活動報告

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研究者雇い止め、国益損なう/田村智氏が防止制度要求/参院委

 日本共産党の田村智子議員は22日の参院決算委員会で、有期雇用の研究者が無期雇用への転換直前で雇い止めされる問題をただしました。理化学研究所(理研)をはじめ、国立大学や国立研究開発法人で雇い止めが相次ぐなど、「大規模な雇い止めは止められなかった」と指摘し、防止のための法制度導入を求めました。

 「理研の非正規雇用問題を解決するネットワーク」は18日発表の声明で、日本学術振興会(JSPS)の「卓越研究員」にも選ばれている30代の研究者が雇い止めされ、中国の研究機関に転出するなど「国益を損なう最悪の事例」も発生したと強く抗議しています。

 田村事務所の調査では、国立大学などの研究機関で4月1日に無期転換権を得る研究者4500人(昨年2月時点)のうち、無期転換か無期雇用の職に就いたのは1665人にすぎません。田村氏が「3000人が元の研究職を離れたことになる」と迫ると、永岡桂子文部科学相は「フォローアップのための調査を今後実施する」と述べました。

 田村氏はさらに、一般社団法人男女共同参画学協会連絡会が自然科学系の研究者らに実施したアンケート調査を紹介。通算10年以上雇用継続すれば無期雇用契約に転換できる「無期転換ルール」施行前の2012年では、有期雇用研究者の雇用期間は「5年以上」が男性40%、女性32%なのに対し、施行直前の21年では「5年を超えて10年以内」は男女とも6%に激減するなど「雇用の不安定化がもたらされている」として、無期転換ルールの見直しを求めました。


2023年5月23日(火) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 国立大学、国の研究機関では、昨年度、労働契約法が定める無期転換の権利が与えられる目前で任期付きの研究者が次々に雇い止めにされました。理化学研究所では、労働組合が三月二十九日、ストライキ権も行使して最後まで雇い止め撤回を求めました。

 五月十八日、理研の非正規雇用問題を解決するネットワーク、理研ネットが声明を発表いたしました。資料の一です。その中で、理研労組が当局に提出させた資料に基づいて、雇い止めの対象となった三百八十人がどうなったのか公表しています。理研での継続雇用百九十六名とありますが、これは無期転換ではなく、有期での再雇用ですね。理研からの転出は、大学七十四名、研究機関八名、企業三十三名、転出先不明十一名。

 声明では次のように指摘しています。そのほとんどは、自ら希望してのものではなく、雇い止めにより余儀なくされた。研究テーマをやむなく変えたり、これまで世界から注目される研究成果を生み出していたにもかかわらず研究の場を失ってしまった方も少なからずいます。数々の受賞歴があり、昨年もネイチャー誌に論文が採択され、新エネルギー・産業技術総合開発機構や科学技術振興機構の研究プロジェクトの代表をしている三十代のユニットリーダーが雇い止め対象となり、中国の研究機関に転出。このユニットリーダーは、日本学術振興会の卓越研究員にも採択されています。卓越研究員制度は、特に優れた能力を持つ研究者を独自の審査方式により発掘し、優先的に常勤、定年制の職に就けるよう後押しすることで、優秀な人材を日本国内にて確保するためのものです。ところが、このユニットリーダーは、卓越研究員としての研究は僅か四年半にとどまり、常勤、定年制の職に就くどころか、無期雇用転換権を与えないために雇い止めとなりました。卓越研究員の頭脳流出という国益を損なう最悪な事例も発生していますと、こういう指摘です。

 私は昨年、何度もこの問題を取り上げ、当時の小林科学技術担当大臣は、意欲と能力のある研究者の方がそれにふさわしい処遇を得て研究に取り組めるということは我が国全体の研究力の強化にとって不可欠、雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることが大変重要と答弁をされたわけです。ところが、優れた研究者の国外流出が雇い止めによって起きてしまいました。
 高市科学技術担当大臣、この事態をどのようにお考えになりますか。

○国務大臣(高市早苗君) 理化学研究所における研究者の雇用に関して、インターネット上に雇い止めに関する抗議声明が出されていることは承知しておりますし、私も拝読をいたしました。

 我が国の研究力向上のためには、研究者が腰を据えて研究に打ち込める環境が整えられることが必要だと考えております。その観点から、研究者の雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされるということは大変重要でございます。

 この個別法人の業務運営に関しましては、各法人を所管する官庁において適切に対応いただくべきものではございますが、内閣府からも令和四年十一月十日付けで研究開発法人を所管する官庁に対しまして、この無期転換ルールの円滑な運用についての事務連絡文書を発出してお願いをいたしました。

 この意欲と能力のある研究者の方がふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにすることが、我が国全体の研究力強化にとって重要でございます。政府としましては、十兆円規模の大学ファンドによる大学研究環境の強化、博士課程学生への経済的支援、若手研究者が挑戦的な研究に取り組める事業などを通じて研究の魅力向上や研究環境の改善を図って、我が国の研究力が向上するように取組を進めてまいりたいと存じます。

○田村智子君 これ、ずっと三十分間この質問ですので、高市大臣も、何が起きているか、是非聞いていただきたいと思います。
 文科大臣にも伺います。
 優先的に常勤、定年職に就けることを目的とする卓越研究員さえ無期転換権を得る直前に雇い止めをされました。これは文科省、重々承知している案件です。適正な人事政策と言えるんでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君) 独立行政法人であります理化学研究所におきましては、法人の自主性、自律性の下に運営されることが基本でございまして、労働関係の法令に基づきまして適切な人事の運用を行っていただきたいと考えております。

 理研ネット声明に取り上げられておりますユニットリーダーにつきましては、卓越研究員事業に採用されました研究所の卓越研究員としての理化学研究所における有期雇用の任期が四年半であったにもかかわらず、理化学研究所は当該研究者の卓越研究員としての任期は原則七年といたしまして日本学術振興会に対して報告していたと聞いているところでございます。理化学研究所によれば、労働契約としては労使間の合意に基づきまして適切に運用されているものの、日本学術振興会への報告内容が一部適切でなかったと聞いているところです。

 文部科学省といたしましては、今後、理化学研究所におきましてこのようなことがないよう改善を図ってもらいたいと考えております。

○田村智子君 もう研究の場がなくて、中国行っているんです。海外に流出しているんですよね。今のでは、七年雇うはずのところを四年半でと、本当にひどい事態が起きていたということですよね。極めて深刻ですよ。

 国立大学、独立行政法人の研究機関全体で、じゃ、どれだけ雇い止めになったのか。
 資料の二は、私の事務所で二月に各省に資料要求をしてまとめたものです。
 今年一月一日現在で、次の契約更新によって無期転換権を得る者は三千五百七十四名いました。うち、無期転換若しくは無期雇用の職に就いた者は一千六百六十五名、約四五%にとどまります。同じ調査を昨年も行いました。今年四月一日で無期転換権を得るはずだった者は、昨年時点では四千五百人いたんです。これを基点として考えれば、約三千人が元の研究職を離れたということになります。

 文科省は、確かに雇い止め等々を安易に行わないようにということで通知を出されました。しかし、国が関与できる研究機関で大規模な研究者の雇い止め、止めることはできなかったんですよ。文科省は、この文科省としての取組、そしてこの結果、どのように評価されていますか。

○国務大臣(永岡桂子君) 理研ネットで声明で取り上げられておりますユニットリーダーにつきましては、理化学研究所におきましては、これ二〇一三年四月より有期雇用とされておりまして、二〇一八年十月に卓越研究員として有期雇用契約を締結した際には、担当する研究プロジェクトの期間ですとか規程に定められていた通算雇用期間の上限を踏まえまして四年半の任期を設定したと聞いております。

 なお、このユニットリーダーに関しましては、二〇二二年九月に理化学研究所が導入いたしました新たな人事施策を踏まえまして、理事長特例によります二年間の雇用期間延長を理化学研究所から提案したものの、御本人の意向によりまして提案をお受けしなかったと聞いているところでございます。

○田村智子君 あのね、個別じゃなくて、全体も聞いているんですよ。全体で約三千人、元の研究職を、研究の場所を離れざるを得ない事態になったんですよ。そのことについてどう考えていますか。

○国務大臣(永岡桂子君) お答え申し上げます。
 研究者等の雇用管理につきましては、各機関におきまして法令に基づき適切に対応する必要がございます。文部科学省といたしましては、実態把握のための調査を行うとともに、各機関の適切な対応を求める通知を発出するなど、個別の機関の状況も確認しつつ累次にわたりまして働きかけを行ってきたところでございます。

 各機関におけます研究者等の雇用状況に関しましては、フォローアップのための調査を今後実施するとともに、労働契約法の特例ルールの適切な運用につきましてしっかりと各機関に対応して、対応を求めてまいる所存でございます。

○田村智子君 先ほどユニットリーダーのことをもう一度答弁されたからですけど、卓越研究員であと二年雇いますよと提案受けたから、ああ、そうですかと、それ違うでしょう。さっきも言ったけど、卓越研究員というのは定年制と、定年までここで研究してほしいと、日本で研究してほしいという制度としてつくったものなはずなんですよ。

 で、通知は出したと。だけれども、私も質問で何度も指摘したのは、無期転換すると常勤職が増えると、そうすると新たな予算が必要だと、そういう予算付けなきゃ駄目でしょうという必要性を本当に強調してきた。だけどやらないわけですよ。で、無期転換権を得る前の雇い止め、これを方針としている理研の新人事制度、これを好事例だといって全国の国立大学に紹介することまで文科省はやった。我が党議員がこれを問題にしても撤回しなかった。

 私は、これはもう事実上研究者の雇い止めを文科省は黙認、容認したというふうに指摘せざるを得ないというふうに思います。この労働契約法の十年無期転換ルールが若年研究者にもたらしている影響、これ直ちに政府として検証してほしいと思います。

 理工学系学協会などで組織される一般社団法人男女共同参画学協会連絡会、自然科学系の研究者、技術者に対して、おおむね四年に一回大規模なアンケート調査を行っています。これは研究者コミュニティーの現状や課題を分析して提言を行うための調査です。二〇二二年にまとめられた調査報告書からの抜粋が資料の三です。

 無期転換ルールの施行前、二〇一二年調査では、任期付研究者の雇用期間、今どれだけ働いていますかと、これ五年以上が最も多いんです、これ一番多いところが五年以上しかないんです、それ以上のもの取っていないんですね。男性四〇%、女性三二%。二〇一六年調査になると、十年以内が最も多く、男女とも約三割、十年超というのも、男性一八%、女性二五%います。この調査というのは、研究者については無期転換は五年ではなくて十年という特例がされた直後の調査なんですね。その影響が出ていると思います。ところが、では、その無期転換が目前となった二〇二一年、五年を超えて働いている十年以内、これ男女とも六%なんですよ。十年超も含めて激減なんです。

 これ、無期転換ルールによって任期付きの研究者の雇用期間が極端に短くなって雇用の不安定化がもたらされているというふうに考えますが、文科大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君) 二〇一三年の労働契約法の改正によりまして導入された無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制いたしまして、労働者の雇用の安定を図ることを目的としたものでございます。

 研究者などの雇用管理につきましては、各機関におきまして法令に基づき適切に対応する必要がございます。文部科学省におきましては、各機関に対しまして、労働契約法の趣旨を踏まえて無期転換ルールの適切な運用に努めるよう、累次にわたりまして依頼をしてきたところでございます。

 研究者等に対します無期転換ルールの特例の在り方に関しましては、フォローアップ調査を実施をいたしまして、その結果を踏まえて検討を行う必要がございます。今後、調査を実施するとともに、労働契約法の特例ルールの適切な運用につきましてはしっかりと各機関に対応を求めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 これ仕組みは分かるんですけれども、この実態をどう見るかなんですよね。この二〇一六年調査では、五年以上の研究者、これ恐らく一千人規模と推計できるんですよ、回答者数から。その多くが結局離職を余儀なくされたという結果が二〇二一年のこの調査結果ですよ。

 この調査結果は、全労連と理研ネットが主催した三月の集会で、東京慈恵医科大学の講師である志牟田美佐先生が報告をされましたが、この報告しているとき一瞬声詰まらせて、この結果を見たときに、同じ研究者として涙が出る、研究者は連携して分野を超えて研究している、この結果は悲しいことだというふうに発言をされたんです。それほど衝撃的な結果だということです。

 大量雇い止めは、このままでは来年以降も続きます。資料の四。私の事務所の調査で、来年三月で雇用契約通算五年超となり無期転換権を得る者がいる、この法人は九十、うち七十六法人、八四%が契約上限を五年としている。十年超での無期転換権を得る者がいる法人五十三、うち四十四法人、四八%が同じく十年上限の設定をしています。

 労働政策審議会労働条件分科会の議論では、雇用上限の設定を行う事業所が増加した場合には、雇用の安定を図るという無期転換ルールの趣旨に反する状況だというふうに指摘をされています。

 厚労大臣、国立大学や独法の研究機関はこの労働条件分科会の指摘のとおりのことが起きているんですよ。大学や国立の研究機関の研究者にとって、無期転換ルールは雇用の安定化ではなく雇用の不安定化もたらしていると考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) 無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を防止し、有期契約労働者の雇用の安定を図るため、平成二十四年の労働契約法改正で導入されたところであります。有期契約労働者の数全体を見ると、制度施行後五年が経過し、無期転換権が発生することとなった二〇一八年以降減少傾向にあり、その趣旨である雇用の安定が一定程度図られたと考えているところであります。

 今御指摘がありました大学等及び研究開発法人の研究者、教員について無期転換ルールの特例が設けられているところでありますが、その実態に関しては、今文部科学大臣からも調査を行うというお話もあったということで、我々としては引き続きその状況を注視していきたいと考えております。

○田村智子君 雇用の不安定化だけでなく、処遇も悪化しています。

 資料の五です。連絡会の調査報告による年収、社会保険加入状況も見てみたいと思います。
 任期付きと任期なしの年収格差、これ、教授とか講師などどの職でも見られますが、特に研究員、男女とも任期なしと任期付きでは二百四十万円以上の格差になっています。経年で見ると、任期なしの年収は増加傾向、しかし、任期付きはこの十年で平均年収も減少しています。二〇二一年には若手研究者支援策始まっていましたが、任期付きの研究者では処遇はむしろ悪化しています。また、二〇一六年と二一年で比較をすると、社会保険の加入率が二〇ポイントも下がっています。これ、未加入者は傷病手当、出産手当金や育児休業給付金も対象外になりますし、年金も不利益になります。

 文科大臣、若手研究者支援どころか、あるいは賃上げ、非正規雇用労働者への社会保険適用の拡大という政府方針どころか、これらに完全に逆行する事態が研究者についてはもたらされていると考えますが、どうですか。

○国務大臣(永岡桂子君) 文部科学省におきましては、研究者が安心して研究に専念できる環境を整備するために、若手ポストの確保など人事給与マネジメント改革等を考慮をいたしました運営費交付金の配分ですとか、ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの策定、また、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用することで研究者の安定的なポストの確保を図る取組の促進などの施策を講じまして、基盤的経費や競争的研究費を確保してまいりました。

 こうした施策によりまして、とりわけ各機関において研究者の職務内容等に応じた適正な処遇の確保が行われますように、各機関における取組を促してまいるところでございます。

○田村智子君 本当に現状を見てこの深刻さを受け止めてほしいんですけれども、今言ったような施策では完全な行き詰まりにもうなっていると思うんですよ。だって、実態悪くなる一方なんですもの、今。

 で、資料の六は、これらの調査を踏まえて連絡会が行った提言を図式化したものなんです。連絡会は、任期付きの研究者の現状は、我が国の研究力低下、そして少子化の要因となっていると指摘をし、これらは国の政策によるものだと分析をしています。

 国立大学の大学法人化による運営費交付金の減少で多くの研究者が恒常的な研究費不足に陥っている。一方、一部の研究者には巨額の研究費を配分する選択と集中、これは期限付きのプロジェクトなので任期付きの研究員が増える、ここは雇用することになる。競争的研究費の比率が拡大したことで事務負担、雑用が増加し、研究時間は減少する、短期で成果の出る研究が増加する、教育や研究の質の低下がもたらされている、私、この分析そのとおりだと思います。

 高市大臣、あらかじめこの資料に目を通してほしいとお願いをいたしました。この分析に対してどのような見解持たれますか。

○国務大臣(高市早苗君) 近年は、論文数などの実数は大きく低下していませんけれども、中国やアメリカなど論文数の著しい増加に伴って、我が国の研究水準の相対的な立ち位置が低下していると考えます。また、博士号取得者についても減少傾向にあるということで、我が国の研究力が低迷している状況だと考えております。

 任期付研究者の不安定な雇用につきましては、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージを踏まえまして、間接経費や競争的研究資金の直接経費から研究者の人件費を支出することで捻出した運営費交付金など、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用することによって、特に優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくということを研究現場に促しております。

 選択と集中の弊害につきましては、政府としては、第六期科学技術・イノベーション基本計画などに基づき、大学等における研究活動を安定的、継続的に支える運営費交付金等の基盤的経費と、優れた研究や目的を特定した研究等を支援する競争的研究費のデュアルサポートが重要だと考えております。また、大学におかれましても、外部資金獲得などの経営基盤の強化や資金の効率的、効果的な活用を促すということによって、安定的な研究環境の確保も不可欠でございます。
 研究力の向上に向けまして、私の立場としてはしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

○田村智子君 今のような政策の結果がこれなんですよ。

 資料七。これ、連絡会は、任期付研究者からの不安や窮状を訴える声を受けて、二〇二二年三月から四月に研究者の雇用問題アンケート調査行っています。五千人近い回答者の半数近くが自由記述欄に記入をしている、しかも長文が多いのが特徴だというんですね。

 そのまとめを私も読みました。運営費交付金からの研究費は年一万円、教授が外部資金を取れないと研究員も研究ができない、二年から三年ごとに就職活動で、次の研究場所を探すことに疲弊し、追い詰められている、任期付きでの育児休業は不可能、中国のように一定の研究費を広く配分してほしいなど、日本の研究環境の惨たんたる実態がこの記述にあふれています。

 これらの実態を踏まえて、連絡会は、現状を変えるには、任期なしのポストの拡充、これ、少しばかりの拡充じゃないです、万単位の拡充が必要なんです。選択と集中ではなく、基盤的経費、基礎的研究費の抜本的な増額、訴えています。これは、もう長年にわたって名立たる研究者が日本の研究の将来を憂えて提起し続けてきたことです。

 文科大臣、もういいかげん、この日本の研究力の危機を直視して政策転換するときだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君) お答え申し上げます。
 御指摘の要望書は、任期付きの研究者を取り巻く雇用や、また収入等に関する課題をまとめ、要望して掲載されたものと承知をしております。

 科学技術イノベーションを活性化するための最大の鍵は人材でございまして、優秀で多様な研究者の育成、確保は極めて重要でございます。研究者は、多様な研究経験を積むことで能力の向上が図られます。このような特性を踏まえまして、一定の流動性を確保した上で、研究者が安心して研究に専念できる環境の整備が重要だと考えております。研究者等の雇用管理につきましては、各機関におきまして法令に基づき適切に対応する必要がございます。

 文部科学省といたしましては、ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの策定、周知などを進めてきておりまして、引き続きまして研究者の活躍促進を後押ししてまいります。

○田村智子君 ちょっと、残る時間、無期転換ルールの問題についても議論しておきたいんです。
 労働政策審議会は、無期転換ルールの見直しについて議論し、無期転換前の雇い止め等について、契約の更新回数に上限を定めたり、その回数を引き下げるときには労働者に理由を説明しなければならないという趣旨で対応することとして、大臣告示によって有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準がこの趣旨に沿って改定されました。

 三月十三日の予算委員会でこの問題取り上げて、厚労大臣は、紛争防止を目的として理由の説明義務を課すものだ、更新上限の設定を促進する趣旨ではないというふうに答弁をされましたが、これ、雇い止め法理、逆手に取るようなものだと私思うんですよ。やっぱり、契約更新の期待、あるいは無期転換への期待を持つ合理性があるかどうか、これが紛争、裁判でも焦点となります。だから、最初から期待を持たせないように説明しなさいということになってしまう。

 多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書、ここでも、更新上限の有無や内容の明示を義務化することで、使用者が更新上限を設定する方向に誘導するのではないかとの懸念もあり得るというふうに指摘をしています。私も同じ問題意識です。これ、促進がされてしまうんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) 前回の重複になって申し訳ないんですけれども、最初の有期労働契約の締結の後に新たに更新上限を導入することは、締約時点で更新の期待を有する労働者に不利益を持たせることになります。そして、紛争の原因になりやすい。

 こうしたことを踏まえて、昨年十二月に取りまとまった労働政策審議会の報告書に基づいて、有期労働契約の変更や更新に際して更新上限を新たに定める場合、更新上限を引き下げる場合には、その理由をセツメルよう使用者に義務付ける告示改正を行いました。この改正は、あくまでも紛争防止を目的とするものであります。更新上限に関する契約内容の変更の理由について説明義務を課すものであり、更新上限の設定を促進するといった趣旨のものでは全くありません。

○田村智子君 現実には、労働契約法を受けて更新上限をどんどん設定していったんですよ、大学は。
 理研で多くの研究者を雇い止めにしたBDR、昨年夏、私が視察したときには、今後の研究方針として分子イメージングという研究分野を縮小するのだと後付けの理由を説明しました。

 また、国立大学では、既に無期転換を期待させない説明が重要だと指南する雇い止め講習が行われているわけです。大学の方針だから契約上限は絶対だというふうに説明することで、事務職は五年、研究職は十年。こういう機械的な雇い止めが延々と行われたら、国立大学や研究機関、どうなってしまうのかなんですね。

 労働条件分科会で、厚生労働省は、欧米などの有期雇用についての規制、例えば、有期雇用を充てることができるのは休業中の労働者の代替であるとか季節性など期間限定の仕事に限定する、こういう規制のことを資料に示しているんですよ。

 私は、こうした入口規制、あるいは、十年なんて長過ぎますよね、無期転換までの期間短縮、あるいは無期転換前の雇い止めを規制するなど、機械的な雇い止めを防止する、こういう法制度こそ検討、導入すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、先ほどの御質問にも絡みますけれども、その無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で無期転換申込権が発生する前に雇い止めを行うこと、これは労働契約法の趣旨に照らして望ましくないわけであります。問題がある場合には、都道府県労働局において適切に啓発指導なども行っているところであります。

 また、無期転換ルールの創設に当たって、今御指摘がありましたように、合理的な理由がない場合には有期労働契約の締結を禁止するいわゆる入口規制の導入についても検討を行いましたけれども、有期労働契約を利用できる合理的な理由への該当性をめぐる紛争を招きやすいこと、雇用機会を減少させる懸念もあることから、導入すべきとの結論には至らなかった。一方で、今委員が御議論いただいている有期労働契約が通算五年を超えた場合に無期雇用に転換できる無期転換ルールと雇い止め法理を定め、有期労働契約で働く方の雇用の安定を図ることとしたところであります。

 さらに、このときに八年後の見直し規定がございました。それも踏まえて昨年の労政審で無期転換ルールの見直しの議論を行いましたが、無期転換申込権が発生するまでの通算契約期間の在り方や無期転換前の雇い止めに関する対応を含めて検討を行いましたが、委員御提案のような改正をするという結論には至らなかったところでございます。

 他方で、先ほど申し上げたような、失礼、他方で、希望する方が確実に無期転換申込権を行使できるようにするため、無期転換モウシケンが発生する契約更新時に無期転換を申し込むことができる権利が発生する旨、無期転換後の給与等の労働条件を明示することとする省令改正などを行ったところであります。
 引き続き、制度の内容を周知し、円滑な運用に取り組んでいきたいと考えています。

○田村智子君 最後、済みません。
 連絡会のアンケート、有期雇用の研究者、技術者の九割が無期職望んでいます。

 昨年度起きたこの研究者雇い止めの事案、詳細に検証して、文科大臣、科学技術担当大臣、厚労大臣、三大臣、財務省も含めてです、是非、どうしたら日本の研究力これ以上低迷させないか検討していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。

 


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