全国どこでも「比例は共産党」/石破首相、核抑止に固執
日本共産党の田村智子委員長は13日、NHK、フジテレビがそれぞれ行った総選挙(15日公示、27日投開票)に向けた党首討論に出演し、核兵器廃絶、裏金問題などで各党党首と議論を交わしました。
NHKの「日曜討論」では、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定を受け、核廃絶に向け日本が果たす役割について討論。田村氏は、被団協が核兵器の非人道性を訴え、核は悪の存在であるという「核タブー」をつくってきたことが評価されたとして、「唯一の戦争被爆国日本がこの立場に立つならば、核を違法な存在とした核兵器禁止条約に参加すべきだ」と主張しました。
自民党の石破茂総裁(首相)は「日本の周りは核保有国だらけ。米国の核抑止が効いている」などと述べ、核兵器禁止条約の批准には答えず締約国会議へのオブザーバー参加は明言しませんでした。日本維新の会の馬場伸幸代表は「抑止力をキープしながらあるべき姿を追求する」、立憲民主党の野田佳彦代表は「理想に向け現実をどう変えていくかという努力をすることだ」などと述べました。
田村氏は、核抑止は核兵器使用を前提としていると指摘し「核廃絶を呼び掛ける国にならなければいけない」と主張。「核兵器には核兵器で構えるような議論はとても危険だ。核廃絶を理想論扱いして棚上げにする議論は80年代、90年代に終わっている」「NPT(核不拡散条約)で核保有国は核の軍縮、廃絶にむけた努力義務を約束した。そして(現在は)核兵器禁止条約もある。政府はこの立場に立つべきだ」と語りました。
フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」では「政治とカネ」の問題で議論が交わされました。
田村氏は、自民党の裏金事件の根本にあるのは「組織的な大犯罪だという認識を石破首相自身が欠いていることだ」と指摘。幹部の指示で裏金がつくられ続けたのは、安倍派の会計責任者の裁判で明らかになっていると述べ、「全ての派閥に政治資金収支報告書の不記載があり、これが裏金になった。組織的な問題であるのに個々人のスキャンダルにしていることが問題だ」と強調しました。
石破氏は「組織的犯罪だという決めつけはやめて」と反論しましたが、各党から「組織的犯罪以外の何物でもない」などの意見があがりました。
社会保障をめぐる高齢者と若者の負担のあり方について議論が移り、田村氏は、高齢者と現役世代を分ける考え方自体が誤りであり、後期高齢者医療制度の導入は「失敗だ」と断言。世界的にみても低い医療費への公的負担割合の増加を訴えました。
NHK日曜討論/田村委員長の発言
何が問われるか
初めに「何が問われる選挙か」をめぐり田村氏は次のように述べました。
田村 まず、裏金隠しを許さないということが求められると思います。この裏金を暴いた私たち日本共産党としては、真相究明とともに、やはり、その根っこにある企業・団体献金の全面的な禁止に踏み込むように求めていきたい。
それから、暮らし経済でも、自民党の政治は本当に行き詰まっているわけです。大企業が利益を上げれば、あるいは株価が上がれば賃金が上がると言われてきたけれども、これは完全に破綻している。やはり、暮らしの応援こそ、日本の経済を立て直し、元気にする道だということです。大幅な賃上げ、労働時間の短縮、社会保障や教育の予算を増やすという政策を大いに訴えて、たたかっていきたいと思います。
また、軍事対軍事のエスカレーション、軍事同盟の強化、その先に果たして平和があるのかということが問われます。ぜひ、憲法9条を生かした平和の外交と、戦争の心配のない東アジアをつくっていくことを訴えていきたいと思います。
政治の信頼をどうとりもどすか/真相解明なしの政治改革はありえない/組織犯罪の認識欠く自民党に改革できない
次に「政治の信頼をどう回復するか」をめぐり、石破茂首相・総裁が選挙での公認問題をめぐり「相当の非公認」を出すなど厳しい対応をしてきたなどとしたのに対し、田村氏は「具体的に何が必要か」と問われ次のように答えました。
田村 まず、真相解明なしの政治改革というのはあり得ないということです。安倍派の会計責任者に対して有罪判決が出ました。その中で事実認定されたのが、幹部からの指示でキックバック(還流)が継続したと。そうすると、いつから、誰の指示で裏金がつくられて、その裏金が何に使われたのかという真相解明にふたをすることはあってはなりません。その点で、組織的犯罪、派閥ぐるみの犯罪が行われたという認識を、石破さんが欠いておられることは、非常に重大だと思います。
今回、裏金を暴いたのは「しんぶん赤旗」のスクープ報道です。私たちは政治団体が買った政治資金パーティー券、ここから裏金を暴くことができました。しかし、企業は、そういう収支報告をしません。パーティー券はほとんど企業が買っています。そうすると、そのパーティー券の購入も含めた企業・団体献金の禁止へと踏み込んでいかなければ、この裏金問題を根本から解決していくということにはならない。
核廃絶への道筋/核抑止力から抜け出し核禁条約への参加を
次に日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことを巡り、核兵器廃絶への道筋が議論に。石破首相が「われわれは『核抑止力』に頼っていることは間違いない現実だ。いい悪いの問題ではない」などと強弁。「核ミサイルを持った国々に取り囲まれている。まずそこから日本を守っていくことを考えながら、いかにして核廃絶へつないでいくかの道は見いだしていきたい」などと述べました。公明党の石井啓一代表や立憲民主党の野田佳彦代表が「核禁条約へのオブザーバー参加」を主張し、日本維新の会の馬場伸幸代表は「抑止力をキープしながら、あるべき姿を追求していく」などとしたのに対し、田村氏は次のように述べました。
田村 今回のノーベル平和賞、本当に素晴らしいことですけれども、その受賞の理由が大変重要だと思うのです。被爆者のみなさんが、核兵器の非人道性をひたすら訴えてきた。そして、核兵器は絶対に使われてはならない、こういう「核タブー」=核兵器は悪の存在である。こういう「核タブー」をつくってきた。このことが、80年近く核兵器を戦争で使わせていないというふうに評価されているわけです。そうすると、唯一の戦争被爆国の日本が、この立場に立つのかどうかが問われている。核兵器は悪であると。使われては絶対にならないと。この立場に立つならば、核兵器を違法な存在とした核兵器禁止条約にやはり参加すべきです。
ところが、いま自民党政治のもとで進められているのが、まさに「核抑止」の強化で、「核抑止」とは、核兵器の使用を前提としているわけです。いざとなったら使うぞという脅しです。やはり、ここから抜け出して、核兵器禁止条約に参加していく。核は使ってはならない、廃絶をと呼び掛ける国にならなければだめだと思います。
物価高対策/中小企業への直接支援による最賃引き上げがカギ/「検討」ではなく足を踏み出せ
また、物価高対策をどうするかをめぐり、石破首相が「(労働の)付加価値をあげ給料をあげるかだ。コストカット型から付加価値型に変わっていかない限り恒久的な流れにならない」とする一方、「消費税は社会保障財源だから減税は考えない」などとしたのに対し、田村氏は次のように述べました。
田村 消費税は廃止を目指して5%というのは当然やるべきだと。私たちは、大企業や超富裕層に対する税の優遇を見直せばできると財源も示して提案しています。それから、物価高騰に負けない賃上げが必要だというのは、みんなが認めている。中小企業がカギだということもわかっている。その中小企業への直接支援が求められるわけですね。私たちは繰り返し提案してきましたけれども、アベノミクス以降、法人税減税が繰り返され、大企業の内部留保は年々膨張している。だったら、アベノミクス以降で積み増した内部留保に時限的な課税をして5年間で10兆円規模の財源をつくって、これを中小企業への直接支援にして最低賃金を1500円に。これ(最賃1500円)は石破さんも言われているわけですから、これはもう実現する政策に踏み出さなければならない。慎重な検討ではなくて、実現を目指して、踏み込んでいただきたい。
社会保障の財源は/軍事一辺倒は暮らし、教育、社会保障を踏みつぶす
議論で出された「社会保障費の増大と財源の問題についてどう考えるか」と問われ、田村氏は次のように答えました。
田村 そもそも軍事費は2倍に増やすわけです。ミサイルにはミサイル、あたかも核兵器には核兵器と石破総裁は発言されたけれども、本当に問題だと思います。この際限のない軍事対軍事のエスカレーションになっていけば、私たちの暮らしは押しつぶされていきます。いま軍事費の総額は、教育予算全体の2倍にまで膨れ上がっているわけです。これはどちらが安全保障、国民の暮らしを守る道なのかと、本当に考えなければならないと思うのです。
核兵器の問題で、核廃絶を理想論扱いにし、棚上げにして、核兵器には核兵器と構えるような議論があるのはとても危険だと思います。理想論の時代は80年代、90年代で終わっているんです。NPT(核不拡散条約)で核保有国は核の軍縮、廃絶これを約束をした。そして(核兵器)禁止条約もある、やっぱり、この立場に日本が立てば、暮らしの予算だって増やすことができるということです。
石破首相が「どんどん軍事費の拡大をするとおっしゃいますけれども、きちんと国民を保護するための、そういう予算もやっていかないと、抑止力にならない。そして、(自衛官の)人件費もきちんと見るべきものを見ていかないと。これを、防衛費を増やしたと非難を受ける筋合いはどこにもない」と述べたのに対し田村氏は「その軍事一辺倒でいいのかということを聞いています」と反論しました。
獲得議席の目標は
最後に、総選挙の獲得議席の目標を聞かれた田村氏は次のように答えました。
田村 目標はオール沖縄(全員の当選)、とりわけ沖縄1区は私たちの議席ですので、これは必ず守るということと、比例での現有議席を必ず守り、前進、躍進を図るということです。
きょうの議論でも、暮らしを守る具体的な政策が自民党の側から何も示されない状況です。どうしたら賃金が上がるかわからない。そしてもう一つ。本当に重大だと思ったのは、世界を見ればですね、軍事同盟強化ではだめだと、対立と排除、こういうブロック政治ではだめだという動きがASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に確実にあるのに、日本がその立場に立たなくてどうするかということです。憲法9条を持ち、唯一の戦争被爆国が、なぜ外交の努力によって平和の構築をしていこうとしないのかと、このことが本当に大きく問われる選挙になっていくと思います。暮らしと平和を守るために全力で頑張ります。
2024年10月14日(月) しんぶん赤旗