日本共産党は13日、党創立102周年記念講演会を党本部と全国をオンラインでつないで開催しました。田村智子委員長が「いま日本を変える歴史的チャンス―暮らし・平和・人権、そして未来社会」と題して講演。自民党政権復活からの12年を振り返り、その破綻と行き詰まりはどういう地点まできているのか、そして新しい政治への転換をはかる道はどこにあるのかを縦横に語りました。政治を変える力は、国民の運動・たたかいと日本共産党の躍進にあると述べ、「新しい時代への扉をひらく歴史的チャンスの時です。日本共産党に入党し、ともに歩もう、時代を開こう」と呼び掛けました。小説家の中島京子さん、全労連議長の小畑雅子さん、作家のアルテイシアさん、総がかり行動実行委員会の高田健さんのビデオメッセージが紹介されました。記念講演は各地の視聴会場や個人宅、スマートフォンなどでも視聴され、ユーチューブでの同時視聴は1万275カ所に達しました。
何より暮らしに希望がほしい―国民の実感です。田村氏は、厚生労働省の「国民生活基礎調査」で、「生活が苦しい」との回答が約6割に上り、統計が始まった1986年以降、最悪の結果となっていると指摘。食料支援の現場からは物価高騰の影響があまりに大きいという悲鳴が聞こえてくると述べました。
暮らしに希望を
田村氏は、物価高騰が止まらない最大の要因は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」による異常円安だと指摘。さらに、実質賃金が減り続ける中、2度にわたる消費税率の引き上げで、国民1人あたり13・9万円も消費税負担が増えたことを示し、「かつてない生活苦は、まさにアベノミクス以来12年の自民党政治の結果です」と強調しました。
一方、アベノミクスからの12年で、大企業の内部留保、富裕層の所得や資産に巨額の金が流れ込み、ため込まれています。田村氏は「こんな不公正でゆがんだ状態を自民党政治は変えようともしない。変える策もありません。まさに、どん詰まり状態に陥っています」と批判。これに対し、日本共産党の「経済再生プラン」の根底にある経済論―「トリクルダウン」(大企業の利益優先)から「ボトムアップ」(暮らし優先)への大転換をはかる立場に焦点を当て、「明日に希望がみえてくる経済政策です」と力説しました。
国民的な運動・たたかいのなかにこそ、「経済再生プラン」実現の希望があります。田村氏は、ストライキなどをはじめ「職場のたたかい」、学費値上げ反対など「若者たちの新たな運動」が巻き起こっていると紹介。「要求の一致点で連帯し、ともに運動を広げたい。同時に多様な要求を、自民党政治を終わらせて新しい政治へ転換する国民的な運動へとつなげていきましょう」と呼び掛けました。
暴走政治を告発
いま、南西諸島をはじめとしたミサイル配備など、「戦争の準備」としか言いようがない事態が進んでいます。田村委員長は「この始まりは、安倍政権による2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定です」と振り返りました。
安倍政権下では、15年に集団的自衛権の行使を可能にする安保法制が強行されました。田村氏は、その後、岸田政権の下では22年12月に敵基地攻撃能力の保有や軍事費2倍化などを盛り込んだ「安保3文書」が閣議決定され、長射程ミサイルの大量配備、戦闘機の共同開発・武器輸出解禁、自衛隊統合作戦司令部の設立などが進められていると指摘。今年4月の日米首脳会談での合意に基づいて、自衛隊を米軍の指揮・統制下に深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃能力を運用する体制―米軍の統合防空ミサイル防衛(ⅠAMD)への参加まで狙われていると告発し、「14年の閣議決定で、憲法解釈を勝手に変えたことが、どこまでも憲法をふみにじるタガがはずれた暴走政治を引き起こし、戦後の日本のあり方が土台から崩されるところまできています」と強調しました。
「憲法解釈を平然と変える政権はどこまでも堕落し、最低限のモラルさえも失っています」と述べた田村氏は、沖縄県への強権政治の問題に言及。自民党政権が辺野古新基地建設をひたすらに強行し、さらには、米兵による性的暴行事件を政府が隠蔽(いんぺい)する事態まで発覚したとして、「国民の命と安全、女性の尊厳よりも、日米同盟を優先するところまで落ちぶれています」と糾弾しました。
田村氏は、日米同盟強化にひた走る自民党政治への怒りのもとで、「オール沖縄」の不屈のたたかい、市民と野党の共闘が生まれたと強調。「自民党政治によって、憲法がこれほど蹂躙(じゅうりん)されているいま、『立憲主義を守れ』の原点に立って、市民と野党の共闘を再構築しようではありませんか」と呼び掛けました。
9条生かす外交
どうしたら戦争の心配のない東アジアをつくることができるか―。田村氏は、日本共産党が憲法9条を生かし、ASEAN(東南アジア諸国連合)と協力した平和外交を求め、外交努力を重ねてきた実践を紹介しました。志位和夫議長の講演「東アジアの平和構築への提言―ASEANと協力して」(4月17日)に各国から熱い共感が寄せられる中、この「東アジア平和提言」をもって、緒方靖夫副委員長が欧州や中国を訪問。昨年12月には自身も、東南アジア3カ国訪問でASEANの最新の取り組みを学んできたことを実感を込めて語りました。
ジェンダー平等、人権をめぐって、日本でも世界でも大きな前進が始まっています。しかし、こうした前向きの変化に対して、安倍政権以降の自民党政治は妨害・サボタージュを続け、世界の流れにも逆行した孤立した姿を示しています。
田村氏は「なかでも自民党の孤立が鮮明になっているのが選択的夫婦別姓制度への妨害です」と指摘。先の通常国会での党首討論では、日本経団連が選択的夫婦別姓の早期実現を政府に求めていることを示して迫ったが、岸田文雄首相は「家族の一体感に関わる問題」などと答弁し、棚上げにする姿勢に終始したとして、「明治時代の『家制度』に根ざした古い価値観を壊したくない、ただそれだけのことではないか」と厳しく批判しました。
ジェンダー平等
田村氏は、日本共産党が4年前の党綱領の一部改定で「ジェンダー平等社会をつくる」を掲げたことで多くの運動に学び連帯してきたと述べ、さらに努力を進める決意を表明しました。
「今、世界でも日本でも、資本主義がもたらす害悪が深刻になっています」―。田村氏は、その一つとして誰もが痛感しているのが気候危機だと指摘。気候変動に関する被害総額は20年間で世界で2・2兆㌦(国連・国際防災戦略事務局報告)に及んでいると紹介しました。日本共産党は「気候危機打開のための2030戦略」を打ち出し、二酸化炭素(CO2)排出ゼロにむけた実効性ある対策を求めるとともに、「あとは野となれ山となれ」の「『利潤第一主義』から抜け出すことが必要だという声を今こそあげていきたい」と語りました。
「人間の自由」を
田村氏は「社会主義、共産主義は自由がない」という声が多くあるとも指摘。1月の第29回党大会で、「人間の自由」こそが、社会主義・共産主義の目的、特質であることを打ち出し、大会決定の実践として志位和夫議長が「学生オンラインゼミ」(4月、民青同盟主催)で講演「『人間の自由』と社会主義・共産主義―『資本論』を導きに」を行ったと紹介。マルクスの『資本論』『資本論草稿集』に立ち返った研究により、資本家によって搾取されているのは「カネ」「モノ」だけでなく、「自由な時間」が奪われていること、「自由に処分できる時間」―「自由な時間」こそが、人間と社会にとって「真の富」であり、万人に十分な「自由な時間」が保障され「自由で全面的な発展」が実現する社会にこそ、「マルクスの求めた社会主義・共産主義の最大の真髄があることが解明されました」と強調しました。
田村氏はその上で、「マルクスのこの呼び掛けは、現在の日本に生きるすべての人たち、とりわけ若い世代のみなさんの心に響くものではないでしょうか」と語りました。
日本共産党の未来社会の展望は「夢にみるはるか先の話」ではなく、今の自民党政治による暮らし破壊の政治とたたかい、資本主義の枠内で人権を守り、暮らしをよくするルールをつくることと地続きでつながっていると指摘。「そういう大きな展望、ロマンのなかにいまのたたかいを位置づけて、ともにたたかおうではありませんか」と訴えました。
歴史的チャンス
最後に田村氏は、国民が主人公を貫き政治を変えようという立場とともに未来社会と結びついた日本共産党の名前も魅力となる時代が始まっているとして、「政策も未来社会の展望も知らせれば知らせるほど共感や支持を広げることができる歴史的なチャンスを迎えていると確信しています」と強調しました。
自民党など古い政治にしがみつく勢力は激しい攻撃、妨害をしてくるが、「党創立から102年、先人たちも私たちもこうした攻撃や妨害にさらされながら新しい時代への羅針盤を持ち、どんな困難にも屈しないたたかいで社会を変えようと歩み、党を強く大きくすることで困難を打ち破ってきました」と語り、「日本共産党への入党を心から呼び掛けます。ともに歩もう、時代を開こう」と呼び掛けました。
2024年7月14日(日) しんぶん赤旗