日本共産党の田村智子議員は10日、参院決算委員会で、メガソーラー(大規模太陽光発電施設)の設置に伴う森林伐採などの大規模開発について適切な対策や規制をするよう求めました。
田村氏は、山梨県で、富士山麓の国立公園敷地内の自然林に穴があく開発や、土砂災害の危険がある傾斜地での開発が、住民への説明のないまま民間事業者によって行われていると指摘。「生物多様性やCO2削減と矛盾するのではないか」と質問しました。
塚本瑞天環境省自然環境局長は、メガソーラーの設置は生物多様性に配慮すべきとし「自然公園法の省令を速やかに改正する予定だ」と答えました。
田村氏は、国立・国定公園以外の地域でも、自治体が適切に対応できる仕組みの検討とともに、住民にも建設計画の情報が伝わるようにすべきだと主張しました。
木村陽一経産省省エネルギー・新エネルギー部長は、発電所計画の情報提供など「まずは地方公共団体と連携したい」としました。
田村氏は、甲府市善光寺地区の開発事業者が土砂災害の特別計画地区を認識せず、住民説明会も拒否していることを告発し、対策を要求しました。佐藤英道農水省政務官は「保安林以外の民有林についても、開発許可制度の適切な運用がはかられるよう都道府県を指導する」と答弁しました。
(しんぶん赤旗、2015年2月14日(土))
【議事録】
今日は次の問題に移ります。里山などの環境保全について質問します。
東京都の稲城市で、民間の区画整理事業として南山という里山を切り崩して、その土砂で隣接する谷、根方谷戸というところを埋め立てて盛土をするという計画があります。これは十四戸の住宅のすぐ後ろに高さ四十メートルの盛土が造られることになってしまい、計画の中止や見直しを求める運動が粘り強く続けられています。
この根方谷戸には絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオが生息をしています。これは両生類で、水辺に産卵をして繁殖をする体長十センチほどの小さな生物です。東京都の環境影響調査では、生息域をほかに確保するなど適切な対処が講じられているとされましたが、その実態は、根方谷戸でトウキョウサンショウウオを捕まえて別の場所に移すと。その別の場所の林というのは水辺がないものですから、行く行くは人工池を造るということになっているんですけど、今は金魚すくいで使うようなプラスチックのおけを置いてあるだけというものなんです。それで、二〇〇七年からの五年間で一千三百三十二の個体を捕まえて移しましたが、生存が確認できているのは僅か六十五個体だということなんですね。
環境大臣、これは生物多様性の確保ということに矛盾するようなやり方じゃないかと思いますが、感想でも構いません、お願いします。
○国務大臣(望月義夫君) 本事業計画でありますけれども、東京都の環境影響評価条例に基づいて環境影響評価がされたものと伺っております。
環境大臣として、これ東京都のことになっておりますので、コメントする立場ではございません。しかしながら、我々環境省としては、今お話ございましたように、生物多様性の保全、これは大変重要なことだと思っております。開発に際しては絶滅危惧種の保全等の配慮が必要であると我々認識をしております。この事例についても、条例による環境影響評価の結果に基づき適切な対処がなされるべきものと考えております。
○田村智子君 適切な対処がなされていないと私は思っているんですけれども。
これはトウキョウサンショウウオだけじゃなく、ここは問題が大きくて、この根方谷戸というのは、一九五八年の狩野川台風で大崩壊をして広範囲に水害をもたらしたことから、斜面が保安林に指定をされて、十か所が砂防ダム造られています。埋め立てるにはこの保安林指定の解除が必要で、区画整理組合は東京都に今解除の申請を提出しているというふうに聞いています。
一般論としてお聞きをしますが、保安林の解除というのはどのような場合に行えるのか、端的にお願いします。
○政府参考人(今井敏君) 一般論としての保安林の解除要件についてのお尋ねでございます。
保安林制度につきましては、森林法に基づきまして、水源の涵養ですとか災害の防止などの公共目的を達成するために重要な森林を保安林として指定して保全を図る、そういう制度でございます。そうした保安林の公共性に鑑みまして、農林水産大臣による保安林の解除は、森林法第二十六条の規定がございまして、そこでは、指定理由が消滅したときと公益上の理由により必要が生じたとき、この二つに限定しているところでございます。
○田村智子君 そもそも公共事業でもない区画整理事業ですから、これは公益上の理由があるとは私は到底言えないと思っています。
根方谷戸の埋立てについて、私は実は二〇一〇年の行政監視委員会でも取り上げまして、その当時の計画では埋立地五・六ヘクタールは事業保留地というふうにされていましたが、私の質問後、人工緑地にして稲城市に無償提供をするという計画変更が行われたんです。この方が、市への無償提供ですから公益性の理由が発生すると思ったのか、保安林の解除の承認が得られやすくなると考えての変更ではないのかという指摘もあるわけですが、そもそもの自然緑地である谷戸を埋め立てて人工の緑地を造るということに、これは公益性があるとは到底考えられません。
また、南山の土砂というのは稲城砂と呼ばれていて、大変崩れやすい性質であることも分かっています。隣接する川崎市でこの土砂を受け入れる計画がありましたが、市議会でも問題となって稲城砂の受入れは撤回をされています。しかし、東京都と稲城市は盛土にこれを使用しても大丈夫だと。その根拠となる基準は、毎時六十ミリメートルの降水量、耐震強度は二百四十五ガルなんですが、昨年広島で発生した土石流災害を見ても、その降水量は毎時百二十ミリメートルでした。また近年、二百四十五ガルを超える地震が発生しているというのはもう御承知のとおりだと思います。
根方谷戸の保安林解除、これ、こうしたことを考えると私はすべきではないということをこの場でも申し上げたいと思いますし、東京都から国に申請があった場合に、是非、住民からこのように出されている懸念を踏まえて厳正な審査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(今井敏君) 御質問のあった案件につきましては、現時点ではまだ国の方に申請書が届いておりませんので、今後の取扱いについて具体的にお答えすることができませんけれども、今後、本件保安林の解除申請書が国に進達された場合には、森林法に基づきまして保安林指定目的の確保の観点から適正かつ厳正に審査を行う考えでございます。
○田村智子君 次に、メガソーラーの設置に伴う森林伐採や大規模開発についてお聞きします。
再生可能エネルギーの開発と普及というのは大変重要な課題ですけれども、この発電所の建設が環境破壊を引き起こすということになれば、これは再生可能という目的からも逸脱することになると思います。
今、山梨県では、民間事業者が次々とメガソーラー建設計画を進めていて、県が把握しているだけでもその総面積は県の面積の〇・二%、一千七十七ヘクタール。これは、県内に昭和町という自治体があるんですけれども、この町全部の面積よりも広くなってしまうということなんですね。
山梨県がまとめた事例を資料として配付しました。ちょっとカラーでなくて見にくくて申し訳ないです。
鳴沢村に九十三ヘクタール、ここは富士山麓の国立公園の敷地内で、ここに自然林に大きな穴が空くような開発となってしまいます。資料の二ページ目ですね。それから、甲斐市菖蒲沢地区、二十九ヘクタールのメガソーラーを隣接させて四か所造ると。これ百十三ヘクタールに上ります。身延町下八木沢地区では急傾斜地に十三ヘクタール、ここは崩壊土砂流出危険地区なんですけれども、既に二ヘクタールが無断伐採されていることが分かっています。八ケ岳山麓の北杜市小淵沢町、ここにも二ヘクタール、別荘地で、これ隣接して既にメガソーラーが次々と設置されていて、騒音の問題など住民とのあつれきが深刻なものになっています。また、甲府市善光寺山門付近の傾斜地一・六五ヘクタール、この開発地の真下は保安林で、その下の地域は土砂災害の特別警戒地区に指定をされています。これらの地域では住民への説明もないままに突然大規模な開発が行われ、不安や反対の声が今急速に広がっています。
環境大臣、こうした大規模な森林伐採を伴うような開発、これは生物多様性やあるいはCO2削減の方向と矛盾することになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(塚本瑞天君) 大規模な太陽光発電施設を始め大規模な開発行為については、生物多様性に十分配慮することが重要と考えています。
大規模な太陽光発電施設を建設する場合、国立公園や国定公園内では自然公園法による開発規制があります。また、自治体によっては条例等による対応を進めているところもございます。
国立公園あるいは国定公園内に関しましては、大規模太陽光発電施設に関する検討委員会を開催いたしまして、昨日、最終回で基本的考え方を取りまとめていただいたところでございます。この検討会では、国立公園それから国定公園が優れた自然の風景地であり、特に樹林地や自然草地などは生物多様性の保全上重要であることから、その立地から除外すべきだというような意見が出されております。また、これらの点を国立公園、国定公園の特別地域における審査の基準に明確に位置付けること、そして、国立公園、国定公園の普通地域においても届出を義務付けるべきであるとの御提案をいただきました。これを受けて、自然公園法の省令を速やかに改正する予定でございます。
○田村智子君 これ、国立や国定公園での規制というのは是非急いでほしいんですけれども、自然の森林や自然の草地、草の部分ですね、こういうところを開発するというのは、それ以外の地域でもやはり深刻な実態をもたらしてしまうと思うんです。ところが、現状では自治体の条例で規制を掛けるしかないということで、新しく起きている問題ですから、これ自治体の方も追い付いていないというのが現状だと思います。
山梨県の条例を見ますと、環境アセスの対象は三十ヘクタール以上の大規模開発とされていて、先ほど甲斐市の事例を紹介しましたが、二十九ヘクタールなんですよね。これを複数造るんですよ。合わせれば超えるんだけど、ぎりぎりでやって環境アセスからも擦り抜けると、こういうやり方が行われているわけです。
山梨県は、発電設備認定時に地方公共団体が関与できる仕組みの創設をしてほしいと、資料の一ページにありますけれども、このように国に求めています。これは、発電設備としての認定というのは経済産業省の管轄で、事業者からの建設計画というのもまず経済産業省が把握をしているわけです。自治体がその計画を把握し適切に対応できるような仕組み、これ早急に必要です。加えて、それだけでは住民の合意には必ずしもつながらない。だから、住民にも建設計画の情報が伝わるような仕組み、これは急いで検討することが必要だと思いますが、経済産業省、お願いします。
○政府参考人(木村陽一君) まず、メガソーラーなどの再生可能エネルギーによる発電事業につきましては、地域住民の御理解を十分得ながら、自然環境などと調和を図りながら進めていくことが重要であると認識してございます。
このため、私どもの固定価格買取り制度の法律のまず運用といたしましても、土地の造成、あるいはその施工の前に経済産業大臣の認定がございますけれども、そこで事業実施に必要な関係法令、例えば自然公園法でございますとか森林法でございますとか、条例もございます。そういったものの手続の状況をまず提出させた上で、認定案件の詳細情報とともに発電設備が立地する地方公共団体に提供していく予定にしてございます。
また、固定価格買取り制度の地方自治体の関与の在り方につきましては、一部の事務、権限の地方への移譲も含めまして、本年中に結論を得るべく検討を行う予定にしてございます。
他方、メガソーラーの開発におけまして、環境保全あるいは土地利用の調整につきましては、こうしたことを目的とする法令あるいは条例により対処されるということがまずはやはり基本ではなかろうかなというふうに思ってございます。
地域の実情を踏まえて住民自治の観点から柔軟な対処を行うという観点から、固定価格買取り制度の中で一義的に何かを義務付けていくということにはやはり慎重な検討を要するものというふうには考えてございまして、さきに申し上げました取組を通じまして地方公共団体と連携をまずは深めながら、再生可能エネルギーの調和の取れた導入を目指してまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 甲府市善光寺地区の開発については、我が党の県議が事業者からの説明を受けました。この事業者は、開発地のすぐ下が特別警戒区域であることも認識していなかったと。住民説明会をこの県議が求めますと、寝た子を起こすからできないと拒否をし、土石流などの懸念を指摘すると、法律には抵触していない、災害が起きても私たちの責任ではないと開き直ると。県議は現地に入れたんですけれども、写真撮影も駄目だ、地域住民や専門家の同行も認められなかったと。
実は、地元に土木工学や防災の研究者が住んでおられまして、この地域についてこう述べておられるんですね。斜面の保水能力は大いに低下し、斜面崩壊が早まるでしょうと、更に恐ろしいのは深層崩壊に至ることだと、こういう危険性を指摘をしているわけです。
保安林への影響の調査とか、その保安林含む山腹、この保全を視野に入れた対策や規制、これは農水省としても検討していただきたいんですが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(佐藤英道君) 御指摘のとおり、森林は国土の保全や水源の涵養等の公益的機能を有しておりまして、これらの機能を持続的かつ高度に発揮させることが重要であると認識しております。
このため、森林法に基づき、水源の涵養、災害の防止等の目的を達成する上で特に重要な森林を保安林に指定し、一定の伐採、転用規制等を課しているところでございます。また、保安林以外の民有林につきましては、森林法に基づき、森林の有する災害の防止等の公益的機能を阻害しないよう、一ヘクタールを超える開発行為を都道府県知事による許可制としているところであります。
農林水産省としては、森林の有する公益的機能の確保等の観点から、保安林以外の民有林についても開発許可制度の適切な運用が図られるよう、都道府県への指導をしっかりと行ってまいります。
○田村智子君 これ、原発や化石エネルギーに代わる再生可能エネルギーというのは本当に大切だと思いますが、環境保全と両立しながら開発されるように、無秩序な大規模開発への規制の仕組みというのを是非とも自治体とも協力して検討してほしいと思います。