参院消費者問題特別委員会は9日、統一協会の被害者救済法案について参考人質疑を行いました。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は、同法案では禁止行為や取り消し権などの対象となる行為の範囲が狭く、「統一協会被害について言えば、ほとんど役に立たない」と指摘。寄付勧誘に関する禁止行為について、「岸田首相は今国会でいくつかの文言についてかなり広い解釈を明らかにしたが、そのような解釈を取るのであれば端的に条文に書き込んでもらいたい」と述べました。
元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は「同法案が本当に裁判で実効性を伴うのか検証してもらいたい」と指摘。統一協会の解散についても議論を続け、早急な対応をするよう求めました。被害者らが現役信者から攻撃され、体調を崩しながらも訴え続けてきた理由は「被害拡大の張本人の与党側が本当に動いてくれるか信じられなかったからだ」と強調。「被害者がそこまでやるしかなかったという事実を忘れないでもらいたい」と訴えました。
日本共産党の田村智子議員は、マインドコントロール(洗脳)下の寄付の勧誘を禁止規定にすることなどを盛り込んだ共産党の修正案の受け止めについて質問。阿部氏は「かなり広い行為を禁止規定としている。取り消しの範囲が広く、その期間も10年ではなく20年。被害救済にかなり役立つ条文になっている」と語りました。
2022年12月10日(土) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
本当に、参考人の皆さん、ありがとうございます。
そして、皆さんの意見陳述を踏まえて、更なる修正への努力を最後まで行っていきたいというふうに私たちは考えています。
それで、まず禁止規定について阿部参考人にお聞きをいたします。
やはり統一協会の特徴的な被害を救済するということを考えれば、マインドコントロールから寄附までの間にタイムラグがあると、かなり長いタイムラグもあり得る、それでも救済するためにどうするか、あるいは、自ら進んで寄附をしてしまうと、こういう場合も寄附の取消しに持っていく場合にどうするかということが問われていると思います。
その点で、御指摘のあった、そのたびに不安をあおったり困惑にさせたり、あるいは寄附が必要不可欠だということを告げるというのは、このマインドコントロール下での寄附を救済する上での障害に、障壁になり得てしまうというふうに私たち考えていまして、修正の提案も衆議院では行いました。参議院でなかなか時間がなくて、修正提案できるかどうかなんですけれども。
まず、その四条六号について言えば、不安をあおることその他の方法により、寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は陥っていることに乗じ、寄附の勧誘をしてはならない、こういう修正をすることがやはり必要だし、可能ではないかというふうに考えますが、ちょっとこの間の政府の答弁で、不可欠を削除すると一般的な宗教活動に対象が広がってしまうとか、あるいは、今の条文でもタイムラグがあっても救済できる場合があるとかいう答弁もなされているんですけれども、この答弁との関係も含めて、私たちの修正提案について御意見を伺いたいと思います。
○参考人(阿部克臣君) 共産党の修正案は、私もざっくりですけど拝見しましたけれども、内容としましては、我々全国弁連が出している修正案に近い内容ということで、そのマインドコントロール的な行為の捕捉も含めてかなり広い行為を禁止規定としていただいている、取消しの範囲が広い、かつ、その期間も十年ではなく二十年にしていただいているというふうに思います。そういう意味では、被害救済にかなり役立つ条文になっているだろうと、そのように感じております。
○田村智子君 先ほどもちょっと質問があった、それで、配慮義務のところについてもお聞きをしたいんですけれども、先ほど来も意見があったんですけど、重なるところがあったら済みません。
昨日の本会議で、我が党同僚議員が、その三号ですね、正体を隠し寄附の目的を誤認させると、これがなぜ禁止規定にできないのかという質問に対して、岸田首相の答弁は、禁止行為とするために誤認させるおそれのある行為を規定すると、その範囲が限定的になってしまう可能性があり、適切ではないと言われたんですね。これ、つまりは、今の条文よりも厳密にしないと禁止規定にはできないんだという意味だと私は受け取りました。ちょっと非常に分かりにくい答弁なんですけれども。
しかし、この法案の禁止規定というのは、すぐに、この行為を、禁止されている行為を行ったら、その途端にその法人等が何かの罰則を受けるというものではないんですね。罰則はワンクッション置かれていて、行政による勧告がまず行われ、その勧告にも従わないというときの罰則なんですよ。
そうすると、他の法律を見てみても、そういう場合の禁止規定というのは、何も事細かく厳密にというものばかりではないと思います。もっと緩い禁止規定は幾らでも他の法律にあると思います。
そう考えると、今の一号から三号ですよね、適切な判断ができないような状態に陥らせる、それから、自分や家族の生活の維持を困難にする、そして、正体を隠し、寄附の目的もごまかすと。これらはこのままでも禁止規定にすることは可能ではないのかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○参考人(阿部克臣君) おっしゃるとおりでして、その禁止行為違反が直ちに刑罰とかに結び付いているわけではないということですね。この法律、刑罰というものは付いていますけれども、刑罰というのはあくまで行政処分としての命令違反の刑罰だと思いますので、そういう意味で間接的な立て付けになっているわけです。
禁止規定違反が直ちに刑罰になるということであれば、それは罪刑法定主義という原則から、それは条文の表現はかなり明確に厳格にしなければならない、そういう要請が強く働くというわけですけれども、三条の規定を禁止規定にしたからといって、それに取消しの効果も付与されていないわけですし、その刑罰とか命令という効果も付与されていないわけですので、それは禁止規定にすることは可能だと思うんですね。
先ほど申し上げたとおり、公益法人法十七条四号の規定もそうですけれども、禁止規定というその規定で、そういうより抽象的なものは幾らでもあるわけですね。かつ、この三条の三つある規定のうち、例えば一号とか三号前段というのは、統一教会に関する過去の判例で既に違法と認定する要素として裁判で認められているものであると。それは、判例によっては統一教会に限らず違法だと判示しているものもあります。
なので、そういう禁止規定とするもう根拠もある、立法事実もあるものですから、そういう意味でも、禁止規定にすることは、それは可能なんだというふうに思います。
○田村智子君 それからもう一点、阿部参考人にお聞きしたいんですけど、配慮義務や禁止行為に関する勧告なんですけれども、この配慮義務については、著しい支障が生じている、それから当該行為、禁止行為をするおそれが著しいというふうに、著しいが二度も出てくるわけなんですね。そうすると、これは勧告のハードルが高くなってしまって、実効性があるんだろうかという疑問があるわけですね。この点についての見解をお聞きしたいのと、同じことで増田参考人に、こういう規定で、それじゃ、行政がやっていくことになるわけですね、勧告ということに。そのときにどのような対応が必要となってくると思われるか、お聞きしたいと思います。
○参考人(阿部克臣君) 先ほども申し上げましたとおり、この新法の六条、新しく入った六条ですね、配慮義務の遵守に係る勧告という条文が、その勧告の要件として、著しい支障が生じていると明らかに認められる場合において、更に同様の支障が生ずるおそれが著しいと認めるときという書きぶりでして、つまり、その著しいという文言が二回出てくるのと、さらに、明らかという文言も入っていますので、一般的にはかなりハードルとしては高いんじゃないかなというふうに思います。
この勧告というのは、先ほどから繰り返していますけれども、被害救済に結び付き得る、内容によっては結び付き得る条文だと思っていますので、なので、この要件ができるだけ高くならないようにそれは解釈していただきたいというふうに思うんですね。なので、政府の方でもこの条文の解説を作っていただくときは、そういう被害救済という見地から、できるだけ広い、低い意味でこの条文を解説していただきたいというふうに考えています。
○参考人(増田悦子君) 私たちの立場としては、やはりこの著しいというところまで持っていくためにはやはり広く相談を受け付ける必要があって、一つの相談だけではなく、複数の同種の内容というものが寄せられたときには、やはりそれをしっかり具体的に聞き取りをしてデータとして残していく、それの集約が非常に有効ではないかというふうに思います。
この配慮義務に関しては、義務ではありますけれども、消費生活相談の現場においてはやはり国が決めた義務であるということをしっかりと伝えていくことはできますので、やはりこれを現場では活用していくということが求められていると思います。
○田村智子君 もう一点、増田参考人にお聞きしたいんです。
先ほど、寄附やお布施というのはとても難しい案件であったと、で、情報提供にとどまってきたということなんですけれども、やはり今後、こういう法案をやっぱり使って救済を裁判だけでなく行政においてもやっていかなければならないというふうに思います。その上で、行政措置を実効性確保するために求められる消費者行政の体制強化などについて御意見ありましたら、お聞きしたいと思います。
○参考人(増田悦子君) 非常に難しいと思います。
ただ、私たちができることとしては、やはりしっかりと聞き取りをしていくことですね。それと、この寄附、お布施に関しても消費生活センターで受け付けるものであるという認識を強く持っていく必要があると思います。今までそこのところが十分ではなかったというふうに思いますので、そこをしっかりとやっていく必要があると思います。
そしてまた、子供の虐待とかそういうことについても、連携をするということはもう今でもやっているとは思うんですけれども、現状、その先どうなったのかとか、やはり情報共有というのが非常に重要だというふうに思いますので、そういう情報共有ができるような体制ということが必要かなというふうに思います。
○田村智子君 最初の意見陳述の中で、やはり合理的な判断ができるかどうかと、その寄附がね。やっぱりそういう条文の根拠を持って消費者行政が対応できるようにという、やっぱり根拠となる条文にできるだけ修正をしていきたいなというふうに思います。
最後、小川参考人にお聞きします。
本当に御家族の、特に御両親のことをお話しされるのはいろんな意味でつらいものがあろうかと思います。やはり御両親も被害者であって、それが子供さんも含めた加害になってしまうという、この苦しさが統一協会の被害の大きな特徴になっていますよね。
それで、やはり最初に入信するときに、私たちは統一協会というのは信教の自由を侵しているんじゃないのかというふうに考えています。正体を隠して接近をすると、それで、いつの間にかセミナーとか受けているうちに教義を信じ込ませていくということなのでね。ですから、この統一協会に対するその救済の法案が、信教の自由との関係で救済が実効性が問われてしまうようなものになってはならないんじゃないかというふうに思うんですね。
その信教の自由との関係で、統一協会について思われていることをお話しいただければと思います。
○参考人(小川さゆり君) まさにそうで、先ほど出た六番の霊感等による知見としてと、そして最後の方に、必要不可欠であることを告げること、これを岸田総理は、不可欠の文字を取ってしまうと範囲が広まるから、だからいろんな団体に当てはまってしまうというような言葉だったと、正確な言葉じゃなかったら申し訳ないんですが。しかし、この文章を読んでいても、どこを読んでも、不安をあおり、又は抱いていることに乗じて、当該不利益を回避するためには寄附をすることが必要不可欠、これ自体がどう考えても悪質であることが明白であるのに、その範囲が広まるからという理由で不可欠の文字を取れないということがすごく私は疑問に思っています。
なので、そういった信教の自由とか献金する自由を守るために、その債権者代位権の件も、ここも扶養の部分だったりとか理由のある部分しか返金が求められないというのは、カルト団体に献金することの自由を認めてしまっているのかなと私は思ってしまいますね。
なので、それがすごくおかしいなと思っている部分で、信教の自由、信じることの自由、宗教への信じる自由というのは認められていいと思っています。宗教というものはすばらしいものだと思っています。しかし、カルト団体への信仰の表現の自由を認めている、国が認めている、ここはどうしても納得ができない部分です。
○田村智子君 小川さん、もうこれが最後になると思うんです。言い足りなかったことがありましたら、やっぱり、国会三十年間動いてこなかった、行政も動いてこなかった、そこでもたらされた被害です。思いのたけを最後お述べいただけたらと思います。
○参考人(小川さゆり君) 本当に被害者の声をまずは聞いていただきたいなと思っています。特に与党の、政府の方々には、なるべくそういったヒアリングを開いて被害者の声を聞くことで、この法律というものがもっともっと、実際に、じゃ、この方に当てはまるのかというシミュレーションもできますし、それを私は強く望みます。
以上です。
○田村智子君 終わります。