活動報告

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改定都市緑地法案/公園の樹木保全こそ/田村氏が強調/参院国交委

 改定都市緑地法が22日の参議院本会議で、自民、公明、立民、維新、国民の賛成多数で可決・成立しました。日本共産党とれいわは反対しました。

 21日の参院国土交通委員会で日本共産党の田村智子議員は、樹木の保全に焦点を当てて質問。「長い年月をかけて生育する樹木は、低木や芝生に比べ格段に重要。公が関わる公園での樹木保全こそ重要だ」と指摘しました。

 東京都内では、都立日比谷公園や葛西臨海水族園の再整備、神宮外苑再開発などで、大量の樹木伐採のおそれがあり、多くの市民が反対の声を上げています。田村氏は、これらの開発は「都市緑地の確保に逆行するのではないか」とただしましたが、斉藤鉄夫国土交通相は「都において適切に対応される」との答弁を繰り返しました。

 法案は、緑地確保の計画があれば、国がお墨付きを与え、融資支援もして民間事業者による都市開発をさらに進めようとしています。田村氏は「高木を伐採しながら、ビルの屋上に庭園を造るとか、太陽光パネルを設置することは、緑との調和とは呼べない」として樹木伐採の規制を求めました。

 また緑地の面的把握(緑被率)に加え、土地面積に対して枝葉が茂る部分が占める割合(樹冠被覆率)の目標を国が持つべきだと主張。斉藤氏は「検討する」と答えました。


2024年5月27日(月) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 都市緑地のうち、樹木にフォーカスをしたいと思います。

 樹木は生物多様性を高めます。雨水を地中に浸透させるだけでなく、豪雨の際に枝葉や幹が保水をし、その後蒸発させる機能を持つことも注目されています。特に樹齢が長い高木は、樹冠、樹の冠と書きますが、枝葉が大きく張って強い日差しを遮り、気化熱によってヒートアイランド現象を緩和する、こういうかけがえのない役割を果たしています。

 都市の緑地保全のためには、何十年、百年という年月を掛けて生育している樹木の保全は低木や芝生と比しても格段に重要というふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 年月を掛けて生育した高木、高い木、樹木ですね、は、CO2の吸収源や生物の生息・生育空間としての重要なものでございます。今回の民間事業者等による優良緑地確保計画の認定制度においても、高い評価を与えることを検討しております。

 一方、長期にわたり適正な管理が行われず、荒廃した樹林や、樹勢、樹の勢いと書きますが、樹勢の衰えや病虫害が見られる高木は、倒木等の安全面の懸念に加え、CO2の吸収源や生物多様性の確保の観点からも課題があり、伐採による更新等も含めた対応が必要になる場合もあると認識しております。

 芝生につきましては、吸収源や生物多様性の観点からの機能は高木に劣るものの、町のにぎわい創出や健康増進に資する活動の場などとして、ウエルビーイングの観点から評価できるものと考えられます。

 いずれにいたしましても、高木や低木、芝生などが適正に整備、管理され、地域の状況に応じ求められる役割を果たすことが重要と、このように考えております。

○田村智子君 樹木の保全ですからね、倒れるような状況にならないようにきちんと手当てをすること、こういうのも含めての保全というのを、重要性を認めていただきました。

 それでは、国の基本方針では、都市緑地の確保について、都市公園の樹木あるいは街路樹、この保全、確保は位置付けられるのでしょうか。

○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。
 本法案に基づき国が定める基本方針には、緑地の保全及び緑化の推進の意義及び目標等を定めることとしております。

 都市公園、道路、河川等の公共施設の緑地は気候変動対策に資するCO2の吸収源等として位置付けられていることから、基本方針においてはこれらを含めて目標を設定することを想定をしております。
 以上でございます。

○田村智子君 それでは、今からが問われるわけですけれども、都市緑地を戦略的、効果的に保全するためには、公が関わっている特別緑地保全地区、あるいは都市公園、都市計画公園の樹木、これどうするのかがとても大切になってくると思うんです。

 まず確認したいんですけれども、この建築物が規制される特別緑地保全地区の総面積、そして都市公園、都市計画公園の総面積、それぞれどれだけですか。

○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。
 令和四年三月末時点でございますが、特別緑地保全地区として都市計画決定された面積が六千六百七十一ヘクタール、それから都市公園として供用された面積が十二万八千五百九十六ヘクタール、公園として都市計画決定された面積が十一万一千六百九十三ヘクタールとなっております。
 以上でございます。

○田村智子君 総面積でも圧倒的なんですよ。特別緑地保全地区の二十倍、三十倍ぐらいですかね、それがこういう公園になるわけですね。
 ここでの樹木の保全、これどうするのかということは極めて重要だと思います。ところが、先ほど来あるとおり、東京では、樹木の大規模な伐採、無理な移植の計画がこの公園で相次いでいるわけです。

 江戸川区にある都立葛西臨海水族園、都市計画公園である葛西臨海公園内の施設です。敷地内に新しい水族館を建設し、太陽光パネルを設置する新施設整備のためとして、水族園の約半分を占める水辺の自然エリア、五月十九日をもって閉鎖されました。新しい水族園の計画敷地では、樹木一千七百本のうち、六百本を伐採、八百本が移植されるというんですね。三十五年掛けて森に育った樹木を切り、水辺の自然を壊すことに、水族園の関係者あるいは多くの利用者から批判と疑問の声が起きているのは当然のことだと思います。

 都市の緑の保全が重要だと、国も基本方針に樹木も位置付けるというときに、都市計画公園内のPFI事業で、一千七百本の樹木のうち一千四百本が切り倒されたり、移植だといって引っこ抜かれると。これ、移植と言いますが、無残に枝を切り落とされて移植されるわけで、根付くかどうかも分からないです。根付いても元の姿に戻るかも分からないです。

 このように、大量に木を切る再整備をデベロッパー主導で自治体が進めることは、本法案が趣旨とする都市の緑地の確保に逆行しているのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今回の法案は、地方公共団体や民間事業者等における緑地の保全や緑地の機能増進に関する取組を後押しし、官民一体となって効果的に緑地の確保を進めていくための全国的な制度を整えるものでございます。

 そして、今回の法案は、樹木を保全、整備していくことが重要であるとの考えに基づき提出しているものですが、樹勢の衰えや病虫害が見られる樹木は、倒木等の安全面の懸念に加え、CO2の吸収源や生物多様性の確保の観点からも課題があり、伐採による更新等も含めた対応が必要になる場合もあると認識しております。

 いずれにいたしても、個別の都市開発事業につきましては、従来どおり、法令にのっとり、事業者や都市計画等に係る権限を有する地方公共団体におきまして地域の実情に応じ適切に対応されるべきと、このように考えております。

○田村智子君 適切ではないから問題にしているんですよ。三十五年の木で樹勢が衰えていたら、それはどういう管理していたんだということになるんですよね。再開発のために次々と切られているということを問題にしているわけです。

 法案では、緑と調和した都市環境整備に民間投資を呼び込むために、開発事業のうち緑地を確保する取組や脱炭素に資する事業について国が認定制度をつくり、財政面でも支援を行うというふうにしています。これが、例えばビル建設のために高木を伐採しましたが、屋上庭園を造りましたとか、太陽光パネルの設置に邪魔だから樹木を切って、だけど芝生を張りましたと、こういうような事業を緑との調和と言うわけにはいかないと思うんです。あの葛西の公園で起きていることだって、太陽光パネル、新しい施設と、それで樹木伐採やっちゃうわけですから。

 これ、認定するというときの要件として、樹木伐採、さっき言ったみたいに倒木の危険とかは別ですよ、しかし、原則として樹木伐採はやっぱり禁止するというような要件が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) この法案におきましては、創設される脱炭素都市再生整備事業の認定制度によりまして、再生可能エネルギーの導入等に加え、一定規模の緑地の創出を図る先進的な取組を推進することとしております。

 委員から、認定事業においては樹木伐採を認めてはならないのではないかとの御指摘がありましたが、この認定に当たりましては、従前より、緑が減少するような取組について積極的に評価することは基本的には難しいと考えております。

 その上で、さきにお答えしたように、樹勢の衰えや病虫害が見られる樹木は、倒木等の安全面の懸念に加え、CO2の吸収源や生物多様性の確保の観点からも課題があり、伐採による更新等も含めた対応が必要になる場合もあると認識しております。こういう考え方での制度でございます。

○田村智子君 冒頭で、緑といったときの樹木の役割を強調しました。やはり、樹木というのは単なる緑じゃないんですよ。芝生と全く違うんですよ。そこで厳しい認定制度を私はつくるべきだというふうに思います。

 都市における緑地保全で焦点となっているのがまさに樹木伐採なんですね。ほかにも、日本初の西洋式庭園である日比谷公園、再整備だといって樹木伐採、既に一部で行われています。イベント広場や商業ビルとつなぐ巨大デッキなど、これを優先して、歴史的な庭園が、その歴史や文化よりも商業施設と一体に観光客をどう呼び込むかを優先させて開発されようとしているわけです。

 神宮外苑開発、先ほどもお話ありました。百年の計の都市森林で三千本もの樹木が伐採されるおそれがある。ユネスコの諮問機関、ICOMOSの国内委員会が再開発中止を要請する警告、ヘリテージアラートを発し、多くの著名人が同様に声を上げています。この事業は、日本スポーツ振興センターが四者の事業者の一つであり、施行事業者四者の中に国交省が所管する都市再生機構、URがあるわけです。独立行政法人が二つも絡んでいるのに、中心デベロッパーの三井不動産主導で、樹木伐採止めようともしていません。

 日比谷公園、神宮外苑、いずれの樹木伐採も都市計画法を根拠にした都市計画公園の中で起こっていることです。こうした樹木伐採は、緑地保全をうたった本法案の目的とは矛盾すると、せめてそういう問題意識を大臣示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 先ほど申し上げましたとおり、この法案は、地方公共団体や民間事業者等における緑地の保全等に関する取組を後押しし、官民一体となって緑地の確保を進めていくための全国的な制度を整えるものでございます。個別の都市開発事業につきましては、従来どおり、法令にのっとり、事業者や地方公共団体において適切に対応されるべきと考えております。

 国土交通省としては、法に基づき、権限を有している東京都において適切な対応がなされることを引き続き期待しております。

○田村智子君 それでは樹木よりビジネスが優先されてしまうわけですよ。
 衆議院の法案審議で、樹木保全のため、緑地を面的に把握する緑被率だけでなく、一定面積の地面に対して枝や葉が茂っている部分が占める割合、樹冠被覆率の目標を持つよう、我が党の議員が求めました。ここが重要なんですよ。緑、緑言うんだけれど、緑が、こう上から見て緑で覆われていますねという面的なことだけじゃなくて、体積で見る、木が枝葉を張っているのがどこまで育っているかというのを見る、これ非常に重要なんですよ。これを目標を持つべきだというふうに衆議院の方で質問したら、大臣の答弁は、やっぱりそれでは面的把握ができないという答弁だったんですね。

 私たちは、二つの目標を持つべきだと求めたいんですよ。緑被率、面的に覆っているということと、体積、枝葉がどれだけ張っているかという、この両方で見るべきではないのかと。なぜかといえば、芝生はすぐに造れます。一年あれば造れるでしょう。樹木はそういうわけにいかないんです。何十年という年月で都市の緑となっていく。生態系、環境に与える影響も芝生と樹木は全く違う。緑の体積を守るという視点が都市緑地の保全には不可欠で、ニューヨーク市もメルボルン市もこういう樹冠被覆率の目標というのを持って町づくりを進めているわけです。

 改めてお聞きします。緑被率とともに樹冠被覆率も国が目標を持つことが必要ではないですか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今回定めることとしております基本方針におきまして、国における緑地の保全、緑化の推進の目標を定めることとしております。その際に使用する指標につきましては、御指摘のように緑被率や樹冠被覆率などがありますが、評価する目的や計測範囲の広さ等によって適切に選択していくことが重要であると認識しております。

 今後、基本方針の策定に当たり、どのような指標を活用するかにつきましては、地方公共団体や有識者等の意見を踏まえ、検討してまいりたいと思います。

○田村智子君 是非、樹木に注目をいただきたいというふうに思うんですね。先ほど大手町とか赤坂とか話ありましたけれども、確かに全部がビルになってしまうよりは緑地を造る方が重要だとは思います。しかし、超高層ビルに囲まれる緑地でいいのかと。これ以上超高層ビル造って、緑地造ったからいいですよということになるのかと。脱炭素という観点で見ても、それは超高層ビル建てるときに排出されるCO2、建てて、それがランニングコストでどんどん排出されるCO2、それと僅かばかり造りました緑地が吸収するCO2、どっちが多いかなんて明らかなんですよ。

 是非そういうことを考えたやっぱり国の基本計画を持つべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○委員長(青木愛君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、都市緑地法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 第一の理由は、民間事業者の緑地確保の取組に国がお墨付きと資金援助を行うことで、開発事業を一層進めやすくするための仕組みづくりとなっていることです。

 法案は、緑地確保事業者が作成する優良緑地確保計画を国土交通大臣が評価、認定する制度を創設するとともに、認定を受けた取組について都市開発資金の無利子貸付けを受けることができるとしています。

 現在、東京都などの大都市部において、超高層ビル建設を中心とする都市再開発が次々と行われています。こうした従来の開発事業に国が認める緑地確保事業というお墨付きを与え、国際的な評価を高め、更に投資を呼び込もうというものであり、一部のデベロッパーを優遇し、東京一極集中を更に推し進めるものと言わざるを得ません。

 第二は、民間事業者による緑地の機能維持増進事業として実施するための都市計画決定や事業認可の手続を簡素化することは、当該手続における住民の関与を弱めることになります。

 公告縦覧して住民からの反対意見の提出がなければ、都市計画審議会への付議を要しないということになります。現行の手続では、計画案を公告縦覧して反対意見が出されなくても、都市計画審議会に付議することになっています。それは、都市計画案に住民の意見を反映させる重要なプロセスだからにほかなりません。

 第三に、国の基本方針、都道府県の広域計画は、市町村が策定してきた緑の基本計画の自主性を損ないかねないことです。しかも、国の基本方針は、リニアや新整備新幹線、新東名高速道路などの大型開発を推進する国土形成計画との調和を保つこととされています。

 また、法案審議では、現在、神宮外苑再開発など、都市公園や都市計画公園の再開発事業により大量の樹木伐採が行われようとしていることを指摘しても、国交大臣、国交省とも、都市緑地確保と矛盾するという認識すら示しませんでした。

 脱炭素、保水能力、ヒートアイランド現象の緩和など、高木の樹木林が果たす役割は極めて重要であり、何十年、百年という年月を掛けて育まれた樹木林の保全は喫緊の課題です。デベロッパー主導の開発、観光やビジネスを優先させた公園の活用から、百年の計に立って開発を規制し、都市緑地を保全する都市計画こそ求められていることを指摘し、反対討論を終わります。


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