか分からない、有料老人ホームは費用が高くて入れない、そういう高齢者は今多数おられます。そこに付け込んで次々と制度外のホームが造られている。これはもう明らかなんですよ、この五年間で二倍以上に増えているわけですから。こういう現状を大臣はどのように認識をされますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 特別養護老人ホームにつきましては、御指摘のように待機者がいることが問題であって、在宅生活が困難な方が優先的に入所できるようにすることがこれは大変大事であるわけでありまして、この四月から特別養護老人ホームの入所者は原則要介護三以上ということで重点化をしているわけであります。
 一方で、この北区の有料老人ホームにつきましては、高齢者虐待に該当する拘束が行われていた件については、関係法令に反する行為が行われていたことそのものが問題であると考えているわけであって、引き続き、高齢者の尊厳を損ねるような虐待あるいは身体拘束が行われることがないように、特に関係自治体としっかり連携をしなきゃいけませんし、先ほどの、入居などのサービスと介護などのサービスが一体的に提供されている事業が有料老人ホームの事業でありますから、これについては先ほど申し上げたとおりきちっと届出をさせて、監督をちゃんと目が漏れないようにするということを徹底していくということが大事なんじゃないかなというふうに思います。
○田村智子君 今のその見解を示した通達の中には、こういうことがあって気になっているんですね。福祉的観点から低所得・低資産者を対象とした低廉な家賃の住まいを提供しようとする事業者にとって、ガイドラインへの適合を画一的に求めることは、事業者による有料老人ホームの届出意思をそぐばかりでなく、結果として、行政との連携が困難な未届け有料老人ホームを増加させることにもつながりかねずというようなことが書かれていて、本当は有料老人ホームだったらガイドラインあって、いろんな基準があるわけですよね。それを画一的に求めたらむしろ未届けが増えちゃうんじゃないかとか、こんなことが通達の中に書かれているんですよ。
 これでは私は、逆に結果として質の低い、問題の多いところを広げることにならないかと大変危惧をしていますし、そもそもそういう低所得者、低資産者の方を有料老人ホームに任せるつもりなんだろうかと、厚労省の姿勢をこれ疑わざるを得ないというふうに言わなければなりません。
 北区のこの事業所は、実際に生活保護者も受け入れるということも宣伝しているんです。本来、こういう福祉的対応の必要な方は特養ホーム、養護老人ホームなどでこそ受け止めるべきで、それもできないほどに現状では受皿不足が深刻になっているんだと、この認識を持つべきですよ。特養ホームや養護老人ホームなど、質の確保されたサービスを需要に見合って確保すべきだと。多様なとかいって逃げない。在宅だとかいって逃げたらこんなことが起きる。やっぱり特養ホーム、そして養護老人ホーム、この質がちゃんと担保されたサービスの計画的な整備が必要だと、こういう認識は、大臣、お持ちですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 施設を造ること自体が大事であることも、もちろん我々としては特別養護老人ホームを計画的に自治体と一緒に造ってきているわけでありますし、今回の基金を使って更にそれを進めるということでもございますが、御指摘のような待機者の問題が言ってみれば劣悪なものに行かないようにするにはどうしたらいいのかということでありますけれども、在宅生活が困難な方が優先的に入所できるように特別養護老人ホームについてもしていくということが大事であって、先ほど申し上げたような重点化を図っているわけです。
 一方で、これはもう施設だけでこれからやっていこうということではなくて、本来の在宅というのもこれは大事な選択肢であって、だからこそ地域包括ケアシステムをどうそれぞれの地域に合った形で組んでいくかということが大変重要だというふうに思っていまして、在宅サービスの充実、それからサービス付きの高齢者向けの住宅とか、それから今の有料老人ホーム、これをどう多様な住まいの選択肢として用意をしながら、地域全体として高齢者が自らの住んできたところにそのまま自然な形で暮らすことが続けられるかどうかということを築き上げていくということが大事なので、そこのところを総合的に判断しながらやっぱりしっかりやっていかなきゃいけませんし、先ほど言ったような、趣旨を潜脱するような業者については、これは厚労省もそれから都道府県も一緒になってしっかりと見て、そして届出を言ってみればせざるを得ないように持っていくということが大事なんだろうというふうに思います。
○田村智子君 今、困難な方にまずは絞り込んで特養に入れるようにというふうにおっしゃったように聞こえたんですけど、この北区のシニアマンションも極めて介護度の重い方しか受け入れていないんですよ。そういう方でさえ行き場がなくなっているということなんですよ。
 社会保障制度改革の大きな柱は、今大臣言われた介護の重点化、適正化、つまりは、これは給付抑制先にありきの政策なんですね。介護職員の不足から、高齢者への虐待や不適切な対応が実は介護保険のサービスの中でも起きている。これは土曜日の朝日新聞で報道されていて、私も大変衝撃を受けました。
 今行われている介護報酬の引下げは、更なる介護職員の不足をもたらすでしょう。特養の重点化や利用料の負担の引上げは、行き場を失う高齢者を更に広げるでしょう。そうすると、そこに付け入る悪質なビジネスというのが広がることになっていく。大臣、そういう認識はないですか。
○政府参考人(三浦公嗣君) 身体拘束あるいは虐待の問題でございますけれども、今御指摘ございましたような介護報酬のこととあるいは人手不足というふうなこと、こういうことをもって身体拘束を廃止できないと、そういうような理由を立てる前に、まずは身体拘束を行わない介護ということを目標にして具体的にそれぞれの事業者で取り組んでいただくということが必要だということでございます。
 ただ、その一方で、私ども、介護職員の皆様方の処遇の改善に努めるということは非常に重要なことだと理解しておりまして、介護報酬の中で処遇改善の加算を設ける、また、この二十七年度からは都道府県に設置した基金を活用して介護人材の確保に向けた取組を一層進めると、このようなことを通じまして、引き続き都道府県などと連携しながら、介護職員の皆様方の処遇改善を通じた介護職員の確保に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
○田村智子君 現場からは、人手不足で目が離せなくて、やむを得ず身体拘束せざるを得ないんだという声が本当にどんどん上がっているんですよ。そういうところで介護報酬まで引き下げるのかと。これは引き続き、また国会の中でも取り上げていきたいと思います。
 今日は時間がないので、次に障害年金の認定についてお聞きをしたいと思います。
 障害年金の申請に対して不支給と認定された割合に地域差が生じている、このことについて厚労省の調査結果が今年一月公表されました。確認できた地域差について、簡潔に概要を説明してください。
○政府参考人(樽見英樹君) 今回の調査でございますけれども、新規に申請があった障害基礎年金について不支給となった割合に地域差があるのではないかということで、日本年金機構の各都道府県における障害基礎年金の認定事務の実態を把握するために行ったものでございます。
 結果としましては、障害基礎年金の不支給割合の地域差というものについては、精神障害、知的障害の判定との関連が大きいと。障害基礎年金の不支給割合が低い県と高い県とで、精神障害、知的障害の認定の際に目安となる日常生活能力の程度、その評価について違いが見られるといったようなことが確認をされたところでございます。
 この結果を踏まえまして、精神障害、知的障害の認定の傾向に地域的な差が生じないようにということで、二月から専門家による検討会を開催しているところでございます。
○田村智子君 これは資料の一枚目を御覧いただきますと、精神障害、知的障害で見ますと、不支給決定、多くの都道府県は不支給という認定はゼロ%あるいは一〇%台なんです。ところが、大分県で三三%、兵庫県で五五・六%と。これは疑問を持たざるを得ないんですね。なぜこれだけの差が生じているのか。国民の年金権を保障するという立場で真摯に分析して手だてを取るべきだと思います。
 障害年金の認定というのは、基本的に本人との面談は行わず、書面だけの審査となります。そうすると、診断書に記載された様々な情報、本人や家族からの申立書などの内容から総合的に判断することとなっています。一方で、厚労省の今回の調査報告には次のような指摘があるんです。不支給割合が低い十県では、診断書の記載項目、日常生活能力の程度、これが段階でいうと二相当であることが基礎年金を支給する目安となっている一方、不支給割合が高い十県では、日常生活能力の程度がおおむね三相当が目安になっていると、こういう指摘なんです。
 この日常生活能力の程度というのは、障害の程度が軽いものから順番に一から五までの五段階で評価をして診断書に記載をするんですね、この方は一とか二とか。この二というのは、家庭内での日常生活は普通にできるが社会生活には援助が必要というもの、三というのは、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要というような判断になるんです。不支給決定の割合が高い十県、二で判断された方は一〇〇%不支給決定なんですよ。全部はねられているんです、二の段階の方は。
 これは現状では総合的な判断とは必ずしも言えず、この日常生活能力の程度の数値、これに偏重した認定が行われているんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) 精神障害、知的障害については、身体障害と異なりまして検査数値等に基づいて等級を判断するということはなかなか難しいという面がございます。そういう意味で、認定基準において日常生活の状況等を総合的に評価するということになっているわけでございまして、日本年金機構の認定医が医学的な知見を基に、具体的な症状、あるいは日常生活状況、就労状況等を総合的に評価をして個々の認定を行うということでやってきたところでございます。
 今回の調査結果、調査の中で、言わばその評価の目安ということに傾向の差があるのではないかということが分かったところでございますけれども、一方で、同じ日常生活能力の程度であっても判断結果には違いがあるということも明らかになってございますので、日常生活能力の程度の欄に偏重した認定となっているというふうには私ども考えておりません。
○田村智子君 でも、各県にヒアリングを行った中では、日常生活能力の程度が支給の目安として重要だという意見は確認ができるわけですし、実際数字が私は表しているなというふうに思います。
 これ、一人一人について総合的な判断というのをやろうとすれば、申請の関係書類を本当に精読して、そして熟慮することが求められる。ところが、今年四月一日現在で、この障害年金の認定をする認定医、これ、最も多い東京都でも十一人、神奈川県では僅か四人なんですよ。大きな県では年間六千から七千件も申請があります。しかも出された申請は、その一件は一人の認定医だけで審査をするという仕組みなんです。こうした仕組みも地域差を生じさせる要因の一つではないかというふうに思いますが、いかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) 認定医の数ということでございますが、実際なかなか、先生おっしゃる人数ということに関して言いますと、それぞれの地域での認定医お一人の方が何時間勤務しているかということについても統一をしたことではございません。お一人お一人で長時間勤務しているという地域もございますし、お一人お一人短時間で大人数でやっているというところもございますので、それが単純な比較ということにはならないということをまず申し上げさせていただきたいと思います。
 認定医の確保、各地域で年金機構、そもそもやっていただけるお医者さんの確保ということで大変苦労してございまして、そういう中でいかに公平に的確に認定をやっていただくかということで進めているわけでございます。
 具体的には、現在も、例えば、診断書の記載内容に疑問があるというようなことを認定医の先生がお考えになったときには、診断書を作成したお医者さん、申請された方の主治医ということになりますけれども、そういう方に個別に照会を行うというようなこともやっておりますし、また必要に応じて事務方が過去の類似例を提示するといったサポートもやっているということでございますので、こういうことを通じまして、引き続いて適正な判断ができるように努力をしていきたいと考えてございます。
○田村智子君 いずれにしても、一件を一人が担当するだけですと、やっぱりその方がどういう基準で考えるのかということに左右されるという、これは否定できないというふうに思うんですね。是非検討していただきたいんです。
 それから、今、精神障害、知的障害について見てきましたけれども、これは肢体不自由でも不支給決定の割合はゼロ%から四〇%と幅がありますし、内部障害もゼロから五〇と都道府県間の差というのはやはり見られるわけで、厚労省は今、精神障害、知的障害についてのみ検討や手だてを求められるとしていますけれども、これは私、狭い見方じゃないかなというふうに思っています。
 特に内部障害、これ資料二でお配りをしていますけれども、やっぱり診断書の中の一般状態区分がどの状態かで支給、不支給の判断がされているんじゃないかという指摘はよく聞くわけですよね。しかも、この一般状態区分の記述というのがなかなか本人の状態を当てはめにくいという指摘も医師から出されていて、国会でもこれまでも問題になってきました。
 例えば、五段階の中のウというのを見ると、歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の五〇%以上は起居しているものと。内部障害って症状に波ありますから、日中五〇%起きているかどうかというのを一人の方が判断するって、これ非常に難しい。この一般状態区分についてもやはり見直しということが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) 障害認定基準の一般状態区分表ということでございますけれども、様々な内部障害に共通の判断基準ということで、御本人の日常生活の制限の度合いを表す区分ということで用いられているものでございます。御指摘のとおり、アからオまでの五段階となっているわけでございます。
 内部障害についてこのような区分を用いる意味ということでございますけれども、内部障害、例えば、血液の検査とか体のいろんな指標、検査の結果ということで障害を認定して、例えば身体の障害で手足の障害になるというと、比較的、客観的にそういうときは分かるのでございますけれども、内部障害の場合に、そういう検査結果のみで障害の程度を把握をして判定するというのはなかなか難しい面がございます。病気が個々の日常生活の障害でどういう形で現れるかというところでございますので、そういう検査数値の結果だけでは難しいというのが一つ。
 それから、様々な内部障害の影響を共通の尺度で示すということで、障害の種類ごとの公平性を確保できるということでやっているわけでございます。そういうことを含めて総合的に判断をしているというのがこれまでのルールでございますし、やっているということでございます。
 障害認定基準について、認定現場の意見を踏まえながら疾患ごとの見直しというものを順次やっているところでございますので、私ども、認定現場の意見というようなものも聞きながら、具体的な必要が生じれば対応を検討したいと思います。
○田村智子君 いずれにしても、今の認定医が一人という仕組みを是非検討していただきたい。やっぱり、障害者の方の生活を支援している方々の意見とか家族の方々の意見とか、その支援している方が認定にも加われるような仕組み、これがなければ総合的な判断は非常に難しいということを指摘をいたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。


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