活動報告

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利便性は損なわれた/田村智子氏 日高線のバス転換/参院国交委
 日本共産党の田村智子議員は20日、参院国土交通委員会で、JR北海道日高線の一部が廃止されバス路線に転換されたことで「利便性が向上した」とする斉藤鉄夫国交相の答弁に対し、利便性が損なわれている実態を示し反論しました。

 日高線(鵡川―様似間)は2015年の高波被害後、復旧されず21年に廃止されバス路線に転換されました。

 斉藤国交相は参院本会議で、同バス転換で「利便性が向上したとの評価が得られた」などと、鉄道運輸機構のアンケートに基づき答弁しています。田村氏は、同アンケートは回答者がわずか51人にすぎず、日高広域連携推進協議会が実施した回答者1493人のアンケートでは、「満足度は『普通』が最も多い」と指摘。さらに、「日高線ならバスより乗車時間が短く便利だった」「バスが2台から1台になりぎゅうぎゅう」「定期券を買ったのに毎朝学校まで親に送ってもらっている」との自由記述欄に寄せられた声を紹介し、「利便性も公益性も損なわれている」と迫りました。

 国交省の上原淳鉄道局長は「意見を踏まえダイヤ改正や運行ルート見直しなどを実施している。厳しい意見も有益だ」などと答弁。田村氏は「通学したいのに乗れない。そんなのんきな話ではない」と批判し、鉄道廃線、バスの便数減、利用者減少という「負のスパイラル」に陥っている現状を示し、鉄道廃止が地域に与える影響について検証をすべきだと主張しました。


2023年4月22日(土) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 おとといの参考人質疑では、全員から、鉄道は公益事業だ、公共の財産だということが強調されました。中でも、JRは全国ネットワークの鉄道網なんですね。赤字区間のみを取り出してその地域だけの問題として捉えて再構築というのは、出発点が違うと思います。全国ネットワークの鉄道を国が公共の財産、公益事業としてどう位置付けて、どう活用するのかが問われています。

 参考人質疑では、桜井徹日大名誉教授が、ネットワークを一番発揮できるのが貨物だと、北海道の問題はJR北海道とJR貨物が共同して北海道の産業再生をするという協議が行われるべきであったというふうに指摘をされています。

 旅客本数が少ない路線は貨物輸送で利用がしやすい。しかし、新たな貨物での活用ということは、国がモーダルシフトの戦略を持ってJR各社とか運送事業者とか様々なところとの協議をすることなしには進みません。気候変動対策としてモーダルシフトの目標を持っていると大臣は本会議で答弁されました。では、具体にどう進めるのか、現行の貨物路線は相当に密になっているという指摘もあります。
 ローカル線を貨物で活用するということも含めた戦略こそ必要だと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 貨物鉄道は環境に優しい大量輸送機関であり、また、ドライバー不足が課題となっているトラック輸送の受皿としても、今後ますます大きな役割を担っていくことが期待されております。

 JR貨物は、JR旅客会社が管理する線路を使用して貨物列車を運行しております。そのため、現に貨物列車が走行している線区、災害時等において走行する蓋然性が高い線区については、仮にその一部分が旅客の輸送密度が低いローカル線区であったとしても、我が国の基幹的鉄道ネットワークとして安定的に維持されることが重要です。

 国としても、これらの線区については、旧国鉄を承継したJR各社の基本的責務としてその維持が求められると考えておりまして、JR上場各社に対しJR会社法に基づく大臣指針により適切な維持を求めていくほか、JR北海道、JR四国に対しても指導監督しながら維持を図ってまいりたいと、このように思っております。

○田村智子君 今のは維持の話しかないんですよ。維持は当然です。私は、更に路線を増やすべきではないかと、貨物で使う路線を、そう聞いています。そういう戦略はないということですよね。

 整備新幹線ができると並行在来線がJRから切り離される、これも旅客のことしか考えないやり方なんです。並行在来線は貨物輸送の動脈であるのに、北陸信越では、資料一見ていただければ分かるんですけれども、これ、事業体が県ごとに分断をされて、JR貨物はそれぞれの事業者との契約で貨物輸送を行っている状態なんです。今後、経営悪化でその路線維持が困難などということになれば、貨物路線が寸断されることにもなります。

 北海道のJAと我が党の紙智子議員が懇談をした際、JA士幌町からは、北海道で取れるバレイショは鹿児島まで鉄道で運んでいると、鉄道網の意義が話されました。これも資料一を見れば明らかなんです。現在の貨物路線とJA芽室の出荷先の表、資料一に載せました。九州に一〇%、中国地方に一三%など、全国ネットワークなしに農産物の輸送はあり得ないということです。

 ところが、JR北海道の函館線函館―長万部間は、北海道新幹線の延伸によって並行在来線となり、JRから切り離されます。地元自治体が維持することができるのかと。ここが廃線になれば北海道の農作物は運べなくなりますが、一体国としてどう考えるのでしょうか。貨物輸送も含めた活用の協議、やはり行うべきではないですか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 先ほど大臣が答弁いたしましたとおり、貨物列車が現に走行している線区等については、我が国の基幹的鉄道ネットワークの一部を構成していることから、旧国鉄を承継したJR各社の基本的責務としてその維持を期待し、新たに設ける再構築協議会の対象とすることは考えておりません。

 また、先ほどお話ございました並行在来線各社につきましては、JR貨物が支払う線路使用料、これは、JR旅客会社に支払う線路使用料は非常に低いレベルでJR貨物の運営の安定を図っているところでございますけれども、JR貨物が支払う線路使用料と本来の線路使用料、ある意味でいうと、そのメンテナンス費用を全て加味したような本来の線路使用料の差額分を貨物調整金として国が交付をいたしております。これによりまして、この並行在来線各社がしっかりと路線を維持することができることと併せて、JR貨物の安定輸送を両立させるという政策を取っているところでございます。

 また、北海道の路線につきましてでございますが、JR北海道、経営が厳しい状況が続いておりますけれども、国鉄債務等処理法等に基づく支援パッケージにおきまして、貨物列車走行線区、このJR北海道の旅客線区の中で貨物列車走行線区に係る設備投資や修繕費については大きな金額の助成を国として行ってきているというものでございます。

 また、先ほど出ました海線の話でございますけれども、こちらにつきましても、現在、この北海道新幹線開通後の貨物のネットワークをどうするかという観点から、国が道庁等と一緒に協議を開始しているところでございます。

 また、JR貨物の経営基盤の強化に向けましては、先ほど申し上げました国鉄債務等処理法に基づく支援を行っておりまして、令和三年度から向こう三年間で総額百三十八億円の無利子貸付けを行うことによりましてJR貨物の基盤強化を図っているところでございます。

○田村智子君 これ、だから函館線を本当に維持しなければ駄目だということですよね、国の責任で。ということを改めて求めたいと思います。
 北海道の農畜産物の道外輸送というのは、実は鉄道のシェアは三割なんですよ。もっと利用する改革が必要だと、そうしなければモーダルシフトにはならないと思います。

 これ、本当に、本州もそうなんですけど、太平洋側と日本海側をつなぐ線はかつてはもっとあったんですよ、貨物は。それがなくなっているんです。ローカル線はあるわけだから、そういう新たな貨物輸送での活用ということも含めて協議をしなければならないと思いますよ。だけど、再構築協議会ってそういう協議ならないと思うんですよ、このままだと。ここは是非考えていただきたい。

 また、EUは、気候変動対策で鉄道インフラ整備計画立てているんですよ。ドイツでは廃線の復活も始まっているという。
 北海道を始め、各地の農林漁業の振興を考えれば、鉄道貨物の再構築に国が乗り出すべきだと思います。それは、新たな雇用や人口増に確実につながっていく。大臣、それいかがですか、お考え。新たに造る。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) いや、先ほど来、私が最初の答弁、そして今鉄道局長が答弁したとおり、この鉄道貨物が果たしている大きな役割をこれからしっかり保っていただくよう、国としてもしっかり取り組んでまいります。

○田村智子君 だから、保つではモーダルシフトにならないんですよ。もっと増やさなきゃ駄目。そこを求めています。是非検討いただきたい。
 本会議質疑で、バス転換と地域の活性化について検証を求めました。大臣は、廃止されたJR日高線のバス転換について、新たな交通体系に移行後のアンケート調査を挙げて、利便性が向上したとの評価が得られたと聞いているという答弁をされました。これは、資料二、回答者五十一人の鉄道・運輸機構のアンケート結果なんです。

 資料の三枚目、日高広域連携推進協議会が取り組んだアンケート結果、回答数一千四百九十三、こちらでは、満足度は普通が最も多いんです、普通が多い。自由記入欄には、JR日高本線なら乗換えなしでバスより乗車時間が短く、今よりずっと便利だったという意見もあります。また、朝の通学時、代行バスは二台出ていたのですが、今では一台になり、ぎゅうぎゅうの状態という声、朝登校するときに既に満席プラス補助席に座っている人がいて乗る場所がない、定期券を購入しているのに毎朝学校まで親に送ってもらっているという看過できない意見もあります。
 利便性も公益性も損なわれる深刻な事態が起きていると思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 JR北海道の日高線鵡川―様似間におきましては、令和三年四月にバス転換されましたが、委員御指摘のアンケートに加えまして、定期的に地域の協議会においてアンケートが実施されていると認識しております。こうしたアンケートの御意見を踏まえて、既に転換後のダイヤ改正で増便や運行経路の見直し等が実施されているものと理解をいたしております。

 鉄道・運輸機構が行いました調査は、バス転換から八か月後の状況を示すことによって、鉄道からバスにシフトした、それがどういう状況であったかと、これは当然ながらバス停が近くにあり、さらに学校の近くにまでそこで運べるということで高い評価が出たものと考えております。

 これに対しまして、先ほど御指摘のありました地域の協議会で、アンケート調査は、このバス転換後、一年後、二年後という形で定点観測をしているものでございます。これは、その目的として、更にこのバスネットワークの改善を、サービス改善をしていくために行っているものでございますので、そうした厳しい御意見が出てくることも非常に有益だというふうに考えております。

○田村智子君 それ、有益というか、乗れないんですよ、通学したいのに。そんなのんきな話じゃないと思いますよ。八か月後よりも、一年後、二年後でしょう、見なきゃいけないのは。

 資料四、廃線直後は運行の便数や停留所増やすけれども、しばらくすると便数が減り利用者数も減少という負のスパイラルが現に北海道で起きていることが示されています。交通ジャーナリストの鈴木文彦氏が深名線など北海道のバス転換について調査しまとめたものなんですけれども、この一番右の欄、Aはバス転換当時の形態をほぼ維持、Aダッシュ、大幅減便、B、周辺バス路線に取り込まれ独自性がなくなった、C、一部廃止など転換直後の原形をとどめていないという評価で、Aは三割程度にとどまっているんです。

 三陸鉄道の望月社長は退任の挨拶で、日本では、鉄道が廃止されて栄えた町はありません、鉄道は町と町を結び、人々の笑顔を運ぶ存在ですと述べられました。

 鉄道の廃線、駅舎の廃止が地域に長期的にどのような影響を与えたか、バス転換は地域活性化につながったか、中長期での検証こそ行うべきだと思いますが、そういう検証したことがあるんでしょうか。

○政府参考人(上原淳君) 委員御指摘のとおり、バス転換後においても、鉄道事業者やバス事業者が地元自治体と協力をして利便性と持続可能性の高い公共交通を確保できているか継続的に状況を把握することが重要であると考えております。

 今般の改正法案に基づきます再構築方針や地域公共交通計画におきましては、再構築の目標、その手段及び達成状況の評価に関する事項を定めることといたしておりまして、こうした枠組みを通じて実施状況をしっかりフォローしていきたいというふうに考えております。

 これまでのバス転換後の状況につきまして、国といたしましては、学識経験者からは、バスに転換する場合に、例えばそれまでの鉄道の廃止代替にこだわり過ぎて、本日配付されております資料は、これ全般が、ほとんど国鉄改革あるいは国鉄改革前の特定地方交通線のバスの廃止代替でありますけれども、そうした廃止代替にこだわり過ぎて、その鉄道が引いてあった路線をそのままバスでつなぐ、こうしたことがあった場合にはなかなか利用者が増えないという指摘がなされております。

 バスで再構築する場合には、病院や学校や商業施設、そうした最終目的地をつなぐような新たな交通体系にしていくことが指摘されておりますので、今回の再構築方針の運用に当たりましてもそうした学識経験者の知見を活用してまいりたいと考えております。

○田村智子君 長々答弁されましたけど、そういう検証や調査やっていないということじゃないですか、何も出てこないんだから。
 再構築協議会では、ファクトとデータに基づき議論を進めるといいます。参考人質疑で前富山市長の森雅志参考人は、事業者から情報が出てこないという指摘もされました。今も芸備線について、広島県と岡山県、JR西日本に利用者の属性、黒字路線の経営状況など詳細なデータを求めていても、出てこないということなんですよ。

 じゃ、再構築協議会では、自治体や住民が求めるデータ、これ開示されるんでしょうか。JRが経営上の問題を理由にデータを提供しない場合、国交省は指導するんですか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 再構築協議会におきまして、地域にとってあるべき公共交通を検討していく際には、具体的なファクトとデータに基づき議論を進め、関係者の信頼関係の構築を図ることが何よりも重要と認識いたしております。

 このため、国土交通省といたしましては、まずは鉄道事業者に対し、協議の対象線区に関連する利用状況や経営状況につきまして、協議を行うに当たって必要となるデータの開示を強く求めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 これね、赤字だ、経営難だというデータはすぐ示されますよ。
 例えば、JR日田彦山線の添田―夜明間、二〇一七年七月の豪雨災害で被災をして、JR九州は関連自治体の首長と復旧会議をつくったんですね。そこで示したのは、復旧の費用負担を自治体に求めただけじゃなくて、地上設備の維持経費一億六千万円を毎年出してくれなければ復旧しないと、こういうデータ出したわけですよ。これ、泣く泣く廃線ですよ。こんなことやられたら、被災区間、とてもじゃないけど復旧できないということにもなっていきます。

 こういう赤字や経費のデータは、恐らくJRからすぐに出されるでしょう。しかし、例えば、地域の活性化に果たす鉄道の役割、可能性、気候変動対策との関係、廃止された場合の影響、これは誰がどのようにデータとファクトを示すことになるんですか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 鉄道事業者から開示されるデータのほか、今回、予算で付けております調査事業によりまして、沿線地域の人口動態や都市構造、インフラの整備状況や住民の方々の移動手段等の社会経済状況を明らかにしていこうと考えております。

 また、地域において鉄道が果たしている意義、役割を明らかにするため、先ほどから御議論がございますクロスセクター評価を活用いたしまして、鉄道が他の輸送手段に転換された場合における地域経済、あるいは環境等も含めまして、そうした影響については、クロスセクター分析の手法により、可能な限り数値化して明らかにしていきたいというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 もう一つ、参考人質疑で森前富山市長、高山線の運行本数を増やしてほしいとJR西日本に要求し、自治体負担で五年間増便したということ、これで利用者が増えたということを紹介いただきました。しかし、ダイヤは事業者が決めるので、協議の仕組みがなくて大変苦労したというお話だったんですね。

 これ、地域鉄道の場合は、鉄道事業者は地域と運命共同体なんですよ。だから、自治体や利用者の要求を反映した利便性向上への努力も行われていると思います。

 一方、JRは、赤字路線を厄介者扱いする立場です。協議会での協議によって、JRに利便性の向上、これ行わせる、こういう仕組みはどのようにつくられるんでしょうか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 今般の改正法案におきましては、一部のローカル鉄道におきまして、人口減少やマイカー利用の普及など、JR各社の経営努力のみでは避けられない事情で大量輸送機関としての鉄道特性が十分に発揮できない状況が見られるため、国が新たに再構築協議会を設置することといたしております。

 こうした再構築協議会の運営に当たりましては、先ほど来申し上げておりますJR会社法に基づく大臣指針で、JRの上場四社については特に現に営業する路線を適切に維持することとされている、こうした趣旨を踏まえて、JRに対しましても自らの役割をしっかり果たすように強く求めていきたいというふうに考えております。

○田村智子君 いや、それで本当に利便性、ダイヤ改正とかできるのかなと。本数増やしてほしいということに応えられるのか、非常に疑問ですね。

 加えて、ちょっと時間なくなってしまったんですけど、協議運賃、これ、ローカル線の大幅値上げ可能としてしまうんですよ。私への本会議の答弁では、並行するバスと鉄道で定期券の相互利用が可能になって利便性向上するという説明だったんですけれども、バスの運賃に合わせて値上げしていいという話になって、運賃値上げこそが利便性を著しく損なうわけですから、これ絶対やるべきじゃないと思う。

 元々、やっぱり、ヨーロッパ見てみると、人口密度が北海道よりも低い地域でも、また長距離移動でも、日本と比べて運賃は格段に安い。それは、公益事業として国を含む公的負担が当然だからです。フランスは、運賃収益は運営費の一七%ですよ。その他地域も四割ぐらいですよ。当たり前なんですよ、国が出すことが。

 なぜ海外から学ばないのか、なぜ民間事業者だって言い張るのか。こここそ一番の転換が必要だと申し上げて、質問を終わります。

 


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