活動報告

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日本年金機構の有期雇用職員の雇止めの中止に関する質問主意書

質問第一九号

日本年金機構の有期雇用職員の雇止めの中止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十二月二十六日

田村 智子   

       参議院議長 山崎 正昭 殿


   日本年金機構の有期雇用職員の雇止めの中止に関する質問主意書

 日本年金機構は、社会保険庁から大幅に正規雇用の職員の定数を削減し、準職員、アソシエイト職員、特定業務契約職員、アシスタント契約職員(以下「有期雇用職員」という。)が、その運営の相当部分を担う前提で体制が構築された。その後、年金記録問題対応のため、有期雇用職員を大幅に採用し、仕事の減少とともに雇止めを行った。その際、年金記録問題対応の有期雇用職員に加えて、同時期に他の目的で雇用された有期雇用職員についても、仕事はあるにもかかわらず大量の雇止めを行い、その後欠員補充のための採用を行っている。
 今後も、二千名を超える規模で就業規則上の雇用期間満了者を雇止めしようとしている。これは、継続的な業務に有期雇用職員を充て続けることを前提としたものであって、二〇一四年三月三十一日の参議院決算委員会において安倍内閣総理大臣が私に対し、「この非正規の割合がどんどん増えていくということについては、それは好ましくない」と答弁したことに照らしても許されない。日本年金機構の業務遂行や国民に対するサービスの質を落とすものであって、早急な見直しが必要である。
 また、雇止めの対象となっている職員の大半は女性職員である。安倍政権が「女性の活躍」を目指すというのであれば、政府の足下で起こっている女性職員を中心とする大量の雇止めをやめさせなくてはならない。
 この立場から、以下質問する。

一 日本年金機構の有期雇用職員の数並びに①有期雇用職員のうち就業規則上の期間更新の上限に達しているため、次回の契約を更新しないこととしている者、②①に該当する者以外で準職員、アソシエイト職員のうち契約更新時に六十歳に到達しているため就業規則上、次回の契約を更新しないこととしている者及び③①、②以外の者のうち労働契約上、次回の契約を更新しないこととしている者(以下「雇用期間満了予定者」という。)の数をそれぞれ男女別に明らかにされたい。

二 日本年金機構のお客様相談室在籍の職員数及びそのうち雇用期間満了予定者の数について男女別、日本年金機構のブロック毎に明らかにされたい。また、お客様相談室在籍の職員のうち、無期雇用契約に転換した者の数を男女別、日本年金機構のブロック毎に明らかにされたい。

三 1 有期雇用職員は日本年金機構職員の過半数を超え、年金相談業務や適用・徴収業務など年金機構の中核において多数の有期雇用職員が働いている。その多くが専門性と長年の経験を必要とする業務である。例えば、年金事務所での年金相談業務は、業務の前提として制度創設以来の数次の改定とその経過措置という膨大かつ複雑な制度を熟知する必要がある。また、年金記録の確認についても米占領下における在日米軍基地内での労働(神奈川)、機織産業(京都)、温泉観光地(大分)、みかん農業(愛媛)、自動車産業(愛知)など、その地域の産業の特色や変遷によって、対応や調査方法も異なることから、マニュアルにはない経験が必要な業務となっている。適用・徴収業務についても同様である。
 年金相談業務、適用・徴収業務は人や企業と直接対峙して行うという性質上、コンピュータによる合理化による人員減は期待できない。ところが、日本年金機構は、今後も毎年数千人規模で五年の契約期間の上限に達した有期雇用職員を雇止めにし、新たに職員を雇うというやり方を変えようとはしていない。これでは有期雇用職員の中に十分な経験が蓄積されないし、新入職員の教育のためにかけた資金や時間、人員の浪費と言わざるをえない。有期雇用職員の雇止めの方針を改めることは有期雇用職員の能力向上、ひいては日本年金機構の力量や国民サービスの向上、個々の日本年金機構職員の生活の安定につながることは明らかであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
2 日本年金機構が来年三月で雇止めを行おうとしている期間満了予定者の多くが担っている業務は、年金記録問題の対応ではなく継続的な業務であり、日本年金機構が五年で雇止めをする業務上の合理的理由は見いだせない。日本年金機構が来年三月で期間満了予定者を雇止めしようとしているのはなぜか、政府が把握している理由を示されたい。また、その理由を不適切と考えず容認するのか、政府の方針を明らかにされたい。
3 二〇一三年二月二十一日の参議院予算委員会において、私に対し田村厚生労働大臣(当時)は日本年金機構の有期雇用職員の雇止めについて「継続的に雇用していくことをいたしますと、この雇い止め法理等々、やはり期待権が生じてその後雇い止めをするときにやはりいろんな問題が生じるのであろうというふうに御判断をされている」と答弁している。期間満了予定者に比べて年金記録問題に従事している職員の数は圧倒的に少なく、その理由は成り立たないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 年金給付事務に関わる日本年金機構の事務処理誤りが大きな問題となっている。このため、厚生労働大臣が定める中期目標で、「年金給付関係の事務処理誤りが依然として発生している状況を踏まえ、要因分析を十分に行い、再発防止に向けた取組と正確な事務に努めること」とされ、日本年金機構が定める中期計画でも項目を起こして「業務処理マニュアルに基づく正確な事務処理の徹底」、「事務処理誤り防止の取組」などを具体的に進めることとしている。経験も積み、年金制度や日本年金機構の事務処理及びマニュアルに習熟した有期雇用職員の雇止めを行い、今後も繰り返すことは、雇用期間の満了という業務上必要性のない理由で、マニュアルなどに習熟した職員をそうでない職員に入れ替えることを繰り返すことであり、事務処理誤りの防止の取組に逆行し、事務処理誤りの増加につながりかねない。増加につながらないと言うのであれば、その理由を明らかにされたい。

五 1 厚生労働省から提出を受けた資料によると、年金相談や年金裁定申請の受付に当たる年金相談室の職員のうち、有期雇用職員は全国で二千七百三名、そのうち雇用期間満了予定者は千四百五十八名となっている。雇用期間満了予定者から無期契約に転換した者五百四十一名を除くと、九百十七名が職場を離れることになる。この結果、年金相談などを担当するお客様相談室の職員のうち全国平均で二十一パーセントが来年三月に退職し、新入職員と入れ替わることになる。年金事務所単位でみると半数の職員が入れ替わるところもあり、相談業務の混乱は必至である。日本年金機構の雇止めの方針は結果として、年金記録問題の被害者や年金裁定申請等の相談のための年金事務所訪問者へのサービス低下と年金相談窓口の混乱をもたらすことになると考えるが、政府にそのような認識はあるか。
2 日本年金機構は私からの問い合わせに対し、適用・徴収部門などの他部門から年金相談室の経験がある職員を回すなど、必要な対策を採ると説明している。しかし、適用・徴収部門などには新しい職員が配置されることになり、企業訪問数の低下など年金相談室以外の部門の業務効率の低下をもたらすのではないか。来年三月末の有期雇用職員の雇止めによる日本年金機構の業務効率の低下は、国民に対するサービス低下につながり悪循環をもたらすのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

六 1 厚生労働省から提出を受けた資料によると、日本年金機構の雇用期間満了予定者のうち女性職員が八割程度を占めている。また、日本年金機構は無期雇用契約に転換する者を募集しており、就業規則上の上限に達する前記一の①及び②の職員約四千五百名のうち約三千九百名がこれに応募している。安倍政権は女性の活躍を掲げ、さらに、先の総選挙でも安倍総理が総裁を務める自由民主党は「自民党重点政策集二〇一四」にて、「働く女性、働きたいとの希望を持っている女性の職業生活における活躍を促進させる」との公約を掲げている。継続して働きたいという意思を持ちながら働く有期雇用職員を雇止めしようとする日本年金機構の方針は、安倍政権の掲げる女性の活躍という重点政策や自由民主党が総選挙で掲げたマニフェストと相いれないのではないか。
2 前記六の1に加えて、自由民主党は「「女性のチャレンジ応援プラン」を策定し、家事・子育て等の経験を活かした再就職の支援等を行うとともに、「働く女性の処遇改善プラン」を策定し、非正規社員の処遇改善や正社員化を支援します。」と掲げている。自民党はその「自民党重点政策集二〇一四」を掲載したホームページに「自民党がみなさんにお約束する公約を掲載しています。自民党では、実現できる約束こそが、本当の公約と考えます。」と記している。その立場に忠実であるなら、政府の予算による毎年の縛りをうけ、厚生労働大臣が監督する日本年金機構においてこそ、女性が大多数を占める有期雇用職員の「処遇改善や正職員化を積極的に支援」すべきである。そのために、日本年金機構の有期雇用職員の雇止めをやめさせ処遇改善を行うよう指導すべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。


答弁書第一九号

内閣参質一八八第一九号
  平成二十七年一月九日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員田村智子君提出日本年金機構の有期雇用職員の雇止めの中止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田村智子君提出日本年金機構の有期雇用職員の雇止めの中止に関する質問に対する答弁書

一について

 日本年金機構(以下「機構」という。)の有期雇用職員の数は、平成二十六年十月一日時点で、男性三千二百六十六人及び女性八千八百二十人であると承知している。お尋ねの①については男性千百七十八人及び女性三千四百八十五人、②については男性二十七人及び女性十九人並びに③については男性九百九十九人及び女性三千三百九十八人であると承知している。

二について

 機構のお客様相談室在籍の職員数は、平成二十六年十月三十一日時点で、全国では、男性千二百九十七人及び女性三千百十一人であり、そのうち、平成二十七年三月三十一日に雇用契約期間が満了する予定の者の数は、男性二百六十一人及び女性千百九十七人であると承知している。また、お客様相談室在籍職員のうち、同年四月一日に無期雇用契約に転換する予定の者の数は、平成二十六年十月三十一日時点で、全国では、男性四十人及び女性五百一人であると承知している。ブロックごとのお客様相談室在籍の職員数については、同日時点で、①ブロック名、②男性職員の数、③女性職員の数、④②のうち、平成二十七年三月三十一日に雇用契約期間が満了する予定の者の数、⑤③のうち、同日に雇用契約期間が満了する予定の者の数、⑥②のうち、同年四月一日に無期雇用契約に転換する予定の者の数及び⑦③のうち、同日に無期雇用契約に転換する予定の者の数は、以下のとおりであると承知している。
①北海道ブロック ②六十一人 ③百四十三人 ④六人 ⑤六十四人 ⑥一人 ⑦二十八人
①東北ブロック ②八十五人 ③二百五十四人 ④九人 ⑤百八人 ⑥二人 ⑦五十五人
①北関東・信越ブロック ②百六十人 ③四百二十人 ④三十七人 ⑤百五十四人 ⑥二人 ⑦六十三人
①南関東ブロック ②三百二人 ③五百八十人 ④五十一人 ⑤百七十九人 ⑥五人 ⑦四十九人
①中部ブロック ②百七十八人 ③四百十五人 ④三十八人 ⑤百七十五人 ⑥九人 ⑦六十五人
①近畿ブロック ②二百四十八人 ③五百十人 ④六十七人 ⑤二百一人 ⑥九人 ⑦九十人
①中国ブロック ②八十六人 ③二百二十七人 ④十三人 ⑤八十九人 ⑥一人 ⑦三十八人
①四国ブロック ②三十四人 ③百三十九人 ④四人 ⑤六十人 ⑥零人 ⑦二十五人
①九州ブロック ②百四十三人 ③四百二十三人 ④三十六人 ⑤百六十七人 ⑥十一人 ⑦八十八人

三の1、四及び五について

 厚生労働省としては、機構において、業務の中核となる正規職員の知識経験の向上、有期雇用職員の正規職員への積極的な登用及び無期雇用への転換、事務処理の手順の確立等の対策を実施していると承知している。このため、「有期雇用職員の雇止めの方針を改めることは有期雇用職員の能力向上、ひいては日本年金機構の力量や国民サービスの向上、個々の日本年金機構職員の生活の安定につながることは明らかである」、「経験も積み、年金制度や日本年金機構の事務処理及びマニュアルに習熟した有期雇用職員の雇止めを行い、今後も繰り返すことは、雇用期間の満了という業務上必要性のない理由で、マニュアルなどに習熟した職員をそうでない職員に入れ替えることを繰り返すことであり、事務処理誤りの防止の取組に逆行し、事務処理誤りの増加につながりかねない」、「日本年金機構の雇止めの方針は結果として、年金記録問題の被害者や年金裁定申請等の相談のための年金事務所訪問者へのサービス低下と年金相談窓口の混乱をもたらすことになる」及び「適用・徴収部門などには新しい職員が配置されることになり、企業訪問数の低下など年金相談室以外の部門の業務効率の低下をもたらすのではないか。来年三月末の有期雇用職員の雇止めによる日本年金機構の業務効率の低下は、国民に対するサービス低下につながり悪循環をもたらすのではないか」との御指摘はいずれも当たらないものと考えている。

三の2及び3について

 厚生労働省としては、機構において、有期雇用職員について、就業規則により更新回数を設定の上、原則として一年ごとに契約が締結されていると承知している。今後、年金記録問題等の業務が減少していくこと、「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」(平成二十年七月二十九日閣議決定。以下「基本計画」という。)に基づき職員の人数の管理を行う必要があること等を踏まえて、機構において個別の雇用契約更新の有無が判断されるものと考えている。

六について

 厚生労働省としては、機構において有期雇用職員全体に占める女性の比率は高いが、性別等による差を設けることなく職員の人事管理を行っており、また、有期雇用職員の正規職員への積極的な登用、無期雇用への転換を進めるなど、雇用の安定にも配慮した人事管理を行っているものと承知している。
 個別の雇用契約の更新等については、年金記録問題等の業務量、基本計画等を踏まえて、機構において適切に判断されるものと考えている。

 


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