活動報告

活動報告
運転者告示 再改正を/田村智子氏 「過労死防げない」/参院国交委

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院国土交通委員会で、全産業で最も過労死の多いトラック運転者の長時間労働の解消のため、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)の再改正を求めました。

 田村氏は、昨年12月に改正された改善基準告示では、残業が最大で月112時間と過労死ラインを超えると指摘し「過労死を起こさない基準といえるのか」と追及。斉藤鉄夫国交相は「公労使がギリギリの議論を重ねたもの」と居直りました。

 田村氏は、トラック運転者は規制緩和の是正や荷主対策などを国に一番望んでいるとするNHKのアンケート結果を紹介。改善基準告示に新たに加えられた「長距離貨物運送」により、1日の拘束時間を週2回、継続16時間まで延長可能とするなど現行の改善基準告示と変わらないと指摘し、「過労死防止に逆行する」と批判しました。

 田村氏は、改善基準告示の「車両内ベッド」は、ベルトの装着などの規定がなく、運転者の安全が保障されないと指摘。トラック運転者の過労死を防げず、安全も守れない改善基準告示は、直ちに再改正すべきだと迫りました。


2023年6月4日(日) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 トラック運転者の働き方について、改善基準告示が改定され、来年四月に適用となります。改定に当たっての労働政策審議会トラック作業部会の議事録を読みましたが、労働者側は議論のスタートは過労死問題だと繰り返し指摘をしていました。全産業平均より労働時間が年間約四百時間長い、二〇二一年度の脳・心臓疾患の労災支給決定は全業種の三二・五%を占めるなど、深刻な労働実態を厚労省もデータを示して説明しています。ところが、労使協定があれば、拘束時間の上限は年三千四百時間、一か月三百十時間、一日十五時間まで認めるという基準が示されました。一か月の時間外労働が最大どこまで許されるのか、計算してみますと、拘束時間から法定労働時間百七十六時間と休息時間二十二時間を引いて、百十二時間にもなるんですね。

 厚労省さんにお聞きします。簡潔でいいです。私が聞きたいのは、過労死を起こさない基準、これを示すことができたのかどうか、お答えください。

○政府参考人(梶原輝昭君) お答えをいたします。
 改善基準告示につきましては、先ほど委員から御指摘もありましたトラック作業部会において、労使双方より、過労死等の防止等の観点から、拘束時間を短縮し、休息期間を延長する必要があるとの認識が示された上で、特に、使用者側意見からは、多様な業務実態等を踏まえた具体的できめ細やかな特例措置を設けることを求める意見があったところです。こうした御意見を踏まえ、昨年九月八日に作業部会の報告書が取りまとめられ、これを基に、昨年十二月二十三日に改善基準告示の改正が行われたところです。

 改正後の改善基準告示においては、過労死等の防止の観点から、全体として拘束時間の時間数を短縮していくという方向とともに、多様な勤務実態等を踏まえた長距離貨物運送、災害等の予期し得ない事象、二人乗務などの具体的な特例、例外規定の整備を図ったところです。

 全体として、残業時間の縮減、それからドライバーの皆様の休息時間を延ばしてできるだけ体が休まるようにということで、過労死防止等の観点から前進があった改善であると認識しております。

○田村智子君 労働者側からは、七割がもう年三千三百時間守っているんだからもっと下げることできるじゃないかということも言われていたのに、特例的に労使協定あれば三千四百時間と。これで本当に現状が長時間労働の改善になっていくのか大変疑問だというふうに言わなければなりません。

 そもそも、働き方改革関連法では、時間外労働の条件は、上限、労使協定があっても年七百二十時間、月百時間未満、複数月平均八十時間以内とされました。これも過労死ラインを超えるんだと、特に過労死で家族を亡くした遺族は厳しく批判をしていました。トラックなど運送関係の労働者は当面これさえも例外とされて、五年掛けて対策を取ることになっていた。労政審トラック作業部会では、トラック業界の商慣習とか荷主の問題、これが繰り返されていて、一体五年間、その商慣習を変えることや荷主への対策を真剣に進めていたのだろうかと、こう思わざるを得ないんです。二〇一八年に働き方改革関連法案の審議をしているときから国交省は課題は分かっていたはずです。

 大臣、過労死を起こしてはならない、そういう認識でこの五年間取組をされてきたと言えますか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 改善基準告示につきましては、私もよく覚えておりますけれども、本当に公労使が議論を重ねました。最後の一週間は、毎朝、朝方まで議論して、今日も結論が得られなかった、今日も結論が得られなかったという報道が毎日されていたように記憶しております。その公労使の真剣な議論の結果、今回の改善基準告示が労の皆さんも御納得の上にできたものと、このように私は認識しております。

 その上で、この示された改善基準告示をどう実行していくか、そのためには一番ポイントになるのはやはり荷主の理解と協力だと、このように思います。荷待ち時間や契約外の荷役作業の削減によって労働条件を改善すると、これらを達成するために、荷待ちの発生等、長時間労働につながる行為が疑われる荷主に対しては、貨物自動車運送事業法に基づく働きかけや要請等の是正措置を講じてきております。加えて、荷主の更なる取組を促すため、商慣行の見直しを含む実効性のある具体策について、六月上旬を目途に閣僚レベルで取りまとめる政策パッケージに盛り込めるよう検討しております。
 引き続き頑張っていきたいと思います。

○田村智子君 これ、結論がまとまらなかったのは、過労死を起こしちゃ駄目だという立場で労働者側が頑張っていたからなんですよね。この五年間、今言われたような、大臣が言われたような対策は取られてこなければならなかったんだと思うんですよ。

 昨年十一月、NHKがトラック運転者の過労問題で特集番組、放送していました。紹介されたドライバーへのアンケート、ドライバーが誰に変わってほしいかというアンケートあったんです。消費者や荷主を大きく超えて、トップは国なんですよ、国。価格競争を促した規制緩和、これ見直してほしい、労働時間の規制、真面目にやってほしい、荷主への指導、もっと徹底してほしい。国に対して変わってほしいと言っている。

 更に改善基準告示についてお聞きします。
 長距離貨物運送という新たな概念が加えられ、一日の拘束時間は、宿泊を伴えば週二日まで、継続十六時間まで延長可能と、一日の休息時間は週二回は八時間でよいということになります。

 これ、現行のままということなんですよ。最も過酷な長距離運転手が例外規定で現状のままになってしまう。これは過労死防止に逆行すると思います。いかがでしょうか。

○政府参考人(梶原輝昭君) お答えをいたします。
 委員から御指摘をいただいたとおり、長距離貨物運送の部分につきましては、休息期間が運転者の住所地以外の場所におけるものについては、週二回までに限り一日の拘束時間を現行と同様に最大十六時間とすることができること、また、休息期間を継続八時間以上とすることができる特例を今回の改正で新たに追加をしたところです。

 一方、この特例を適用するための条件としては、一の運行終了後、通常であれば継続十一時間を上回る休息期間を与えることとなっている部分を一時間延ばしまして継続十二時間以上の休息を与えること、これを条件として規定をしております。

 この長距離貨物運送の特例を設けました趣旨は、車中泊など住所地以外の場所における休息期間を確保するよりも、運行終了後、運転者の住所地で休息期間を十分に確保することが望ましいという趣旨であります。専門委員会の議論を踏まえたものとなっております。

○田村智子君 今の、車中でというよりも住所地での休息時間を長くというのは、これ使用者側が言ったんですよね、そういう労働者の声もあるって。労働者側の要求じゃないですよ。

 これ、八時間の休息では、睡眠時間は細切れ短時間、ならざるを得ないんです。これが過労死の大きな要因であるということは明らかなんですね。なぜそれなのにこうした現状を是認するのかということなんです。

 時間がないので、もう一点指摘したい問題があります。
 二人乗務特例で、車両内ベッドということも初めて入りました。運転中、もう一人が車両内ベッドで休息できれば、拘束時間を延長し、休息時間を短縮できるということなんです。

 資料の一、赤線引いたところが改善基準告示のその車両内ベッドの要件なんですね。長さ百九十八センチ以上かつ幅八十センチ以上の連続した平面、かつクッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものという規定になっています。

 資料の二枚目、道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の抜粋です。この第八十一条を見てほしいんですが、車両内ベッドに関する規定はありません。

 国交省にお聞きします。改善基準告示の車両内ベッドに保安基準、この保安基準ですね、道路運送車両法に基づく告示、それに基づく保安基準、これ車両内ベッドについてあるんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 議員御指摘の車両内ベッドにつきましては、道路運送車両法の保安基準により、乗車装置の一部として難燃性や突起物に関する基準などの車室内に求められる安全基準が規定をされております。

○田村智子君 ごめんなさい。もう一度、ごめんなさい、どこに規定されているんですか。もう一度お願いします。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 道路運送車両法の保安基準というものでございます。

○田村智子君 詳しくお聞かせいただきたいんですけれども、それはこの告示で示されている中身と同じということなんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) これは、いただいておりますのは保安基準に基づく告示でございますので、同じ法体系のものと考えております。

○田村智子君 この告示の中ではベルトの固定などが書かれていないんですけれども、それでもいいということなんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) まず、車両内ベッドにつきましては、シートベルトを装着しても衝突時において乗員がしっかりと拘束、縛られる保証はないということ、また、ベルトは首に引っかかる障害の、嫌悪されるリスクがあることから、運転席や助手席に求められるようなシートベルトなどの安全基準は規定されておりません。これ、日本のみならず国際的にも、こういった走行中に使用する車両内ベッドの安全性の確保のための基準、これは難しいということで検討は行われておりません。

 それで、先生からいただきました、こちら乗車定員の規定でございます。乗車定員というのは、重量制限の観点から、車両の安全性の確保するための重量制限の観点から設けられているものであります。ただ、この車両内ベッドというのは、定員にカウントされるのはこれ座席でございますけれども、座席に座っておられる方が一時仮眠のために用いることを前提としておるということでありまして、定員を増やすことにはならないため、ここにはカウントしていないということでございます。

○田村智子君 告示で詳しい基準がないんですよね、今のお話だと。法律の中にあるという話じゃないですか。告示の中にあるんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 乗車定員については、保安基準、あっ、省令の方に書かれております。

○田村智子君 じゃ、ちょっと警察庁にお聞きしたいんですけれども、この告示の中で見てみてもベルトでの固定はないんですよ。それで、今聞いたら、寝ているときのベルトの固定はむしろ危険だからなくてもいいんだというお答えなんですけれども。そうすると、シートベルトがなく乗っていいんだと、それは道路交通法上問題ないということになるんでしょうか。

○政府参考人(小林豊君) お答えいたします。
 道路交通法上、車両の運転者の義務として、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させて運転してはならないとされております。

 これに違反するかどうかについては個別具体的に判断することとなりますが、お尋ねの車両内ベッドにつきましては、道路運送車両法に規定する乗車装置に該当し車両の保安基準に適合するのであれば、車両の走行中に同乗者が車両内ベッドに横たわっても道交法上の乗車方法違反とはならないと考えております。

 なお、このベッドについて、保安基準上、座席ベルトの設置が義務付けられている座席に該当しないのであれば、道交法上、座席ベルトの着用義務の違反とはなりません。

○田村智子君 私、それね、それで本当に安全で運転できるのかということはちゃんと見なければならないと思うんですよ。そういう議論が、私、済みません、議事録読んだときに見付けることできなかったんですね。

 これ、トラックの作業部会では、この車内ベッドでの仮眠について、議論の中では、これ休息に当たるんですかということが議論になったのは読みました。厚労省の方は、休息というのは自由であることだと、拘束されていないということが休息にとっては必要なことだということなので、これやっぱり走行中、車内のベッドでの仮眠というのは休息に当たらないと見るのも当たり前でしょう。

 また、どうやって固定するのかということも告示の中では示されていない。高速道路などを走行することもこれ当然想定されているでしょう。果たして、車内ベッドまで付けて拘束時間を延ばすのかと、そこまで働かせるのかと、労働者の安全はどうなるんだと、こういう声が既にドライバーの中から上がってきているんですよ。

 大臣、そもそもこれ、こういう改善基準告示でいいのかどうかなんですよ。これでドライバーの安全が本当に確保できるのかどうか。オブザーバーで議論に参加をしているわけです、国交省は。そうすると、その安全上の問題ということはもっと国交省の側から問題提起して、道路運送車両法との関係でどうなのかというようなことも議論されなければならなかったと思いますよ。これ、私は国交省の問題だと思う。

 この問題も含めて、改善基準告示、この中では、適用後、様々な調査も行って、三年を目途の見直しということが適切だというふうにされているんですけれども、私はもう一回議論すべきだと思いますよ、安全の問題を含めて。どうですか、大臣。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 過労運転による交通事故の防止や将来の担い手確保などの観点から、自動車運送事業に従事する運転者の長時間労働の是正とこれに資する改善基準告示の改正議論は大変重要だと、このように考えております。

 このため、国土交通省においては、厚生労働省の労働政策審議会の下に設置された公労使の代表で構成される専門委員会にオブザーバーとして参加し、改善基準告示が運転者の過労運転の防止に資する基準に見直されるよう、この専門委員会における議論に協力してまいりました。

 国土交通省としては、来年四月から施行される改善基準告示が効果的かつ実効性のあるものとなるよう、厚生労働省とも連携し、改正内容について運送事業者などへの周知徹底を図ってまいります。また、運送事業者に対する監査等を通じて改善基準告示の遵守状況の確認及び指導などを行うことにより、運転者の過労運転防止と輸送の安全を確保してまいりたいと思っております。

○田村智子君 これ、非常に問題の多い告示だと思います。これ、三年なんて待たずに再検討必要だということを申し上げて、質問を終わります。

 


 |